※本記事は、株式会社京都フィナンシャルグループの有価証券報告書(第3期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 京都フィナンシャルグループってどんな会社?
京都フィナンシャルグループは、近畿地方を中心に幅広く総合的な金融サービスを展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
2023年10月に京都銀行の単独株式移転により持株会社として設立され、東京証券取引所プライム市場に上場しました。同時に京都銀行の子会社であった複数の会社を直接出資子会社として再編しました。その後、2024年4月に事業再生債権回収の会社を設立し、同年6月には積水リースを子会社化しています。
従業員数は連結で3,676名、単体で271名です。筆頭株主は信託業務を行う信託銀行で、第2位は国内の大手生命保険会社、第3位には海外の信託銀行が名を連ねており、多様な金融機関や機関投資家から幅広く支持される安定した資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.37% |
| 日本生命保険相互会社 | 3.84% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行 決済営業部) | 3.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性5名の計11名で構成され、女性役員比率は45.0%です。代表取締役社長は土井伸宏氏が務めています。社外取締役は6名で構成されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 土井伸宏 | 代表取締役社長 | 京都銀行に入行後、人事部長や常務取締役を歴任。同行代表取締役頭取や代表取締役会長を経て、2023年10月より現職。 |
| 幡宏幸 | 代表取締役 | 京都銀行に入行後、コンプライアンス統轄部長やリスク統轄部長を歴任。同行専務取締役を経て、2023年10月より現職。 |
| 安井幹也 | 取締役 | 京都銀行に入行後、人事部長や常務取締役を歴任。同行代表取締役頭取を経て、2023年10月より現職。 |
| 奥野美奈子 | 取締役 | 京都銀行に入行後、金融大学校長や公務・地域連携部長を歴任。同社取締役を経て、2024年6月より京都銀行常務取締役に就任し現職。 |
| 岩橋俊郎 | 取締役(監査等委員) | 京都銀行に入行後、総合企画部長や三条支店長を歴任。同行代表取締役専務や特別顧問を経て、2023年10月より現職。 |
社外取締役は、大藪千穂(岐阜大学教育学部教授)、植木英次(元エヌ・ティ・ティ・データ代表取締役副社長執行役員)、中務裕之(中務公認会計士・税理士事務所代表)、田中素子(元神戸地方検察庁検事正・客員弁護士)、和泉志津恵(滋賀大学データサイエンス学部教授)、赤松玉女(元京都市立芸術大学理事長兼学長)です。
2. 事業内容
同社グループは、銀行業およびその他事業を展開しています。
■銀行業
主に近畿地方の個人および法人顧客に対し、預金、貸出、内国・外国為替などの総合的な銀行サービスを提供しています。地域経済の活性化や顧客の資産形成、事業承継、M&Aなど、多様化するニーズに応える伴走型のソリューションを幅広く展開しています。
主な収益源は、企業や個人への貸出を通じた資金利益や、各種金融商品の販売、振込手数料などの役務取引等利益です。事業の運営は主に中核企業である京都銀行が担っており、強固な顧客基盤と広域なリレーションを活かして安定した収益モデルを構築しています。
■その他事業
銀行業を補完・強化するため、リース業務、クレジットカード業務、金融商品取引業務、コンサルティング業務などの周辺金融サービスを提供しています。また、投資運用業務や事業再生支援なども行い、顧客の経営課題をグループ全体で包括的にサポートしています。
収益源は、設備機器のリース料やクレジットカードの決済手数料、証券取引の仲介手数料、経営コンサルティングのフィーなど多岐にわたります。運営は、京銀リース、京都クレジットサービス、京銀証券、京都総研コンサルティングなどの各専門子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績推移を見ると、経常利益および当期利益は一貫して増加傾向にあります。特に直近の事業年度では、資金利益の順調な伸びに加え、有価証券関連の損益が大幅に改善したことで、利益規模が大きく拡大しました。効率的なポートフォリオ運営と成長投資の成果が着実に表れています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 経常利益 | 436億円 | 509億円 | 1372億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 111億円 | 300億円 | 764億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益状況を見ると、営業利益は前期から大きく増加しており、本業の稼ぐ力が飛躍的に高まっていることがわかります。貸出金利息などの資金利益の増加や役務取引等利益の過去最高更新など、コア業務での好調な推移が利益の大幅な拡大を牽引しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 300億円 | 765億円 |
販売費及び一般管理費のうち、給与・手当が9億円を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
キャッシュ・フローの状況を見ると、営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる事業検討型の傾向を示しています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金やコールローン等の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5016億円 | -10964億円 |
| 投資CF | -849億円 | 7143億円 |
| 財務CF | -240億円 | -351億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も9.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「地域社会の繁栄に奉仕する」という経営理念を掲げています。同社グループがこれまで築き上げてきた顧客基盤や信用・信頼をもとに、豊かな地域社会の創造と地元産業の発展に貢献し続けることを存在理由とし、ステークホルダーと共に持続的な成長の好循環を創出する「価値創造グループ」を目指しています。
■(2) 企業文化
持株会社体制のもと、グループ各社がそれぞれの専門性をさらに高めつつ、グループ内の連携を強化する文化を重視しています。また、「全員活躍」をテーマに掲げ、多様な人材がそれぞれの得意分野を持ち、付加価値を提供できる専門人材として自発的に成長していくことを支援する企業風土を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年4月に開始した新たな中期経営計画では、広域型地方銀行グループとして築いたリレーションを礎にグループ全体の付加価値を最大化することを目指しています。具体的な数値目標として以下を掲げて経営を推進しています。
・ROE(純資産ベース) 8%以上
・ROE(株主資本ベース) 16%以上
・親会社株主帰属利益 900億円以上
・自己資本比率 10%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
競争激化や少子高齢化という環境下において、「トータルソリューション戦略」「地域成長・共創戦略」「不断の最適化戦略」を主要戦略に掲げています。顕在化した課題だけでなく潜在ニーズも含めた全体像を把握したソリューションの提供や、地域課題に応じた共創による新たな収益の柱の構築、デジタル技術の活用等による全体最適目線での経営資本の効果的な投下を進めています。
・OHR(経費/業務粗利益) 40%台
・ベンチャー投資を中心とした成長投資 (純増)1,000億円以上
・IT・DX投資 150億円以上
・人的資本投資 70億円以上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人は財産であり、企業価値向上の源泉である」との考えのもと、「人財配置の最適化」「人財育成」「人事制度改定」の3つを柱とする人材戦略を推進しています。採用競争力の強化や戦略的な配置転換を行うとともに、キャリアマップの制定や自己啓発支援により専門人材の育成を強化し、従業員の能力を最大化する環境整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.9歳 | 16.7年 | 8,415,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.5% |
| 男性育児休業取得率 | 106.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 71.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 69.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(4.30)、プレゼンティーズム(14.1%)、従業員持株会加入率(91.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) オペレーショナル・リスクの顕在化
業務の遂行に際して、法令等遵守態勢の不備や過失による義務違反、不適切なビジネス慣行等から生じる法務リスクが存在します。また、正確な事務を怠ったり不正を行うことによる事務リスク、コンピュータシステムのダウンやサイバー攻撃によるシステムリスクなど、事業運営を揺るがすオペレーショナル・リスクが発生する可能性があります。
■(2) マネー・ローンダリング等に係るコンプライアンスリスク
マネー・ローンダリングやテロ資金供与、拡散金融の防止を経営の最重要課題と位置付けて対策を高度化していますが、万一これらの対策に不備が生じ、同社の業務が不正に利用された場合、国内外の金融当局から制裁を科されたり、取引先から取引を解消されるなどして、業績や財務状況に甚大な悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 金融市場における競争激化と事業環境の変化
金融制度の規制緩和や異業種からの参入、フィンテック企業の台頭に伴い、業態を超えた競争が激化しています。また、「金利のある世界」の到来による預金獲得競争の激化や、少子高齢化・人口減少に伴う地域経済の縮小懸念などがあり、これらに適切に対応できない場合、同社グループの事業や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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