※本記事は、リケンNPR株式会社 の有価証券報告書(第2期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リケンNPRってどんな会社?
同社グループは、自動車エンジンのピストンリングなどを主力とする「自動車・産業機械部品事業」と「配管・建設機材事業」を展開する企業です。
■(1) 会社概要
2022年、リケンと日本ピストンリングは経営統合に関する基本合意を締結しました。2023年10月、両社の共同株式移転により、共同持株会社として同社が設立され、東証プライム市場へ上場しました。2024年には、リケンがシンワバネスの株式を取得して子会社化するなど、グループ体制の強化を進めています。
同社グループの連結従業員数は6,809名、単体では378名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は金融機関のみずほ銀行、第3位は生命保険会社の日本生命保険相互会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.96% |
| みずほ銀行 | 3.62% |
| 日本生命保険相互会社 | 3.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役会長兼会長執行役員兼CEOは前川 泰則氏です。社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 前川 泰則 | 代表取締役会長兼会長執行役員兼CEO | 1986年リケン入社。同社取締役、代表取締役社長兼CEO兼COO等を経て、2025年4月より現職。 |
| 高橋 輝夫 | 代表取締役社長兼社長執行役員兼COO | 1981年日本ピストンリング入社。同社取締役、代表取締役社長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 若林 資典 | 取締役副社長執行役員 | 1987年日本興業銀行入行。みずほフィナンシャルグループ取締役兼執行役グループCRO等を経て、2025年4月より現職。 |
| 坂場 秀博 | 取締役常務執行役員兼CIO兼CISO | 1985年リケン入社。同社取締役常務執行役員兼CIO兼CISO等を経て、2025年4月より現職。 |
| 藤田 雅章 | 取締役常務執行役員 | 1984年日本ピストンリング入社。同社取締役常務執行役員等を経て、2025年4月より現職。 |
| 楊 忠亮 | 取締役常務執行役員 | 1995年日本ピストンリング入社。同社取締役常務執行役員等を経て、2025年4月より現職。 |
| 小林 弘幸 | 取締役常務執行役員 | 1985年リケン入社。同社常務執行役員兼CTO開発本部長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 渡辺 孝栄 | 取締役(監査等委員) | 1983年リケン入社。同社取締役常務執行役員兼CTO等を経て、2023年10月より現職。 |
| 越場 裕人 | 取締役(監査等委員) | 1988年日本ピストンリング入社。同社執行役員経理部長、監査役等を経て、2023年10月より現職。 |
社外取締役は、平野 英治(元日本銀行理事)、黒澤 昌子(政策研究大学院大学教授)、本多 修(元証券ジャパン取締役専務執行役員)、佐久間 達哉(元法務省法務総合研究所長)、小野 貴裕(朝日生命保険相互会社取締役常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車・産業機械部品事業」「配管・建設機材事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 自動車・産業機械部品事業
主にピストンリング、バルブシートなどの自動車・産業機械用部品の製造・販売を行っています。リケン、日本ピストンリングなどが製造・販売を行うほか、海外ではリケンオブアメリカ社、エヌピーアールオブヨーロッパ社などが販売を担っています。顧客は自動車メーカーや産業機械メーカーなどです。
主な収益源は、製品の販売代金です。運営は主に、リケン、日本ピストンリング、リケンキャステック、日ピス福島製造所、および海外の現地法人などが行っています。また、一部の製造工程については、理研機械、リケンEP、日本メッキ工業などが下請けを行っています。
■(2) 配管・建設機材事業
配管用継手などの配管・建設機材の製造・販売を行っています。主な製品には管継手などがあり、建設業界や設備工事関連の顧客へ提供されています。
主な収益源は、製品の販売代金です。運営は主に、日本継手などが製造・販売を行っています。また、リケンおよび理研商事は、リケンCKJVが製造した製品を仕入れて販売を行っています。
■(3) その他
電波暗室、工業炉、電熱材の製造・販売、および建設請負工事、環境整備などのサービス事業を行っています。また、他社から仕入れた商品等の販売も行っています。
主な収益源は、製品の販売代金や工事請負代金などです。運営は主に、リケン環境システム(電波暗室)、リケンヒートテクノおよびシンワバネス(工業炉、電熱材)、アール・ケー・イー(サービス事業)などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第2期は、売上高、経常利益ともに前期を上回りました。利益率も堅調に推移しています。当期純利益は減少しましたが、これは特別損失の計上などが影響しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,386億円 | 1,703億円 |
| 経常利益 | 116億円 | 147億円 |
| 利益率(%) | 8.4% | 8.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 263億円 | 88億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益率も向上しました。営業利益率は上昇しており、本業の収益性が改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,386億円 | 1,703億円 |
| 売上総利益 | 300億円 | 408億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.6% | 23.9% |
| 営業利益 | 88億円 | 118億円 |
| 営業利益率(%) | 6.3% | 6.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が85億円(構成比29.2%)、運賃及び荷造費が33億円(同11.4%)を占めています。売上原価においては、材料費などが主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
「自動車・産業機械部品事業」は売上高・利益ともに増加し、全体の業績を牽引しました。「配管・建設機材事業」も増収増益となり、利益率は6.4%となりました。「その他」事業も売上高・利益ともに大きく伸長しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車・産業機械部品事業 | 1,080億円 | 1,277億円 | 65億円 | 91億円 | 7.1% |
| 配管・建設機材事業 | 174億円 | 187億円 | 6億円 | 12億円 | 6.4% |
| その他 | 131億円 | 240億円 | 12億円 | 21億円 | 8.6% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | 5億円 | -5億円 | - |
| 連結(合計) | 1,386億円 | 1,703億円 | 88億円 | 118億円 | 6.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金の範囲内で投資活動と借入金の返済を行っており、財務体質は健全な状態と言えます(健全型)。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 185億円 | 175億円 |
| 投資CF | -135億円 | -71億円 |
| 財務CF | -86億円 | -84億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「生み出す力で人と地球の「今と未来」を支えます」をMission(使命・存在意義)として掲げています。また、「人と技術の融合によりイノベーションを創出し、変革に挑戦し続けます」というVision(目指す姿)のもと、すべてのステークホルダーの立場を尊重し、持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「Value(リケンNPRが提供する価値)」として、「信頼の『環』」「成長の『環』」「社会の『環』」を定めています。ステークホルダーとのつながりを大切にし、高品質な製品とソリューションの提供を通じて企業価値を向上させること、互いの価値を認め合い挑戦を続けることで会社と従業員が共に成長すること、そして社会課題解決に貢献することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは2026年度を最終年度とする第一次中期経営計画を策定しています。定量目標として以下を掲げています。
* 売上高:1,800億円
* 経常利益率:9%以上
* ROE:8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「経営統合によるシナジー創出」「事業ポートフォリオ改革」「サステナビリティ経営の強化・成長基盤の整備」を柱としています。エンジン関連部品等の既存事業では収益力強化を進める一方、次代を担うネクストコア事業(熱エンジニアリング、EMC分野等)の拡大・基盤強化を推進します。また、事業ポートフォリオ改革に向けた積極投資や株主還元の充実化など、戦略的キャッシュアロケーションを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「成長を担う人材基盤の拡充」「変革への挑戦を後押しできる企業風土の醸成」をテーマに掲げています。事業戦略と連動した人材ポートフォリオの構築、主体的・自主的なキャリア形成支援、従業員エンゲージメントの向上、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)、安心安全な職場環境の構築の5つを重要施策として推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.9歳 | 18.8年 | 7,712,651円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 3.4% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 61.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 80.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 78.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 78.3% |
※上記数値は、同社の主要な連結子会社である株式会社リケンの実績(2025年3月31日時点または2024年度実績)です。提出会社であるリケンNPR株式会社は全員が出向者のため、出向元にて算出されています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済・金融市場動向に関するリスク
同社グループ製品は自動車や産業機械等に多く採用されているため、世界的な景気後退により需要が減少する可能性があります。また、原材料価格の上昇や為替レートの変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。これらに対し、原価低減や為替予約等の対策を行っていますが、想定を超える変動があった場合、影響を受ける可能性があります。
■(2) 事業及び外部の事業環境に関するリスク
北米、欧州、アジア等の海外拠点で生産・販売を行っているため、各国の政治・経済・社会的混乱や為替変動の影響を受ける可能性があります。また、自動車産業の電動化等の構造変化により、主力であるエンジン部品事業が影響を受ける可能性があります。これに対し、非ICE領域の育成等の事業ポートフォリオ改革を進めています。
■(3) 業務運営に関するリスク
製品の品質瑕疵による大規模なリコールや製造物責任賠償、環境汚染、サイバー攻撃によるシステム停止や情報漏洩等が発生した場合、業績や社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。これらに対し、品質保証体制や環境マネジメント体制の構築、情報セキュリティ強化等の対策を講じています。
■(4) 法的手続き・災害等のイベント性のリスク
グローバル展開に伴う各国の法令・規制違反や、大規模災害・感染症等による操業停止が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、コンプライアンス体制の強化や事業継続計画(BCP)の策定・運用等の対策を行っています。



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