モンスターラボ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

モンスターラボ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場上場。大企業や自治体向けにAIとデジタルの力で伴走するDX支援事業や、SaaS型サービスなどのプロダクト事業を展開。直近の業績は、売上収益が78.0億円と減収になったものの、コスト構造の抜本的な見直しなどにより営業損失は1.9億円と赤字幅が大幅に縮小し、収益性の改善が進んでいます。


※本記事は、株式会社モンスターラボの有価証券報告書(第20期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. モンスターラボってどんな会社?


AIとデジタルの力で企業の変革と価値創造に伴走する、グローバルなデジタルコンサルティング企業です。

(1) 会社概要


同社は2006年に設立され、音楽配信サイトの提供を開始しました。2011年に中国の成都に子会社を設立して海外展開を本格化させ、その後も世界各国で開発拠点の設立や買収を進めました。2023年には東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、2025年にはグループ内の事業会社を吸収合併して組織再編を行っています。

現在の従業員数は連結で847名、単体で237名です。筆頭株主は事業会社であり資本提携等も行っている山陰合同銀行で、第2位は投資事業を行うベンチャーファンド、第3位は証券会社となっています。複数の事業会社やファンドが株主に名を連ねており、多様なステークホルダーによって事業基盤が支えられています。

氏名 持株比率
山陰合同銀行 33.79%
JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合 7.00%
楽天証券共有口 5.83%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は鮄川宏樹氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
鮄川宏樹 代表取締役社長 プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント、モニターグループを経て2006年に創業し代表取締役社長。
松永正彦 取締役 情報技術開発、TDIシステムサービス常務などを経て、2017年より現職。ベトナム法人の代表も務める。
宇野智之 取締役 富士ソフトを経て2015年に入社し、2025年より現職。
倉島陽一 取締役(常勤監査等委員) スキーマ建築計画創業、A.C.O.代表取締役などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、浅田信博(リレーションシップ代表取締役)、吉田憲史(吉田公認会計士事務所設立)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルコンサルティング事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) デジタルコンサルティング事業


大企業や自治体を対象に、AIとデジタルの力で企業の変革と価値創造に伴走する事業を展開しています。クライアントのデジタル戦略立案から始まり、デザイン、システム開発、データ解析、プロセス最適化まで、ワンストップでデジタルトランスフォーメーションの包括的なサポートを提供しています。

収益源は、クライアントにサービスを提供する人材の時間あたり単価と稼働時間をベースに請求する準委任契約が大多数を占めています。運営はモンスターラボが行っており、日本やアメリカなどのレベニューセンターと、ベトナムやフィリピンなどのデリバリーセンターのグローバルチームが連携して推進しています。

(2) その他事業


コンサルティング事業の経験を基に、市場の共通課題を解決する複数のSaaS型サービスをプロダクト事業として展開しています。主なサービスには、店舗向けBGMサービス「モンスター・チャンネル」や、中小企業・自治体向けのRPAソフトウェア「RAX」などがあり、手軽に導入できる価格帯で提供しています。

収益源は、プロダクトを利用する企業や店舗からの月額利用料などのシステム利用料となります。運営はモンスターラボやモンスターラボオムニバスなどが主体となって行い、SaaSプロダクト化することで大企業だけでなく中小企業向けにもデジタルサービスの提供を可能としています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、積極的なグローバル展開や採用強化により売上は拡大基調にありましたが、先行投資の負担が大きく赤字が継続していました。しかし、直近の2025年12月期では、不採算拠点の撤退やコスト最適化など抜本的な構造改革を実施したことで、売上は減少したものの赤字幅は大幅に縮小しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 93.5億円 142.7億円 133.5億円 100.0億円 78.0億円
税引前利益 -30.9億円 -4.5億円 -21.6億円 -98.5億円 -3.2億円
利益率(%) -33.1% -3.1% -16.2% -98.4% -4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -30.5億円 -6.7億円 -23.6億円 -99.5億円 -3.4億円

(2) 損益計算書


売上収益が減少した一方で、売上総利益は改善し利益率も大きく上昇しています。これは、システム開発エンジニアの稼働率向上や、AIを活用したプロジェクトに軸足を移したことが寄与しています。また、構造改革による販管費の大幅な削減が奏功し、営業損失は大きく縮小しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 100.0億円 78.0億円
売上総利益 14.3億円 31.5億円
売上総利益率(%) 14.3% 40.4%
営業利益 -102.7億円 -1.9億円
営業利益率(%) -102.7% -2.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が7.2億円(構成比28%)、通信費が3.4億円(同13%)を占めています。また、売上原価のうち、給料手当が23.0億円(構成比50%)、外注費が11.0億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のデジタルコンサルティング事業は、生成AIを活用したエンタープライズ領域の案件獲得が進んだものの、前年度の構造改革による欧州・中東拠点の大幅縮小の影響により全体として減収となりました。一方で、事業の効率化が進展したことによりセグメント利益は黒字転換を果たし、収益体質への転換が鮮明になっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
デジタルコンサルティング事業 95.9億円 73.8億円 -47.7億円 5.5億円 7.5%
その他事業 4.0億円 4.3億円 0.5億円 0.3億円 7.2%
調整額 0.1億円 -0.1億円 -55.5億円 -7.7億円 -
連結(合計) 100.0億円 78.0億円 -102.7億円 -1.9億円 -2.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来成長のため借入等で資金調達を行い投資を継続する勝負型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -30.9億円 -1.5億円
投資CF -3.9億円 -0.3億円
財務CF 31.9億円 25.7億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」をミッションとして掲げています。世界の課題を解決するプロダクトやエコシステムをクライアントと共創すると同時に、世界中の才能あふれる人々に国境を越えて「働く機会」や「成長する機会」を提供することで、より良い世界の実現を目指しています。

(2) 企業文化


多様性の持つ可能性を信じ、様々なバックグラウンドを持つ社員が輝ける場を作ることを目指しています。異なる文化への理解を深める多様性推進プログラムの実施や、柔軟な働き方を推進するフレキシブルワーク環境の整備など、オープンなコミュニケーションと共創を支えるダイバーシティとインクルージョンの文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


高い粗利率を維持した売上成長を最重要KPIとして経営を行っています。クライアントのコア事業のDXをパートナーとして担うことで、同一顧客からの継続的な売上拡大を重視しています。

・当期既存顧客売上の対前期売上割合
・年間売上5,000万円以上及び1億円以上のクライアント数
・主要クライアント群からの売上増加率

(4) 成長戦略と重点施策


AIとデジタルの力で企業の変革と価値創造に伴走し、AIを活用したデジタル変革のリーディングカンパニーとなることを目指しています。今後の成長に向けた基本方針として、「AIによる独自ソリューションの強化」「データ・エンタープライズシステム領域の強化」「ボーダレスな組織運営による独自の価値提供」の3本柱を掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業成長のために優秀なデジタル人材の獲得を至上命題としています。大手企業のコア事業や最先端のAI技術に関わる案件を通じてスキルアップの機会を提供するとともに、世界12の国と地域のタレントプールを活かしたスケーラブルな採用や、大学との連携、グローバルなCTOチームによるR&Dと教育体制の構築を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.0歳 4.3年 7,115,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.8%
男性育児休業取得率 82.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.6%
男女賃金差異(正規雇用) 74.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の国籍数(17ヶ国)、年次有給休暇の取得率(89.3%)、男女の平均継続勤務年数の差異(男性4.7年、女性3.2年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) DX市場の競争環境激化とニーズの変化

DX市場は成長が予測されるものの、AI関連分野など技術トレンドや顧客ニーズの変化が速く、新たな技術を取り入れたソリューションの提供において競合他社に対する競争優位性を確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) デジタル人材の確保と外注先への依存

DXやAI活用を担う優秀な人材の獲得が重要ですが、人材市場の逼迫により十分な人材が確保できないリスクがあります。また、プロジェクトの品質維持やスケジュール管理において、外注先への依存割合が高まることで想定以上の追加コストが発生するリスクも存在します。

(3) 開発プロジェクトの不採算化

システム開発において、大幅な仕様変更や諸要件の変更、品質上のトラブルが発生した場合、作業工数が当初の見積りを大きく上回ることで、プロジェクトが不採算化し収益性が低下するリスクがあります。

(4) 情報セキュリティと海外展開リスク

国内外の顧客の機密情報や個人情報を扱うため、情報漏洩や不正アクセスが発生した場合に信用低下や損害賠償を招くリスクがあります。また、グローバルな事業展開に伴い、各国の法令や商慣習の違い、為替変動、インフレによるコスト上昇などの影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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