日本ナレッジ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ナレッジ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所グロース市場に上場し、ソフトウエアのテスト・検証サービスを行う検証事業と、システム受託開発やパッケージソフト販売を行う開発事業を展開しています。直近の業績は、売上高が過去最高を更新して増収となった一方、人材投資や拠点開設等の先行投資により大幅な減益となりました。


※本記事は、日本ナレッジ株式会社の有価証券報告書(第40期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ナレッジってどんな会社?


同社は、システム開発のノウハウを活かしたソフトウエアの第三者検証サービスと、業務系システムの受託開発やパッケージ販売を主軸とする企業です。

(1) 会社概要


1985年に日本スペースソフトとして設立され、翌年現社名に近い商号へ変更しました。当初はパッケージ開発を主業としていましたが、2001年に検証事業を開始し、現在の主力事業へと成長させました。その後、地方拠点の開設やセキュリティ製品事業の譲受を経て拡大し、2023年に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

同社(単体)の従業員数は421名です。筆頭株主は、同社取締役が代表を務めるウィステリアトラストで、第2位は主要取引先でもある事業会社の大塚商会、第3位は従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
ウィステリアトラスト 43.30%
大塚商会 9.74%
日本ナレッジ従業員持株会 6.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は藤井洋一氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
藤井 洋一 代表取締役社長 1985年に日本スペースソフト(現日本ナレッジ)を設立し代表取締役に就任。IT検証産業協会会長などを歴任し、1988年より現職。
長谷川 貴志 取締役DX推進本部長 1989年に同社に入社。開発事業部技術部長、開発事業本部長、事業統括本部長などを経て2024年より現職。
青木 一男 取締役管理本部長 NECネッツエスアイにて経理部財務室長、監査部長等を歴任。キューアンドエー常勤監査役を経て2016年に同社入社。常勤監査役を経て2019年より現職。
藤井 勇佑 取締役事業統括本部長 NECネッツエスアイ・サービスを経て2011年に同社入社。開発事業本部副本部長、執行役員営業本部長等を歴任。ウィステリアトラスト代表取締役を兼務し、2024年より現職。


社外取締役は、渡辺照男(Re・Favor代表取締役社長)、小泉妙美(株式会社Amazia常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「検証事業」および「開発事業」を展開しています。

(1) 検証事業


ソフトウエア開発におけるテスト工程のアウトソーシング(第三者検証)サービスを提供しています。組込みソフトウエア、エンタープライズ系システム、WEBシステムなどを対象に、不具合の検出や品質改善のコンサルティングを行います。特に開発事業で培ったノウハウを活かしたテスト自動化技術に強みを持ちます。

収益は、顧客である大手SIerやパッケージソフトベンダー、事業会社等から受け取る検証サービスの対価によって構成されています。運営は日本ナレッジが行っています。

(2) 開発事業


ERPパッケージソフトウエアの導入に伴うカスタマイズ受託開発、業種特化型テンプレートの開発・販売、およびセキュリティ製品の開発・販売を行っています。特に鋼材業や建材・木材卸業向けのパッケージや、シンクライアント環境向けのセキュリティ製品「DEFESA」などを手掛けています。

収益は、システム開発の受託費用、自社パッケージ製品やセキュリティ製品のライセンス販売料、および保守サービス料から成り立っています。運営は日本ナレッジが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は順調に拡大傾向にあり、毎期増収を達成しています。利益面では、2024年3月期までは増益基調でしたが、直近の2025年3月期は利益率が低下し、減益となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 28億円 32億円 36億円 41億円 42億円
経常利益 0.6億円 1.4億円 1.9億円 2.7億円 1.2億円
利益率(%) 2.3% 4.3% 5.4% 6.5% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.3億円 0.9億円 1.4億円 2.0億円 0.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、売上原価および販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は大幅に減少しました。特に売上総利益率の低下が見られ、利益面での調整局面となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 41億円 42億円
売上総利益 8億円 7億円
売上総利益率(%) 19.9% 17.0%
営業利益 2.5億円 1.0億円
営業利益率(%) 6.2% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2億円(構成比35%)、役員報酬が0.8億円(同13%)を占めています。売上原価においては、労務費が19億円(構成比55%)、外注費が13億円(同37%)を占めており、人件費関連のコスト比重が高い構造となっています。

(3) セグメント収益


検証事業は、テスト自動化の推進などにより微増収増益となり、安定した収益源となっています。一方、開発事業は製品受注の増加等により増収となりましたが、利益面では減少しました。全社費用の調整額も増加しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
検証事業 28億円 28億円 5億円 5億円 17.8%
開発事業 13億円 14億円 3億円 2億円 15.2%
調整額 - - -6億円 -6億円 -
連結(合計) 41億円 42億円 3億円 1億円 2.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金に加え、財務活動による調達も行いながら、将来の成長に向けた投資を積極的に実施している「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.3億円 0.5億円
投資CF -2.9億円 -1.7億円
財務CF 0.8億円 0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「常にお客様の目線で考え、IT技術を通じて顧客の成長に貢献します。」「社員一人一人の能力と価値を尊重し、公平に評価します。」「地域社会、業界、有益な社会事業に貢献し環境・資源の保護に努めます。」「健全な利益を確保し、成長事業に投資し、株主に適切な利益貢献をします。」を企業理念として掲げています。

(2) 企業文化


同社は行動指針として、「夢や希望をけっしてあきらめない」「実践・実務・実績主義 成功は行動から」「ユーモアを持って笑顔で」を掲げています。顧客満足を追求するとともに、IT技術の高度化が進展する中で、顧客がより安心・安全にITサービスを利用できる社会の実現に貢献することを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業規模の拡大と継続的な成長を示す指標として「売上高成長率」を、本業によって適切な利益が生み出されているかを判断する指標として「売上高営業利益率」を重視しています。また、これらの達成状況を検証するため、技術者数、稼働率、製品販売数、保守契約数などを定期的にモニタリングしています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、検証事業において国際規格への取り組みやテスト自動化、AIを取り入れた検証技術の高度化を推進し、顧客との直接契約比率向上を目指しています。開発事業では、ERPパッケージのカスタマイズ需要の取り込みや、自社開発のセキュリティ製品の拡販を図ります。これらの実現に向け、既存エンジニアの育成に加え、外部からの優秀なエンジニア確保に注力する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材」を価値創造と競争優位の源泉と位置づけ、「人材が育ち、人材で勝つ会社」を目指しています。優秀な技術者の積極採用、充実した研修制度による未経験者の早期戦力化、独自技術分野における高度技術者の育成などを推進し、技術者不足の環境下でも高い成長率を維持することを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.5歳 5.9年 4,281,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 88.9%
男女賃金差異(正規) 89.9%
男女賃金差異(非正規) 78.3%


※女性管理職比率、男性育児休業取得率については、関連法規の規定に基づき別項目の公表を行っているため、有価証券報告書への記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術者採用数(56名)、技術者採用費用(38百万円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) テスト・検証市場の動向


テスト・検証市場は拡大傾向にありますが、顧客企業におけるアウトソーシングの認知度は依然として低い状況にあります。今後、機密保持等の理由で内製化志向が強まる場合や、景気変動により企業のIT投資が抑制された場合、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合環境と価格競争


テスト・検証サービスの一部は参入障壁が低く、価格競争に陥る可能性があります。現在は市場規模に対して参入企業が少ないものの、資金力のある大手企業が参入した場合や、競合他社の部門強化、価格競争の激化が進んだ場合、同社の経営成績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 特定取引先への依存


主要取引先である大塚商会グループへの売上依存度が高く、検証事業・開発事業ともに取引を行っています。現状は安定的に推移していますが、同社グループの事業動向や取引方針に変更があった場合、同社の経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。