※本記事は、株式会社カバー の有価証券報告書(第9期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カバーってどんな会社?
同社は、世界最大級のVTuberプロダクションを運営し、日本発のエンターテインメント文化を世界に展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2016年に設立され、2017年にVTuber「ときのそら」の活動を開始しました。2018年にはVTuberグループ「hololive」を立ち上げ、2023年に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。2024年には自社企画のトレーディングカードゲームをリリースするなど事業を拡大しています。
2025年3月31日現在、単体の従業員数は679名です。筆頭株主は創業社長の谷郷元昭氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるバレー、第3位は金融機関のモルガン・スタンレー・アンド・カンパニー・エルエルシーとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 谷郷 元昭 | 31.74% |
| バレー | 5.03% |
| MORGAN STANLEY & CO. LLC | 4.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は谷郷元昭氏が務めており、社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 谷郷 元昭 | 代表取締役社長 | イマジニア、アイスタイル等を経てサンゼロミニッツ設立。2016年同社設立し社長就任。 |
| 福田 一行 | 取締役 CTO | ソニー、アジャイルメディア・ネットワークCTO等を経て2016年同社入社、CTO就任。 |
| 植田 修平 | 取締役 | イマジニア、ゲームポット代表、H2インタラクティブ代表等を歴任。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、須田仁之(有限会社スダックス代表)、和田洋一(元スクウェア・エニックス社長)、宮島功(元ドミノ・ピザジャパン取締役)、小倉親子(公認会計士)、新井健一郎(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「VTuber事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 配信/コンテンツ
YouTubeを中心とした動画配信プラットフォームやSNSを通じて、所属VTuberのライブ配信や動画コンテンツ、楽曲などを提供しています。主な顧客は世界中の動画視聴者や音楽リスナーです。
収益源は、視聴者からのメンバーシップ加入費、Super Chat(投げ銭)、広告収益、および音楽ストリーミングサービスでの楽曲販売収益等です。運営は同社が行っています。
■(2) ライブ/イベント
所属VTuberのライブコンサートやファンミーティング、国内外でのイベント出展などをオフラインまたはオンラインで提供しています。ファンに対し、臨場感のある体験や交流の場を提供しています。
収益源は、チケット販売収益、イベントグッズの物販収益、映像ソフトウェアの販売収益等です。運営は同社が行っています。
■(3) マーチャンダイジング
同社所属VTuberをベースにしたキャラクターグッズやデジタルコンテンツの企画・販売を行っています。自社ECサイトや小売店を通じて、国内外のファンに商品を届けています。
収益源は、ECサイトまたは小売店を通じた商品販売収益です。運営は同社が行っています。
■(4) ライセンス/タイアップ
外部企業に対し、同社保有IPの使用許諾(ライセンスアウト)や、所属VTuberによるタイアップ広告・プロモーション協力を行っています。ゲームや商品パッケージへのIP活用などが含まれます。
収益源は、ライセンスアウトの対価としてのロイヤリティ収益、および広告出稿企業からのプロモーション料・出演料収益です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期間を通じて急速な拡大を続けており、直近では400億円台に到達しました。利益面でも、経常利益・当期利益ともに大幅な増加傾向にあり、高い成長性と収益性を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 57億円 | 137億円 | 205億円 | 302億円 | 434億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 19億円 | 34億円 | 56億円 | 80億円 |
| 利益率(%) | 29.8% | 13.6% | 16.6% | 18.6% | 18.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 12億円 | 25億円 | 41億円 | 56億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率は50%を超え、高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 302億円 | 434億円 |
| 売上総利益 | 140億円 | 218億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.4% | 50.2% |
| 営業利益 | 55億円 | 80億円 |
| 営業利益率(%) | 18.4% | 18.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が23億円(構成比17%)、荷造運賃が22億円(同16%)を占めています。また、売上原価のうち、外注費が115億円(構成比53%)、経費が28億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全サービス分野において増収を達成しました。特にマーチャンダイジング分野はカードゲームのヒット等により大幅な増収となりました。ライブ/イベント分野も海外公演の成功等により大きく伸長しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 配信/コンテンツ | 76億円 | 93億円 |
| ライブ/イベント | 56億円 | 78億円 |
| マーチャンダイジング | 125億円 | 205億円 |
| ライセンス/タイアップ | 44億円 | 57億円 |
| 連結(合計) | 302億円 | 434億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針とし、自己資金での運用を基本としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、事業運営を通じて生み出される資金の流れを示します。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却などによる資金の増減を表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、株式の発行などによる資金の動きを示します。
同社は、事業の強化、人員増強、財務基盤の安定化を通じて、経営基盤の強化に継続的に取り組んでいます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 48億円 | 53億円 |
| 投資CF | -39億円 | -27億円 |
| 財務CF | 0.0億円 | 2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を企業ミッションとしています。日本発のエンターテインメント・カルチャーを創出し、世界中のユーザーに届けることで、アニメやゲームといった日本文化に関わるクリエイターの活動の場を増やし、日本文化のさらなる発展を後押しすることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、クリエイターの創作活動に対する強い親近感や、ファンによる二次創作(UGC)コミュニティの存在を重視しています。タレント、クリエイター、ファン、企業をつなぐプラットフォームとしての価値を高め、共創を通じて熱量の高いコミュニティを形成することを大切にする文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営目標として、2030年3月期において以下の数値目標を掲げています。また、経営目標の指標として、これまでのYouTubeチャンネル登録数に加え、売上高および営業利益を重視する方針です。
* 売上高:1,000億円
* 営業利益:250億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期目標達成に向け、共創によるコンテンツ供給の強化、グローバル収益基盤の確立、新規事業領域の収益拡大、人的資本の高度活用を成長ドライバーとして掲げています。特に北米・アジアでの現地体制構築や、トレーディングカードゲーム等の新規事業拡大に注力する方針です。また、5年間で500億円程度を上限とする成長投資およびM&A枠を設定しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「世界に向かって挑戦していく人材」を求めています。多様な人材の情熱を統一し、共通の目標に向かうため、企業ミッションの共有やバリューに沿った評価を行っています。また、専門職・マネジメント職のキャリアパスを用意し、副業・兼業の推奨や、海外人材を意識した帰省先リモートワーク制度など、柔軟な働き方の整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 33.8歳 | 2.9年 | 6,100,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.6% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 86.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 99.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、入社1年後定着率(91.7%)、従業員エンゲージメントスコア(65点)、外国籍社員の比率(12.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外部の動画配信プラットフォームへの依存
同社はYouTube等の外部プラットフォームを通じてコンテンツを提供しています。プラットフォーム事業者の戦略変更や規約改定、または同社との関係変化により配信継続が困難になった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 所属VTuberの人気・活動に関するリスク
業績は所属VTuberの人気や活動頻度に依存しています。不適切な配信、スキャンダル、誹謗中傷、健康問題等により、タレントの支持低下や活動休止が生じた場合、関連する収益の減少を通じて業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外ユーザーに向けたサービスのリスク
英語圏やインドネシア等への展開において、文化・商習慣の違い、法規制、為替変動、政治的不安等のリスクが存在します。これらに適切に対処できず、現地での競争力を維持できない場合、事業拡大や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 競合他社の動向
国内外に多数の競合が存在する中、より魅力的なコンテンツを提供する他社の出現や、有力なタレントの獲得競争激化により、視聴者やタレントの流出が生じた場合、同社の競争優位性が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。