※本記事は、株式会社GENOVAの有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. GENOVAってどんな会社?
医療情報メディアの運営と医療現場の効率化サービス、歯科流通事業を展開する医療系IT企業です。
■(1) 会社概要
2005年にウェブコンテンツ開発会社として設立されました。2017年に医療情報サイト「Medical DOC」および自動精算機等のスマートクリニック関連サービスを開始しています。2022年に東京証券取引所グロース市場へ上場し、2024年にプライム市場へ区分変更しました。2025年には子会社のASANOを設立し事業譲受により歯科流通事業を開始しています。
従業員数は連結で529名、単体で415名です。筆頭株主は創業者の平瀬智樹氏で、第2位は平瀬氏の資産管理会社である平瀬商店、第3位には事業会社のEPARKが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 平瀬 智樹 | 32.32% |
| 平瀬商店 | 7.69% |
| EPARK | 6.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は平瀬智樹氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平瀬 智樹 | 代表取締役社長 | 1997年テレウェイヴ入社。2001年テレウェイヴリンクス常務取締役を経て、2005年に同社設立し代表取締役社長。ASANO代表取締役などを兼任 |
| 武田 幸治 | 取締役執行役員 | 2007年監査法人トーマツ入所。2018年同社入社、取締役財務経理部長などを経て2026年より取締役執行役員財務経理部長 |
| 井上 祥 | 取締役執行役員 | 2009年横浜労災病院初期研修医。メディカルノート代表取締役などを経て、2025年同社入社し事業推進室長として現職 |
社外取締役は、提橋由幾(元メディシス代表取締役)、佐藤有紀(元ホワイト&ケース法律事務所)、佐野哲哉(元フリービット取締役CFO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「メディカルプラットフォーム事業」「スマートクリニック事業」「歯科流通事業」「DX事業」および「その他」事業を展開しています。
■メディカルプラットフォーム事業
医師が監修する医療情報記事や著名人の闘病体験などを配信する自社メディア「Medical DOC」および特化型メディアを運営しています。正しい健康知識を求める利用者と、自院の特長から患者を集めたい医療機関の双方を顧客としています。
自社メディアへ医療機関の紹介記事を掲載するための有料記事制作を請け負うことで収益を得ています。運営は同社および連結子会社のGENOVA DESiGNが担当しています。
■スマートクリニック事業
医療機関向けにスマート簡易自動精算機・再来受付機「NOMOCa-Stand」やスマートレジ「NOMOCa-Regi」、LINE連携予約の「CLINIC BOT」、AI自動応答の「NOMOCa AI chat」などを提供しています。
医療機関の受付業務の省力化や効率化に資する機器の販売およびソフトウェア関連サービスの契約から収益を得ています。運営は主に同社が担い、製造などは外部委託しています。
■歯科流通事業
歯科用CTや口腔内スキャナーなどの精密治療機器、予防・メンテナンス機器から消耗品まで、歯科医療用機器・器材・材料・薬品等の高付加価値領域の商材を歯科医療機関へ提供しています。
歯科医療現場への器材・薬品の卸売や、デジタル導入に伴うワークフロー再設計、保守・校正を含む長期契約などのソリューション提供により収益を得ています。運営は連結子会社のASANOが行っています。
■DX事業
医療・歯科現場向けにクラウド型のカルテサービス「カルテクラウド」や、予約完全自動化を実現する「クリニッククラウドGR」などのDXソリューションを提供しています。
医療機関の業務効率化と経営課題解決を支援するクラウド型システムの導入および利用料によってストック収益を得ています。運営は連結子会社のASANOなどが担当しています。
■その他事業
主に医療機関向けのWebサイト制作や、制作したWebサイトの運用保守、および予防医療等に関するサービスを提供しています。現在は新規開拓を控え、既存顧客の対応が中心です。
既存顧客からのWebサイト運用保守や追加修正の依頼に対する制作・管理費用から収益を得ています。運営は主に連結子会社のGENOVA DESiGNおよび智樹(大連)技術開発有限公司が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して右肩上がりで成長し、直近5期で約2.4倍に拡大しています。一方、利益面は順調に拡大していましたが、直近の期において人員の採用強化やM&Aに伴う事業譲受の実行などにより経常利益および当期利益が大幅な減益となり、利益率も低下しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 48億円 | 65億円 | 87億円 | 100億円 | 116億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 17億円 | 23億円 | 20億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 22.1% | 26.3% | 26.6% | 20.2% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 13億円 | 17億円 | 14億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加していますが、売上原価の増加により売上総利益が減少し、売上総利益率も大きく低下しています。営業利益も大幅に減少しており、事業の多様化に伴う収益構造の変化が見られます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 116億円 |
| 売上総利益 | 74億円 | 65億円 |
| 売上総利益率(%) | 73.7% | 55.9% |
| 営業利益 | 20億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 20.2% | 3.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が24億円(構成比40%)、販売促進費が7億円(同12%)を占めています。売上原価(51億円)の増加は、新たに追加された歯科流通事業の原価比率が高まったことが主な要因です。
■(3) セグメント収益
メディカルプラットフォーム事業は減収減益となりましたが、スマートクリニック事業はAIチャット等のニーズを捉え増収を確保しました。新たに加わった歯科流通事業が売上増に大きく寄与したものの、費用負担によりセグメント損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| メディカルプラットフォーム事業 | 63億円 | 50億円 | 31億円 | 18億円 | 35.4% |
| スマートクリニック事業 | 32億円 | 34億円 | 6億円 | 6億円 | 16.5% |
| 歯科流通事業 | - | 24億円 | - | -1億円 | -5.9% |
| DX事業 | - | 3億円 | - | 1億円 | 27.3% |
| その他 | 6億円 | 5億円 | 1億円 | 1億円 | 20.6% |
| 連結(合計) | 100億円 | 116億円 | 20億円 | 4億円 | 3.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 2億円 |
| 投資CF | -3億円 | -10億円 |
| 財務CF | -10億円 | 2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループのミッションは、「ヒトと医療をつないで健康な社会を創る」です。利用者(患者)が抱える健康や治療への不安と、医療従事者が直面する待ち時間や受付・精算業務に対する不満の解消を図り、快適な医療体験を提供することで、健康な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは新たな行動規範として「チームドリブン(Team Driven)」を定義し、個の力だけでなくチームとして成果を上げることを重視した組織文化の醸成を進めています。職種や部門を超えた協働による価値創出を促進し、挑戦する社員を適正に評価する文化を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期的な企業価値の最大化を目指し、売上高成長率と営業利益率を重要な指標としています。事業の進捗を図るため、セグメント別の年間契約件数の増加と、全国の医療機関に向けた営業力を示す「営業人員一人当たり売上高」の最大化を経営上の客観的な指標として位置付けています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の継続的な成長として、医療業界における顧客基盤の拡大と顧客単価の向上を掲げています。また、M&Aによる非連続的な成長や新規事業領域の創出、流通DXの推進によるサプライチェーンの強靭化に取り組みます。同時に、評価報酬制度の刷新による人的資本の強化を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材は資本である」との認識のもと、ミッションに共感し行動できる人材の採用・育成を重要課題としています。変化の激しい医療領域の専門知識を持つ多様な人材の確保に注力し、成果に報いる公正な評価報酬制度の構築や、OJTによる早期戦力化支援などの施策を展開しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 29.4歳 | 3.6年 | 5,269,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.8% |
| 男性育児休業取得率 | 25.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用者) | 70.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用者) | 107.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、過去の離職率(約18%)、今後の離職率目標(14%~16%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外部パートナーへの依存と製品供給リスク
スマートクリニック事業の主要製品である自動受付精算機の製造・保守において、特定の仕入先であるAPOSTROへの依存度が高くなっています。同社の受注状況や経営戦略の変化により、製品の供給量が減少したり供給が滞ったりした場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 医療業界への依存と法規制リスク
事業領域が医療・歯科業界に特化しており、医療制度や診療報酬の改定、薬機法および医療広告ガイドライン等の規制適用を受けています。法令改正への対応が遅れたり、記事コンテンツ等で不適切な表現による法令違反が発生した場合、社会的信用の失墜を招く恐れがあります。
■(3) 歯科流通事業における商品調達リスク
新たに参入した歯科流通事業において、地政学リスクや物流網の混乱に伴い、歯科材料や衛生用品等の供給が停滞するリスクがあります。仕入価格の急騰分を販売価格へ適時に転嫁できない場合、利益率の低下や機会損失につながる可能性があります。
■(4) 生成AIの普及による競争環境の変化
生成AI技術の急速な普及により、情報検索行動の変化や競合他社による低コストなサービス開発が進む可能性があります。また、AIが生成した医療情報の正確性や倫理的課題に対する適切なリスク管理が行われない場合、サービスの信頼性や市場競争力の低下を招く恐れがあります。



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