コージンバイオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コージンバイオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するコージンバイオは、組織培養用の培地や微生物の細菌検査用培地の開発・製造・販売、および医療機関からの委託による細胞加工を主力事業として展開しています。直近の業績は、売上高が約49億円、経常利益が約3億円となり、感染症関連製品の需要減の反動により減収減益の決算となっています。


※本記事は、コージンバイオ株式会社の有価証券報告書(第45期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コージンバイオってどんな会社?


細菌検査用培地や細胞培養用培地の開発・製造、細胞加工受託を中心に事業を展開するバイオ関連企業です。

(1) 会社概要


同社は1981年に動物血液の販売および細菌検査用培地の製造販売を目的として設立されました。1986年に細胞培養用培地の製造を開始し、2014年には再生医療関連法規の施行に伴い細胞加工の製造受託事業を開始しています。2024年4月には東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。

現在、同社グループの従業員数は連結で176名、単体で150名体制となっています。筆頭株主は創業者の当社代表である中村孝人氏であり、第2位の株主は同氏の資産管理会社であるTAKAコーポレーション、第3位には金融機関であるゴールドマン・サックス・インターナショナルが名を連ねています。

氏名 持株比率
中村孝人 43.20%
TAKAコーポレーション 8.20%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 7.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は中村孝人氏が務めています。社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
中村孝人 代表取締役社長 1973年丸大食品入社。1981年にコージン(現同社)を設立し代表取締役社長に就任。その後、複数の国内外子会社の代表や役員を歴任し、2022年TAKAコーポレーション取締役を経て現任。
中村雄一 専務取締役営業統括 2001年大和証券入社。2006年新光証券(現みずほ証券)を経て2009年同社入社。2014年エンバイオ代表取締役社長に就任。同社常務取締役などを経て、2024年6月より現職。
對比地久義 取締役研究統括 2006年奈良先端科学技術大学院大学博士研究員。オンコセラピー・サイエンス等を経て2009年同社入社。2015年バイオ研究部長、2020年執行役員を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、原稔(原稔税理士事務所所長)、山本龍太朗(弁護士法人大江橋法律事務所パートナー)、山野智也子(JYC TOP代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「組織培養事業」「微生物事業」「細胞加工事業」を展開しています。

組織培養事業


ヒトや動物などの細胞を増殖させる目的とした細胞培養用培地の開発・製造・販売を行っています。基礎研究で使用される基礎培地のほか、再生医療分野や抗体医薬品の製造に欠かせない、安全性に優れた無血清培地の開発に注力しています。

収益源は、研究機関や大学、製薬企業等に販売する培地の製品代金となります。また、主要取引先からのOEM製品の受託製造も収益に貢献しています。当事業の運営は、主にコージンバイオや中国の子会社である高金生物科技(上海)が担当しています。

微生物事業


感染症や食品汚染の原因となる微生物を特定するための細菌検査用培地や体外診断用医薬品の開発・製造・販売を行っています。医療現場での感染症検査、食品の病原菌検査などの目的に応じて、年間300品目を超える多様な製品群を提供しています。

収益源は、医療機関や臨床検査センターなどに販売する細菌検査用培地や抗原検査キット等の製品代金です。特に、感染症の簡易迅速診断を可能とする検査キットの展開が売上を構成しています。当事業の運営は主にコージンバイオと子会社のエンバイオが担っています。

細胞加工事業


医療機関からの委託を受け、患者から採取した組織を預かり、免疫療法や幹細胞治療に用いる特定細胞加工物の製造受託を行っています。厚生労働省の許可を得た自社の細胞培養加工施設にて目的の細胞を取り出し、増殖させて医療機関に納品しています。

収益源は、再生医療などを提供する医療機関から受け取る細胞加工業務の受託料です。自社製の細胞培養用培地と細菌検査用培地を使用することで製造コストを抑え、柔軟な価格設定を可能としています。当事業の運営は、主にコージンバイオが主体となり実施しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は一時順調な拡大を続けていましたが、直近では減少に転じています。経常利益も過去最高の水準から一転して減少傾向にあります。これは、新型コロナウイルス関連の検査キット需要が落ち着きを見せたことや、インバウンド患者の低迷による細胞加工受託の減少などが影響したためです。今後は組織培養事業の拡大と新規事業の育成による収益の回復が期待されます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 39億円 47億円 48億円 52億円 49億円
経常利益 9億円 12億円 6億円 11億円 3億円
利益率(%) 23.3% 26.2% 13.3% 20.5% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 8億円 2億円 5億円 0.6億円

(2) 損益計算書


収益構造の推移を見ると、当期は売上高の減少に加えて売上総利益率が低下し、営業利益が大幅に縮小する結果となりました。主力製品の販売動向の変化や棚卸資産の評価損の計上が利益を圧迫しており、販売費及び一般管理費が増加したことも影響して、全体の収益性が低下する厳しい事業環境となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 52億円 49億円
売上総利益 24億円 19億円
売上総利益率(%) 45.4% 37.6%
営業利益 10億円 3億円
営業利益率(%) 19.0% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3億円(構成比23%)、研究開発費が3億円(同17%)、支払手数料が2億円(同11%)を占めています。また、当期の売上原価は31億円で構成されており、製造に関わる労務費や原材料の調達コストが収益性に影響を与えています。

(3) セグメント収益


各セグメントの動向を見ると、組織培養事業は国内外での底堅い需要により増収となり、全体の業績を下支えしています。一方で微生物事業は感染症関連製品の需要減により大幅な減収となり、細胞加工事業もインバウンド患者の低迷により減収となるなど、事業ごとの明暗が分かれる結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
組織培養事業 23億円 25億円
微生物事業 18億円 14億円
細胞加工事業 12億円 10億円
連結(合計) 52億円 49億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 7億円
投資CF -11億円 -9億円
財務CF 14億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.8%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「考える人」の組織集団(コージン)として、「顧客第一主義・品質第一主義」をモットーにバイオテクノロジーの発展に貢献することを経営理念に掲げています。また、グローバル企業としての位置を確立して培地業界における国内シェア1位を目指し、新規事業を開拓して高付加価値サービスを提供し続けることをビジョンとしています。

(2) 企業文化


同社は「敬天愛人成善」という社是を掲げ、公明正大で謙虚な心で仕事にあたり、人を愛し仕事を愛し善業を成すことを重視しています。さらに、常に誠心誠意で仕事をし、社会が今必要としている最先端の製品を世に出すこと、喜びに満ち満ちた会社であることを基本理念とし、顧客の理解と満足が得られる高品質な製品づくりを徹底する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は今後の事業成長に向け、組織培養事業において種々の細胞に合致する製品の供給と新たなニーズに沿う製品を開発し、アジアNo.1の培地製造販売会社を目指すことを中期的な目標としています。また、細胞加工事業では再生医療等製品の製造受託への参入を進め、微生物事業ではアジア圏における新たな売上の獲得を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向け、組織培養事業と細胞加工事業を中核に位置付け、製品ラインナップの拡充やOEM製造受託に対応する生産技術・営業体制の強化を図ります。細胞加工事業では「培地×細胞加工」のシナジーを生かし、臨床試験用細胞の製造受託事業(CDMO事業)に参入して新規案件の獲得を進めます。さらに、微生物事業においてもアジア圏で需要の大きい感染症簡易検査キットを展開し、海外市場の開拓に注力する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業の成長戦略を実現するための重要な経営資源として人的資本を位置付けています。高度な専門的知識、技能、経験を有する多様な人材の確保と育成に注力しており、従業員の役割や成果を踏まえた公平で納得性のある処遇の実現を目指しています。また、ライフステージに合わせた柔軟な働き方を受容する人事制度の設計と風土の醸成にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.6歳 6.1年 5,535,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 25.0%
男性労働者の育児休業取得率 -
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 69.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 76.3%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 59.0%


※男性労働者の育児休業取得率について、有報には具体的な取得率の記載がありません(育児休業取得人員は0名と記載)。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インバウンド減少による細胞加工の需要変動


細胞治療などの細胞加工受託サービスにおいて、新型コロナウイルスなどの感染症拡大や国際関係の悪化により海外からのインバウンド患者数が激減した場合、受託件数が減少し、同社の業績に大きな影響を与える可能性があります。

(2) 工場・生産設備の集中と操業停止


同社グループの生産設備は一部を除き特定の工場に集中しており、火災や地震などの自然災害、設備事故、技術上の問題、原材料の供給停止などが発生した場合、事業活動が停止し、業績に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 専門人材の流出と確保の難航


顧客ニーズに対応し満足度を高めるためには高い専門性を持つ人材の確保が不可欠ですが、同業界は人材の流動性が比較的高く、適切な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、製品開発や事業運営に支障をきたす可能性があります。

(4) 外交や政情不安に伴うカントリーリスク


同社は中国の上海などに製造販売拠点を持っています。現地での政情不安や反日感情の高まり、経済環境の悪化、社会インフラの未整備、法規制の変更など不測の事態が発生した場合、海外事業の継続が困難となり、業績に悪影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。