しずおかフィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

しずおかフィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

しずおかフィナンシャルグループは、東京証券取引所プライム市場に上場し、静岡銀行を中核事業として銀行業やリース業を展開している総合金融グループです。直近の業績では、金利環境の変化に対応し、ソリューション営業の高度化により資金利益や役務取引等利益が着実に増加しており、経常利益・当期利益ともに大幅な増益を達成しています。


※本記事は、株式会社しずおかフィナンシャルグループの有価証券報告書(第4期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. しずおかフィナンシャルグループってどんな会社?


同社グループは、静岡銀行を中核として銀行業務を中心にリース業務等の各種金融サービスを提供する総合金融グループです。

(1) 会社概要


同社は、2022年に静岡銀行の単独株式移転により持株会社体制へ移行し、設立されました。同年にグループ各社を完全子会社化し、マネックスグループを持分法適用関連会社としています。2025年には静銀セゾンカードを完全子会社化し、2026年には東京ガスリースを連結子会社化するなど事業の拡充を進めています。

同社グループの従業員数は連結で4,226名、単体で32名です。大株主については、筆頭株主ならびに第2位、第3位のいずれも資産管理業務や保険事業等を行う信託銀行および生命保険会社などの金融機関や法人等となっており、安定的な資本基盤のもとで地域経済を支える総合金融サービスの提供に取り組んでいます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.61%
日本生命保険相互 5.60%
明治安田生命保険相互 5.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは柴田久氏が務めており、役員全体に対する社外取締役の割合は50.0%(5名)となっています。

氏名 役職 主な経歴
柴田久 代表取締役(社長)CEО 1986年に静岡銀行入行。経営企画部長や東京営業部長などを歴任後、2017年より取締役頭取。2022年より現職。
中西勝則 代表取締役(会長) 1976年に静岡銀行入行。人事部長や経営企画部長などを歴任し、2005年より取締役頭取。2022年より現職。
八木稔 取締役 1987年に静岡銀行入行。経営企画部長や取締役副頭取などを歴任。現在は静岡銀行の取締役頭取ならびに同社の取締役執行役員として現職。
福島豊 取締役 1989年に静岡銀行入行。本店営業部長や東部カンパニー長などを歴任し、2022年より取締役専務執行役員として現職。
清川公一 取締役(監査等委員) 1988年に静岡銀行入行。本店営業部長などを歴任し、2020年に取締役常務執行役員。2022年より監査等委員として現職。


社外取締役は、藤沢久美(国際社会経済研究所理事長)、稲野和利(元野村アセットマネジメント社長)、伊藤元重(東京大学名誉教授)、坪内和人(元NTTドコモ副社長)、牛尾奈緒美(明治大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

銀行業


静岡銀行を中心として、預金業務や貸出業務をはじめ、有価証券投資業務、内国為替・外国為替業務などの総合的な銀行業務を展開しています。地域の法人および個人の顧客に対し、多岐にわたる金融商品やソリューションを提供しています。

収益源は、法人や個人からの貸出金利息や手数料、市場での有価証券の利息配当金などです。事業の運営は主に静岡銀行が行っており、地域の産業育成や持続的な成長を支援することで、安定した資金供給と事業基盤の拡大を図っています。

リース業


情報通信機器や産業機械などの多様な物件に関するファイナンス・リース取引やオペレーティング・リースを中心としたリース業務を展開しています。地域の法人顧客に対し、設備投資や資金調達に関するニーズに応じたサービスを提供しています。

収益源は、顧客である企業等から受け取るリース料収入などです。事業の運営は主に静銀リースが行っており、銀行業務と連携しながら、企業の設備投資意欲に応じた最適なリースソリューションを提供することで事業基盤を拡大しています。

その他


国内における金融商品取引業務や経営コンサルティング業務、株式公開支援業務などの多様な金融関連サービスを展開しています。地域企業の経営課題解決に向けたアドバイザリー機能やソリューションを提供しています。

収益源は、投資信託などの信託報酬や顧客からの各種コンサルティング手数料などです。運営は静銀ティーエム証券や静銀経営コンサルティング、静岡キャピタルなどのグループ各社が行い、銀行業と連携した総合的な支援体制を構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去4期間の業績を見ると、経常利益および当期利益は変動を伴いつつも、全体として成長傾向にあります。特に直近では、政策投資株式の縮減による株式等売却益の計上などにより、利益水準が大幅に拡大しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 - - - -
経常利益 740億円 1,022億円 1,021億円 1,303億円
利益率(%) - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 506億円 404億円 608億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、営業利益は着実に増加しています。人的資本投資に伴う人件費やシステム投資の増加などの営業経費の負担を吸収し、利益を順調に伸ばしていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 399億円 609億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、給料・手当が10億円(構成比49%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントにおいて、主力の銀行業は資金運用収益の増加等により増収を達成しています。また、その他事業においても信託報酬の増加やソリューション営業の拡大により、売上規模を大きく伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
銀行業 2,947億円 3,897億円
リース業 325億円 323億円
その他 141億円 165億円
連結(合計) 3,413億円 4,385億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況を示す「事業検討型」の兆候を見せています。なお、同社は金融関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大に伴う資産増加)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -5,210億円 -2,727億円
投資CF 165億円 2,196億円
財務CF -368億円 -701億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は7.7%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「地域とともに夢と豊かさを広げます。」を基本理念として掲げています。ステークホルダーのウェルビーイング向上とともに地域の総合金融グループとして発展していくため、社会価値の創造と企業価値の向上を両立する経営の実践を目指し、健全性と先進性、成長性を兼ね備えたバランスのとれた事業運営に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、企業理念のもと、変革に向けた野望を掲げ挑戦と失敗からの学びを繰り返す「Go Wild!」、知の探索による自己改革を継続する「Be Innovative!」、フラットな関係で協働による付加価値を生む「Do Collaboration!」の3つの「Value」を日々の行動の価値基準として重視し、役職員へ浸透させています。

(3) 経営計画・目標


第2次中期経営計画において、「社会インパクト指標」と「エンゲージメント指標」「財務目標」で構成される「サステナビリティ指標」を経営目標としています。2028年度を最終年度とし、以下の財務目標の達成を目指しています。

* 連結経常利益:1,700億円以上
* 連結ROE(純資産基準):9.5%程度
* 連結OHR:47%程度でコントロール
* 配当性向:50%以上へ累進的に引き上げ維持

(4) 成長戦略と重点施策


「共創・成長・挑戦」、「トランスフォーメーション2.0」、「コーポレートコミュニケーション」の3つの基本戦略を推進しています。金融関連事業を中心に収益力向上を図るとともに、AI・デジタル分野や人的資本への積極的な投資を実行し、地域社会の課題解決を通じた持続的な企業価値の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「地域とともに未来をつくり、成長を続ける価値共創企業グループ」の実現に向け、人的資本経営を通じて個人と組織の共成長を図っています。AI等による業務効率化と戦略人財の最適配置を進めるとともに、キャリア自律を促すスキル変革やDE&Iの推進、役職員が能力を最大限発揮できる柔軟な就労環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.5歳 17.1年 11,115,000円


※平均年間給与は出向元での年収を記載しており、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.4%
男性育児休業取得率 109.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 48.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 67.4%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 63.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員比率(20.0%)、障がい者雇用率(2.55%)、有給休暇取得率(71.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 社会・経済・金融動向等を踏まえたリスク


人口減少や少子高齢化、デジタル化・脱炭素化による社会構造の変化、地政学的動向による物価上昇などが地域経済に悪影響を及ぼした場合、取引先の財務内容が悪化し、同社グループの不良債権や与信関係費用が増加することで、業績や自己資本に悪影響を与える可能性があります。

(2) 市場リスクと流動性リスク


国内外の金融政策や金利動向の変化により市場価格が大きく変動した場合、同社が保有する株式や債券などの資産価値が減損・下落し損失を被るリスクがあります。また、金融市場の混乱や同社の信用力低下により預金が流出し、資金調達コストが急増する流動性リスクも存在します。

(3) サイバーセキュリティやシステム障害のリスク


サイバー攻撃を受けてシステムやサービスが停止し、顧客データが漏洩・改ざんされたり不正取引が実行されたりするリスクがあります。また、自然災害や機器の故障でシステムが作動しなくなった場合、決済機能の停止や社会的信用の失墜により、同社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。