スカイマーク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スカイマーク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スカイマークは東京証券取引所グロース市場に上場する国内航空会社です。羽田空港を主要拠点とし、身近な価格で快適な航空サービスを提供する旅客運送事業と附帯事業を展開しています。直近の業績では、堅調な旅行需要を背景に単価と旅客数のバランスを最適化し、事業収益は過去最高を更新、大幅な経常増益を達成しました。


※本記事は、スカイマークの有価証券報告書(第30期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スカイマークってどんな会社?


羽田空港を主要拠点に、適正な運賃で質の高い航空運送サービスを提供する国内航空会社です。

(1) 会社概要


1996年に適正な運賃の提供を理念に設立され、1998年に羽田-福岡線で初就航しました。2000年の上場後、2015年に民事再生手続開始の申立てを行いましたが、2016年に同手続を終結しました。その後、財務基盤の強化を進め、2022年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。

現在の従業員数は単体で2,738名です。筆頭株主は鈴与グループの鈴与スカイ・パートナーズ投資事業有限責任組合で、第2位は事業提携先であるANAホールディングス、第3位は鈴与ホールディングスとなっており、物流や航空事業を展開する企業群と強い資本関係を持っています。

氏名 持株比率
鈴与スカイ・パートナーズ投資事業有限責任組合 13.05%
ANAホールディングス 12.97%
鈴与ホールディングス 6.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長執行役員は本橋学氏が務めています。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
本橋 学 代表取締役社長執行役員 1999年日本興業銀行入行。2005年同社入社、経理部長等を経て一度退社。三井住友ファイナンス&リースを経て再入社し、専務等を経て2024年より現職。
佐藤 善信 代表取締役専務執行役員 1982年運輸省入省。観光庁次長、航空局長、運輸総合研究所理事長などを歴任。2023年同社社外取締役に就任し、2025年より現職。
荒牧 秀知 取締役専務執行役員 1988年全日本空輸入社。業務プロセス改革室企画推進部長等を歴任後、ANAシステムズ代表取締役社長に就任。全日本空輸執行役員等を経て2023年より現職。
草薙 邦雄 取締役常務執行役員 1987年全日本空輸入社。ANAウイングス取締役、ANAエアロサプライシステム代表取締役社長などを経て2024年に同社シニアアドバイザー。2025年より現職。
桐山 毅 取締役常務執行役員 1986年日本開発銀行入行。日本政策投資銀行執行役員企業投資部長、DBJアセットマネジメント取締役会長、日本経済研究所代表取締役専務などを経て2025年より現職。
髙木 敬介 取締役執行役員 1996年航空自衛隊入隊。2000年JAL航空機整備成田入社。2003年同社入社。技術部長、東京空港支店長等を経て2020年執行役員。2024年より現職。


社外取締役は、米正剛(弁護士)、豊島勝一郎(元清水銀行頭取)、三輪德泰(元兼松社長)、浅井伸祐(鈴与ホールディングス社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、航空事業の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 旅客運送事業


羽田空港を主要拠点とし、北は北海道から南は沖縄・宮古島まで全国12空港・23路線で1日158便の定期航空運送事業を展開しています。また、国内外への不定期旅客(チャーター)便も運航しており、一般の旅行者やビジネス目的に向けて、安全で快適な移動手段を広く提供しています。

収益は、顧客が支払う航空券の運賃から得ています。同社は保有・運用コストを抑えられる小型機を戦略的に運用し、収益性の高い羽田空港発着路線に集中することで高水準の運航品質と身近な価格を両立させています。当該事業の運営は同社が単独で行っています。

(2) 附帯事業


航空機での旅客運送に付随する多様なサービスを提供しています。予約のキャンセルや変更サービス、手荷物・ペットの受託サービスのほか、機内誌や機内サービスを活用した広告枠の販売、機内でのオリジナルグッズの販売、他社への模擬操縦訓練装置(シミュレーター)や地上作業車両の貸し出しなどを行っています。

収益は、搭乗客からの各種手数料や物品購入代金、広告主からの広告掲載料、他航空会社からの設備賃貸料などから得ています。旅客運送の周辺で付加価値を提供し、顧客満足度を高めながら収益源の多様化を図っています。こちらの運営も同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、旅行需要の落ち込みから着実に回復し、堅調な成長を遂げています。旺盛な需要を背景とした運賃単価の最適化により事業収益は右肩上がりで拡大し、直近では過去最高を記録しました。経常利益も継続的に黒字を計上しており、コスト増や為替変動の影響を受けつつも安定した収益基盤を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 471億円 847億円 1,041億円 1,089億円 1,104億円
経常利益 -151億円 37億円 75億円 8億円 29億円
利益率(%) -32.0% 4.4% 7.2% 0.7% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -67億円 57億円 30億円 21億円 16億円

(2) 損益計算書


売上高は需要回復と単価見直しの効果により順調に増加しています。一方で、円安や世界的インフレに伴う燃料費の高騰などがあり、事業費は増加傾向にあります。増収効果により売上総利益は改善しているものの、販売費及び一般管理費も増加した結果、営業利益は横ばいの水準で推移しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,089億円 1,104億円
売上総利益 87億円 93億円
売上総利益率(%) 8.0% 8.4%
営業利益 18億円 18億円
営業利益率(%) 1.7% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が13億円(構成比18%)、給料及び手当が13億円(同18%)、業務委託費が11億円(同14%)を占めています。事業費(売上原価に相当)では、燃料費・燃料税が311億円(同31%)、航空機材リース料が115億円(同11%)、空港使用料が89億円(同9%)と大きなウェイトを占めています。

(3) セグメント収益


同社は航空事業の単一セグメントであるため、全社の収益状況を示しています。戦略的な単価設定により有償旅客数は前年比で微減となったものの、レベニューマネジメントの高度化や附帯収入の拡大策が奏功し、事業全体としては増収を達成しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
航空事業 1,089億円 1,104億円 18億円 18億円 1.6%
連結(合計) 1,089億円 1,104億円 18億円 18億円 1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなる「積極型」です。本業で安定的な現金を創出しつつ、省燃費の新機材導入などに向けた投資を積極的に行い、その資金を借入等で調達して成長を加速させています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 72億円 116億円
投資CF -50億円 -193億円
財務CF -29億円 57億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「安全を全ての基礎とし、安心かつ高品質で、シンプルでありながら心のこもった快適な航空サービスを、身近な価格で提供する」というミッションを掲げています。さらに、ビジョンとして「なくてはならない愛される翼として成長し続け、誰もが気軽に移動できる未来を創造する」ことを目指し、社会の持続的な発展に貢献する方針です。

(2) 企業文化


「他にはない価値の源泉である『独自性』『ユニークさ』『唯一無二』を大事にします」「プロフェッショナル集団として成長し、その成果を未来への投資や社員、ステークホルダー、社会への還元に繋げ、さらなる成長に向けた好循環を作り出します」「新たな挑戦や変化を恐れずに楽しみます」「サービス提供者である社員、そして事業にかかわる全ての人を尊重します」という4つの価値観(Value)を共有しています。

(3) 経営計画・目標


安定した需要が見込まれる羽田空港発着路線を中心に、高水準の運航品質と心のこもったサービスを身近な価格で提供し、収益の安定的な確保を図ります。2030年度に向けた中期経営目標として、以下の数値を掲げています。

* 事業収益:1,690億円以上
* 営業利益:140億円程度
* 自己資本比率:40%程度

(4) 成長戦略と重点施策


省燃費なボーイング737-8型機や座席数の多い737-10型機の導入を進め、運航コストの削減と収益性の向上を目指します。また、福岡空港や神戸空港の発着枠拡大、羽田空港の発着枠再配分を好機と捉え、有償旅客数の拡大を図ります。DXの推進によるマーケティング強化や顧客体験の向上を通じて、「Value for Money(VFM)トップの航空会社」であり続けることを注力領域としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員を価値創出の源泉と位置づけ、DE&I推進のもと多様な人材の獲得と育成に注力しています。業務に直結する専門スキルや階層別研修により自律的な学びを支援し、適材適所の配置を促す「キャリアチャレンジ制度」や「コース別人材マネジメント」を導入しています。また、独自の育児支援制度やエンゲージメント向上策を通じ、働きがいのある職場環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.5歳 9.0年 5,932,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.7%
男性育児休業取得率 109.1%
男女賃金差異(全労働者) 48.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 47.9%
男女賃金差異(有期雇用労働者) 45.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、運航乗務員(正規雇用)の男女賃金差異(55.9%)、その他の職種(正規雇用)の男女賃金差異(63.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 航空機事故や災害による運航停止


航空機事故や重大インシデント、大規模な自然災害等が発生した場合、人的・物的損害に加え、社会的評価の低下や損害賠償、行政処分による運航停止を招く可能性があります。特に羽田空港など主要拠点の施設障害は運航ダイヤに甚大な影響を与え、減収や復旧費用の発生により業績を大きく圧迫する恐れがあります。

(2) 燃料価格の高騰と為替の変動


事業費用の大部分を占める航空燃料価格は原油相場に連動するため、地政学的リスクによる急騰が収益に直結します。また、航空機リース料や整備費などの支払いは外貨建てで行われるため、急激な円安進行はコスト負担を増大させ、業績や財務状況に深刻な悪影響を及ぼすリスクを抱えています。

(3) 専門人材の不足と労働争議


操縦士や整備士など航空法に基づく国家資格を持つ専門人材の確保が難航した場合、路線の維持や事業拡大に制約が生じます。自社養成には長期の教育期間を要するため機動的な増員が困難であり、人手不足や労働争議によるストライキが発生した際には運航に支障をきたし、経営成績に波及する可能性があります。

(4) 激化する競争環境と発着枠の制約


国内線において大手航空会社やLCC(格安航空会社)、新幹線等の地上交通機関との顧客獲得競争が激化しています。価格競争で市場シェアが低下するリスクに加え、事業の根幹である羽田空港等の発着枠が政策的に削減されたり、計画通りに獲得できなかった場合、収益性や事業計画の達成に多大な影響を及ぼします。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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