日本ナレッジ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ナレッジ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ナレッジは東京証券取引所グロース市場に上場し、ソフトウエアシステムの検証サービスを提供する検証事業と、システム受託開発やパッケージソフト等の開発・販売を行う開発事業を展開しています。直近の業績トレンドは、両事業が堅調に拡大したことで売上高が増加し、増収増益を達成して安定的な成長を遂げています。


※本記事は、日本ナレッジ株式会社の有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ナレッジってどんな会社?


日本ナレッジはソフトウエアシステムの検証事業や開発事業を展開し、システムの品質向上を支援する企業です。

(1) 会社概要


1985年10月に業務系アプリケーションソフトの開発を目的として設立されました。1988年6月に現社名の日本ナレッジへ変更し、1991年2月には鋼材業向けパッケージシステムの販売を開始しました。2001年7月よりシステム開発のテスト工程を請け負う検証事業を立ち上げ、2023年3月に上場を果たしました。

従業員数は連結491名、単体462名です。筆頭株主はウィステリアトラストで、第2位は大塚商会、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合です。大塚商会は同社の主要な取引先であり、安定的な取引関係を継続しています。

氏名 持株比率
ウィステリアトラスト 43.06%
大塚商会 9.68%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は藤井洋一氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
藤井洋一 代表取締役社長 1985年日本スペースソフト(現日本ナレッジ)を設立し代表取締役に就任。2016年IT検証産業協会会長、2025年同協会名誉会長に就任し現職。
長谷川貴志 取締役 1989年同社入社。開発事業部技術部長、開発事業本部長、事業統括本部長、DX推進本部長などを歴任し、2026年4月より現職。
青木一男 取締役管理本部長 1977年日本電気工事(現NECネッツエスアイ)入社。同社監査部長やキューアンドエー常勤監査役を経て、2016年同社入社。2019年より現職。
藤井勇佑 取締役事業支援室長 2008年NECネッツエスアイ・サービス入社。2011年同社入社。ウィステリアトラスト代表取締役等を歴任し、2026年4月より現職。


社外取締役は、渡辺照男(Re・Favor代表取締役社長)、小泉妙美(Amazia常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「検証事業」および「開発事業」を展開しています。

(1) 検証事業


ソフトウエアの不具合リスクを回避・軽減するため、要件定義からテスト実行までの品質計画立案やコンサルティングを提供しています。対象はスマートフォンや家電製品に組み込まれるソフトウエアから法人向けの業務系システム、WEBシステムなど幅広く、テスト自動化による効率性や品質担保に強みを持っています。

主に大手SIerやパッケージソフトベンダーからシステム検証業務を受託し、対価を得る収益モデルです。テストの自動化と手動テストを組み合わせたハイブリッド案件を増やし、付加価値の高いサービスを提供しています。当事業の運営は同社が主体となって行っています。

(2) 開発事業


大手ベンダー製のERPパッケージソフトウエア導入に伴うカスタマイズの受託開発を中心に、セキュリティ製品の開発・販売や業種特化型のパッケージソフトウエアの提供を行っています。また、AI技術を活用した開発プロセスの効率化と品質向上にも取り組んでいます。

顧客企業からのシステム開発やカスタマイズの受託、自社開発したパッケージソフトウエアやセキュリティ製品のライセンス販売および保守サービスの提供により収益を得ています。当事業の運営は同社および連結子会社のアルテックスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社は当期から連結財務諸表を作成しているため、当期の連結業績のみを示しています。主力事業である検証事業および開発事業がともに堅調に推移し、増収増益の達成と安定した利益率を確保しています。

項目 2026年3月期
売上高 46億円
経常利益 1億円
利益率(%) 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.9億円

(2) 損益計算書


当期の損益構成を見ると、売上総利益率は安定した水準を確保していますが、人材投資等の影響もあり営業利益率は控えめな水準となっています。

項目 2026年3月期
売上高 46億円
売上総利益 7億円
売上総利益率(%) 16.0%
営業利益 0.7億円
営業利益率(%) 1.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2億円(構成比33%)、役員報酬が0.9億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上構成を見ると、テスト自動化などを推進する検証事業が全体の約6割を占めており、主力事業として同社を牽引しています。開発事業もパッケージソフトの販売などが堅調です。

区分 売上(2026年3月期)
検証事業 27億円
開発事業 19億円
連結(合計) 46億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。

項目 2026年3月期
営業CF 0.6億円
投資CF -1.1億円
財務CF -0.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人と技術を育み、安心できるデジタル社会の未来を支える」をミッション(社会的使命)に、「お客様の長期的パートナーとして選ばれ、安心と成功を届ける企業へ」をビジョンに掲げています。検証事業と開発事業を両輪とし、顧客満足を追求することで、安全なITサービス社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「夢や希望を決して諦めない」「成功は行動から」「ユーモアをもって笑顔で」という3つの価値観をバリューとして定めています。また、人的資本経営を軸に、学び続ける仕組みと多様なキャリアで次世代を育むことを重視し、社員一人ひとりの能力と価値を尊重して公平に評価する文化を根付かせています。

(3) 経営計画・目標


同社は事業の目標とする経営指標として、企業規模の継続的な成長を示す「売上高成長率」と、本業によって適切な利益が生み出されているかを判断する「売上高営業利益率」を重視しています。これらの指標を高水準で維持することで、企業価値の最大化を図る計画です。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の事業拡大に向け、主力の検証事業では費用対効果の高いテストの自動化を強化し、AI技術を活用した検証業務の高度化を推進します。開発事業では、需要の伸長が予想されるERPパッケージソフトのカスタマイズ開発やセキュリティ製品の販売に注力し、将来の大きな収益の柱として育成する戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」を価値創造と競争優位の源泉と位置づけ、「人材が育ち、人材で勝つ会社」を目指しています。優秀な技術者の積極採用や、社内研修制度を通じた未経験人材の早期戦力化を推進し、高度技術者の育成に注力することで、組織能力を向上させて事業の持続的成長を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.9歳 6.0年 4,237,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 90.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 91.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 81.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術者採用数(65名)、技術者採用費用(20百万円)、技術者教育費用(26百万円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 知的財産権に関するリスク


同社グループの事業において特許や商標などの知的財産権の重要性は高く、検証事業における特許などを保有しています。しかし、事業が第三者の知的財産権に抵触し、正当な権利主張や法的手続きがなされた場合、損害賠償の負担や事業の遂行が困難になる可能性があります。

(2) 人材の確保・育成に関するリスク


開発事業や検証事業を拡大するためには、高度な知識と経験を持つ優秀な技術者の確保と継続的な教育が不可欠です。市場の拡大に見合った人員の確保や適時な教育ができない場合、顧客の求める技術水準に達せず、サービスの質が低下して事業活動に支障が生じる可能性があります。

(3) 人件費の高騰によるリスク


同社の事業に係る売上原価の大半は技術者の人件費が占めています。IT投資の促進や技術者不足を背景に人件費が高騰する中、優秀な技術者の確保が先行して一時的に人件費が増加した場合、利益水準が低下し、同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。