※本記事は、南海化学の有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 南海化学ってどんな会社?
南海化学は、基礎化学品や機能化学品、農薬、環境リサイクル、各種塩の製造・販売を手掛ける化学品メーカーです。
■(1) 会社概要
1906年に創業し、1951年に中山製鋼所から分離して設立されました。その後、環境リサイクル事業等で子会社を設立し事業を拡大。2013年にMBOにより独立を果たし、2023年には東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たしました。直近では脱塩事業の開始など、リサイクル分野の強化を進めています。
従業員数は連結で319名、単体で263名です。筆頭株主は信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)で、第2位は南海化学従業員持株会、第3位は事業会社である東亞合成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託口) | 11.70% |
| 南海化学従業員持株会 | 3.81% |
| 東亞合成 | 3.25% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は杉岡伸也氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉岡伸也 | 代表取締役社長執行役員 | 1990年三菱商事入社。三菱商事プラスチック代表取締役社長などを歴任。2024年同社入社、2025年より現職。 |
| 長津徹 | 取締役執行役員業務本部長チーフコンプライアンスオフィサー | 1984年三井物産入社。関西経済連合会国際部部長などを経て、2021年同社入社。2024年より現職。 |
| 吉門孝芳 | 取締役執行役員製造管掌役員 | 1984年同社入社。生産管理部長、エヌシー環境代表取締役社長等を経て、2018年取締役執行役員。2026年より現職。 |
| 上川圭一 | 取締役監査等委員 | 1982年三菱商事入社。Triland Metals Tokyo代表取締役等を経て2018年同社入社。2022年より現職。 |
社外取締役は、堀尾知樹(元旭化成アドバンス執行役員)、伊集院薫(甲南化成代表取締役)、海部行延(元アグロカネショウ上席執行役員)、渡邉りつ子(弁護士・本町中央法律事務所)です。
2. 事業内容
同社グループは、「化学品事業」および「各種塩事業」を展開しています。
■化学品事業
基礎化学品、機能化学品、アグリ、環境リサイクルの4分野から成ります。基礎化学品では苛性ソーダや次亜塩素酸ソーダなどの無機工業製品を、機能化学品では食品添加物や健康食品を製造・販売しています。また、アグリ分野では農薬のクロルピクリンを、環境リサイクル分野では廃硫酸のリサイクルを行っています。
収益源は主に製造業(化学工業、鉄鋼、食品工場等)や農業従事者への製品販売です。運営は主に南海化学が行うほか、中国の連結子会社である如皋市四友合成化工や如皋南海水処理剤、持分法適用関連会社のサンワ南海リサイクルなどが各事業を分担して展開しています。
■各種塩事業
オーストラリアやメキシコから輸入した天日塩を洗浄・加工し、食品用や道路の凍結防止剤など様々な用途向けの塩を製造・販売しています。
収益は、梅干加工業者や全国の食品メーカー、道路維持管理団体への製品販売によって得ています。事業の運営は、南海化学の連結子会社であるエヌエムソルトが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は概ね堅調に推移しており、当期には211億円に達しました。経常利益と当期利益についても、原材料価格や為替の変動といった外部環境の影響を受けつつも、当期は採算重視の販売や原価削減が奏功し大幅な増益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 174億円 | 196億円 | 200億円 | 209億円 | 211億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 9億円 | 18億円 | 15億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 4.1% | 4.5% | 8.9% | 7.0% | 8.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 4億円 | 11億円 | 7億円 | 24億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、電解製品の価格是正の浸透や製造原価の削減が寄与し、売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費は運送費の増加等で微増したものの、結果として営業利益、営業利益率ともに改善を見せています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 209億円 | 211億円 |
| 売上総利益 | 55億円 | 60億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.4% | 28.4% |
| 営業利益 | 13億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 8.1% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が19億円(構成比44%)、給料手当及び賞与が8億円(同18%)を占めています。売上原価(単体当期総製造費用ベース)の内訳については、材料費が47億円(構成比50%)、経費が30億円(同32%)、労務費が17億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
化学品事業は、基礎化学品分野で地場に立脚した販売や採算改善を意識した取り組みが奏功し、増収増益となりました。一方で各種塩事業は、暖冬の影響による冬季の凍結防止剤の出荷減少などが響き、減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 化学品事業 | 163億円 | 170億円 | 21億円 | 25億円 | 14.6% |
| 各種塩事業 | 46億円 | 41億円 | 4億円 | 3億円 | 7.5% |
| 調整額 | -1億円 | -1億円 | -12億円 | -11億円 | - |
| 連結(合計) | 209億円 | 211億円 | 13億円 | 17億円 | 8.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況を示す「事業検討型」の傾向を見せています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2億円 | -3億円 |
| 投資CF | -5億円 | 29億円 |
| 財務CF | 2億円 | -23億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は28.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「化学品事業を通じて地球環境と豊かな社会の創生に貢献する」という企業理念を掲げています。1906年の創業以来、基礎化学品の製造をものづくりの基盤とし、「水をつくり、土を活かし、人を育む」という考えのもと、環境や社会課題の解決を志向した事業領域の拡大を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
環境リサイクル事業の先駆者として、プロダクトアウト型から顧客のニーズを踏まえた商品開発を行うマーケットイン型へと企業体質を転換する文化を重視しています。顧客に近接した工場立地や原料の自社製造によるコスト競争力を強みとし、地域に根差した差別化と、安全で安心な持続的製販体制の強化を推進する組織風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2027年3月期までの中期経営計画において、「サステナブルな明日を創る」をスローガンに掲げ、設備投資を効果的に実施しながら事業の収益性と成長性を高める目標を設定しています。
* 売上高:217億円(2026年度目標)
* 経常利益:23.4億円(2026年度目標)
* ROE:12.5%(2026年度目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長戦略として、事業ポートフォリオの最適化による収益基盤の強化、廃硫酸リサイクルや脱塩事業等の環境リサイクル事業領域の拡大、およびサステナブル経営の推進に注力します。既存製品の高付加価値化や新たなリサイクル事業の創出にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材戦略を事業活動における最重要課題の一つと捉え、変化の激しい環境下で自律的に成長し変革を牽引する人材の確保と育成に努めています。探求力、可変力・チャレンジ精神、実行力・責任感を備えた人材を重視し、公平な評価と能力開発を通じた処遇を実施するとともに、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.7歳 | 8.2年 | 6,876,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には女性管理職比率および男女賃金差異の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性割合(17.6%)、管理職及びリーダーに占める女性割合(5.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の経済情勢・需要変動・競争
国内外の経済情勢や顧客動向の変化により、製品市場の縮小や市況下落が生じるリスクがあります。また、競合他社による生産能力増強や低価格販売などの事業展開によって市場シェアの低下や需給バランスの崩れによる製品価格の下落が起こる可能性があります。
■(2) 原材料の調達
製品に使用する原材料が確保できない場合や価格が急激に変動した場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。これに対し同社は、調達先の分散化や多様化を通じて安定的な調達を図り、価格上昇に対しては原価低減や販売価格の改定などで影響の軽減に努めています。
■(3) 製品の品質
品質管理体制を整備しているものの、予期せぬ品質トラブルが発生した場合、顧客や社会からの信用低下を招くリスクがあります。製造物賠償責任保険への加入等で影響を最小限にとどめる取り組みを行っていますが、損害賠償や補償の履行により業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(4) 突発的な事故や災害の発生
製造設備における不具合や事故による損壊、生産活動の中断が業績に影響するリスクがあります。特に主力工場が和歌山県や高知県に立地しているため、南海トラフ地震や台風等による風水害の影響を受けやすく、BCP策定による対策を講じて影響の最小化を図っています。



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