GENOVA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

GENOVA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

GENOVAは東証プライム上場の医療関連企業です。医療メディア「Medical DOC」を運営するメディカルプラットフォーム事業と、自動精算機等を提供するスマートクリニック事業を展開しています。2025年3月期は、主力メディアのPV数増加等により増収となる一方、人件費増や税負担増等により減益となりました。


※本記事は、GENOVA の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. GENOVAってどんな会社?


医療メディア「Medical DOC」の運営や、医療機関向け自動精算機等のシステム提供を行う企業です。

(1) 会社概要


同社は2005年に設立され、2017年に主力サービスとなる医療メディア「Medical DOC」および自動精算機「NOMOCa-Stand」の提供を開始しました。2022年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、その後2024年9月には東京証券取引所プライム市場へ市場区分を変更しています。

同グループの連結従業員数は408名(単体378名)です。筆頭株主は創業社長である平瀬 智樹氏で、第2位は平瀬社長の資産管理会社、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
平瀬 智樹 32.37%
平瀬商店 7.70%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.53%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は平瀬 智樹氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
平瀬 智樹 代表取締役社長 1997年テレウェイヴ入社。2005年7月に同社を設立し代表取締役社長に就任(現任)。平瀬商店代表取締役等を兼任。
上田 明尚 取締役執行役員 2010年JPモルガン証券入社。みずほ証券、クレディスイス証券を経て、2023年同社入社。2024年6月より現職。
武田 幸治 取締役執行役員 2007年監査法人トーマツ入所。2018年同社入社。管理本部長、上場準備室長などを経て、2023年9月より現職。


社外取締役は、提橋 由幾(データインデックス代表取締役社長CEO)、福井 元明(Wells Partners代表取締役)、鈴木 孝昭(弁護士法人MIA法律事務所パートナー弁護士)、三輪 綾子(THIRD CLINIC GINZA院長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディカルプラットフォーム事業」、「スマートクリニック事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) メディカルプラットフォーム事業


医師監修の医療情報記事や著名人の闘病体験記事などを掲載する自社メディア「Medical DOC」を運営しています。医療機関の検索機能なども提供し、正しい予防情報や健康知識を求める利用者と医療機関をつなぐプラットフォームとしての役割を担っています。

主な収益源は、医療機関から受け取る紹介記事の制作料や掲載料です。利用者が自分に合ったクリニックを選べるよう、医師の経歴や実績を紹介するコンテンツを提供しています。運営は主にGENOVAが行い、記事制作管理等はGENOVA DESiGNが担っています。

(2) スマートクリニック事業


医療機関(無床診療所)向けに、スマート簡易自動精算機・再来受付機「NOMOCa-Stand」やスマートレジ「NOMOCa-Regi」を販売しています。また、LINEを活用したCRMサービス「CLINIC BOT」やAIチャットボットなどのソフトウェアサービスも提供しています。

収益は、医療機関に対する機器の販売代金や、ソフトウェアサービスの利用料などから得ています。医療機関における受付・精算業務の省力化や効率化、患者の利便性向上を支援しています。運営は主にGENOVAが行っています。

(3) その他


主に医療機関向けのWebサイト制作や、制作したWebサイトの運用保守サービスを提供しています。現在は新規の顧客開拓を積極的に行わず、既存顧客からの運用保守や追加修正対応を中心としています。

収益は、Webサイトの制作費や運用保守費などです。運営はGENOVA、GENOVA DESiGN、および中国の開発拠点である智樹(大連)技術開発有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第16期から第20期にかけて一貫して右肩上がりで成長を続けており、約2.7倍の規模に拡大しました。利益面では第19期まで大幅な増益基調が続いていましたが、直近の第20期においては減益となり、利益率も低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 38億円 48億円 65億円 87億円 100億円
経常利益 8億円 11億円 17億円 23億円 20億円
利益率(%) 21.3% 22.1% 26.3% 26.6% 20.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 7億円 12億円 17億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し100億円台に到達しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加率が売上高の伸びを上回ったため、各段階利益は減少しました。特に営業利益率は低下しており、事業拡大に伴うコスト負担が増している様子がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 87億円 100億円
売上総利益 66億円 74億円
売上総利益率(%) 75.5% 73.7%
営業利益 23億円 20億円
営業利益率(%) 26.5% 20.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が21億円(構成比39%)、販売促進費が7億円(同14%)を占めています。積極的な採用活動による人件費増や、販売促進強化によるコスト増が利益を圧迫しました。

(3) セグメント収益


両セグメントともに売上高は増加しました。メディカルプラットフォーム事業はメディアPV数の増加により増収増益を達成しましたが、スマートクリニック事業は増収ながらも減益となりました。その他事業は売上・利益ともに減少傾向にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
メディカルプラットフォーム事業 54億円 63億円 30億円 31億円 50.2%
スマートクリニック事業 27億円 32億円 7億円 6億円 18.2%
その他 6億円 6億円 2億円 1億円 20.1%
調整額 - - -15億円 -18億円 -
連結(合計) 87億円 100億円 23億円 20億円 20.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金の一部を投資や財務活動(借入返済や自己株式取得等)に充てており、基本的なキャッシュ・フローのバランスは健全型と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 18億円 12億円
投資CF -1億円 -3億円
財務CF 4億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.9%でプライム市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.9%でプライム市場平均(非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ヒトと医療をつないで健康な社会を創る」をミッションに掲げています。医療情報の非対称性や医療現場での不便さ(待ち時間や事務作業等)といった不安と不満を、メディカルプラットフォーム事業とスマートクリニック事業を通じて解決することで、社会的責任を果たしながら企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、ミッション・ビジョンを体現する「GENOVAカルチャー」への共感を重視しています。2025年からは新たな行動規範として「チームドリブン(Team Driven)」を定義し、個人の力だけでなくチームとして成果を上げることを重視する組織文化の醸成を進めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上高成長率と営業利益率を重要な経営指標とし、セグメント別の年間契約件数の増加と営業人員一人当たり売上高の最大化を目指しています。2025年3月期の実績として、営業人員一人当たり売上高約3,893万円、メディカルプラットフォーム事業の年間契約件数4,900件などを計上しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、「クライアント基盤の更なる拡大」「契約件数の拡大」「人材の採用・育成」「新サービス・新事業の創出」の4項目に注力しています。特に、過去の顧客に対する再販の加速や、教育投資・採用投資によるサービス提供体制の強化、外部企業との提携も含めたサービスラインアップの拡充を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を企業価値の中核と位置づけ、医療領域の専門知識を持つ多様な人材の採用・育成に注力しています。営業部門ではHRBP機能を持つ教育体制を整備し、新卒・中途を問わずOJTで早期戦力化を図っています。また、評価・報酬制度の見直しや柔軟な働き方の推進により、従業員の定着とパフォーマンス最大化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 28.7歳 3.3年 595.6万円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.1%
男性育児休業取得率 4.3%
男女賃金差異(全労働者) 65.7%
男女賃金差異(正規雇用) 68.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 98.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(18%前後)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界への依存について


同社グループの事業は医療業界の広告市場およびシステム市場に依存しており、売上の多くを医療機関へのサービス提供が占めています。医療・健康産業は拡大が見込まれていますが、市場成長の停滞や縮小、市場動向への対応遅れが生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 競合について


メディカルプラットフォーム事業やスマートクリニック事業には類似サービスを提供する競合が存在します。同社は利用者目線での運営や他社システムとの連携性などで差別化を図っていますが、新規参入等により競争が激化した場合には、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人材の確保及び育成について


持続的な成長には専門知識を持つ人材が不可欠ですが、同社グループの平均勤続年数は5年に満たず、特に営業職の早期退職が課題となっています。採用競争の激化等により十分な人員確保や育成が進まない場合、事業遂行に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 特定の取引先への依存について


スマートクリニック事業の商品は、製造をAPOSTRO社(旧社名:新世紀)に委託しており、同社に依存しています。総販売代理店契約を締結し連携強化を図っていますが、同社の受注状況や経営戦略等により供給量減少や供給遅延が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。