※本記事は、クオリプス株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
クオリプスは、ヒトiPS細胞由来の再生医療等製品の実用化と、独自の細胞培養加工施設「CLiC-1」を活用した製造開発受託(CDMO)事業を展開しています。2017年3月の設立以来、世界中の人々の健康と人生に貢献する新たな医療の創出を目指しています。
同社の単体従業員数は51名、連結従業員数も51名です。セグメントは再生医療等製品事業の単一です。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
クオリプスは再生医療等製品の研究開発に取り組む企業であり、先端医療分野での専門性が求められる環境です。人材育成や働きやすい環境づくりに力を入れており、従業員のワークライフバランスを重視する姿勢が見られます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
クオリプスでは、従業員の平均年齢が40代前半であり、平均勤続年数は比較的短くなっています。これは、設立から間もない企業であることや、専門性の高い人材がキャリアを形成していく過程にあることを示唆していると考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,218,586円 |
| 平均勤続年数 | 3.4年 |
| 平均年齢 | 43.1歳 |
| 単体従業員数 | 51人 |
| 連結従業員数 | 51人 |
| 単体のグループ内比率 | 100.0% |
なお、退職給付制度に関する記載はありません。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
クオリプスは、再生医療等製品の開発・商業化およびCDMO(受託開発・製造)に取り組む中で、成長段階に応じた組織体制の構築と事業環境の変化への迅速な対応を重視しています。人材戦略の基本方針として、バイオ・製薬業界の実務経験者を中心に採用・配置し、経験と能力に応じた基本給を設定しています。また、経済産業省の補助金を活用し、CDMO事業を担う高度人材育成をNakanoshima Qrossと連携して進めるとともに、将来を担う新卒従業員の採用・育成も行う方針です。
報酬制度においては、企業価値向上へのインセンティブを高めるため、ストック・オプションとしての新株予約権の発行を行うなど、非金銭的報酬も活用した柔軟なシステムを採用し、必要な人材を確保しつつ財政負担の軽減に努めています。同社グループは、人材の育成、社内労働環境の整備、産業医による健康管理、ワークライフバランスの実現を通じた人的資本の充実に全社的に取り組んでいます。
具体的には、男性の育児休業や在宅勤務の促進、有給休暇の取得促進、時間有給休暇制度の導入を進めています。子の看護休暇や介護休暇については、無給・有給休暇の付与に加え、半日・時間単位での取得を可能とし、育児介護中の勤務者には短時間勤務制やインターバル制の適用など、各人に合った働き方を提供しています。さらに、社外の専門資格取得・維持の補助や学会等への参加を推奨し、従業員の専門性向上を支援しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社および連結子会社は、女性活躍推進法および育児介護休業法の規定による公表義務の対象ではないため、法定開示データは記載を省略しています。
育児・介護支援
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
人材育成・エンゲージメント
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 有給休暇取得日数(平均) | 10.1日 |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
クオリプスは、ヒトiPS細胞由来の再生医療等製品の実用化と、独自の細胞培養加工施設「CLiC-1」を活用した製造開発受託(CDMO)事業を主軸としています。世界中の人々の健康と人生に貢献する新たな医療の創出を目指し、事業を展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループの主力製品は、重症心不全治療を目的としたヒトiPS細胞由来心筋細胞シート「リハート」です。この製品は、iPS細胞から心筋細胞への分化誘導とシート化技術を用いて作製され、2026年3月に日本国内での条件及び期限付き製造販売承認を取得しました。今後は保険収載後に商用生産を開始する予定です。
再生医療等製品事業では、大学や大手製薬企業との共同研究開発を通じて得られた発明やノウハウの実施権許諾を受け、事業を展開しています。CDMO事業では、同社グループが培ったiPS細胞の培養技術や心筋細胞の製造・精製技術を活かし、顧客への製造プロセス開発支援や受託製造、細胞・原材料の提供を行っています。
研究開発パイプラインとしては、海外での心筋細胞シート販売を目指す取り組みや、カテーテルを用いた軽度心疾患治療技術、肝臓や腸、肺などの多臓器疾患に対応する体内再生因子誘導剤(YSシリーズ)の開発を進めています。
同社グループの売上高は、国内の外部顧客への売上高が大部分を占めています。また、当連結会計年度においては、株式会社パソナグループへの売上高が総売上高の84.3%を占めており、特定の顧客への収益集中が見られます。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、直近3期において売上高が着実に増加しています。一方で、経常損失および親会社株主に帰属する当期純損失は拡大傾向にあります。
これは、主力製品である心筋細胞シートの研究開発を積極的に推進しているためであり、多額の研究開発費を計上していることが主な要因となっています。営業活動によるキャッシュ・フローも支出が続いており、事業の成長段階における投資が継続している状況を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | 23百万円 | 1.8億円 | 2.1億円 |
| 経常利益 | - | - | △6.3億円 | △6.4億円 | △10.3億円 |
| 経常利益率 | - | - | △2718.1% | △366.4% | △484.4% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | - | - | △6.3億円 | △6.4億円 | △10.2億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | - | - | △85.86 | △80.52 | △124.54 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高は、前期から増加しています。これは、売上高の成長が従業員数の変化を上回っていることを示しており、事業活動の効率化が進んでいる傾向が見られます。
一方で、従業員1人あたり営業利益は損失が拡大しています。これは、研究開発への先行投資が継続している事業フェーズを反映しており、将来の収益化に向けた基盤構築に注力している状況がうかがえます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 3.1百万円 | 4.2百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | △10.5百万円 | △21.2百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの財務状況は、事業活動における資金の流れや自己資本の厚みから、現在の経営状態を把握できます。特に、研究開発型の企業として、将来に向けた投資を継続している段階であることが示されています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本比率は91.6%と高い水準にあり、財務基盤の安定性を示しています。これは、プライム市場の製造業平均と比較しても高い傾向にあります。一方で、ROE(自己資本利益率)は△19.9%となっており、収益性には課題がある状況です。手元資金として現金及び預金が36.5億円あり、事業運営に必要な資金を確保していることがうかがえます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 55.3億円 | 47.7億円 |
| 自己資本比率 | 96.1% | 91.6% |
| ROE(自己資本利益率) | - | △19.9% |
| 現金及び預金 | 45.9億円 | 36.5億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、当期に10億60百万円の支出となりました。これは主に税金等調整前当期純損失の計上によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、当期に35百万円の支出となり、主に有形固定資産の取得による支出が影響しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、当期に2億4百万円の収入となり、新株予約権の行使による株式の発行が主な要因です。
これらの結果、フリーキャッシュ・フローは当期に10億95百万円のマイナスとなっています。同社グループは研究開発型の企業であり、先行投資として多額の資金を必要とするため、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる状況が継続しています。この資金の流れは、将来の成長に向けた投資を積極的に行っている段階であることを示しており、雇用や給与の安定性については、今後の事業の収益化と資金調達の状況が重要となります。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △8.1億円 | △10.6億円 |
| 投資CF | △1.2億円 | △35百万円 |
| 財務CF | 1.5億円 | 2.0億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △9.3億円 | △10.9億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、第一三共株式会社との共同研究開発契約において、ライセンス条件の改定やライセンス終了のリスクを抱えています。また、再生医療領域における急速な技術革新や競合他社の研究開発成果により、同社グループの優位性が損なわれ、売上高が減少する可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは従業員51名の小規模組織であり、事業活動が経営者や特定の研究開発要員に強く依存しています。優秀な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、または人材の流出が発生した場合には、研究開発活動や製造活動に遅延が生じる可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
クオリプスは、人々の健康と人生に貢献する新たな医療の創造を目指し、技術とこころ、科学と人間をつなぐことを経営理念としています。再生医療分野における革新的な細胞治療モダリティの提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、『こころ 動かそう いのち つなごう』を標語とし、命ある限り健康で幸せな生活を送るために、技術とこころ、科学と人間をつなぎ、世界中の人々の健康と人生に貢献する新たな医療を作り出すことを経営理念としています。
ヒトiPS細胞由来の細胞加工物の製造方法に関する研究開発を推進し、安定的かつ効率的で、安全で信頼性の高い細胞加工物を生み出す高レベルな生産技術を確立した上で、再生医療等製品としての製造販売承認を目指しています。
また、ヒトiPS細胞由来の再生医療等製品に限らず、新しい細胞製品の製造・実用化にも取り組み、その周辺技術とともに次世代の革新的な細胞治療モダリティを提供していく方針です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、世界に誇る日本の先端的な医療を基盤とした確かで安全な技術を活用し、世界中の人々の健康と人生に貢献する新たな医療を作り出すことを目標としています。重症心不全の患者のQOL(Quality of Life)を改善することは、持続可能な社会の継続に貢献すると考えています。
競争力の源泉は、先端的な研究開発を行う研究者と研究開発成果を製品として実現する製造担当者にあるとし、人材の育成と社内環境の整備を優先事項としています。
ワークライフバランスを重視し、男性の育児休業や在宅勤務の促進、有給休暇の取得促進、時間有給休暇制度の導入など、多様な働き方を支援する取り組みを進めています。小学3年生までの子の看護休暇や要介護状態にある家族の介護休暇についても、有給休暇や在宅勤務制度を設けています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、リハートの販売開始やその他のパイプラインの事業化に向けて、経営陣と社員が一丸となって課題に取り組んでいます。短期的な課題としては、リハートの製造販売開始に向けた物流体制の構築や製造販売後調査への対応、海外展開、細胞の大量培養システムの開発に向けた取り組み、新たなパイプラインへの対応、社内管理体制等の強化を挙げています。
中期的な課題としては、販売流通及び情報提供等の体制の整備、人材の確保及び獲得、知財戦略の強化、そしてCash burn rate(手元流動性が減る速度)を抑える取り組みを進めています。
特に人材の確保及び拡充は、社歴が浅く小規模な組織である同社グループにとって、今後の企業価値向上に向けた重要な課題と認識されています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
クオリプスは、監査役会制度を採用しており、社外取締役を選任することで経営の透明性と効率化を図っています。また、業務執行体制の強化のため執行役員制度を導入しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
クオリプスは、複数の事業会社が主要株主として名を連ねる資本構成となっています。筆頭株主は第一三共、次いでテルモが上位を占めており、事業連携や協業の可能性も示唆される構成です。また、取締役である澤芳樹氏も上位株主の一人として名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 第一三共 | 12.11% |
| テルモ | 6.42% |
| 澤 芳樹 | 1.49% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は9名(男性9名・女性0名)で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 最高経営責任者は草薙尊之氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 草薙 尊之 | 代表取締役社長 最高経営責任者 | 1981年日本興業銀行入行後、みずほ証券等で金融・資産運用業務に従事。2020年8月より同社代表取締役社長 最高経営責任者より現職。 |
| 谷村 忠幸 | 取締役副社長 | 旭中央病院入職後、厚生労働省やWHO本部で医療政策・国際保健に従事。ロシュ・ダイアグノスティックス本部長を経て、2024年6月より同社取締役副社長より現職。 |
| 澤 芳樹 | 取締役 最高技術責任者 | 大阪大学医学部入局後、ドイツ留学を経て大阪大学大学院医学系研究科主任教授、研究科長・医学部長を歴任。2021年8月より同社取締役 最高技術責任者より現職。 |
| 平尾 和義 | 取締役 最高ビジネス 責任者 | 富士写真フイルム入社後、富士フイルムグループの再生医療事業に長く従事。ジャパン・ティッシュエンジニアリング取締役を経て、2025年6月より同社取締役最高ビジネス責任者より現職。 |
社外取締役は、鮫島正氏(テルモ理事)、吉田憲一郎氏(いちごアセットマネジメント会長パートナー)です。
同社は監査役会設置会社であり、社外取締役が取締役会の意思決定の妥当性・適正性を確保する役割を担っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
クオリプスでは、企業価値の持続的な向上と株主利益との連動を重視した報酬体系を採用しています。業務執行取締役の報酬は、固定報酬としての金銭による基本報酬とストックオプションによる非金銭報酬で構成されています。一方、監査役の報酬は独立性を確保するため月額固定報酬のみとなっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 4名 | 1.6億円 | 40.6百万円 |
| 社外取締役 | 2名 | 14百万円 | 7.2百万円 |
| 社外監査役 | 3名 | 16百万円 | 5.3百万円 |
同社の役員報酬等の総額は1.9億円であり、対象となる役員は9名です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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