くすりの窓口 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

くすりの窓口 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

くすりの窓口は東証グロース市場に上場し、薬局や医療機関向けの予約サービス「EPARKくすりの窓口」をはじめとするメディア事業や、基幹システムの提供を展開しています。直近の業績は、主力サービスの利用拡大や新規領域への参入により5期連続の増収増益を達成しており、安定した成長トレンドを維持しています。


※本記事は、株式会社くすりの窓口の有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. くすりの窓口ってどんな会社?


薬局・医療機関向けの予約メディアと業務支援システムを展開し、医療と患者をつなぐ事業を行っています。

(1) 会社概要


2004年に光通信の子会社として設立され、2015年にEPARKヘルスケアへ商号変更し実質的な創業を迎えました。2016年にEPARKから薬局向け事業を譲受し、2020年に現在のくすりの窓口へ商号を変更しました。その後も事業を拡大し、2023年10月に東証グロース市場への上場を果たしています。

従業員数は連結で491名、単体で321名です。筆頭株主は事業提携先であるEPARKで、第2位にはSBIイノベーションファンド1号が名を連ねています。また第3位には、同社の代表取締役会長である田中伸明氏が議決権を所有するNBSEが名を連ねており、経営陣の資本関与が見られます。

氏名 持株比率
EPARK 39.40%
SBIイノベーションファンド1号 15.73%
NBSE 5.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は堤幸治氏が務めています。社外取締役比率は約28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
田中 伸明 代表取締役会長 1995年にリセットを設立。フリービット設立や代表取締役社長等を経て、2020年11月より現職。
堤 幸治 代表取締役社長 1999年に光通信へ入社。関連会社の代表取締役社長やEPARKの副社長等を経て、2020年11月より現職。


社外取締役は、山本純偉(筑波大学大学院教授)、村岡丈到(コニカミノルタ出向復帰)です。

2. 事業内容


同社グループは、薬局、医療向けソリューションの開発および販売の単一セグメントとして事業を展開しています。

メディア事業


薬局や医療機関の検索・予約ができるサイトやアプリ「EPARKくすりの窓口」「EPARKお薬手帳」「EPARK病院・クリニック」を提供しています。患者の待ち時間短縮や利便性向上とともに、薬局・医療機関の業務効率化に貢献しています。

主な収益源は、システム利用料やサイトへの掲載費、運用管理費などのストック売上です。運営は主にくすりの窓口が行っており、医療機関向けの「EPARK病院・クリニック」については子会社のメディ・ウェブが運営を担っています。

みんなのお薬箱事業


薬局と医薬品卸売事業者をつなぐプラットフォームとして、医薬品の仕入れサポートサービスや在庫管理の「eオーダーシステム」、さらに薬局間の不動在庫を売買できるマッチングサイト「みんなのお薬箱」を提供しています。

収益源は、コンサルティング等のショット売上のほか、医薬品売買取引に応じた手数料やシステム利用料などのストック売上です。運営はくすりの窓口が行い、売買取引管理はJ-Seed、買取等は子会社のピークウェルが担っています。

基幹システム事業


調剤薬局、医療機関、介護施設向けに、事務処理や情報管理を行う基幹システムを提供しています。薬局向けの電子薬歴システムや調剤監査システム、医療機関向けの電子カルテシステム、介護施設向けの電子記録システムなどを扱っています。

収益源は、機器類納入や初期設定の代行によるショット売上と、継続的な保守料によるストック売上です。システムの開発や販売は、子会社であるモイネットシステム、エーシーエス、メディカルJSP、テクノネットワーク等が分担して行っています。

未病予防事業


子会社を通じて人間ドック及び健康診断の予約サービスを提供するほか、薬局店頭にて健康保険組合加入者に対して生活習慣病等に係る特定保健指導サービスを行っています。発病を未然に防ぐことで、将来の医療費削減を目指す事業です。

主な収益源は、健康診断や人間ドックの受診が発生した際に医療機関から受け取る手数料、及び特定保健指導が行われた際に健康保険組合から受け取る手数料収入というストック売上です。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、主力サービスの利用拡大や新規領域への参入により、毎期安定した成長を遂げています。売上高は第18期の65億円から当期は123億円へとほぼ倍増し、経常利益も順調に拡大を続け、利益率も20%を超える高水準で推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 65億円 74億円 87億円 112億円 123億円
経常利益 8億円 9億円 13億円 19億円 27億円
利益率(%) 12.6% 12.7% 15.2% 17.3% 21.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 4億円 9億円 20億円 30億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益も順調に増加しています。売上総利益率は50%台後半を維持しており、付加価値の高いサービス提供ができていることが伺えます。また、営業利益率も前期の17.4%から21.7%へと大きく改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 112億円 123億円
売上総利益 65億円 70億円
売上総利益率(%) 57.8% 56.5%
営業利益 20億円 27億円
営業利益率(%) 17.4% 21.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比38%)、支払手数料が7億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


メディア事業は処方箋ネット受付件数が伸びたことで順調に推移し、みんなのお薬箱事業も仕入れサポートサービスの顧客獲得が進み増収となりました。基幹システム事業は需要が一巡した反動で微減となりましたが、全体としては増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
メディア事業 44億円 50億円
みんなのお薬箱事業 31億円 35億円
基幹システム事業 36億円 35億円
未病予防事業 - 1億円
その他事業 1億円 1億円
連結(合計) 112億円 123億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業活動で利益を出し、借入などの資金調達によって積極的な投資を行う「積極型」の状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -53億円 29億円
投資CF -18億円 -23億円
財務CF -54億円 22億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は29.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も63.7%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ヘルスケア領域にこれまでにない新しい価値を提供する」という経営方針を掲げています。調剤薬局や医療機関などの生産性向上に貢献し、患者にはこれまでにない利便性を提供することを念頭に置き、社会的な使命として持続可能な医療体制と社会保障の維持を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、顧客の収益と生産性向上に貢献することを重視し、各種事業を展開しています。常に顧客や個人ユーザーのニーズを汲み取り、最適なサービスの企画から短期間での開発、市場への展開、そして改善を加えていくという「PDCAサイクル」を迅速に回し続ける文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、調剤薬局をはじめとする医療関係者にとってなくてはならないプラットフォームになることを目指し、顧客数と個人ユーザー数の拡大を最重要の目標として掲げています。

* 当事業年度末の5.3万施設を2030年3月期末までに10万施設とする

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「医・薬・介護、個人ユーザーをつなぐプラットフォーム」の形成を戦略として掲げています。今後は医療分野及びヘルスケア分野への展開を一層強化し、オンライン診療や服薬指導などの非対面型医療サービスへのニーズに対応する体制を整え、競合他社との差別化を図っていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業を通じて社会的な課題の解決に貢献するため、新たなサービスを継続的に提供し続けることを重視しています。そのため、システム開発や営業などの各部門において優秀な人材を確保・育成し、性別や国籍にとらわれない多様性のある人材を登用していく方針を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.0歳 3.5年 4,688,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.0%
男性育児休業取得率 44.4%
男女賃金差異(全労働者) 69.9%
男女賃金差異(正規雇用) 70.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 81.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティについて


機微な医療・健康分野における個人情報を取り扱っているため、情報の漏洩やシステムへの不正アクセス等が発生した場合、企業イメージの悪化や損害賠償などにより、同社の業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) システム障害について


提供するサービスは通信ネットワークに依存しており、自然災害や偶発的な事由、外部からの不正アクセス、コンピュータウイルス等によりシステムが停止した場合、サービスの提供に支障が生じるリスクがあります。

(3) 法令、業界規制の改正について


医療・ヘルスケア分野におけるオンライン資格確認や電子処方箋などの制度化が進む中、診療報酬の大幅な改定や広告規制の変更など、予期せぬ法制度の変更が同社サービスにマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

(4) 競合他社による影響について


同社が展開するITサービス業界は変化が早く、異業種も含めた他社が類似サービスで参入してくる可能性があります。競合事業者のサービス向上等により同社の競争力が低下した場合、業績に影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。