※本記事は、リケンNPR株式会社の有価証券報告書(第3期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リケンNPRってどんな会社?
自動車・産業機械部品や配管・建設機材などをグローバルに展開する持株会社です。
■(1) 会社概要
同社は、2023年10月にリケンと日本ピストンリングの経営統合により共同持株会社として設立され、上場を果たしました。2024年2月にシンワバネスを子会社化し熱エンジニアリング事業を強化しています。2026年4月には事業部体制への移行や製造部門の子会社化などの組織再編を実施し、事業持株会社へと移行しました。
現在の体制として、従業員数は連結6,511名、単体438名となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行であり、第3位には取引金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.86% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.16% |
| みずほ銀行 | 3.62% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長兼会長執行役員兼CEOを務める前川泰則氏らが経営を牽引し、社外取締役比率は41.7%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 前川泰則 | 代表取締役会長兼会長執行役員兼CEO | リケン入社後、海外委員会委員長等を経て2022年より同社代表取締役社長兼CEO兼COO。2023年にリケンNPR代表取締役会長兼CEOに就任し、2025年より現職。 |
| 若林資典 | 代表取締役社長兼社長執行役員兼COO | 日本興業銀行入行後、みずほ銀行副頭取、みずほフィナンシャルグループ執行役常務などを歴任。2024年にリケンNPR顧問に就任し、2026年より現職。 |
| 坂場秀博 | 取締役専務執行役員兼CIO兼CISO | リケン入社後、リケンメキシコ社長、経営管理本部長などを歴任。2023年にリケンNPR取締役に就任し、2026年より現職。 |
| 楊忠亮 | 取締役常務執行役員 | 日本ピストンリング入社後、中国の関連会社で董事長兼総経理などを歴任。2013年より同社執行役員を務め、2024年にリケンNPR取締役に就任し、2025年より現職。 |
| 高橋輝夫 | 取締役 | 日本ピストンリング入社後、製品技術第二部長などを経て2020年に同社代表取締役社長に就任。2023年よりリケンNPR代表取締役社長兼COOを務め、2026年より現職。 |
| 小林弘幸 | 取締役 | リケン入社後、リング技術開発部長などを経て2023年に同社常務執行役員兼CTOに就任。2025年にリケンNPR開発本部長に就任し、2026年より現職。 |
社外取締役は、平野英治(元日本銀行理事)、黒澤昌子(政策研究大学院大学教授)、本多修(元みずほ証券執行役員)、佐久間達哉(元法務省法務総合研究所長)、小野貴裕(朝日生命保険取締役常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車・産業機械部品事業」「配管・建設機材事業」「熱エンジニアリング事業」および「その他」事業を展開しています。
■自動車・産業機械部品事業
自動車用、船舶用、航空機用等のピストンリングやシール部品、バルブシートなどの製造・販売を行っています。国内外の自動車メーカーや産業機械メーカーが主な顧客です。
顧客への製品販売により収益を得ています。運営は主にリケンや日本ピストンリング、および国内外の多数の製造・販売子会社が行っています。
■配管・建設機材事業
建築・建設業界等を対象に、ガスや建築設備向けの配管継手などの製造・販売を行っています。
製品の販売を通じて収益を得ています。運営は主に日本継手が行い、リケンや理研商事も販売業務に携わっています。
■熱エンジニアリング事業
半導体・エレクトロニクス関連産業等を対象に、工業炉や電熱材の製造・販売を行っています。
製品の販売によって収益を得ています。運営は主にリケンヒートテクノやシンワバネスが行っています。
■その他
電波暗室設備の製造・販売や、建設請負工事、工場内の営繕修理などのサービス事業を展開しています。
設備販売や請負工事の対価として収益を得ています。運営は主にリケン環境システムやアール・ケー・イーなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去3期間の業績を見ると、売上高は経営統合による規模拡大で一時増加したものの直近は減少に転じています。一方、経常利益は毎期順調に増加しており、収益性の向上が伺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,386億円 | 1,703億円 | 1,631億円 |
| 経常利益 | 116億円 | 147億円 | 173億円 |
| 利益率(%) | 8.4% | 8.6% | 10.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 50億円 | 27億円 | 81億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年比で減少しましたが、売上総利益と営業利益は増加しています。原価低減や価格適正化の取り組みが奏功し、売上総利益率および営業利益率ともに改善傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,703億円 | 1,631億円 |
| 売上総利益 | 408億円 | 422億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.0% | 25.9% |
| 営業利益 | 118億円 | 128億円 |
| 営業利益率(%) | 6.9% | 7.9% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が77億円(構成比26%)、研究開発費が42億円(同14%)を占めています。売上原価は1,209億円で、売上高全体の74%を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の自動車・産業機械部品事業は減収となったものの、生産性向上などの効果で大幅な増益を達成しました。一方、配管・建設機材事業や熱エンジニアリング事業は減収減益となっています。全体としては主力事業の改善が牽引し、利益ベースで成長しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車・産業機械部品事業 | 1,277億円 | 1,231億円 | 91億円 | 1,04億円 | 8.5% |
| 配管・建設機材事業 | 187億円 | 172億円 | 12億円 | 6億円 | 3.7% |
| 熱エンジニアリング事業 | 96億円 | 92億円 | 10億円 | 9億円 | 9.6% |
| その他 | 144億円 | 135億円 | 11億円 | 15億円 | 11.0% |
| 連結(合計) | 1,703億円 | 1,631億円 | 118億円 | 128億円 | 7.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 175億円 | 163億円 |
| 投資CF | -71億円 | -49億円 |
| 財務CF | -84億円 | -104億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
Mission「生み出す力で人と地球の『今と未来』を支えます」、Vision「人と技術の融合によりイノベーションを創出し、変革に挑戦し続けます」を掲げています。社会の一員として義務を果たし、持続可能な社会の実現に向けた努力と挑戦を追求しています。
■(2) 企業文化
Valueとして「信頼の『環』」「成長の『環』」「社会の『環』」を重視しています。ステークホルダーとのつながりを大切にし、互いの価値を認めて尊重し合いながら新たな挑戦を続けることで、社会課題の解決に貢献する価値観を掲げています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度を最終年度とする第一次中期経営計画において、資産効率を重視した経営と株主還元の強化を通じ、企業価値の向上を目指しています。
* 売上高:1,800億円
* 経常利益率:9%以上
* ROE:8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「既存事業の収益力向上」と「ネクストコア事業の拡大」を軸とする事業ポートフォリオ改革を推進しています。ピストンリング事業等の競争力強化に加え、半導体関連や電動化ユニット等の新領域育成に経営資源を積極投入し、次代の中核事業化を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本戦略のメインテーマとして「成長を担う人材基盤の拡充」と「変革への挑戦を後押しできる企業風土の醸成」を掲げています。人材ポートフォリオの再構築や、個々の主体的・自律的なキャリア形成支援に注力し、多様な人材が活躍できる職場づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.1歳 | 19.8年 | 7,958,396円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.5% |
| 男性育児休業取得率 | 57.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 80.9% |
※上記数値は、主要な連結子会社であるリケンの実績です。提出会社(リケンNPR)は全員が出向者のため、出向元にて算出しています。
また、同社は「人的資本投資」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員人材開発投資額(64百万円)、エンプロイーエンゲージメント(48.5%)、行動規範の実践度率(92%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 乗用車エンジン向け部品への高依存
売上の半分程度を占める乗用車エンジン向け部品は、自動車産業の電動化等による市場縮小の影響を受ける可能性があります。同社は非内燃機関領域の育成に資源を投入していますが、環境変化が予想を超えた場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 原材料価格の上昇とサプライチェーンの遅延
主要材料である金属材料や樹脂系原料の価格は市況により変動します。同社は調達先の分散化や代替材料の選定、価格転嫁を進めていますが、急激な価格高騰や中東情勢等による物流遅延が続いた場合、製造コストが上昇する可能性があります。
■(3) 海外事業展開と関税政策変更の影響
同社は北中米、欧州、アジア等の海外拠点で生産・販売を行っています。政治経済の混乱に加え、米国関税政策の変更に伴う関税レートの引き上げ等が発生した場合、販売・製造コストの上昇を通じてグローバル事業の収益に影響を及ぼす可能性があります。



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