ウェルネス・コミュニケーションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウェルネス・コミュニケーションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウェルネス・コミュニケーションズは東証グロース市場に上場し、企業や健康保険組合向けの健診ソリューション事業および健康管理クラウド事業を展開しています。2025年3月期の業績は売上高141億円、経常利益11億円、当期純利益7.8億円で、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ウェルネス・コミュニケーションズ の有価証券報告書(第19期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ウェルネス・コミュニケーションズってどんな会社?


同社は、企業や健康保険組合向けに健康診断の予約手配や結果管理システムを提供する、ヘルスケア・ソリューション企業です。

(1) 会社概要


同社は、2006年に伊藤忠商事の100%出資により設立され、同年8月にネットワーク健診事業(現・健診ソリューション事業)を譲り受けて事業を開始しました。2010年にはヘルスサポートシステム事業(現・健康管理クラウド事業)を譲受し、事業領域を拡大しました。2019年にSOMPOホールディングスの子会社となり、2025年6月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。

2025年3月31日現在、同社(単体)の従業員数は122名です。筆頭株主は同社の主要サービス提供において関係を持つ保険業のSOMPOホールディングス、第2位は投資会社のLHP Holdings,L.P.、第3位は企業のメンタルヘルス対策を行うアドバンテッジ リスク マネジメントです。

氏名 持株比率
SOMPOホールディングス 45.90%
LHP Holdings,L.P. 41.00%
アドバンテッジ リスク マネジメント 5.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は松田泰秀氏が務めています。取締役会における社外取締役の比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松田 泰秀 代表取締役社長 1998年伊藤忠商事入社。伊藤忠保険サービス出向、COSMOS AME出向(シカゴ駐在)、IFS出向(ニューヨーク駐在)等を経て、2012年同社取締役就任。2016年4月より現職。
佐々木 雅之 取締役 2005年伊藤忠エレクトロニクス入社。2006年同社出向、2010年転籍。データソリューション事業部長、経営企画管掌執行役員などを歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、並木洋平(SOMPOホールディングス執行役員)、尾西祥平(弁護士)、武田雅子(元カルビー常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「健診ソリューション事業」、「健康管理クラウド事業」および「医療機関等支援事業」を展開しています。

(1) 健診ソリューション事業


企業や健康保険組合を対象に、健康診断の予約、精算代行、結果データの一元化を行う「ネットワーク健康診断サービス」を提供しています。全国の提携医療機関とネットワークを構築し、受診者向けの予約サイトや担当者向けの管理システム「i-Wellness」を通じて、健康診断に関する業務をワンストップで支援しています。

収益は、顧客である企業や健康保険組合から、健康診断の受診費用や「i-Wellness」の利用を含む事務手数料(i-Wellness費用)を年間サービス料として受け取るモデルです。また、受診勧奨などの追加サービスに応じた利用料も収益となります。運営はウェルネス・コミュニケーションズが行っています。

(2) 健康管理クラウド事業


企業の人事部や産業保健スタッフ向けに、SaaS型の健康管理クラウドサービス「Growbase」を提供しています。健康診断結果、ストレスチェックデータ、就労データなどを個人単位で紐づけて一元管理し、労働基準監督署への報告書作成や産業医面談の管理機能などを通じて、企業の健康経営や法令対応を支援しています。

収益は、顧客企業から対象従業員数(ID数)に応じたシステムの基本利用料やデータ保管料などをストック収益として受け取るほか、オプション機能利用料や初期導入費用を受け取るモデルです。運営はウェルネス・コミュニケーションズが行っています。

(3) 医療機関等支援事業


地域中核病院に対してPET検査用の建物や装置の賃貸借を行うPET関連事業や、協会けんぽ等の加入企業を対象とした健康診断のBPOサービスを提供しています。BPOサービスでは、健康診断の予約や精算代行などを顧客の要望に応じて柔軟に受託しています。

収益は、医療機関からの賃貸料や、BPOサービスの顧客企業から受領する業務委託料などが主な源泉です。運営はウェルネス・コミュニケーションズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、事業規模の拡大が続いています。経常利益および当期純利益についても、売上の伸長に伴い増加傾向にあり、利益率も安定した水準を維持しています。全体として増収増益基調にあり、順調な成長軌道を描いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 83億円 93億円 107億円 133億円 141億円
経常利益 5億円 7億円 8億円 10億円 11億円
利益率(%) 6.5% 7.1% 7.6% 7.2% 7.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 4億円 6億円 7億円 8億円

(2) 損益計算書


2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は19.4%から20.0%へ、営業利益率は7.3%から7.9%へとそれぞれ改善しており、収益性が向上しています。効率的な事業運営が進んでいることが窺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 133億円 141億円
売上総利益 26億円 28億円
売上総利益率(%) 19.4% 20.0%
営業利益 10億円 11億円
営業利益率(%) 7.3% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が7億円(構成比40.5%)、退職給付費用が0.3億円(同1.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて黒字を確保しています。主力の健診ソリューション事業は売上・利益ともに堅調に推移し、健康管理クラウド事業も大幅な増益を達成し、高い利益率を示しています。医療機関等支援事業は安定した収益を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
健診ソリューション事業 119億円 125億円 3億円 3億円 2.3%
健康管理クラウド事業 11億円 12億円 6億円 7億円 58.6%
医療機関等支援事業 3億円 3億円 1億円 1億円 33.2%
連結(合計) 133億円 141億円 10億円 11億円 7.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6億円 17億円
投資CF -4億円 -3億円
財務CF -2億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.6%で市場平均をやや上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ウェルネス・データで、未来をつくる。」をパーパスに掲げています。疾病予防と健康増進の領域において、データに基づき組織や個人に最適なウェルネスソリューションを届ける役割を担い、「企業と人を元気にする。」ことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「企業と人を元気にする。」ことで、あらゆる組織や地域、異なる世代や性別の人たちとの間でのコミュニケーションを通じて、便利で、ユニークで、継続してもらえるウェルネス・サービスを創造することを目指しています。全国の提携医療機関を大切なパートナーと認識し、業務効率化や経営安定化に寄与する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、健診ソリューション事業における「健康診断結果の出荷数」や「平均売上単価」、健康管理クラウド事業における「契約企業グループ数」「ユーザーID数」「チャーンレート」などを設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、大企業市場の深耕を優先し、Growbaseの機能拡充による周辺領域への展開や、健康管理BPaaSによるソリューション拡充を推進し、健康管理プラットフォーム化を目指しています。また、ネットワーク健康診断サービスの再構築や高付加価値化、社内オペレーションのデジタル化による収益力向上に取り組み、将来的にはPHR事業への展開も見据えています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、MBO制度を導入し、目標達成度合いに応じた評価を行うことで、従業員のキャリアプラン形成とパフォーマンス向上を図っています。マネジメント層だけでなくスペシャリストを目指す給与体系も整備しています。また、在宅勤務制度や兼業許可制度を導入し、多様な働き方を推進するとともに、健康経営にも戦略的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.1歳 5.1年 5,464,000円


※平均年間給与は、賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 31.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.2%
男女賃金差異(正規雇用) 83.8%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※非正規雇用については、男性労働者が不在のため記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断の受診率(100.0%)、有給休暇取得率(86.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム上の問題


事業の根幹となるサービスにおいて、受診者の機微情報を扱うため、情報漏洩やデータ消失のリスクがあります。また、通信ネットワークの寸断やシステムダウンが発生した場合、営業が不可能となり、損害賠償請求等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 個人情報保護について


健康診断結果を含む要配慮個人情報を取り扱っているため、情報の漏洩や不正アクセスが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求につながる可能性があります。ISMS認証の取得や社員教育などの対策を講じていますが、リスクを完全に排除できる保証はありません。

(3) 人材の確保について


事業拡大には優秀な人材の確保と育成が不可欠ですが、多くの人材が流出したり、計画通りの採用・育成が進まなかった場合、事業展開に支障をきたす可能性があります。

(4) 市場動向について


健診ソリューション事業では、健康保険組合の財政悪化による解散や受診条件の見直しがリスク要因です。健康管理クラウド事業では、HRテックの加速に伴う競争激化や技術革新により、サービスの優位性が損なわれる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。