オービーシステム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オービーシステム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オービーシステムは、東京証券取引所スタンダード市場に上場するシステムインテグレーターです。金融、産業流通、社会公共などの幅広い分野でシステム開発や保守・運用を手掛けています。直近の業績は、企業の旺盛なIT投資やDX関連事業の拡大が牽引し、増収増益を達成しており、安定的な成長基盤を確立しています。


※本記事は、株式会社オービーシステムの有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オービーシステムってどんな会社?


同社は、金融、産業流通、社会公共などの領域でシステムインテグレーションサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


1972年にシステム開発を担う情報企業として設立されました。1976年に日立製作所との取引を開始し、以降ビジネスパートナーとして関係を強化しています。2022年にITイノベーション事業を立ち上げ、2023年に東京証券取引所スタンダード市場に上場しました。直近ではM&Aを推進し、事業規模の拡大を図っています。

従業員数は連結624名、単体497名です。筆頭株主は事業会社のオービックで、第2位は創業者の山田孝氏です。

氏名 持株比率
オービック 28.38%
山田 孝 23.86%
ニュードリーム 8.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は豊田利雄氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
豊田 利雄 代表取締役社長 1979年大和証券入社。2015年エイチ・エス証券(現Jトラストグローバル証券)入社。2019年同社入社、経営企画室長、取締役を経て、2020年より現職。
杉田 欣哉 取締役グループ金融事業統括 1982年同社入社。2017年第1事業部長、2020年執行役員金融事業本部長を経て、2021年取締役。グリーンキャット取締役副社長を経て、2026年より現職。
上村 忠嗣 取締役社会公共事業本部長 1983年同社入社。2012年大阪第2事業部第5本部長、2017年第5事業部長、2020年執行役員社会公共事業本部長を経て、2021年より現職。
杉本 繁治 取締役管理本部長 1979年同社入社。2008年常務執行役員金融第1事業部長、2012年常務執行役員大阪統括担当兼大阪第2事業部長等を経て、2022年より現職。
長谷川 篤 取締役社長補佐 1979年日立製作所入社。同社金融事業部長等を歴任し、2020年日立オムロンターミナルソリューションズ取締役。2023年同社入社後、2026年より現職。


社外取締役は、白石徹氏(Sコンサルティング代表取締役)、堀野桂子氏(北浜法律事務所・外国法共同事業パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システムインテグレーションサービス事業」の単一セグメントですが、4つのサービスラインを展開しています。

(1) 金融事業


銀行、保険、証券、クレジットの各分野におけるシステムインテグレーション、コンサルティング、ソフトウェアの設計・開発・保守等を提供しています。

顧客であるエンドユーザーや国内ITメーカー、元請システムインテグレーターからの受託開発および運用保守により収益を得ています。主な運営は同社が行っています。

(2) 産業流通事業


産業流通、マイコン、医療の各分野におけるソフトウェア設計・開発・保守などを提供しています。医療分野では自社製品の臨床検査システムや健診システムの販売も手掛けています。

主な収益源は、受託開発および保守運用による役務提供の対価や、自社パッケージソフトの販売です。主な運営は同社が行っています。

(3) 社会公共事業


電力ICT、社会インフラ、交通、メディア情報などの社会基盤分野に加え、公共、文教・教育系分野のシステム設計・開発・保守を提供しています。

国内ITメーカーや元請システムインテグレーター、エンドユーザーからの受託開発が主な収益源です。主な運営は同社が行っています。

(4) ITイノベーション事業


システム基盤ソリューション、クラウドソリューション、金融ソリューションの各分野で、インフラ構築やシステム全体のプロジェクトマネジメントなどを提供しています。

顧客のDX化支援や、元請システムインテグレーターとの協業によるデジタルソリューションの受託開発・保守により収益を得ています。主な運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期の業績は、企業のDX投資拡大を背景に順調に成長しています。売上高は76.8億円から86.6億円へと増加し、利益面でも大幅な増益を達成しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 76.8億円 86.6億円
経常利益 6.1億円 7.3億円
利益率(%) 8.0% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.6億円 6.0億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益構成は、売上高の成長に伴い売上総利益と営業利益がともに増加しています。利益率も改善傾向にあり、堅調な推移を見せています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 76.8億円 86.6億円
売上総利益 14.5億円 16.8億円
売上総利益率(%) 18.9% 19.4%
営業利益 5.6億円 6.7億円
営業利益率(%) 7.3% 7.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.8億円(構成比28.0%)、役員報酬が1.5億円(同15.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


各サービスラインともに増収となっており、特に金融事業と社会公共事業が順調に拡大しています。クラウドや生成AIを活用したDX関連の投資需要を的確に取り込んだことが主な要因です。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
金融事業 30.5億円 34.8億円
産業流通事業 23.1億円 25.1億円
社会公共事業 17.2億円 19.9億円
ITイノベーション事業 6.0億円 6.7億円
連結(合計) 76.8億円 86.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF・投資CF・財務CFの推移は改善型(+、+、-)です。営業利益や資産売却等によって得た資金で借入金の返済や株主還元を進める改善局面にあることを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4.6億円 3.3億円
投資CF -4.4億円 1.5億円
財務CF -1.8億円 -2.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.8%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「永遠に伸びる会社」「社員一人ひとりが幸せになれる会社」「社会に貢献できる会社」の3つを目指す姿として掲げています。また、これらを実現するため「感謝の心」「人格向上の心」「生活向上の心」「企業の心」の四つの心を経営理念としており、情報システム技術を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「顧客ファースト」の観点を重視し、社員一人ひとりがお客様目線で考え、お客様の事業継続と発展に貢献するフロントシステムエンジニアの集団であることを志向しています。また、仕事を通じて自己啓発し人格向上を図ることや、企業活動における公正かつ透明な行動の徹底、関係法令やその精神を遵守する意識を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画において、成長性と収益性を重視した数値目標を掲げています。具体的には、以下の指標の達成を目指しています。

* 連結売上高:100億円(2027年3月期目標)
* 売上高成長率(対前期増加率):6.0〜8.0%
* 売上高営業利益率:10%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は既存事業の拡大に加え、特長ある技術を持つ企業との業務提携やM&Aを推進することで、新事業の創出と成長の加速を図っています。また、生成AIやクラウド関連技術などのDX領域に注力し、技術力強化と教育投資を実施しています。2026年1月に発足した「AX推進室」を中心に、AIを活用したビジネス付加価値の共創も推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最大の財産と位置付け、専門スキルやヒューマンスキルの向上を目指す人材育成に注力しています。新卒・経験者を問わず「リファラル採用制度」などを活用して積極的な採用を行うとともに、クラウドやAI等のDX関連技術を習得するための教育予算を拡充し、社員の早期戦力化と多様な人材の確保・定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.8歳 13.4年 5,745,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 -
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) 82.1%
労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) 83.7%
労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) 67.2%


※管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合については、情報の公表をしていないため算出されていません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック受診率(100%)、クラウド関連資格の取得者(64名)、AI関連資格の取得者(122名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新によるリスク


情報サービス産業では急速に技術革新が進んでおり、生成AIの活用による機械化も進展しています。同社がこうした急激な技術変化に対応できない場合や競合他社に遅れを取った場合、既存顧客からの受注減少などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) プロジェクト管理に関するリスク


システム開発の大型化や複雑化に伴い、開発の難易度が増加しています。納期遅延や品質不適合が生じた場合、賠償金の支払いやプロジェクトの不採算化に加え、顧客の信頼失墜による商流喪失につながり、業績に大きな影響を与えるリスクがあります。

(3) 特定顧客依存に関するリスク


同社の売上高は、日立製作所やBIPROGY、三菱電機ソフトウエアなどの大口顧客が大きな割合を占めています。業界環境の変化やこれらの顧客の事業方針変更により受注が大幅に減少した場合、同社の業績や財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。