テリロジーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テリロジーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テリロジーホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、ネットワークやセキュリティ、ソリューションサービスを提供するテクノロジーオーガナイズ企業グループです。直近の業績では、OT/IoTセキュリティ需要の拡大や官公庁向け案件の好調により、力強い増収増益を達成し成長を続けています。


※本記事は、テリロジーホールディングスの有価証券報告書(第4期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テリロジーホールディングスってどんな会社?


同社はネットワークやサイバーセキュリティ等のITソリューションサービスを幅広く提供する企業グループです。

(1) 会社概要


同社は2022年11月にテリロジーの単独株式移転により設立され、東京証券取引所スタンダード市場に上場しました。その後、積極的な事業拡大を進め、2023年にログイットなどを子会社化し、アイティーエムと資本業務提携を締結しました。さらに高千穂交易やサクサとの提携も行い、事業基盤を強化しています。

現在の従業員数は連結で297名、単体で30名体制となっています。筆頭株主は個人の津吹憲男氏で、第2位は事業会社の兼松エレクトロニクス、第3位は資本業務提携を締結している高千穂交易です。複数の事業会社と提携関係を構築しながら、独自の事業ポートフォリオを展開して業容の拡大に努めています。

氏名 持株比率
津吹 憲男 13.40%
兼松エレクトロニクス 5.00%
高千穂交易 5.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.0%です。代表取締役社長は鈴木達氏が務めています。取締役5名のうち、社外取締役は1名です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 達 代表取締役社長 日商岩井、アイ・ティー・エックス取締役等を経て2016年テリロジー入社。2025年より現職。
廣谷 慎吾 取締役副社長情報開示担当 日商岩井などを経て2019年テリロジー入社。2024年より現職。
阿部 昭彦 取締役相談役 高千穂交易などを経て1989年テリロジー入社。同社代表取締役社長等を経て2025年より現職。
甲賀 武 取締役 日商岩井などを経て2021年テリロジー入社。2025年より現職。


社外取締役は、尾髙雅美(元ウィザーズ国際法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ネットワーク部門」、「セキュリティ部門」、「ソリューションサービス部門」の事業を展開しています。

ネットワーク部門


ルータ、スイッチ、無線LAN等のネットワーク製品の販売や、企業内情報通信システムの設計・構築を提供しています。また、自社グループ開発製品によるネットワーク運用・監視機器やクラウド性能監視サービスを提供するとともに、納入製品の保守業務を24時間365日体制で行っています。

収益源はネットワーク関連製品の販売代金やプロフェッショナルサービスの提供料、保守サービス料などです。事業の運営は主にテリロジーが担っており、顧客のニーズに最適なネットワークインフラの設計から構築、運用管理までを包括的に支援しています。

セキュリティ部門


サイバー攻撃や情報漏えい対策として、サイバー脅威情報の提供やネットワークセキュリティ製品、認証基盤、ワンタイムパスワード製品などの販売・構築を行っています。また、トラフィックデータの収集・分析を行う自社製品やログ管理クラウドサービスの提供も展開しています。

収益源はセキュリティ製品やシステムの販売代金、クラウドサービスの利用料、および納入機器の保守サービス料などです。運営はテリロジーやコンステラセキュリティジャパンが行っており、官公庁や大手企業向けを中心に高度なセキュリティソリューションを提供しています。

ソリューションサービス部門


業務効率化やDX推進に向けたソフトウェアやサービスを提供しています。多言語映像通訳サービスや自社開発のRPAツール、ウェブ会議サービス、VPNサービスのほか、訪日インバウンドメディアを活用したプロモーション事業やコンタクトセンター向け音声関連サービスを展開しています。

収益源はソフトウェアの販売代金、クラウドサービスの利用料、システム開発・運用のアウトソーシング料などです。事業の運営はテリロジーサービスウェア、IGLOOO、クレシード、ログイットなどの各グループ会社が担当し、多様な顧客課題の解決を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、直近では100億円を突破するなど順調に事業規模を拡大しています。経常利益も増減を伴いながら水準を切り上げており、利益率も改善傾向にあります。全体として着実な成長と収益力の向上が見受けられます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 57億円 69億円 87億円 106億円
経常利益 1億円 4億円 3億円 7億円
利益率(%) 2.2% 5.8% 3.8% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.4億円 -0.5億円 2億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しており、売上総利益率は安定して推移しています。さらに、コストコントロールや増収効果により営業利益は大きく伸びており、本業の稼ぐ力を示す営業利益率も改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 87億円 106億円
売上総利益 28億円 34億円
売上総利益率(%) 32.2% 32.1%
営業利益 3億円 5億円
営業利益率(%) 3.4% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比34%)、支払手数料が4億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


全事業部門において増収を達成しています。特にセキュリティ部門はOT/IoTセキュリティの需要拡大により大きく伸び、ソリューションサービス部門もインバウンド関連の通訳サービスなどが好調に推移し、事業全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ネットワーク部門 17億円 18億円
セキュリティ部門 34億円 44億円
ソリューションサービス部門 36億円 44億円
連結(合計) 87億円 106億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金を元に、借入も活用しながら積極的な投資を行っている状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.9%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -0.5億円 19億円
投資CF -2億円 -11億円
財務CF 0.5億円 7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「デジタルの力で現場課題と社会課題を解決する」というミッションを掲げています。デジタル社会の変化に自ら対応・進化し、顧客が求める最適で的確なソリューションとサービスを提供し続けられる「テクノロジーオーガナイズ企業グループ」を目指し、世界の先進的な技術の発掘と導入に挑戦しています。

(2) 企業文化


同社は、「学習する組織」と「挑戦する組織」の特性を活かした組織文化を重視しています。合理的な最新技術動向の予見と分析に基づき、果敢に挑戦する姿勢を大切にしています。独自の工夫によって市場から認知され、社会から信頼されるソリューションとサービスを絶えず創出し続けることを行動の基盤としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するため、時価総額の拡大を重要指標としています。新たに策定した2026年度から2028年度までの新中期経営計画では、初年度となる2026年度において以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:122億円
* 営業利益:6.6億円
* 経常利益:7.2億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:4.3億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「長期的な利益を実現する持続性のある事業ポートフォリオの育成と、未来を創る新たなポートフォリオの獲得」を基本方針としています。経営リソースを「既存コア事業戦略」「成長事業戦略」「次世代挑戦事業戦略」の3つの柱に集中させ、グループ経営基盤の強化と新陳代謝を図ります。また、AI機能のセキュリティ商材への実装など、技術戦略も推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」が最大の資本であるとの認識のもと、グループ人事本部を中心に人的資本経営を推進しています。人材育成方針として、自律的な成長を支援する教育投資の拡充やタレントマネジメントシステムの導入を進めています。また、挑戦が報われる評価・報酬制度の刷新や健康経営の推進により、活き活きと働ける環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.6歳 2.5年 5,541,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 72.37%
男女賃金差異(正規雇用) 72.66%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.91%


※対象は主要な連結子会社であるテリロジーの数値です。男性労働者の育児休業取得率は、当該年度に該当者がいなかったため「-」としています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(74.2%)、全体離職率(5.52%)、有給休暇取得率(78.75%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 生成AI等の技術革新と品質管理


取扱製品の分野では技術革新が速く、生成AIを活用した開発の普及により、ベンダーのリリースサイクルの短縮や十分な検証を経ないソフトウェアの投入が懸念されています。これにより、更新対応や不具合対応工数の増加が生じ、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 高度な技術者の確保と育成


セキュリティやネットワークインフラの設計・運用・保守等において、高度な技術者の確保が重要です。しかし当該分野の需給は逼迫しており、必要な技術者を十分に確保できない場合、プロジェクトの遅延や品質低下、外注費の増加が生じるリスクがあります。

(3) 為替変動による仕入価格の上昇


主に米国や欧州の海外メーカー製品を輸入・購入しており、外貨建て仕入の割合が高くなっています。為替変動に備えた方策を講じていますが、予想を超える円安が進行した場合、円換算による仕入価格が上昇し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) サイバー攻撃によるシステム障害と情報漏えい


顧客へセキュリティ対策を提供する一方、自社の情報システム等もサイバー攻撃の対象となる可能性があります。ランサムウェア攻撃等による被害が発生した場合、サービスの停止や情報漏えい、損害賠償が生じ、社会的信用の失墜を招く恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。