※本記事は、株式会社南海化学 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 南海化学ってどんな会社?
創業100年を超える歴史を持ち、化学品の製造販売から環境リサイクル、塩事業まで幅広く展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1906年に南海硫肥として創業し、1951年に中山製鋼所から分離独立して設立されました。2013年にはMBO(経営陣による買収)により中山製鋼所グループから完全に独立し、新たなスタートを切りました。その後、2023年4月に東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たしています。
現在の従業員数は連結308名、単体219名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社の従業員持株会、第3位は事業会社の東亞合成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託口) | 12.02% |
| 南海化学従業員持株会 | 3.88% |
| 東亞合成 | 3.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は杉岡 伸也氏です。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉岡 伸也 | 代表取締役社長執行役員営業本部長 | 1990年三菱商事入社。化学品グループやドイツ駐在を経て、三菱商事プラスチック社長を歴任。2024年4月に同社入社し、同年6月より現職。 |
| 吉門 孝芳 | 取締役執行役員製造管掌役員 | 1984年同社入社。生産管理部長、エヌシー環境社長、青岸工場長、事業開発本部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 長津 徹 | 取締役執行役員業務本部長チーフコンプライアンスオフィサー | 1984年三井物産入社。化学品部門やベトナム駐在などを経て、2021年同社入社。経営企画部長を経て、2024年6月より現職。 |
| 谷﨑 彰男 | 取締役 | 1985年旭化成工業入社。工場長などを歴任後、2020年同社入社。和歌山工場長、製造管掌役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 上川 圭一 | 取締役監査等委員 | 1982年三菱商事入社。海外現地法人社長や監査部を経て、2018年同社入社。内部監査室長、監査部長を経て、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、堀尾 知樹(元旭化成アドバンス執行役員)、伊集院 薫(甲南化成専務取締役)、海部 行延(元アグロカネショウ上席執行役員)、渡邉 りつ子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「化学品事業」および「各種塩事業」事業を展開しています。
■(1) 化学品事業(基礎化学品)
苛性ソーダ、塩酸、次亜塩素酸ソーダなどのクロール・アルカリ製品や、殺菌・消毒剤、水処理凝集剤などを製造・販売しています。主な顧客は製造業、水資源関連施設、医療・食品分野などで、関西地方を中心に製品を供給しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。商社経由またはメーカー直販の商流があります。運営は主に南海化学が和歌山工場で行うほか、中国の連結子会社などが製造・販売を行っています。
■(2) 化学品事業(機能化学品)
食品の日持ち向上剤として使用される酢酸ナトリウムなどの食品添加物や、グルコサミンなどの健康食品、医療機器洗浄剤などを製造・販売しています。また、樹脂添加剤などの受託製造業務も行っています。
収益は、自社製品の販売対価や、受託製造における加工賃として顧客から受け取ります。運営は南海化学が行っています。
■(3) 化学品事業(アグリ)
土壌殺菌剤として使用される農薬「クロルピクリン」の製造・販売を行っています。液剤だけでなく、独自の技術で固形化した錠剤タイプも展開し、安全性と使いやすさを追求しています。
収益は、農薬の販売対価として顧客から受け取ります。運営は南海化学が土佐工場にて行っています。
■(4) 化学品事業(環境リサイクル)
石油精製業者などから排出される廃硫酸を引き取り、精製して硫酸として再生し、再び各種メーカーへ販売するリサイクル事業を行っています。
収益は、再生した硫酸の販売対価として顧客から受け取ります。運営は連結子会社のエヌシー環境および持分法適用関連会社のサンワ南海リサイクルが行っています。
■(5) 各種塩事業
オーストラリアやメキシコから輸入した原塩を加工し、食品用や道路の凍結防止剤などの塩製品を製造・販売しています。梅干しの産地である和歌山県の加工業者や全国の食品メーカー、道路管理者などが主な顧客です。
収益は、塩製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は連結子会社のエヌエムソルトが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は着実な増加傾向にあります。利益面では、2024年3月期に大きく伸長しましたが、2025年3月期は減益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 165億円 | 174億円 | 196億円 | 200億円 | 209億円 |
| 経常利益 | 7.1億円 | 7.2億円 | 8.9億円 | 17.8億円 | 14.6億円 |
| 利益率(%) | 4.3% | 4.1% | 4.5% | 8.9% | 7.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.7億円 | 5.9億円 | 4.3億円 | 11.3億円 | 7.0億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加しましたが、売上原価および販管費の増加により、各利益段階で減益となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 200億円 | 209億円 |
| 売上総利益 | 55億円 | 55億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.5% | 26.4% |
| 営業利益 | 16億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 7.8% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が17億円(構成比41%)、給料手当及び賞与が8億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
化学品事業は売上が微減し、利益も減少しました。一方、各種塩事業は降雪の影響で凍結防止剤の出荷が増加し、大幅な増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 化学品事業 | 168億円 | 163億円 | 24億円 | 21億円 | 12.9% |
| 各種塩事業 | 32億円 | 46億円 | 2.0億円 | 3.6億円 | 7.9% |
| その他 | - | - | - | - | - |
| 調整額 | -1億円 | -1億円 | -11億円 | -12億円 | - |
| 連結(合計) | 200億円 | 209億円 | 16億円 | 13億円 | 6.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金に加え、財務活動による調達も行いながら投資活動を進める「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 27億円 | 1.8億円 |
| 投資CF | -19億円 | -4.9億円 |
| 財務CF | -3.3億円 | 2.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「化学品事業を通じて地球環境と豊かな社会の創生に貢献する」を企業理念に掲げています。創業以来の化学品メーカーとしての歩みを基盤とし、社会や環境に貢献する事業活動を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「水をつくり、土を活かし、人を育む」という考え方を経営に生かしています。創業以来100年以上にわたり蓄積した技術と信頼をベースに、顧客のニーズを踏まえた商品開発を行うマーケットイン型の企業体質へと転換を進めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2027年3月期までの中期経営計画を推進しており、スローガンとして「サステナブルな明日を創る」を掲げています。経営指標(KPI)として、売上高、経常利益、およびROE(自己資本利益率)を設定しています。
* 2026年3月期目標:売上高229億円
* 2026年3月期目標:経常利益17.5億円
* 2026年3月期目標:ROE 11.2%(土地売却影響を除く)
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画に基づき、収益基盤の強化、環境リサイクル事業の領域拡大、サステナブル経営の推進を重点施策としています。特に、廃硫酸リサイクルの伸長や脱塩事業の拡大など、環境リサイクル分野での成長を目指しています。また、地域立脚の強みを活かした事業展開や、高付加価値製品へのリソース集中にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材育成とDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)施策の推進により、人的資本投資を拡充する方針です。人材戦略を最重要課題の一つと捉え、多様な人材の採用・育成や、生産工程の省人化による有効活用に努めています。また、健康経営の推進や、女性活躍推進を含む多様な人材が活躍できる職場環境の構築にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.7歳 | 8.1年 | 7,130,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
※提出会社における管理職に占める女性労働者の割合及び労働者の男女の賃金の差異については、公表義務に基づく公表項目として選択していないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性割合(17.1%)、管理職及びリーダーに占める女性割合(6.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の経済情勢・需要変動
国内外の顧客や市場動向、経済情勢の変動により、製品市場の縮小や市況下落が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。また、競合他社の生産能力増強や低価格販売によるシェア低下や製品価格下落のリスクもあります。
■(2) 原材料の調達
製品に使用する原材料が確保できない場合や価格が急激に変動した場合、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、調達先の分散化や、原価低減、販売価格の改定などの対策を講じています。
■(3) 突発的な事故や災害の発生
製造設備の不具合や事故による生産活動の中断リスクがあります。また、製造拠点が和歌山県や高知県に立地しているため、南海トラフ地震や台風による風水害の影響を受ける可能性があり、BCP策定等の対策を進めています。
■(4) 経営成績の季節変動及び天候影響
各種塩製品(凍結防止剤)や農薬などの製品特性上、冬期から春先にかけて売上が集中する傾向があります。また、凍結防止剤は降雪量などの天候に左右されやすいため、天候変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。



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