※本記事は、INEST株式会社 の有価証券報告書(第3期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. INESTってどんな会社?
企業や個人に対し、通信回線や電力、ウォーターサーバー等のインフラサービスの取次販売を行う企業です。
■(1) 会社概要
2022年10月、INTによる単独株式移転の方法により設立され、東京証券取引所スタンダード市場に上場しました。その後、積極的なM&Aを展開しており、2023年10月にZITTOを、同年12月にはエフエルシープレミアムを連結子会社化しました。また、2023年11月にはプレミアムウォーターホールディングスと資本業務提携を締結しています。
2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は606名(単体33名)です。筆頭株主は資本業務提携先であり宅配水事業等を展開するプレミアムウォーターホールディングスで、第2位はSBIイノベーションファンド1号、第3位は情報通信サービス業を展開する光通信です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| プレミアムウォーターホールディングス | 37.76% |
| SBIイノベーションファンド1号 | 6.17% |
| 光通信 | 3.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は小泉 まり氏です。取締役会における社外取締役の比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小泉 まり | 代表取締役社長 | エフエルシー入社、エフエルシープレミアム代表取締役社長、プレミアムウォーターホールディングス執行役員、同社取締役などを経て、2024年1月より現職。 |
| 坂本 幸司 | 取締役副社長 | ニュートン・フィナンシャル・コンサルティング(現ナローピーク)入社、保険見直し本舗取締役、Renxa代表取締役などを経て、2022年10月より現職。 |
| 濱田 拓也 | 取締役管理本部長 | ニュートン・フィナンシャル・コンサルティング(現ナローピーク)入社、Renxa管理本部部長、INEST(現INT)管理本部経営企画部兼人事部部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 伊藤 賢治 | 取締役 | NEXUS(現ジェイ・コミュニケーション)入社、エフエルシークリエイション(現エフエルシープレミアム)代表取締役、エフエルシープレミアム取締役副社長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 長野 成晃 | 取締役 | 光通信入社、京王ズホールディングス代表取締役、プレミアムウォーターホールディングス代表取締役CFOなどを経て、2024年1月より現職。 |
| 柴田 亮 | 取締役(監査等委員) | 光通信入社、アクトコール取締役監査等委員、シック・ホールディングス取締役監査等委員などを経て、2022年10月より現職。 |
社外取締役は、近藤 武雄(元大蔵省入省・旭信用金庫常勤理事)、竹中 由重(弁護士)、嶋田 智也(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソリューション事業」を展開しています。
■(1) 他社サービス(法人向け)
主に中小法人に対して、モバイルデバイスや新電力、OA機器等の顧客のニーズに合った各種商品の提供を行っています。顧客接点の最適化を図り、多様なチャネルを活用した提案型営業を推進しています。
収益は、通信事業者やメーカー、上位代理店等からの商品の取次販売に係る手数料収入等が主な柱です。運営は主にアイ・ステーション、Linklet、Gloriaが行っています。
■(2) 他社サービス(個人向け)
主に個人消費者に対して、ウォーターサーバーや新電力、インターネット回線等の顧客のニーズに合った各種商品の提供を行っています。コールセンター、イベントブース、店舗、Web等の多様な販売チャネルを組み合わせて展開しています。
収益は、各サービスの契約獲得に伴う手数料収入等が中心となります。運営は主にRenxa、エフエルシープレミアムが行っています。
■(3) 自社サービス
主にWebコンテンツ、保険、会員優待サービス等の顧客のニーズに合った各種サービスの提供を行っています。ライフインフラ関連サービスとして、顧客の生活を豊かにするための付加価値提供に取り組んでいます。
収益は、顧客に対するサービス提供の対価としての利用料収入等が挙げられます。運営は主にRenxa、ZITTOが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年3月期から2025年3月期にかけて、売上収益は大幅に増加しました。これはM&Aによる事業拡大が寄与しています。一方で、税引前利益は減少傾向にあり、利益率は低下しています。当期利益については、前期の赤字から黒字転換を果たしました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 105億円 | 190億円 |
| 税引前利益 | 1.8億円 | 1.0億円 |
| 利益率 | 1.7% | 0.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.5億円 | 0.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において、売上収益の拡大に伴い売上総利益も増加しましたが、売上総利益率は低下しています。営業利益についても減益となっており、営業利益率は低下しました。事業規模の拡大に対し、利益率の改善が課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 105億円 | 190億円 |
| 売上総利益 | 93億円 | 162億円 |
| 売上総利益率(%) | 88.7% | 85.3% |
| 営業利益 | 2.4億円 | 2.1億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | 1.1% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が79億円(構成比49%)、その他が40億円(同25%)、従業員及び役員に対する給付費用が37億円(同23%)を占めています。売上原価については、商品売上原価が28億円(構成比100%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「ソリューション事業」の単一セグメントであるため、全社的な増減要因を記述します。当期は個人向け事業を展開するエフエルシープレミアム等の連結化により、売上収益は前期比で大幅に増加しました。一方で、営業利益は減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソリューション事業 | 105億円 | 190億円 | 2.4億円 | 2.1億円 | 1.1% |
| 連結(合計) | 105億円 | 190億円 | 2.4億円 | 2.1億円 | 1.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
INESTは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
短期運転資金は自己資金で賄い、設備投資や長期運転資金は自己資金に加え、金融機関からの借入や株式発行等で調達しています。
今後の見通しとして、ストック収益ベースの経営確立に向けた積極的な事業投資を継続し、売上収益の増収増益を見込んでいます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.2億円 | 9億円 |
| 投資CF | -23億円 | -2億円 |
| 財務CF | 23億円 | -6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人々の人生を豊かで幸せにする。」を経営理念として掲げています。事業活動を通じて社会に貢献することを経営の基本方針とし、顧客ニーズに応じた価値提供に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社グループは、「自社の活動を通じて、市場を共創し続ける。」をミッションとしています。性別、年齢、国籍等の多様性を受け入れて活かすことで強い組織であり続け、全てのステークホルダーとの協力関係を強化し、互いの利益と持続的な成長を目指す中で、市場と共に新たな価値を創造することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、安定的かつ持続的な成長の実現と企業価値の向上に努めています。2026年3月期の通期連結業績予想として、以下の数値を掲げています。
* 売上収益:200億円
* 営業利益:2.5億円
* 親会社の所有者に帰属する当期利益:0.45億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社グループは、安定収益の確保に向けて既存事業の強化を図るとともに、ストック型収益モデルへの転換を重要課題としています。商品販売面では事業分野別の区分による効率化、商品力強化では顧客ニーズに合ったサービスの開発・改良、営業力強化では従業員の生産性向上と教育体制の充実に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、各事業会社が人的資本の多様性に責任を持ち、主体的に取り組む体制を構築しています。女性管理職の輩出を重要課題と捉え、女性活躍推進法に基づく自主行動計画を策定・実行しています。また、従業員の生産性向上を最重要課題とし、知識やノウハウ習得のための教育体制や管理体制の強化に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 35.4歳 | 3.0年 | 5,044,000円 |
※平均年間給与は、INTで支給された給与及び賞与並びに基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合(全社) | 28.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異 | - |
※男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異は公表義務の対象でないため、記載を省略しております。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、Renxaの月間平均稼働時間(170.9時間)、エフエルシープレミアムの有給消化率(53.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) システムダウンについて
同社グループはコール業務管理や顧客情報管理等の情報システムに依存しており、ネットワークやサーバの冗長化等の対策を講じています。しかし、システム障害が発生した場合、コール業務の停止による営業活動への支障やデータ流出等が発生し、同社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 情報セキュリティについて
事業において顧客の経営情報や個人情報を蓄積しており、独自のプライベートネットワークやファイヤーウォールの設置、社内規程の整備や教育等の対策を行っています。しかし、自然災害や人的過誤、不正アクセス等により情報漏洩やデータ破損が発生した場合、信用の失墜や損害賠償請求等により、同社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) のれん及び無形資産の減損について
M&Aに伴い、多額ののれん及び耐用年数を確定できない無形資産を計上しています。これらは非償却資産として毎期減損判定を行っていますが、経営環境の変化等により収益性が低下した場合には減損損失が発生し、同社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) 技術革新への対応について
インターネット関連業界は技術革新が急速で顧客ニーズも変化しやすいため、情報収集や技術取得に努めています。しかし、技術革新への対応が遅れた場合、競争力が低下し、同社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。



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