スカイマーク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スカイマーク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。国内線を中心とした航空運送事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、旅客需要の回復により事業収益1,089億円と過去最高を更新して増収となりましたが、為替差損の計上や費用増加などの影響により経常利益8億円、当期純利益21億円の減益となりました。


※本記事は、スカイマーク株式会社 の有価証券報告書(第29期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スカイマークってどんな会社?


羽田空港の国内線発着枠を保有し、大手航空会社とLCCの中間に位置する「第三極」として適正運賃を提供する航空会社です。

(1) 会社概要


1996年11月に設立され、1998年9月に羽田-福岡線へ就航しました。2000年5月に東証マザーズへ上場し、その後市場変更を行いましたが、2015年1月に民事再生手続を開始し上場廃止となりました。2015年9月の再生計画認可を経て経営再建を進め、2022年12月に東証グロース市場へ再上場を果たしました。

同社の従業員数は2,661名(単体)です。筆頭株主は鈴与グループの投資事業組合で、第2位は大手航空会社のANAホールディングスです。

氏名 持株比率
鈴与スカイ・パートナーズ投資事業有限責任組合 13.03%
ANAホールディングス 12.96%
鈴与スカイ・パートナーズ2号投資事業有限責任組合 5.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長執行役員は本橋学氏です。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
本橋 学 代表取締役社長執行役員 1999年日本興業銀行入行。2005年同社入社。経営企画室長、専務等を経て2024年6月より現職。
佐藤 善信 代表取締役専務執行役員 1982年運輸省入省。航空局長、運輸総合研究所理事長等を経て2025年6月より現職。
荒牧 秀知 取締役専務執行役員 1988年全日本空輸入社。同社執行役員、ANAホールディングス執行役員等を経て2023年6月より現職。
草薙 邦雄 取締役常務執行役員 1987年全日本空輸入社。ANAエアロサプライシステム社長等を経て2025年6月より現職。
桐山 毅 取締役常務執行役員 1986年日本開発銀行入行。日本政策投資銀行執行役員、価値総合研究所社長等を経て2025年6月より現職。
髙木 敬介 取締役執行役員 1996年航空自衛隊入隊。2003年同社入社。東京空港支店長、執行役員等を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、米正剛(弁護士)、豊島勝一郎(株式会社清水銀行取締役会長)、三輪德泰(鈴与株式会社参与)、浅井伸祐(鈴与株式会社取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「航空運送事業」および「附帯事業」を展開しています。

(1) 航空運送事業


羽田空港や神戸空港、福岡空港、那覇空港などを拠点として、国内主要都市を結ぶ定期便を運航しています。2025年3月31日現在、12空港・23路線・1日当たり156便を運航し、全路線でボーイング737-800型機を使用しています。また、国内外へのチャーター便も運航しています。

旅客および貨物の運送対価を主な収益源としています。運営はスカイマークが行っており、羽田空港発着路線が高い収益性を支えています。単一機材での運航による効率化や、手荷物預かり無料などの付加価値サービスを提供することで、競争力を確保しています。

(2) 附帯事業


航空運送に関連する周辺サービスや、機内および空港での物品販売などを展開しています。具体的には、予約変更・キャンセルサービス、手荷物・ペット受託サービスなどが含まれます。

顧客からの手数料や商品購入代金を収益源としています。また、機内誌や機内サービスを活用した広告枠の販売、フライトシミュレーターや地上作業車両の貸し出しなども行っており、運営はスカイマークが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、コロナ禍の影響を受けた大幅な赤字状態から回復し、黒字化を達成しています。2023年3月期以降は黒字を維持していますが、直近の2025年3月期は増収ながらも減益となり、利益率は低下しました。売上高(事業収益)は回復傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
事業収益 341億円 471億円 847億円 1,041億円 1,089億円
経常利益 -296億円 -151億円 37億円 75億円 8億円
利益率(%) - - 4.4% 7.2% 0.7%
当期純利益 -163億円 -67億円 57億円 30億円 21億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高(事業収益)は増加しましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。事業費(売上原価相当)や販管費の増加により利益率が低下し、営業利益率は4.5%から1.7%へと推移しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,041億円 1,089億円
売上総利益 107億円 87億円
売上総利益率(%) 10.3% 8.0%
営業利益 47億円 18億円
営業利益率(%) 4.5% 1.7%


事業費(売上原価相当)のうち、燃料費・燃料税が317億円(構成比32%)、給与手当等(航行・整備・運送・空港管理合計)が170億円(同17%)、航空機材リース料が120億円(同12%)を占めています。円安やインフレによる燃料費等の増加が利益を圧迫しました。

(3) セグメント収益


同社は航空事業の単一セグメントですが、サービス区分ごとの収益状況を確認します。主力の航空運送事業収入、附帯事業収入ともに前期比で増加しており、特に旅客需要の堅調な推移が増収に寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
航空運送事業 1,014億円 1,061億円
附帯事業 27億円 28億円
連結(合計) 1,041億円 1,089億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 82億円 72億円
投資CF -22億円 -50億円
財務CF -23億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「安全を全ての基礎とし、安心かつ高品質で、シンプルでありながら心のこもった快適な航空サービスを、身近な価格で提供する」をミッションとして掲げています。また、「なくてはならない愛される翼として成長し続け、誰もが気軽に移動できる未来を創造する」というビジョンを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「スカイマークらしさ」「航空のプロフェッショナルとしての誇り」「挑戦・変化するマインド」「人の尊重」を価値観(バリュー)として定めています。また、行動指針として「お客様や地域への優れた価値提供」「共創・協働」「主体性をもった価値ある正しい仕事」を掲げ、全役職員での共有を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営目標において、2029年度に向けた数値目標を設定しています。変化する競争環境下でも安定的に利益を確保できる体制を目指しています。

* 事業収益:1,700億円以上
* 営業利益:120億円程度
* 自己資本比率:40%程度

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、燃費効率の良い新機材(ボーイング737-8型機および737-10型機)への更新と増機を進め、事業規模の拡大とコスト削減を図る方針です。また、羽田空港や福岡空港、神戸空港の発着枠拡大や再配分を見据え、運航便数の増加と収益性向上を目指します。財務面では、利益創出による自己資本比率の向上と財務基盤の強化を重要課題としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最も重要な経営資源と捉え、多様性を尊重し広く人材を確保する方針です。入社後は専門スキルの教育訓練に加え、階層別研修などを通じて能力開発を支援しています。また、「キャリアチャレンジ制度」による自律的なキャリア形成の支援や、エンゲージメント調査に基づく職場環境の改善に取り組み、多様な人材が活躍できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.5歳 8.8年 5,778,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 19.0%
男性労働者の育児休業取得率 102.6%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 48.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 47.7%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 52.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 発着枠の確保と変動リスク


同社は羽田空港発着路線を中核としていますが、同空港の発着枠は航空法の特例適用を受けています。将来の発着枠再配分等の際、利用可能な発着枠が減少した場合や想定通りに増加しなかった場合、または既存発着枠の活用が計画通りに進まない場合、事業計画や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 燃料費等の変動リスク


燃料費は営業費用の相当部分を占めるため、原油価格や為替相場の変動による影響を大きく受けます。燃油サーチャージ制度を導入していないため、燃料価格高騰時のコスト増を運賃転嫁で吸収できない場合や、急激な価格変動に対してヘッジ取引で十分に対応できない場合、経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

(3) 競争環境の激化


LCCや大手航空会社との競合に加え、新幹線や高速バスなどの地上交通機関とも競合関係にあります。競合他社の運賃戦略により競争が激化した場合や、消費者の嗜好変化、地上交通へのシフトなどが進んだ場合、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) 航空機材の導入と依存リスク


航空機の調達をボーイング社およびリース会社に依存しているため、納入遅延やサポート不備が生じた場合、事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。特に、予定している新型機材の導入において、認証取得の遅れやメーカー側の事情による遅延が発生すると、機材計画の変更を余儀なくされ、中長期的な事業展開に支障をきたす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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