NISSOホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NISSOホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合人材サービス企業グループ。製造派遣・請負を中核に、エンジニア派遣や事務派遣、介護・福祉サービスを展開しています。直近の業績は、売上高1,016億円(前期比4.9%増)、営業利益36億円(同16.3%増)と増収増益を達成しており、堅調に推移しています。


※本記事は、NISSOホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第2期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NISSOホールディングスってどんな会社?


製造系の人材派遣・請負を中心とした総合人材サービスと、有料老人ホーム運営等の介護・福祉サービスを展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1980年に中核事業会社である日総工産が設立され、自動車部品製造等の構内請負を開始しました。2018年に日総工産が東証一部に上場。2023年10月に単独株式移転により持株会社NISSOホールディングスを設立し、東証プライム市場に上場しました。近年では、ベクトル伸和やニコン日総プライムを子会社化するなど、事業領域の拡大を進めています。

連結従業員数は2,384人、単体では26人です。筆頭株主は創業者の資産管理会社であるNSホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
NSホールディングス 42.17%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.98%
日本カストディ銀行(信託口) 5.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は清水竜一氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
清水 竜一 代表取締役社長執行役員 1988年日総工産入社。取締役副社長を経て2004年社長就任。2023年10月より現職。
藤野 賢治 取締役執行役員 1994年日総工産入社。採用部執行役員、管理本部上席執行役員等を経て2025年6月より現職。
田中 陽一郎 取締役執行役員 2001年日総工産入社。経営企画本部本部長等を経て2025年6月より現職。
野村 健一 取締役執行役員 1994年日総工産入社。広報・IR本部上席執行役員等を経て2025年6月より現職。
遠藤 太嘉志 取締役執行役員 2000年日総工産入社。人材開発本部上席執行役員等を経て2025年6月より現職。


社外取締役は、福井順一(元共同通信社常務取締役)、浜田幸輝(元千歳コーポレーション常務取締役)、大野美樹(法律事務所クレイン弁護士)、坂野英雄(坂野公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合人材サービス」および「介護・福祉サービス」事業を展開しています。

(1) 総合人材サービス


製造派遣・製造請負を中心とした製造生産系人材サービス、エンジニア派遣・SESを行うエンジニア系人材サービス、一般事務派遣・BPOを行う事務系人材サービスを提供しています。自動車、半導体、電子機器メーカー等が主な顧客です。また、高年齢者や障がい者の雇用促進も行っています。

収益源は、派遣先企業や請負発注者から受け取る派遣料金や請負代金です。運営は主に中核子会社である日総工産が行っていますが、事務系派遣等は日総ブレイン、エンジニア派遣等は日総工産やベクトル伸和、ニコン日総プライム等が担っています。

(2) 介護・福祉サービス


有料老人ホームの運営による施設介護サービスや、在宅介護サービスを提供しています。横浜市や福島県いわき市を中心に展開しており、入居者や在宅での介護を必要とする利用者が顧客となります。

収益源は、利用者から受け取る入居一時金や月額利用料、介護保険制度に基づく介護報酬等です。運営は主に日総ニフティが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第1期は変則決算(6ヶ月間)であったため単純比較はできませんが、第2期の売上高は1,000億円を超え、事業規模は拡大傾向にあります。経常利益率は3%台半ばで推移しており、安定した収益性を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 969億円 1,016億円
経常利益 31億円 36億円
利益率(%) 3.2% 3.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約16.5%から17.2%へと改善傾向にあります。販管費も増加していますが、増収効果により営業利益は増加しており、本業の収益力は向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 969億円 1,016億円
売上総利益 160億円 174億円
売上総利益率(%) 16.5% 17.2%
営業利益 31億円 36億円
営業利益率(%) 3.2% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が50億円(構成比36%)、募集費が18億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


総合人材サービスは請求単価の上昇やエンジニア系人材の増加により増収増益となりました。介護・福祉サービスも微増収となりましたが、光熱費等のコスト増により利益は微減となりました。全体として主力の人材サービスが牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
総合人材サービス - 985億円
介護・福祉サービス - 31億円
連結(合計) 969億円 1,016億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、事業活動を通じて得た資金で投資を行い、借入金の返済や配当金の支払いを行っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、本業で得た利益が主な収入源となり、税金等の支払いを吸収してプラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券や固定資産の取得による支出が主な要因でマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や配当金の支払いによる支出が主な要因でマイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 32億円 17億円
投資CF -13億円 -21億円
財務CF -21億円 -11億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業理念を「人を育て 人を活かす」と定めています。ミッションとして「働く機会と希望を創出する」を掲げ、企業と人の成長を支援する人材ソリューションサービスを通じて、働く人がやりがいを持ち成長できる職場作りと、社会・産業構造の変化に対応できるサービスの提供を目指しています。

(2) 企業文化


「働きやすい職場づくり」を重要課題(マテリアリティ)の一つとし、従業員満足と顧客満足の最大化を追求しています。また、人権と労働、環境、安全衛生、倫理の方針を定めた「サステナビリティ方針」に基づき、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画の最終年度である2028年3月期に向けた数値目標を掲げています。
* 売上高成長率(CAGR):12.3%以上
* 営業利益率:5%以上
* ROE:平均20%以上
* ROIC:平均15%以上
* 財務レバレッジ:2.5倍以下

(4) 成長戦略と重点施策


「稼ぐチカラ」の強化に向け、製造派遣・請負等のコア領域の深化と、エンジニア派遣等の注力領域の探索を両立させる方針です。特に自動車・半導体産業等の人材ニーズに対し、教育研修施設を活用した人材育成に注力しています。また、M&Aやアライアンスによる事業拡大も推進しています。
* エンジニア系社員比率:2031年3月期までに30%
* ダイバーシティ比率:2031年3月期までに40%

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材育成」と「ダイバーシティ」を最重要視しています。独自の研修施設を活用して製造・エンジニア人材を育成し、高付加価値化を図るとともに、リスキリング機会の提供も行っています。また、女性、高年齢者、外国人、障がい者など多様な人材が活躍できる環境整備(DE&I)を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 49.8歳 19.9年 7,783,537円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 35.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.1%
男女賃金差異(正規雇用) 81.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.3%


※上記数値は主要な連結子会社である日総工産株式会社の実績です。連結全体では女性管理職比率9.0%、男性育児休業取得率39.0%、男女賃金差異(全労働者)74.6%等となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンジニア系比率(12.6%)、ダイバーシティ比率(31.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 賃金相場上昇による人員確保難


労働人口の減少に伴い、人材確保コストや維持費用が増加するリスクがあります。特に、有効求人倍率の高止まりや最低賃金の引き上げは、採用難易度を高める要因となります。これに対し、同社グループでは多様な働き方の実現や、採用コスト上昇分を反映した適切な単価交渉を行うことで、影響の最小化を図っています。

(2) 特定業界・企業への依存


売上の大部分を製造系人材サービスが占めており、特に自動車関連や電子デバイス関連メーカーへの依存度が高くなっています。主要取引先の生産変動や契約変更が生じた場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。取引先の分散や新規開拓により、特定企業への依存リスク低減に努めています。

(3) 外国人労働者の増加に伴う課題


事業計画において外国人材の活用機会が増加していますが、就業環境の整備が不十分な場合、退職者の増加や法令違反、訴訟リスク等が発生する可能性があります。これに対応するため、専門部署の設置や士業の活用を通じ、各国の文化や法令に即した環境整備を進めています。

(4) レピュテーションリスク


採用活動や営業活動においてSNS等を活用していますが、不適切な情報発信や風評被害が拡散した場合、企業ブランドや社会的信用が低下するリスクがあります。マニュアルの整備や教育の徹底、情報の継続的な監視を行うことで、リスクの低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。