くすりの窓口 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

くすりの窓口 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場。調剤薬局や医療機関向けに、予約システム等の「メディア」、医薬品売買の「みんなのお薬箱」、レセコン等の「基幹システム」事業を展開。直近決算では売上高が前期比28.4%増、経常利益が46.3%増と大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社くすりの窓口 の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. くすりの窓口ってどんな会社?


医療・介護・患者をつなぐプラットフォームとして、薬局予約サイトや医薬品売買支援などを展開する企業です。

(1) 会社概要


2004年にサイバーテレコムとして設立されました。2015年にEPARKの調剤薬局部門として実質的な事業を開始し、2016年に事業を譲受しました。2020年にくすりの窓口へ商号変更し、2023年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。

連結従業員数は484名(単体322名)です。筆頭株主は会長の田中伸明氏が関与する投資事業組合で、第2位は元親会社で業務提携先のEPARK、第3位はベンチャーキャピタルファンドです。

氏名 持株比率
NBSEヘルステック投資事業有限責任組合 27.98%
EPARK 27.93%
SBIイノベーションファンド1号 16.06%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は堤 幸治氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田中 伸明 代表取締役会長 フリービット株式会社代表取締役社長などを経て、2016年より同社代表取締役社長。2020年より現職。
堤 幸治 代表取締役社長 光通信入社後、SBMグルメソリューションズ株式会社代表取締役社長、株式会社EPARK代表取締役副社長などを経て、2020年より現職。
外間 健 取締役管理本部長 ユナイテッドワールド証券株式会社、株式会社EPARKなどを経て、2020年より現職。


社外取締役は、山本 純偉(筑波大学教授)、村岡 丈到(元コニカミノルタ)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア事業」「みんなのお薬箱事業」「基幹システム事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) メディア事業


薬局検索サイト・アプリ「EPARKくすりの窓口」や電子お薬手帳アプリ「EPARKお薬手帳」を運営しています。患者には待ち時間短縮等の利便性を、薬局には業務効率化や生産性向上を提供するサービスです。

収益は主に、加盟する薬局からの処方箋ネット受付に係る手数料収入(ストック売上)です。運営は主に同社が行っています。

(2) みんなのお薬箱事業


医薬品卸と薬局をつなぐプラットフォームとして、医薬品の仕入れサポートサービスや在庫管理・自動発注システム、不動在庫の売買マッチングサービスを提供しています。

収益は、仕入れサポートのコンサルティング料や取引手数料、システム利用料、医薬品売買の手数料です。運営は同社、株式会社J-Seed、株式会社ピークウェルなどが行っています。

(3) 基幹システム事業


調剤薬局、医療機関、介護施設向けに、レセプトコンピュータ、電子薬歴システム、電子カルテ、介護記録システムなどの業務支援システムを開発・販売しています。

収益は、機器納入や初期設定等のショット売上と、システム保守料等のストック売上です。運営は株式会社モイネットシステム、株式会社メディカルJSP、株式会社エーシーエスなどが行っています。

(4) その他事業


健康保険組合からの委託を受け、薬局店頭にて組合加入者に対し生活習慣病等に係る健康保健指導を行う「未病予防事業」などを展開しています。

収益はサービスの提供対価です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面でも経常利益と当期利益が順調に推移しており、特に直近では高い利益成長率を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 46億円 65億円 74億円 87億円 112億円
経常利益 4億円 8億円 9億円 13億円 19億円
利益率(%) 8.2% 12.6% 12.7% 15.2% 17.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 5億円 4億円 9億円 20億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益が拡大しています。売上総利益率は上昇傾向にあり、収益性が向上しています。営業利益率も改善が進んでいます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 87億円 112億円
売上総利益 49億円 65億円
売上総利益率(%) 56.6% 57.8%
営業利益 14億円 20億円
営業利益率(%) 15.7% 17.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が17億円(構成比39%)、支払手数料が7億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのサービス区分で売上が計上されています。メディア事業が主力として全体を牽引し、基幹システム事業も大きく伸長しています。みんなのお薬箱事業は前年を下回りましたが、一定の規模を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
メディア事業 31億円 44億円
みんなのお薬箱事業 35億円 31億円
基幹システム事業 22億円 36億円
その他事業 - 1億円
連結(合計) 87億円 112億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


A. パターン判定と注記
**末期型(支払条件変更による未払金減少)**

B. 表

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 26億円 -53億円
投資CF -18億円 -18億円
財務CF 78億円 -54億円


C. 財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ヘルスケア領域にこれまでにない新しい価値を提供する」との経営方針を掲げています。調剤薬局や医療機関などの顧客の収益と生産性向上に貢献するとともに、個人ユーザーである患者にこれまでにない利便性を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


顧客および個人ユーザーのニーズを汲み取り、最適なサービスを企画・開発して市場に展開し、改善を加えていくPDCAサイクルを迅速かつ適切に回すことを重視しています。また、性別や国籍等にとらわれない多様性のある人材登用を推進する風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、調剤薬局をはじめとする医療関係者にとってなくてはならないプラットフォームになることを目指しています。具体的な数値目標として、顧客数を2025年3月期末の4.4万施設から、2030年3月期末までに10万施設へと拡大することを掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「医・薬・介護、個人ユーザーをつなぐプラットフォーム」の形成を戦略としています。具体的には、EPARKくすりの窓口等のメディア事業における顧客基盤の拡大と利用促進、医薬品仕入れサポート等のソリューション提供による流通改善、医療・介護のデータ連携強化を推進します。また、未病予防事業を第4の柱として育成する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業基盤の強化と成長継続のため、サービス開発や営業部門において優秀な人材を確保・育成し、多様性のある人材を登用することを重視しています。そのために、採用活動の継続、社内研修制度の充実、適切な人材配置、人事評価の実施等を行い、組織の強化に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 32.5歳 3.0年 4,875,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.3%
男性育児休業取得率 28.5%
男女賃金差異(全労働者) 69.6%
男女賃金差異(正規雇用) 71.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 50.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化


顧客である調剤薬局や医療機関のIT投資意欲は、経済環境や景気動向の影響を受けます。また、診療報酬改定などの法的規制の変更が、オンライン診療・服薬指導システムや医薬品仕入れサポートサービスの利用ニーズに影響を与え、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 株式会社EPARK等との関係


同社の事業は、株式会社EPARKから譲受した事業が起源であり、同社とはオフィシャルパートナーシップ契約を締結して共通の会員基盤を利用しています。同社は筆頭株主グループの一員でもあり、契約内容の変更や関係性の変化が生じた場合、事業展開や経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 投資事業組合の株式保有


複数の投資事業組合が大株主となっており、その中には会長が関与する組合やベンチャーキャピタルが含まれます。これらの組合がキャピタルゲインを目的に市場で株式を売却した場合、短期的に株式の需給バランスが変動し、株価に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。