※本記事は、NISSOホールディングス株式会社の有価証券報告書(第3期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. NISSOホールディングスってどんな会社?
製造生産系やエンジニア系を中心とした総合人材サービスを展開し、働く機会と希望を創出する企業です。
■(1) 会社概要
1980年8月に日総工産を設立し、自動車部品等の製造構内請負を開始しました。2018年3月に東証一部へ上場し、2020年1月にはニコンと合弁会社を設立しています。2023年10月に単独株式移転によりNISSOホールディングスを設立して持株会社体制へ移行し、2025年6月にはMan to Manホールディングス等を子会社化して事業基盤を拡大しています。
現在の従業員数は連結で2,746名、単体で21名です。筆頭株主は事業会社であるNSホールディングスで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は個人株主の清水唯雄氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| NSホールディングス | 41.33% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.03% |
| 清水唯雄 | 3.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は清水竜一氏が務めており、社外取締役は4名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清水竜一 | 代表取締役社長執行役員 | 1988年日総工産入社。豊田営業所長、生産事業本部長等を経て2004年同社代表取締役社長。2023年当社代表取締役社長執行役員兼CEO。2025年6月より現職。 |
| 藤野賢治 | 取締役執行役員 | 1994年日総工産入社。採用部長、事業本部上席執行役員等を経て2023年同社取締役専務執行役員兼COO。2024年当社取締役専務執行役員兼COO。2025年6月より現職。 |
| 田中陽一郎 | 取締役執行役員 | 2001年日総工産入社。経営企画部部長等を経て2024年同社執行役員兼経営企画本部本部長。2025年当社経営企画部部長。2026年4月より現職。 |
| 野村健一 | 取締役執行役員 | 1994年日総工産入社。広報・IR本部上席執行役員、社長室執行役員等を経て2023年同社執行役員。2025年6月より現職。 |
| 遠藤太嘉志 | 取締役執行役員 | 2000年日総工産入社。西日本エリアエリア・マネージャー等を経て2021年日総ぴゅあ代表取締役社長。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、福井順一(元スタッフサービス・ホールディングス取締役)、浜田幸輝(元千歳コーポレーション常務取締役)、大野美樹(法律事務所クレイン開設・弁護士)、坂野英雄(坂野公認会計士事務所開設・所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「総合人材サービス」および「その他のサービス」を展開しています。
■(1) 総合人材サービス
製造派遣や製造請負を行う製造生産系、製造領域やIT関連のエンジニア派遣およびSESを行うエンジニア系、一般事務派遣やBPOを行う事務系の人材サービスを提供しています。また、高年齢者や障がい者による軽作業請負等も展開し、メーカーなどを主要な顧客としています。
収益は、労働の対価としての時間請求や成果物の対価としての出来高請求により顧客から得ています。運営は主に日総工産やMan to Man、日総ブレインなどのグループ各社が行っています。
■(2) その他のサービス
介護・福祉サービス、各種警備サービス、製造系システム開発受託などを提供しています。施設介護では介護付有料老人ホームの運営を通じて入居者へのサービスを提供し、警備領域では公共施設等の施設警備や交通警備などを展開しています。
施設介護では、入居時に受領する入居一時金や入居後の月額利用料を主な収益源としています。運営は主に日総ニフティやオールジヤパンガードなどのグループ会社が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の売上高は右肩上がりで成長を続けており、1,100億円を突破しました。一方で経常利益や当期利益は一時的に増加したものの、直近では先行投資や販管費の増加によりやや減少しており、利益率は3%前後で推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 969億円 | 1,016億円 | 1,114億円 |
| 経常利益 | 31億円 | 36億円 | 32億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 3.5% | 2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 9億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大していますが、売上総利益率はわずかに低下しています。また、M&Aに伴う間接人員の増加やシステム投資等のコスト増の影響で営業利益は減少し、営業利益率もやや低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,016億円 | 1,114億円 |
| 売上総利益 | 174億円 | 188億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.2% | 16.9% |
| 営業利益 | 36億円 | 32億円 |
| 営業利益率(%) | 3.5% | 2.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が58億円(構成比37.1%)、募集費が18億円(同11.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である総合人材サービスは、M&Aによる在籍人数の増加などが寄与して順調に売上を伸ばしています。その他のサービスも介護施設の高稼働率などが要因となり、ともに増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 総合人材サービス | 985億円 | 1,078億円 |
| その他のサービス | 31億円 | 37億円 |
| 連結(合計) | 1,016億円 | 1,114億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 15億円 |
| 投資CF | -21億円 | -6億円 |
| 財務CF | -11億円 | -33億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も53.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業理念である「人を育て 人を活かす」に則り、ミッションを「働く機会と希望を創出する」と定めています。企業と人の成長を支援する人材ソリューションサービスを通じて、働く人がやりがいを持ち、成長していける職場を作り上げ、社会変化や産業構造変化に対応できるサービスの提供を目指しています。
■(2) 企業文化
ミッションの実現に向けたマテリアリティ(重要課題)として「働きやすい職場づくり」「社会変化や構造変化への対応」「ガバナンスの強化」を定義しています。従業員に耳を傾けてエンゲージメントを向上させ、やりがいと働きやすさの両立ができる環境構築を重視する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期を初年度とする3か年の中期経営計画を策定しています。最終年度である2028年3月期の主要な経営指標として以下の目標を掲げて事業の持続的な成長と企業価値の向上を図ります。
* 売上高1,500億円
* 営業利益75億円
* 営業利益率5%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の高付加価値化や事業ポートフォリオの見直しを進めるとともに、M&Aや資本業務提携を通じた成長領域への投資を推進します。また、デジタル技術を活用して経営管理機能や事業運営基盤を強化し、付加価値の高い人材育成によるサービス拡大を図ります。
* 売上高成長率(CAGR)12.3%以上
* ROE平均20%以上、ROIC平均15%以上
* 財務レバレッジ2.5倍以下
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の確保に向けてグローバル人材の活用や多様な働き方の実現を進めています。また、全国に教育研修施設を展開し、独自の「人材育成モデル」を通じて半導体や蓄電池の製造領域などに向けた高付加価値人材の育成やリスキリングの機会を提供し、従業員の能力開発を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.0歳 | 19.6年 | 7,268,247円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.7% |
| 男性育児休業取得率 | 51.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 79.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 82.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 79.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ダイバーシティ比率(34.2%)、エンジニア系社員比率(12.4%)、GHG排出量(2,834t-CO2)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 賃金相場上昇による人員確保難・コストの増加
同社グループは「人」の企業であり、人員確保コストや維持費用等の増加は業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、給与体系の変更や人事制度の見直しを進め、多様な就業先の確保と多様な働き方の実現を図りつつ、適切な単価交渉を実施して対応しています。
■(2) 外国人労働者の増加に伴う就業環境整備の不足
事業計画に則り外国人材の活用機会が増加していますが、就業環境整備が不足した場合、退職者の増加や法令違反、集団訴訟等のリスクにつながる可能性があります。専門の部署の設置や士業の活用等により、各国の文化に合わせた環境整備と法令順守を進めています。
■(3) 大型の取引先との契約終了・縮小に伴う影響
特定の大型取引先との契約終了や縮小は、グループの業績や社員の雇用維持に影響を及ぼすリスクがあります。自社の教育研修施設を活用したリスキリングによるジョブチェンジの仕組み導入や、新規取引先の拡大により、特定企業に依存しない事業運営体制の構築を目指しています。



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