大栄環境 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大栄環境 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の同社は、廃棄物処理・資源循環を中心とした環境関連事業を展開しています。廃棄物の収集運搬から中間処理、最終処分までを一貫して行うワンストップサービスが強みです。2025年3月期は、インフラ開発案件の獲得や高単価廃棄物の受入が堅調で、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社大栄環境 の有価証券報告書(第46期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大栄環境ってどんな会社?


廃棄物の収集運搬からリサイクル、最終処分までを一貫して行う総合環境企業です。関西・中部・関東を中心に事業を展開しています。

(1) 会社概要


1979年に設立され、翌年には管理型最終処分場を開設し収集運搬事業を開始しました。1986年に中間処理・再資源化事業へ進出し、事業基盤を拡大しました。2022年12月には東証プライム市場へ上場を果たしています。近年はM&Aを積極的に推進し、2024年以降も複数の企業を連結子会社化するなど、事業エリアの拡大を続けています。

連結従業員数は2,309名、単体では1,113名です。筆頭株主は代表取締役社長執行役員である金子文雄氏の資産管理会社であるウイングトワ株式会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業家に関連する株主が過半数の株式を保有しており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
ウイングトワ 62.33%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.86%
日本カストディ銀行(信託口) 2.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表者は代表取締役社長執行役員の金子文雄氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
金子 文雄 代表取締役社長執行役員 1979年有限会社大栄衛生入社。関連会社の役員を経て2004年大栄環境代表取締役副社長、2007年同社長就任。2024年6月より現職。
大田 成幸 取締役専務執行役員 1996年健裕開発入社。三重中央開発取締役等を経て2007年大栄環境常務取締役。2021年専務取締役、2024年6月より現職。事業・技術担当。
大仲 一正 取締役常務執行役員 1989年三重中央開発入社。同社取締役営業部長等を経て2010年大栄環境取締役営業部長。2021年常務取締役、2024年6月より現職。営業本部長。
峯森 章 取締役常勤監査等委員 1975年住友銀行入行。同行西宮法人部長、びわこ銀行常務取締役、日東薬品工業取締役等を歴任。2020年大栄環境監査役を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、村上知子(アーカス総合法律事務所パートナー)、村井一雅(村井公認会計士事務所代表)、北嶋紀子(フェニックス法律事務所共同代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「環境関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 環境関連事業


主力の「廃棄物処理・資源循環」では、産業廃棄物および一般廃棄物の収集運搬、中間処理・再資源化、最終処分までを自社施設群で完結するワンストップサービスを提供しています。また、土壌汚染の調査から浄化処理を行う「土壌浄化」、ごみ処理施設の建設・運営を行う「施設建設・運営管理」、廃棄物由来のエネルギー供給を行う「エネルギー創造」なども展開しています。

これらの事業における収益は、主にメーカーやゼネコン、医療機関、自治体などの排出事業者から受け取る処理委託料や、施設運営の委託料、売電収入などから構成されています。運営は、大栄環境を中心に、三重中央開発、DINS関西、共同土木などの連結子会社が各エリアや専門分野を担当し、グループ全体で連携して行っています。

(2) その他


「有価資源リサイクル事業」ではアルミペレットやリサイクルプラスチックパレットの製造販売を行い、「スポーツ振興事業」では女子プロサッカーチームの運営を行っています。これらは環境関連事業の周辺領域や地域貢献の一環として位置づけられています。

収益は、再生製品の販売代金やスポンサー収入などが主となります。有価資源リサイクル事業は大栄環境や連結子会社のプラファクトリーなどが、スポーツ振興事業は連結子会社のアイナックフットボールクラブが運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、事業規模の拡大が続いています。経常利益も売上の伸長に伴い増加傾向にあり、利益率も20%台後半の高い水準を維持しています。特に直近では800億円台の売上高に到達し、安定した成長性と収益性を両立しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 616億円 650億円 677億円 730億円 802億円
経常利益 142億円 133億円 167億円 206億円 215億円
利益率(%) 23.0% 20.5% 24.7% 28.2% 26.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 109億円 76億円 91億円 90億円 88億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、利益率は横ばいで推移しています。営業利益は増益を確保し、営業利益率も26.9%と高い水準を保っています。事業拡大に伴うコスト増を売上増で吸収し、効率的な経営が継続されていることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 730億円 802億円
売上総利益 318億円 349億円
売上総利益率(%) 43.5% 43.6%
営業利益 197億円 215億円
営業利益率(%) 27.0% 26.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が40億円(構成比30%)、賞与引当金繰入額が5億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の環境関連事業は、インフラ開発案件の獲得や高単価廃棄物の受入が堅調で増収増益となりました。「その他」セグメントでは、アルミ市況の高騰やスポーツ振興事業のスポンサー収入計上により大幅な増収となりましたが、原材料価格の上昇等により利益面では損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
環境関連事業 710億円 775億円 201億円 219億円 28.3%
その他 20億円 27億円 -2億円 -2億円 -8.4%
調整額 - - -2億円 -1億円 -
連結(合計) 730億円 802億円 197億円 215億円 26.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得たキャッシュを借入返済に充てつつ、将来の成長に向けた投資も手元資金等で賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 217億円 230億円
投資CF -156億円 -190億円
財務CF -76億円 -35億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「われわれは、創造・改革・挑戦の信念をもって、人間生活・産業・自然との共生を目指し、社会に貢献します。」という経営理念を掲げています。また、「事業の永続性を高め、環境創造企業として進化する」という経営ビジョンのもと、サステナブルな未来社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


創業の原点である「未来は、信頼から生まれる。」をサステナビリティ基本方針としています。これを実現するための組織行動として「DINSステートメント」を制定しており、「Development(進化)」「Integrity(誠実)」「Nature(自然)」「Social contribution(社会貢献)」の4つを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期までの中期経営計画「D-Plan2028」を策定しています。これは2031年3月期までの長期ビジョンに向けた前半の3か年計画と位置付けられており、オーガニック成長とM&Aの両輪で事業拡大を目指しています。

* 売上高年平均成長率(CAGR):5〜6%成長(2022年〜2025年3月期実績は7.3%)
* 営業利益率:20%程度(2025年3月期実績は26.9%)
* EBITDAマージン:30%以上(2025年3月期実績は34.7%)

(4) 成長戦略と重点施策


資源循環システムの高度化により、再資源化品の供給量拡大や最終処分場の高付加価値化を進めます。また、自治体との連携を深め、取引自治体数の拡大や公民連携事業(PPP)を推進します。さらに、関東エリアを中心としたM&Aによる事業エリアの拡大や、焼却施設の能力増強、最終処分場の残容量確保等の成長投資を継続します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のため「人的資本経営」を推進しています。多様な人材が誇りと使命感を持って働ける土壌づくりを目指し、人材育成、多様性の推進、社内環境整備に取り組んでいます。特に施設の新増設やM&Aによる成長に対応するため、管理者や有資格者の育成・採用を強化し、従業員エンゲージメントの向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.0歳 9.0年 5,758,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.6%
男女賃金差異(正規雇用) 74.7%
男女賃金差異(非正規) 58.0%


※上記は提出会社(単体)のデータです。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新卒採用比率(33.3%)、有給休暇取得率(74.9%)、定年退職者の再雇用率(80.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 費用の増加について


事業運営において人件費や燃料、電力、薬剤等の費用が大きな割合を占めています。労働人口減少による人件費の高騰や、地政学的要因・為替変動による燃料価格の上昇等は、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。特にこれらコスト増を適時に処理受託価格へ転嫁できない場合、収益性が低下するリスクがあります。

(2) 労働災害の発生リスク


廃棄物の収集運搬や処理施設の運営には、事故や設備トラブルによる労働災害のリスクが内在しています。安全対策や教育を徹底していますが、万が一重大な事故が発生した場合、損害賠償責任や施設の操業停止、社会的信用の低下を招き、事業や経営成績に多大な影響を与える可能性があります。

(3) 危険を伴う廃棄物の取扱い


可燃性廃棄物や特別管理廃棄物を取り扱っているため、火災等の事故や不適切な処理による法令違反のリスクがあります。これらが発生した場合、業務停止命令や許認可の取消し等の行政処分を受ける可能性があり、社会的信用の失墜とともに事業継続に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。

(4) 競合他社との競争激化


廃棄物処理業界は多数の中小事業者が存在し、地域ごとの競争があります。今後、大手による再編や異業種からの参入、あるいは既存業者の事業拡大により競争環境が変化する可能性があります。価格競争の激化や、他社によるワンストップサービスの拡充等により競争優位性が低下した場合、顧客維持や新規獲得が困難になるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。