コージンバイオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コージンバイオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場し、組織培養、微生物、細胞加工の3事業を展開するバイオ企業です。売上高は52億円、経常利益は11億円となり、増収増益のトレンドにあります。特に再生医療分野での培地需要拡大や、感染症検査キットの販売が業績を牽引しており、積極的な設備投資と海外展開を進めています。


※本記事は、コージンバイオ株式会社 の有価証券報告書(第44期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コージンバイオってどんな会社?


組織培養用培地や微生物検査用製品の開発・製造・販売、および細胞加工受託を行うバイオ企業です。

(1) 会社概要


1981年に動物血液や細菌検査用培地の製造販売を目的に設立され、1986年には細胞培養用培地分野へ進出しました。2014年の法改正を機に細胞加工事業を開始し、2015年には細胞加工の製造受託へ本格参入しています。2018年には味の素との合弁会社を設立するなど業容を拡大し、2024年4月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は167名、単体では141名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長の中村孝人氏で、第2位はゴールドマン・サックス・インターナショナル、第3位は中村氏の資産管理会社であるTAKAコーポレーションです。創業家が主要株主として名を連ねるオーナー系企業としての側面を持っています。

氏名 持株比率
中村 孝人 43.23%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券株式会社) 8.21%
TAKAコーポレーション株式会社 8.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は中村孝人氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
中村 孝人 代表取締役社長 1973年丸大食品入社。1981年コージン(現同社)設立し代表取締役社長就任。2014年より香港・上海子会社のトップも兼務。2022年よりTAKAコーポレーション取締役を兼務し現職。
中村 雄一 専務取締役営業統括 2001年大和証券入社。2009年同社入社。エンバイオ代表取締役社長等を歴任し、2024年より専務取締役就任。香港・上海子会社や味の素コージンバイオの役員も兼務し現職。
對比地 久義 取締役研究・細胞加工統括 産総研等の研究員を経て2009年同社入社。バイオ研究部長、執行役員研究・細胞加工統括を経て2024年より取締役就任。金沢医科大学非常勤講師や子会社役員も兼務し現職。


社外取締役は、原稔(税理士・原稔税理士事務所所長)、水上亮比呂(公認会計士・水上亮比呂公認会計士事務所代表)、山本龍太朗(弁護士・弁護士法人大江橋法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「組織培養事業」「微生物事業」「細胞加工事業」事業を展開しています。

(1) 組織培養事業


ヒト、動物、昆虫などの細胞を増殖させるための細胞培養用培地の開発・製造・販売を行っています。主な顧客は大学、企業、医療機関などです。特に再生医療分野で使用される無血清培地に注力しており、間葉系幹細胞や免疫細胞(T細胞など)を培養する培地、抗体医薬品製造用のCHO細胞用培地などをラインナップしています。

収益は、培地製品の販売代金として顧客から受領します。近年は再生医療分野やバイオ医薬品製造などの産業用途での需要が拡大しています。運営は主にコージンバイオ株式会社が行っており、中国市場では子会社の高金生物科技(上海)有限公司が、国内の一部製造業務は関連会社の味の素コージンバイオ株式会社が担っています。

(2) 微生物事業


感染症や食品汚染の原因となる微生物を特定するための細菌検査用培地や、体外診断用医薬品(検査キット)の開発・製造・販売を行っています。製品は医療機関、食品メーカー、製薬・化粧品メーカーなどで利用されています。新型コロナウイルスやインフルエンザなどの抗原検査キットも主力製品の一つです。

収益は、検査用培地や検査キットの製品販売代金となります。細菌検査用培地は顧客の用途に応じて液体、固体、半流動などの形態で提供されます。運営はコージンバイオ株式会社および連結子会社のエンバイオ株式会社が担っており、エンバイオ株式会社は同社の代理店として製品販売を行っています。

(3) 細胞加工事業


医療機関から依頼を受け、免疫細胞や幹細胞などの特定細胞加工物を製造する受託サービスを提供しています。また、医療機関が再生医療を提供する際に必要な法規対応サポートも行っています。医療機関で採取された患者の組織を同社の施設で培養・加工し、医療機関へ納品するビジネスモデルです。

収益は、細胞加工の受託料や法規対応サポートの手数料として医療機関から受領します。自社製の細胞培養用培地や細菌検査用培地を使用することで原価を抑えられる点が特徴です。運営はコージンバイオ株式会社が行っており、特定細胞加工物製造の許可を取得した施設にて業務を実施しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な右肩上がりで推移しており、直近の2025年3月期には52億円に達しました。利益面では、2024年3月期に一時的な利益率の低下が見られましたが、2025年3月期には経常利益11億円、利益率20.5%へと回復・成長しています。全体として増収基調を維持しつつ、高い収益性を確保していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 33億円 39億円 47億円 48億円 52億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 7億円 9億円 12億円 6億円 11億円
利益率(%) 20.5% 23.3% 26.2% 13.3% 20.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 6億円 8億円 2億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は39.4%から45.4%へと大きく改善しました。営業利益も約10億円となり、営業利益率は19.0%と高い水準を記録しています。これは売上原価の抑制や高付加価値製品の販売が寄与していると考えられ、収益構造の良化が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 48億円 52億円
売上総利益 19億円 24億円
売上総利益率(%) 39.4% 45.4%
営業利益 6億円 10億円
営業利益率(%) 12.5% 19.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3.5億円(構成比25.2%)、支払手数料が2.2億円(同16.3%)を占めています。また、研究開発費は1.7億円(同12.3%)となっています。

(3) セグメント収益


組織培養事業は売上が約19%増加し、利益も順調に伸長しています。微生物事業は売上が約8%増加し、前期の赤字から黒字転換を果たしました。一方、細胞加工事業は売上が微減し、利益も約34%減少しており、セグメント間で好不調が分かれる結果となりました。全体としては組織培養事業が成長を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
組織培養事業 19億円 23億円
微生物事業 17億円 18億円
細胞加工事業 12億円 12億円
連結(合計) 48億円 52億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金と財務活動(株式発行や借入等)による調達資金を合わせて、設備投資などに積極的に資金を投じている「積極型(再建・転換型)」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 8.2億円 9.2億円
投資CF -5.8億円 -10.9億円
財務CF -0.0億円 13.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.8%で市場平均とほぼ同じ水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「敬天愛人成善」を社是とし、「誠心誠意で仕事をする」「最先端の製品を世に出す」「喜びに満ち満ちた会社である」という基本理念を掲げています。また、「顧客第一主義・品質第一主義」をモットーに、バイオテクノロジーの発展に貢献することを使命とし、グローバル企業としての地位確立と培地業界国内シェア1位を目指しています。

(2) 企業文化


同社は社名「コージン」を「考える人(考人)の組織集団」と定義し、社員一人ひとりが自覚と責任を持って品質に取り組む姿勢を重視しています。行動指針として、顧客理解、品質最優先、最先端製品の提供、法規遵守などを掲げており、真摯にモノづくりに向き合う文化が根底にあります。

(3) 経営計画・目標


中期的な目標として、組織培養事業における「アジアNo.1の培地製造販売会社」の地位確立を掲げています。また、細胞加工事業では高品質な受託業者としての地位確立、微生物事業ではアジア圏での感染症検査キットによる新規売上獲得を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


再生医療市場の拡大を背景に、組織培養事業と細胞加工事業を成長の核と位置付けています。組織培養事業では、臨床用途への移行に対応した高性能製品の開発や粉末培地の製造設備新設を進めます。細胞加工事業では、再生医療等製品の製造受託(CDMO事業)への参入や海外展開を計画しています。微生物事業では、アジア圏の感染症ニーズに対応した製品開発により海外市場を開拓します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


市場成長と競争激化に対応するため、多様な専門スキルを持つ人材の採用と育成を重視しており、特にグローバルな人材確保に注力しています。また、組織規模の拡大に合わせて、ガバナンスの強化や従業員サポート、教育の質的向上にも取り組んでいます。多様な人材が活躍できるよう、女性管理職比率や育児休業取得率の向上も目標としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.0歳 6.0年 5,623,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 71.1%
男女賃金差異(正規雇用) 80.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 研究開発について


同社グループは新製品の開発や既存製品の改良を行っていますが、計画通りの進行や期待通りの性能が得られないリスクがあります。開発の遅延や中止が発生した場合、追加投資が必要になったり、投下した研究開発費が回収できなくなったりすることで、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競争環境について


同社グループは技術革新に関する開発競争が激しい環境にあります。競合他社との競争において優位性を維持できない場合や、競争の結果としてシェアを失うような事態になれば、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 事業環境について


細胞加工事業は、インバウンド患者からの加工受託料が主要な収益源の一つとなっています。感染症の流行等によりインバウンド患者が減少した場合、受託件数が減少し、売上が低下するリスクがあります。過去にも新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けた経緯があり、今後の患者数の動向が業績に影響を与える可能性があります。

(4) 海外事業展開に伴うカントリーリスク


香港や中国上海に拠点を有しており、海外での事業展開を行っています。政情不安、経済環境の悪化、労働争議、テロ、戦争、自然災害、感染症の蔓延などの予期せぬ事態が発生した場合、現地での生産・販売活動が停止したり、資産を喪失したりすることで、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。