ウェルネス・コミュニケーションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウェルネス・コミュニケーションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウェルネス・コミュニケーションズは東証グロース市場に上場し、健康診断の予約代行等を行う健診ソリューション事業と、健康管理クラウドを提供する健康管理クラウド事業を展開しています。業績は堅調で、当期の売上高は148億円、経常利益は12億円と安定した増収増益のトレンドを維持して成長を続けています。


※本記事は、ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社の有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ウェルネス・コミュニケーションズってどんな会社?


同社は、企業や健康保険組合向けに健康診断の予約手配やデータ管理を一括支援するサービスを提供しています。

(1) 会社概要


2006年に伊藤忠商事の出資により設立され、ネットワーク健診事業を譲受して事業を開始しました。2010年に健康管理クラウド事業を譲受し、2019年にはSOMPOホールディングスの子会社となりました。2025年に東証グロース市場へ上場を果たし、2026年にはあしたのチームを連結子会社化しています。

現在の従業員数は連結で263名、単体で128名体制です。筆頭株主は事業会社のSOMPOホールディングスで、第2位は投資ファンドのLHP Holdings、第3位は販売代理店として業務提携を行っているアドバンテッジ リスク マネジメントとなっています。

氏名 持株比率
SOMPOホールディングス 32.08%
LHP Holdings, L.P.(常任代理人 イントリム) 28.65%
アドバンテッジ リスク マネジメント 4.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は松田泰秀氏が務めており、取締役5名のうち3名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
松田 泰秀 代表取締役社長 1998年伊藤忠商事入社。米国駐在等を経て、2010年同社ライフケア事業推進部へ。2012年に同社取締役となり、2016年より現職。
佐々木 雅之 取締役 2005年伊藤忠エレクトロニクス入社。2006年同社出向後、事業部長等を経て2024年に同社取締役、2026年にあしたのチーム副社長就任。


社外取締役は、並木洋平氏(SOMPOホールディングス執行役員等)、尾西祥平氏(弁護士・SmartHR社外取締役等)、武田雅子氏(元カルビー常務執行役員等)です。

2. 事業内容


同社グループは、「健診ソリューション事業」「健康管理クラウド事業」および「医療機関等支援事業」を展開しています。

健診ソリューション事業


企業や健康保険組合を顧客とし、健康診断の予約手配、医療機関への精算代行、健康診断結果のデータ化などを一括して請け負うネットワーク健康診断サービスを提供しています。独自のソリューションプラットフォーム「i-Wellness」を通じて、担当者の業務効率化や従業員の受診率向上を支援しています。

収益モデルは、受診者数に応じた基本利用料(健康診断費用とシステム利用を含む事務手数料)を年額で課金するストック型が中心です。加えて、未受診者への受診勧奨代行などのオプション費用をフロー収益として得ています。運営は同社が行っています。

健康管理クラウド事業


企業の人事部や産業保健スタッフ向けに、健康管理クラウドサービス「Growbase」等を提供しています。健康診断結果や就労データ、ストレスチェック、面談記録などを個人単位で一元管理・可視化し、労働基準監督署への報告書作成や産業医との面談スケジュール管理など、法令対応や健康経営の推進を支援します。

収益モデルは、顧客企業の対象従業員数(ID数)に応じたシステムの基本利用料やデータ保管料などを得るストック型課金が中心です。さらに、オプション機能利用料や初期設定費用などをフロー収益として受け取ります。運営は同社および連結子会社のあしたのチームが行っています。

医療機関等支援事業


報告セグメント以外のその他事業として、医療機関等支援事業を展開しています。地域中核病院に対してPET検査用の建物や装置などを賃貸するPET関連事業や、協会けんぽ等の加入企業を対象とした健康診断のBPOサービス(予約や精算代行等)を提供しています。

収益モデルは、医療機関に対する設備等の賃貸料や、企業からのBPOサービス受託による業務委託料を受け取る形式となっています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の当期利益は、4億円から8億円へと右肩上がりで成長を続けています。直近の2026年3月期より連結決算へ移行したため過去の売上高や経常利益の記載はありませんが、当期の連結売上高は148億円、経常利益は12億円となり、強固な収益基盤を背景に安定した業績拡大を実現しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - - - - 148億円
経常利益 - - - - 12億円
利益率(%) - - - - 7.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 6億円 7億円 8億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高に対する利益の割合を見ると、当期の売上総利益率は21.0%、営業利益率は8.0%となっています。堅調なサービス需要を背景に、売上総利益および営業利益ともに安定した水準で推移しており、強固なビジネスモデルによって高い収益性を確保していることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - 148億円
売上総利益 28億円 31億円
売上総利益率(%) - 21.0%
営業利益 11億円 12億円
営業利益率(%) - 8.0%


販売費及び一般管理費(19億円)のうち、給料手当が9億円(構成比44%)、システム関連費が2億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上動向を見ると、主力の健診ソリューション事業が当期の連結売上高の大半を牽引しています。また、健康管理クラウド事業も新規顧客の獲得により売上を順調に拡大しており、複数事業の展開による安定した成長基盤の構築が進んでいます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
健診ソリューション事業 - 130億円
健康管理クラウド事業 - 15億円
医療機関等支援事業 - 2億円
連結(合計) - 148億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業で安定して現金を創出しつつ、外部からの資金調達も行いながら積極的な事業投資を進める「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF - 11億円
投資CF - -1億円
財務CF - 15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.1%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も59.9%でいずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ウェルネス・データで、未来をつくる。」というパーパスを掲げ、「企業と人を元気にする。」というコーポレート・ビジョンの実現を目指しています。データに基づき、あらゆる組織や個人に対して最適かつユニークなウェルネスソリューションを届けることで、疾病予防と健康増進の領域における役割を担っていく方針です。

(2) 企業文化


同社は、企業と健康保険組合、働く従業員や家族、そして医療機関をつなぎ、利便性や生産性の向上に寄与することを重視しています。多様な人材が働きがいをもって活躍できる環境を整備し、一人ひとりの健康状況を把握して継続的に改善する取り組みを、個人と組織のパフォーマンス向上に向けた重要な投資と捉える文化です。

(3) 経営計画・目標


同社は、成長戦略を推進するための指標として、サービス利用者数や平均売上単価、クラウドサービスのユーザーID数やチャーンレート等の客観的指標を重視しています。大企業市場での深耕に加え、中堅・中小企業市場の開拓を加速させ、顧客課題に応じた機能拡充や周辺領域への展開を進めることで安定的な収益拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


健康管理プラットフォーム「Growbase」を中核とし、AI等のテクノロジーを活用した高付加価値なサービス提供を推進しています。業務プロセスの標準化や生成AIの実用化によるオペレーションの高度化で収益性の向上を図るとともに、M&Aを含めた成長投資を加速し、データ活用プラットフォームへの進化を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最も重要な経営資源と位置づけ、次世代マネジメント人材の育成や権限移譲、積極的な抜擢登用を通じて適所適材の配置を進めています。評価制度としてMBO(目標管理)制度を導入し、個人の目標達成度を報酬やキャリアに反映することで意欲を高めています。また、兼業許可制度や在宅勤務制度の導入により、柔軟な働き方を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.1歳 5.1年 6,105,000円


※平均年間給与は賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 26.4%
男性労働者の育児休業取得率 0.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 69.9%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 74.0%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) -


※パート・有期労働者において男性労働者が不在のため、記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断の受診率(100.0%)、有給休暇取得率(92.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の機微情報・個人情報の取り扱い

同社は健康診断結果などの要配慮個人情報を大量に取り扱うため、外部からのサイバー攻撃や社内の過失等による情報漏洩リスクがあります。万が一情報流出が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、同社の事業や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) システム障害とネットワークへの依存

主要サービスである「i-Wellness」や「Growbase」は通信ネットワークに依存して提供されています。自然災害やアクセス集中による過負荷、不正侵入等によりシステムダウンやデータ消失が発生した場合、サービスの停止を余儀なくされ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 労働関連の法規制変更による影響

同社の事業は、顧客企業が労働安全衛生法などの法令に対応するためのサービスを提供しています。関連する法規制や健康保険組合向けの制度が大幅に変更され、企業側の運用方針が変わった場合、提供するサービスの優位性が損なわれ、事業展開に影響を与えるリスクがあります。

(4) 競合他社の参入と市場環境の変化

テクノロジーの進化に伴い、健康管理クラウド分野には多くの企業が参入しており、競争環境が激化しています。また、健康保険組合の財政悪化等により健康診断の委託予算が見直された場合や、競合他社がより優位なサービスを開発した場合、顧客獲得が難航する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。