jig.jp 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

jig.jp 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

jig.jpは東京証券取引所グロース市場に上場しており、一般消費者向けライブ配信サービス「ふわっち」や自治体向けオープンデータプラットフォームなどの事業を展開しています。直近の業績トレンドは、主力のライブ配信事業における売上規模の拡大により増収となった一方で、成長投資や費用増等により減益となっています。


※本記事は、株式会社jig.jpの有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. jig.jpってどんな会社?


jig.jpは、利用者に最も近いソフトウェアの提供を理念とし、ライブ配信アプリなどの事業を展開しています。

(1) 会社概要


jig.jpは2003年に設立されました。2015年に動画・ラジオでの生配信アプリ「ふわっち」の提供を開始して事業を拡大し、2016年にA Inc.を子会社化しました。2022年には東京証券取引所グロース市場に株式を上場しています。2023年には新たにVTuber事業を開始するなど事業領域を広げています。

現在の同社グループの従業員数は連結で125名、単体で125名体制となっています。大株主の状況については、筆頭株主は取締役で創業者の福野泰介氏であり、第2位は社外取締役の赤浦徹氏、第3位は同じく取締役の岸周平氏と、同社の役員や創業メンバーが上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
福野泰介 25.30%
赤浦徹 13.13%
岸周平 11.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長CEOは川股将氏が務めています。社外取締役は3名で構成されています。

氏名 役職 主な経歴
川股将 代表取締役社長CEO 2016年野村證券投資銀行部門入社。2021年同社入社、2023年執行役員事業戦略担当を経て、2024年より代表取締役社長CEOに就任。A Inc.等子会社役員も兼任。
田中雄一郎 取締役CFO 2016年野村證券投資銀行部門入社、2022年JPモルガン証券入社。2023年同社入社、執行役員財務戦略・IR担当を経て、2024年より取締役CFOに就任。
福野泰介 取締役 創業者 2003年同社を設立し代表取締役社長。2018年取締役会長を経て2023年代表取締役社長に復帰し、2024年より取締役創業者に就任。IchigoJam財団代表理事。
岸周平 取締役 2000年アクシブドットコム(現CARTA HOLDINGS)入社。2003年の同社設立時より取締役に就任。2013年よりA Inc.の代表取締役などを歴任し現職。


社外取締役は、赤浦徹(インキュベイトファンド代表取締役)、菅沼匠(リンクパートナーズ法律事務所代表パートナー)、矢島里佳(和える代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「一般消費者向け関連」および「自治体向け・企業向け関連」事業を展開しています。

(1) 一般消費者向け関連事業


ライブ配信サービス「ふわっち」を中心に、フィーチャーフォン向けフルブラウザアプリやVTuber関連サービス、飲食店予約電話代行アプリなどを提供しています。主力の「ふわっち」は、多種多様なバックグラウンドを持つアマチュアの配信ユーザーと、それを応援する視聴ユーザーによる活発なコミュニケーションで構成されています。

ライブ配信中に視聴ユーザーが使用する有料アイテムの販売が主な収益源であり、グループ全体の収益の大部分を占めています。事業の運営は、A Inc.を中心に、jig.jpやC Inc.、アンビリアルなど複数の連結子会社がそれぞれのサービスを展開しています。

(2) 自治体向け・企業向け関連事業


プログラミング専用こどもパソコン「IchigoJam」や、全国の自治体向けにファイル形式を統一形式へ簡単に変換して公開できる「オープンデータプラットフォーム」を提供しています。教育現場や行政のデジタル化を支援するサービスが中心となっています。

「IchigoJam」は委託先による生産・販売台数に応じたライセンス料を受領し、オープンデータプラットフォームは契約先の各自治体からプラットフォーム利用料を受け取ることで収益を獲得しています。これらの事業運営は、主にB Inc.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は右肩上がりで順調に推移しており、ライブ配信事業の成長を背景に継続的な事業規模の拡大が確認できます。利益面では、経常利益が直近数年間は18億円台で安定して推移していますが、利益率は徐々に低下傾向にあり、事業成長に向けた投資や費用の増加が影響しているとみられます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 89.8億円 105.0億円 122.5億円 138.0億円 146.3億円
経常利益 -2.5億円 9.9億円 18.2億円 18.6億円 18.2億円
利益率(%) -2.8% 9.4% 14.9% 13.5% 12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.0億円 4.6億円 3.8億円 0.5億円 0.1億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加していますが、売上総利益率は高い水準を維持しつつもわずかに低下しています。営業利益については前期から微減となっており、成長に向けた販売管理費等の増加が営業利益率の押し下げ要因となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 138.0億円 146.3億円
売上総利益 130.8億円 136.8億円
売上総利益率(%) 94.8% 93.5%
営業利益 20.1億円 19.8億円
営業利益率(%) 14.6% 13.5%


販売費及び一般管理費のうち、ポイント引当金繰入額が62.0億円(構成比約53%)、決済手数料が17.0億円(同約15%)、支払手数料が13.0億円(同約11%)を占めています。売上原価は小さく、配信ユーザーへのポイント付与や決済プラットフォーマーへの手数料等に関連する費用が主なコストとなっています。

(3) セグメント収益


同社の事業は一般消費者向け関連事業が売上高の大部分を占めており、ライブ配信サービスの成長により同セグメントが牽引する形で全社の増収に寄与しています。自治体向け・企業向け関連事業は全体に占める割合が小さく、前期比で減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
一般消費者向け関連事業 137.7億円 146.1億円
自治体向け・企業向け関連事業 0.2億円 0.2億円
連結(合計) 138.0億円 146.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.3%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も66.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「利用者に最も近いソフトウェアを提供し、より豊かな社会を実現する。」を企業理念に掲げています。時代の変化に合わせてスピーディーにサービスを開発し、誰もが便利で楽しく、軽やかに利用できるソフトウェアを世の中に創出することを使命として、事業を通じて社会課題の解決に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「時代の変化に合わせたスピーディーなサービス開発力」を活かし、自ら主体性を持って決断し、自走できる人材を重視しています。また、従業員の心と体のリフレッシュを推奨し、社内コミュニケーションを活性化することで、常に変化していく組織を築き上げ、イノベーションを生み出し続ける風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


客観的な指標として、配信ユニークユーザー数、課金ユニークユーザー数、及びARPPU(課金ユーザー1人当たりの平均課金額)を重要な経営指標として位置付けています。ユーザーエンゲージメントを高めてこれらの指標を継続的に増大させ、持続可能な水準での収益成長と企業価値の向上を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


ライブ配信サービス「ふわっち」における売上高拡大と収益性の向上を最重点施策としています。機能やアイテムの拡充によるユーザー継続率の向上に加え、競合他社で実績のあるプロ・セミプロ配信ユーザーの参画を促すことで新たな視聴ユーザー層を獲得します。また、デジタルコンテンツ販売など事業の多様化による利益率向上も図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員が自走しながら最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、自己投資を補助する「成長支援制度」やビジネスアイデアを推奨する「発明考案取扱規程」を導入しています。また、初任給の引き上げや株式報酬制度の導入など処遇改善を進め、ITリテラシーの高い若手人材を中心としたエンジニアリソースの確保と育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.2歳 6.2年 6,666,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

同社および連結子会社は常時雇用する労働者が300人以下であり公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(1.9%)、有給消化率(71.1%)、女性取締役・監査役数(3名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム障害とネットワーク依存のリスク


同社の事業は通信ネットワークやコンピュータ・システムに全面的に依存しています。アクセス急増やクラウドサービスの停止、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃などによりシステム障害が発生した場合、サービスの継続的な提供に支障をきたし、同社の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) サービスの健全性維持に関するリスク


「ふわっち」など不特定多数のユーザーがコミュニケーションを取るサービスにおいて、不適切な利用やトラブルが発生するリスクがあります。監視体制の強化やガイドラインの運用により健全性の維持に努めていますが、対応のための費用増加や、トラブル発生時の法的責任・風評被害が業績に影響する可能性があります。

(3) 知的財産権の侵害・被侵害リスク


同社は運営するサービスに関する知的財産権の獲得と保護に努めていますが、第三者の知的財産権を意図せず侵害してしまうリスクがあります。その場合、損害賠償や使用差し止めの訴えを起こされる可能性があるほか、同社独自の知的財産権が侵害された場合にも、事業展開や業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。