しずおかフィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

しずおかフィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する銀行持株会社です。静岡銀行を中核とし、リース業務や金融商品取引業務など総合金融サービスを展開しています。直近の業績は、連結経常収益が前期比で減収となったものの、親会社株主に帰属する当期純利益は増益を確保しています。


※本記事は、株式会社しずおかフィナンシャルグループ の有価証券報告書(第3期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. しずおかフィナンシャルグループってどんな会社?


静岡銀行を中核とする総合金融グループです。銀行業務に加え、リースや証券などの金融サービスを提供しています。

(1) 会社概要


2022年10月、静岡銀行の単独株式移転により持株会社として設立されました。同日、静銀経営コンサルティングや静銀リース等を完全子会社化し、グループ体制を再編しています。2023年にはティージェイエスを完全子会社化したほか、マーケティング支援や不動産投資顧問を行う新会社を相次いで設立するなど、事業領域の拡大を進めています。

連結従業員数は4,134人、単体では21人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は同様に資産管理を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位は日本生命保険相互会社です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 14.98%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.55%
日本生命保険相互会社 5.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役(社長)CEОは柴田久氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
柴田 久 代表取締役(社長)CEО 1986年静岡銀行入行。経営企画部長、首都圏カンパニー長、東京支店長等を経て、2017年同行取締役頭取。2022年10月より現職。
中西 勝則 代表取締役(会長) 1976年静岡銀行入行。人事部長、経営企画部長等を経て、2005年同行取締役頭取。2017年同行取締役会長。2022年10月より現職。
八木 稔 取締役 1987年静岡銀行入行。経営管理部人事開発グループ長、経営企画部長等を経て、2021年同行取締役副頭取。2022年10月より現職(静岡銀行取締役頭取兼務)。
福島 豊 取締役 1989年静岡銀行入行。審査部担当部長、本店営業部長、東部カンパニー長等を経て、2022年同行取締役専務執行役員。2022年10月より現職。


社外取締役は、藤沢久美(元ソフィアバンク代表取締役)、稲野和利(元野村アセットマネジメント社長・会長)、伊藤元重(東京大学名誉教授)、坪内和人(元NTTドコモ副社長)、牛尾奈緒美(明治大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


静岡県を中心とした地域において、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、内国為替・外国為替業務などを行っています。個人および法人顧客に対し、資金の貸付や資産運用商品の販売、決済サービスなどを提供しています。

収益は、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益、および各種手数料収入が中心です。運営は、中核子会社である株式会社静岡銀行が行っています。また、海外においては、Shizuoka Liquidity Reserve Limitedなどが金銭債権の取得業務を行っています。

(2) リース業


機械設備や情報通信機器などのファイナンス・リース取引を中心としたリース業務を行っています。企業の設備投資ニーズに対応し、物件の賃貸借を通じた金融サービスを提供しています。

収益は、顧客からのリース料収入が中心です。運営は、連結子会社である静銀リース株式会社が行っています。

(3) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、金融商品取引業務、経営コンサルティング業務、信用保証業務などを展開しています。証券仲介やM&A助言、ビジネスマッチングなどを通じて顧客の多様な課題解決を支援しています。

収益は、証券業務に係る手数料やコンサルティング手数料、保証料などです。運営は、静銀ティーエム証券株式会社、静銀経営コンサルティング株式会社、静銀信用保証株式会社、静岡キャピタル株式会社などがそれぞれ行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は、円安や物価上昇といった経済環境下で、民間消費や企業の設備投資が堅調に推移したことを背景に、経常収益は前期比で微減となったものの、経常利益、当期純利益ともに増加となりました。これは、特別利益の増加が当期純利益を押し上げたことが主な要因です。過去からの趨勢としては、経常収益は概ね横ばいで推移する一方、経常利益および当期純利益は増加傾向を示しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 287,386 346,526 341,277
経常利益(億円) 73,964 102,224 2,919
当期純利益(億円) 52,397 57,760 74,609

(2) 損益計算書

当期の経常収益は前期比で微減となりましたが、経常費用も減少したことにより、経常利益は大幅に増加しました。これは、特別利益の増加が当期純利益を押し上げる要因となりました。当期純利益は前期比で増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 346,526 341,277
経常費用 244,301 239,204
経常利益 102,224 2,919
当期純利益 57,757 74,609

(3) 役務取引等収益の内訳

当グループの役務取引等収益合計は、前期比で増加しました。中でも、預金・貸出業務が最も大きな割合を占めており、引き続き収益の柱となっています。次いで証券関連業務も一定の規模を維持しています。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 - -
預金・貸出業務 - -
為替業務 - -
証券関連業務 - -
代理業務 - -

(4) キャッシュ・フローと財務指標

しずおかフィナンシャルグループは、健全かつ安定的なポートフォリオ構築と相場動向に応じた適切な運用に努めています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、債券貸借取引受入担保金の減少などによりマイナスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却などによりプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いと自己株式の取得による支出によりマイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 170,053 △521,034
投資活動によるキャッシュ・フロー △293,497 16,506
財務活動によるキャッシュ・フロー △24,778 △36,788

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、静岡銀行の基本理念である「地域とともに夢と豊かさを広げます。」を引き継ぎ、ステークホルダーのウェルビーイング向上とともに、地域の総合金融グループとして発展することを目指しています。社会価値の創造と企業価値の向上の両立を経営の基本とし、健全性、先進性、成長性を兼ね備えた事業運営に取り組んでいます。

(2) 企業文化


「未来へつなぐ新たな価値を創造する課題解決型企業グループ」をビジョンに掲げ、地域や顧客の課題解決を通じて新たな価値を創造することを重視しています。異なる分野が融合する「Xover(クロスオーバー)」の精神で、未来世代を含む全てのステークホルダーと新たな価値を共創し、不確実な時代を切り拓く姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


2030年に目指す姿として「すべてのステークホルダーがサステナブルかつ幸福度が高まっている状態」を掲げ、バックキャストにより第1次中期経営計画(2023~2027年度)を策定しています。地域金融機関としての社会価値創造の効果を測る「社会インパクト指標」と、企業価値向上を目指す「エンゲージメント指標」「財務目標」で構成される『サステナビリティ指標』を設定しています。

* 連結経常利益:1,450億円以上
* 連結ROE(株主資本基準):9.5%程度
* 連結CET1比率:13%程度
* 連結OHR:50%程度でコントロール
* 配当性向(連結):50%以上へ累進的に引き上げ

(4) 成長戦略と重点施策


人的資本経営を軸に、「地域共創戦略」「グループビジネス戦略」「トランスフォーメーション戦略」「グループガバナンス戦略」の4つの基本戦略を推進します。地域共創ではグループのネットワークを活用して地域活性化を図り、ビジネス戦略では既存事業の深掘りと新事業への挑戦を通じて収益拡大を目指します。

トランスフォーメーション戦略では、デジタル投資による生産性向上と経費構造の変革を進めるとともに、人材や新事業分野への投資を加速させます。また、グループガバナンス戦略により、持株会社が全体を統括・支援し、事業シナジーの創出や各社の成長を促進する体制を構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


第1次中期経営計画において人的資本経営を土台に位置付け、経営戦略と連動した人財戦略を推進しています。具体的には、役職員の行動変革を促す人事制度の運用、価値創造型・課題解決型・デジタル人財の育成、採用チャネルの多様化による人財ポートフォリオの充実に取り組んでいます。また、自律的なキャリア形成支援や柔軟な働き方の推進により、エンゲージメントとウェルビーイングの向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.3歳 16.8年 10,528,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 18.7%
男性労働者の育児休業取得率 149.1%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 47.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 66.8%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 68.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント(3.81)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 社会・経済・金融動向の影響


地域における人口減少やデジタル化・脱炭素化、国際情勢の変化などが、営業エリアの経済活動に影響を与える可能性があります。これにより取引先の財務が悪化した場合、不良債権や与信関係費用が増加し、業績や自己資本に悪影響を及ぼす恐れがあります。また、金融政策や金利動向が市場取引に波及し、市場リスクや流動性リスクが顕在化する可能性もあります。

(2) 気候変動に関するリスク


気候変動による自然災害で取引先の資産が毀損したり、環境規制への対応で事業が影響を受けたりした場合、信用リスクが増加する可能性があります。また、気候変動への社会的要請の高まりにより、規制変更リスクが増大する恐れもあります。同社はTCFD提言に賛同し、機会とリスクの両面から対応を進めています。

(3) 信用リスク


取引先の財務状況悪化により資産価値が減少し、損失を被るリスクです。特に主要営業基盤である静岡県の経済動向に左右される可能性があります。景気悪化や自然災害等により取引先の業況が悪化した場合、貸倒引当金の積み増しが必要となり、業績や自己資本に悪影響を及ぼす可能性があります。また、不動産や有価証券価格の下落により担保価値が毀損した場合も同様の影響が懸念されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。