あいちフィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

あいちフィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

あいちフィナンシャルグループは、東証プライム及び名証プレミアに上場する地域金融グループです。愛知県を基盤とし、あいち銀行を中心に銀行やリース等の金融サービスを展開しています。直近の業績では、貸出金利息や株式等売却益の増加により大幅な増益を達成しており、統合効果による好調なトレンドにあります。


※本記事は、株式会社あいちフィナンシャルグループの有価証券報告書(第4期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. あいちフィナンシャルグループってどんな会社?


愛知県を基盤に、あいち銀行を中心に幅広い金融・非金融サービスを展開する地域金融グループです。

(1) 会社概要


同社は、2021年に愛知銀行と中京銀行の経営統合に関する基本合意書を締結したことを皮切りに設立されました。2022年に両行の共同持株会社として設立され、同時に上場を果たしました。2025年には傘下の愛知銀行と中京銀行が合併し、あいち銀行として新たに営業を開始し、事業基盤をさらに強固なものとしています。

現在、同社グループの従業員数は連結で2,562名、単体で164名の体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は外国法人の金融機関となっています。第3位には事業会社が名を連ねており、多様な主体から資本的な支援を受けながら、地域経済の発展に貢献する強固な経営基盤を構築しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.38%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 8.18%
ミソノサービス 7.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長執行役員は伊藤行記氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
伊藤行記 代表取締役社長執行役員グループ事業戦略部担当 1980年中央相互銀行入行。証券外国部長、常務取締役、愛知銀行取締役頭取を経て、2022年同社代表取締役社長に就任。2025年より現職。
早川誠 代表取締役常務執行役員グループ経営監査部担当 1985年中京相互銀行入行。総合企画部長、常務執行役員等を経て、2025年同社代表取締役就任。同年より現職。
吉川浩明 代表取締役常務執行役員グループDX・業務改革統括部担当 1985年中央相互銀行入行。事務統括部長、愛知銀行常務取締役を経て、2025年同社代表取締役常務執行役員に就任。同年より現職。
川井博史 取締役常務執行役員 1984年中京相互銀行入行。内部監査部長、愛知銀行取締役常務執行役員を経て、2025年同社取締役常務執行役員に就任。同年より現職。
伊藤謙二 取締役常務執行役員 1987年中央相互銀行入行。証券外国部長、愛知銀行常務取締役等を経て、2025年同社取締役常務執行役員に就任。同年より現職。
鈴木武裕 取締役執行役員グループ経営企画部、グループサステナビリティ経営統括部担当 1988年中央相互銀行入行。法人営業部長、愛知銀行上席執行役員営業企画部長を経て、2025年同社取締役執行役員に就任。同年より現職。


社外取締役は、江本泰敏(江本法律事務所開設)、柴田雄己(元名古屋鉄道代表取締役副社長)、村田知英子(元名古屋中税務署長)、我妻巧(元インテック常勤監査役)、板倉麻子(オフィス板倉麻子開業)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

銀行業


同社グループの中核として、あいち銀行の本支店等を通じ、預金、貸出、内国・外国為替、投資信託や生命保険の窓口販売などを地域顧客に提供しています。また、証券業務や信託代理店業務を通じた高度な金融サービスも展開しています。
主な収益源は、企業や個人への貸出を通じた利息収入や、各種金融商品の販売・仲介に伴う手数料収入です。これらの事業運営は、主に同社の連結子会社であるあいち銀行が行っており、地域社会の繁栄に寄与しています。

リース業


地域企業の設備投資ニーズなどに応えるため、各種機械設備や情報通信機器、車両などの総合リース業務を提供しています。顧客企業の資金効率向上を支援しています。
主な収益源は、顧客に設備を貸し出すことによって得られるリース料収入です。本事業の運営は、同社の連結子会社であるあいちFGリースが担い、銀行業と連携したソリューションを提供しています。

その他


クレジットカード事業、信用保証事業、集金代行、コンサルティング、銀行事務サービス、投資ファンドの運営・管理、ソフトウェア開発、広告代理業など、多彩な周辺事業を展開しています。
顧客から得られる各種手数料や利用料、コンサルティングフィーなどが主な収益源となります。運営は、愛銀ディーシーカードや中京カード、栄町リサーチ&コンサルティング、愛知キャピタルなど、複数の子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去4期間の業績推移を見ると、経常収益は安定して拡大傾向にあります。経常利益も大きく伸長しており、特に直近の2026年3月期は貸出金利息や株式等売却益の増加などを背景に、前期比で大幅な増益を達成しました。利益率も大きく向上しており、統合によるシナジー効果や強固な事業基盤を活かした収益力の強化が着実に進んでいることが伺えます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 729億円 887億円 1,010億円 1,251億円
経常利益 52億円 126億円 103億円 309億円
利益率(%) 7.2% 14.2% 10.2% 24.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 32億円 70億円 49億円 71億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を見ると、経常収益(売上高)は着実な成長を見せています。また、持株会社単体での営業利益も増加傾向にあり、営業利益率の向上にも表れているように、グループ全体の経営効率化や事業戦略の遂行が利益貢献に結びついていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,010億円 1,251億円
営業利益 49億円 72億円
営業利益率(%) 4.9% 5.8%


営業経費(一般企業の販売費及び一般管理費に相当)のうち、給与・手当が209億円(構成比46%)、土地建物機械賃借料が46億円(同10%)を占めており、人材と店舗網などのインフラ維持に一定のコストが投下されています。

(3) セグメント収益


各事業セグメントの経常収益(売上高)を見ると、主力である銀行業が大きく伸長し、全体の成長を力強く牽引しています。また、リース業や周辺事業を含むその他セグメントも前期から着実に収益を伸ばしており、多様な金融サービスを通じたグループ全体の収益力の底上げが進んでいることが確認できます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
銀行業 914億円 1,131億円
リース業 62億円 69億円
その他 34億円 55億円
調整額 0億円 -3億円
連結(合計) 1,010億円 1,251億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も6.0%で市場平均を下回っています。(※銀行業は預金を負債として抱える事業特性上、一般事業会社と比べて自己資本比率が低くなる傾向があります。)

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -1,051億円 1,822億円
投資CF 1,176億円 39億円
財務CF -50億円 -66億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、経営ビジョン「VISION」として「金融サービスを通じ、地域社会の繁栄に貢献する」ことを掲げています。また、「MISSION」として「愛知県No.1の地域金融グループ」を目指すことを明言しており、地域経済の発展と持続可能な社会の実現に向けて、信頼される金融機関としての役割を果たすことを経営の根本に据えています。

(2) 企業文化


同社グループは、「あなたの、いちばんちかくで。」というコーポレートスローガンを掲げ、常にお客さま本位で考え、顧客の満足と支持を得る行動を重視しています。「インテグリティ」に基づく誠実かつ公正な業務運営を徹底し、コンプライアンスを第一とする文化が根付いています。また、「従業員エンゲージメント向上と多様な人財の活躍推進」を重要課題とし、誰もが働きがいを実感できる企業風土改革に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年4月から2028年3月までを「第2次中期経営計画」とし、「銀行業を超えたトータルサポートグループ」をテーマにシナジー効果の早期発現を目指しています。

* 連結当期純利益:270億円以上
* ROE:6.0%以上
* コアOHR:65%未満
* 連結自己資本比率:9.0%程度

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、経営課題やサステナビリティ方針に基づく重要課題(マテリアリティ)の解決に向けて、3つの基本戦略を展開しています。グループのノウハウを融合した「コンサルティング・ソリューション型ビジネスモデルの深化」、それを支える店舗チャネルや人財を再構築する「グループ経営基盤の強化」、これらを効率的に推進するための「DX戦略の加速化」を進め、持続的な収益基盤の構築を図っています。

* サステナブルに関する投融資:2030年度までに1兆円(うち環境関連5,000億円)
* GHG排出量Scope1・2:2030年度までのカーボンニュートラル達成

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「人事基本方針」に基づく「あいちFGのめざす人財像」を定め、従業員を貴重な資本と捉える人的資本経営を推進しています。「人財ポートフォリオの最適化」と「エンゲージメント向上」を軸に、戦略人財やDX人財の育成に取り組むほか、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」や「健康経営・働き方改革」を推進し、全社員が能力を最大限に発揮できる環境の整備を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.2歳 23.0年 10,671,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 53.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 51.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 86.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ESアンケート(従業員エンゲージメント調査)の満足度(78.5Pt)、有給休暇取得率(87.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金融・市場環境の変動によるリスク


同社は有価証券の保有や貸出・預金などの資金運用・調達を行っており、株価の大幅な下落や金利の急激な上昇が発生した場合、保有資産に減損が生じる可能性があります。また、資産と負債の金利・期間のミスマッチ等により、業績および財務状況に悪影響を及ぼすリスクを抱えています。

(2) 信用リスクおよび不良債権に関するリスク


景気の動向や不動産価格の下落、取引先の経営状況の変動などにより、実際の貸倒が見積りを上回る可能性があります。貸出金償却の発生や貸倒引当金の積み増しが必要となった場合、同社グループの与信関係費用が増加し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) オペレーショナルリスクおよびシステムリスク


コンピュータシステムの障害やサイバー攻撃による不正アクセスを受けた場合、業務遂行に深刻な支障をきたすリスクがあります。また、役職員の故意や過失による事務事故、人的リソースの不足、労働環境の悪化、さらには情報漏洩などが発生した場合、同社の信用低下や損害賠償負担につながる可能性があります。

(4) 競争激化および規制変更に関するリスク


同社が基盤とする愛知県において、他の地域金融機関やメガバンク、さらには異業種からの新規参入との競争が激化しています。優位性が確保できない場合、業績に影響を与えるほか、銀行法等の規制・制度変更への対応に伴うコスト増や業務制約が生じるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。