※本記事は、株式会社オービーシステム の有価証券報告書(第52期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オービーシステムってどんな会社?
金融、産業流通、社会公共分野などのシステム開発を主力とし、大手システムインテグレーターとの長年の取引実績を持つ独立系SIerです。
■(1) 会社概要
同社は1972年に設立され、1976年に日立製作所との取引を開始しました。その後、金融、社会公共領域へと事業を拡大し、2023年に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしました。2024年にはヒューマン&テクノロジーを完全子会社化するなど、事業規模の拡大を進めています。
従業員数は単体で448名です。筆頭株主は創業者の山田孝氏で、第2位は主要な関係会社でもあるオービックです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山田 孝 | 32.80% |
| オービック | 28.67% |
| オービーシステム従業員持株会 | 5.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は豊田利雄氏が務めています。取締役会における社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 豊田 利雄 | 代表取締役社長 | 大和証券入社後、コスモ証券(現岩井コスモ証券)、エイチ・エス証券(現Jトラストグローバル証券)を経て、2019年より同社へ入社。経営企画室長、取締役を経て2020年より現職。 |
| 杉田 欣哉 | 取締役金融事業本部長 | 1982年同社入社。東京第1事業部金融第1本部長、第1事業部長、執行役員金融事業本部長を経て、2021年より現職。 |
| 上村 忠嗣 | 取締役社会公共事業本部長 | 1983年同社入社。大阪第2事業部第5本部長、第5事業部長、執行役員社会公共事業本部長を経て、2021年より現職。 |
| 杉本 繁治 | 取締役管理本部長 | 1979年同社入社。常務執行役員金融第1事業部長、同大阪統括担当兼大阪第2事業部長、経営企画部長、執行役員管理本部長を経て、2022年より現職。 |
| 長谷川 篤 | 取締役営業本部・開発推進本部管掌 | 日立製作所入社後、金融システム事業部各本部長、日立チャネルソリューションズ取締役常務執行役員等を歴任。2023年同社入社、執行役員を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、白石徹(Sコンサルティング代表取締役)、堀野桂子(北浜法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「システムインテグレーションサービス」事業を展開しています。報告セグメントは単一ですが、事業戦略上4つのサービスラインに区分されています。
■(1) 金融事業
地銀・都銀、保険、証券、クレジット分野のシステムインテグレーションおよびソフトウェア設計・開発・保守を行っています。特に基幹系三大業務(預金、貸出、為替)や保険・証券システム等の開発を手掛けています。
収益は、顧客であるエンドユーザや国内ITメーカー、元請システムインテグレーターからの受託開発および運用保守に対する対価として得ています。運営は主に同社が行っています。
■(2) 産業流通事業
産業流通、マイコン、医療の各分野におけるソフトウェア設計・開発・保守を行っています。これには流通・医薬大手ユーザー向けシステムや、家電製品等の組み込みソフト開発が含まれます。また、自社製品である臨床検査システム「CLIP」や健診システム「MEX-Plus」の販売も行っています。
収益は、受託開発費や運用保守費、自社パッケージ製品の販売・カスタマイズ費用などから得ています。運営は主に同社が行っています。
■(3) 社会公共事業
電力ICT、社会インフラ(道路、河川等)、衛星通信、メディア情報、公共、文教・教育分野のシステム開発やコンサルティングを行っています。電力託送システムや監視制御システム、官公庁システムの再構築などが主な実績です。
収益は、エンドユーザや国内ITメーカー、元請システムインテグレーターからの受託開発費を中心に得ています。運営は主に同社が行っています。
■(4) ITイノベーション事業
先端技術を活用したデジタルソリューションサービスの提供や、システム全体を支えるフロントシステムエンジニアとしての支援を行っています。クラウド環境への移行、インフラ構築、金融ソリューション等の開発を手掛けます。
収益は、エンドユーザや元請システムインテグレーターからの受託開発および運用保守費用から得ています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で安定的に推移しており、直近の2024年3月期には69億円に達し、成長傾向にあります。経常利益も増加基調にあり、利益率は9%台と堅調な収益性を維持しています。当期純利益も安定して黒字を計上しており、堅実な経営が数字に表れています。
| 項目 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 64億円 | 61億円 | 60億円 | 62億円 | 69億円 |
| 経常利益 | 4.8億円 | 4.0億円 | 4.8億円 | 5.2億円 | 6.3億円 |
| 利益率(%) | 7.5% | 6.6% | 8.1% | 8.4% | 9.2% |
| 当期純利益 | 3.2億円 | 2.8億円 | 3.4億円 | 5.0億円 | 4.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率、営業利益率も改善傾向にあり、増収効果が利益面にしっかりと反映されています。効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 62億円 | 69億円 |
| 売上総利益 | 10億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.7% | 17.6% |
| 営業利益 | 5.0億円 | 5.9億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 8.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.0億円(構成比32%)、その他費用が2.0億円(同32%)を占めています。売上原価においては、労務費が29億円(構成比50%)、外注費が25億円(同45%)を占めており、システム開発における人的コストの割合が高い構造となっています。
■(3) セグメント収益
各サービスラインにおいて増収を達成しています。特にITイノベーション事業と社会公共事業が高い成長率を示しました。金融事業ではマイグレーション案件や地銀・都銀向けが堅調、産業流通事業では医療分野が伸長しました。社会公共事業は電力ICTや公共分野が好調、ITイノベーション事業はクラウド移行ニーズを取り込みました。
| 区分 | 売上(2023年3月期) | 売上(2024年3月期) |
|---|---|---|
| 金融事業 | 25億円 | 27億円 |
| 産業流通事業 | 18億円 | 19億円 |
| 社会公共事業 | 14億円 | 17億円 |
| ITイノベーション事業 | 5億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 62億円 | 69億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
オービーシステムは、システム基盤ソリューションや金融ソリューション分野での受注拡大により、堅調な業績を維持しました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や投資有価証券売却益が主な要因となり、プラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、連結の範囲変更を伴う子会社株式の取得による支出が主な要因となり、マイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いによる支出が主な要因となり、マイナスとなりました。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.1億円 | 0.3億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -0.1億円 |
| 財務CF | -1.1億円 | 0.9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「永遠に伸びる会社」「社員一人ひとりが幸せになれる会社」「社会に貢献できる会社」を目指しています。この実現のため、「四つの心(感謝の心、人格向上の心、生活向上の心、企業の心)」を経営理念として掲げ、確かな技術と先進のソリューション提供を通じて、顧客と社会の発展に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、企業が社会の一員であることを深く認識し、公正かつ透明な企業行動を徹底しています。人権の尊重、法令遵守に加え、良識ある市民として豊かな社会の実現に尽力する姿勢を重視しています。また、仕事を通じた自己啓発や人格向上を推奨し、社員一人ひとりが感謝の心を持ち、働く喜びや生き甲斐を持てる環境づくりを大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、成長性と収益性を重視した経営を行っています。具体的には以下の客観的な指標を重要な経営目標として定めています。
* 売上高成長率(対前期増加率):6.0~8.0%
* 売上高営業利益率:10%
* 連結売上高:100億円(2027年3月期目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は中長期的な成長に向けて、業務システム開発力と人材の強化、業務提携やM&Aによる事業拡大を基本戦略としています。特にDX関連事業やAI活用を成長の柱と位置づけ、クラウド、ビッグデータなどの分野に注力しています。また、既存の大口顧客との関係を維持しつつ、新たな協業先との提携により事業領域の拡大を図ります。
* AI、IoT、クラウド等の新技術教育への投資強化
* 特長ある技術を持つ企業との資本業務提携の推進
* システム開発力強化のための積極的な人材採用
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材教育投資を成長戦略の最重要課題と位置づけ、DXやクラウド技術に対応できる人材育成に注力しています。新卒・経験者を問わず積極的な採用を行うとともに、リファラル採用や「おかえりなさい採用」制度も導入しています。また、協力会社との連携強化により、開発体制の弾力性を確保する方針をとっています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 39.8歳 | 14.5年 | 5,708,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | - |
| 男性労働者の育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 76.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 77.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 68.9% |
※管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率については、同社は情報の公表をしていないため、算出しておりません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断再検査受診率(55.6%)、ストレスチェック受診率(100%)、クラウド関連資格の取得者(21名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定顧客依存に関するリスク
同社の売上高の約4割は日立製作所向けであり、同社グループ全体では約7割を占めています。安定的な収益基盤である一方、顧客の事業環境の変化や営業施策の変更等により受注が大幅に減少した場合、同社の業績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材確保、育成及び労務管理に関するリスク
同社の事業成長は人材に大きく依存しています。技術革新に対応できる優秀な人材の採用や育成が計画通りに進まない場合、事業拡大に制約が生じる可能性があります。また、適切な人材配置が困難になり長時間労働等が発生すれば、労働災害のリスクも高まります。
■(3) プロジェクト管理に関するリスク
システム開発の大型化・複雑化に伴い、開発難易度が増しています。納期遅延や品質問題が発生し、不適合責任による賠償や追加コストが生じた場合、プロジェクトの採算が悪化し、同社の業績や信用に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 技術革新によるリスク
情報サービス産業では技術革新が急速に進んでいます。DXやクラウド等の新技術への対応が遅れた場合、または技術変化の方向性を的確に予測できない場合、競争力が低下し、受注減少や新規開拓の低迷につながる可能性があります。



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