※本記事は、INESTの有価証券報告書(第4期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. INESTってどんな会社?
同社は、個人や法人向けに生活インフラの取次販売や独自のwebサービスを提供するソリューション企業です。
■(1) 会社概要
2022年10月にINTの単独株式移転により設立され、東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました。2023年10月にZITTOを子会社化し、同年11月にはプレミアムウォーターホールディングスと資本業務提携を締結しました。2025年7月には法人向け事業を行う子会社株式を譲渡して事業を再編しています。
現在の従業員数は連結344名、単体29名です。筆頭株主は資本業務提携先であるプレミアムウォーターホールディングスで、第2位はSBIイノベーションファンド1号、第3位はその他の関係会社である光通信となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| プレミアムウォーターホールディングス | 37.85% |
| SBIイノベーションファンド1号 | 6.18% |
| 光通信 | 3.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は坂本幸司氏が務めています。社外取締役の比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂本 幸司 | 代表取締役社長 | 2006年5月ニュートン・フィナンシャル・コンサルティング入社。Patch(現Renxa)代表取締役、INT取締役などを経て、2026年6月より現職。 |
| 濱田 拓也 | 取締役管理本部長 | 2009年4月ニュートン・フィナンシャル・コンサルティング入社。Patch(現Renxa)管理本部部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 川合 貴裕 | 取締役 | 2010年4月ニュートン・フィナンシャル・コンサルティング入社。Renxa事業企画部事業部長、取締役などを経て、2026年6月より現職。 |
| 長野 成晃 | 取締役 | 2003年4月光通信入社。プレミアムウォーターホールディングス代表取締役CFOなどを歴任し、2024年1月より現職。 |
| 柴田 亮 | 取締役(監査等委員) | 2014年4月光通信入社。シック・ホールディングス取締役監査等委員などを経て、2022年10月より現職。 |
社外取締役は、近藤武雄(元旭信用金庫常勤理事・総務部長)、嶋田智也(嶋田智也公認会計士事務所設立)、西明優貴(森下総合法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソリューション事業」を展開しています。
■(1) ソリューション事業(他社サービス)
主に個人消費者に対して、ウォーターサーバーや新電力、インターネット回線等の顧客のニーズにあった各種商品を提案し、取次販売を行っています。
収益源は通信事業者やメーカーからの販売手数料や取次手数料です。運営は主に同社およびRenxaが行っています。
■(2) ソリューション事業(自社サービス)
主にwebコンテンツ、保険、会員優待サービス等の顧客のライフスタイルやニーズにあわせた各種オリジナルサービスの提供を行っています。
収益源は顧客から受け取るサブスクリプション利用料やサービス利用料です。運営は主にZITTOなどのグループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は2025年3月期に大きく拡大しましたが、2026年3月期は事業再編の影響等によりやや減少しました。一方、利益面では2024年3月期に当期損失を計上したものの、その後は黒字転換し、直近では利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 79億円 | 105億円 | 190億円 | 182億円 |
| 税引前利益 | 2億円 | 2億円 | 1億円 | 2億円 |
| 利益率(%) | 2.0% | 1.7% | 0.5% | 0.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | -1億円 | 0.4億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上総利益率は80%台と高い水準を維持していますが、直近ではわずかに低下しました。一方で、営業利益は増加しており、営業利益率も改善を見せています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 190億円 | 182億円 |
| 売上総利益 | 162億円 | 150億円 |
| 売上総利益率(%) | 85.3% | 82.4% |
| 営業利益 | 2億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 1.1% | 1.4% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が87億円(構成比57.4%)、従業員及び役員に対する給付費用が27億円(同17.8%)を占めています。売上原価は商品売上原価が32億円(構成比100.0%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社はソリューション事業の単一セグメントであるため、全体業績と同じ数値となります。直近では事業ポートフォリオの見直しや経営資源の最適配分を進め、既存事業の収益力強化を図っています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソリューション事業 | 190億円 | 182億円 | 2億円 | 3億円 | 1.4% |
| 連結(合計) | 190億円 | 182億円 | 2億円 | 3億円 | 1.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | -5億円 |
| 投資CF | -2億円 | 15億円 |
| 財務CF | -6億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人々の人生を豊かで幸せにする。」を経営理念とし、事業を通じて社会に貢献することを経営の基本方針としています。個人や法人顧客に対し、ライフインフラ関連サービス及びBPOを展開し、顧客ニーズに応じた価値提供に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
「自社の活動を通じて、市場を共創し続ける。」をミッションとしています。性別、年齢、国籍、文化、経験、スキルの多様性を受け入れ、それを活かすことで、いかなる状況においても最高の成果を出す強い組織であり続けることを重視しています。ステークホルダーと協働し、共に新たな価値を創造する文化です。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画において、「事業の選択と集中」及び「ストック利益の最大化」を基本方針として掲げています。グループ内統合によるコスト削減効果も見込みながら、自社サービスへの先行投資を継続し、中長期的な収益基盤の強化を進めています。
* 売上収益:185億円
* 営業利益:6.1億円
* 親会社の所有者に帰属する当期利益:3億円
■(4) 成長戦略と重点施策
安定した収益の確保に向け、既存事業の強化を進めています。グループ会社の垣根を越えた事業分野別の責任体制明確化、従業員一人当たりの生産性向上を最重要課題とする教育・管理体制の強化に取り組んでいます。また、従来のフロー型収益メインから、安定したストック型収益モデルへの転換を重要な課題として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持株会社としてグループ全体の人事方針を決定し、各事業会社が主体的に人的資本の多様性に取り組む体制を構築しています。実力主義の原則に基づく評価・登用を通じ、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、長期的なキャリア形成とワークライフバランスの向上を実現できる環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 35.1歳 | 3.9年 | 5,547,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 28.9% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 71.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 80.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) | 173.6% |
※男性労働者の育児休業取得率は、公表する情報として選択していないため有報には記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給消化率(65.9%)、エンゲージメントサーベイの肯定的回答率(57.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客獲得ルートへの依存
業務提携先からのアプローチリスト取得やイベントブース、店舗販売等の手法に依存しており、リスト価格の高騰や外部事業者との契約条件の変更、パートナーの事業方針転換等が生じた場合、リード獲得活動に直接的かつ重大な影響を与えるリスクが存在します。
■(2) 特定取引先への依存
主要な取引先がプレミアムウォーターホールディングスや光通信などに集中しており、これらの企業の動向によっては同社の業績に影響を与える可能性があります。同社は取引関係を拡大し、売上構成の分散化を進めることでリスク逓減を図っています。
■(3) 販売代理業務に関する動向
国内外の経済情勢や通信事業者、メーカーなど上位代理店の方針変更により、取引条件が変更された場合、当初計画していた売上成長が見込めず、事業の収益性や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報セキュリティとシステム障害
コール業務等の運営において情報システムに依存しており、大規模な自然災害や不正アクセス、人的ミス等による顧客情報の漏洩、システム障害が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の低下を招くリスクがあります。同社は各種セキュリティの強化に努めています。



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