※本記事は、株式会社ナルネットコミュニケーションズ の有価証券報告書(第6期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナルネットコミュニケーションズってどんな会社?
同社は、自動車のメンテナンス受託やリース車両の管理代行など、モビリティ領域に特化したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社の源流は1978年に設立された日本オートリースにさかのぼります。2019年7月に株式取得を目的として設立されたNALホールディングスが、同年9月にLBOにより旧ナルネットコミュニケーションズを完全子会社化しました。その後、2022年4月に旧法人を吸収合併し、現在の商号へ変更しています。事業基盤を強化し、2023年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。
従業員数は単体で108名です。筆頭株主は伊藤忠商事グループのMobility&MaintenanceJapanで、第2位および第3位にはベンチャーキャピタルのジャフコが運用する投資事業組合が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Mobility&MaintenanceJapan | 35.60% |
| ジャフコSV6投資事業有限責任組合 | 15.20% |
| ジャフコSV6-S投資事業有限責任組合 | 3.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名、計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は鈴木隆志氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木 隆志 | 代表取締役社長 | 1988年日本オートリース(現同社)入社。常務取締役を経て2014年より社長を務める生え抜き経営者。2022年の合併後も現職。 |
| 東村 大介 | 常務取締役 | グローバルワイズ代表取締役などを経て2022年に入社。取締役を経て2024年6月より現職。 |
| 服部 正次 | 取締役 | 1990年日本オートリース入社。管理本部長、営業推進本部担当などを歴任し、2024年6月より営業戦略管掌を務める。 |
| 永冶 健 | 取締役 | 2005年入社。メンテナンスサービス部長、経営企画部長などを経て、2025年4月より業務本部長を務める。 |
| 加藤 明弘 | 取締役 | 伊藤忠商事出身。欧州でのタイヤ事業経験などを持ち、2025年4月より管理本部長を務める。 |
| 弥吉 亮一 | 取締役 | 伊藤忠エネクス出身。カーライフ部門での統括業務などを経て、2025年4月より営業本部長を務める。 |
社外取締役は、花井浩(元メルセデス・ベンツ・ファイナンス社長)、横山純一(元日興ビジネスシステムズ取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車関連BPO事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) メンテナンス受託事業
法人向けオートリース会社や一般法人を主な顧客とし、車両管理における点検・車検・修理などのメンテナンス管理業務を一括受託しています。全国の提携整備工場と連携し、リース期間に合わせた長期的な管理を行うことで安定した収益基盤を築いています。
収益は、顧客であるリース会社や法人から受領するメンテナンス受託料等から成ります。運営は主にナルネットコミュニケーションズが行っています。
■(2) MLS(マイカーリースサポート)事業
個人向けリースサービスを提供する事業者を顧客とし、リース車両のメンテナンス管理業務を提供しています。法人向けとは異なり、あらかじめ決められたサイクルでの点検や消耗品交換のみを対象とする限定的なパッケージ契約が特徴です。
収益は、個人向けリース事業者から受領する管理委託料等から成ります。運営は主にナルネットコミュニケーションズが行っています。
■(3) BPO事業
メンテナンス以外の車両関連業務を部分的に受託するサービスです。具体的には、整備費用などのデータ管理サービス、シーズンごとのタイヤ保管・履き替え手配を行うタイヤ保管サービス、自動車税の納付・管理を代行する納税管理サービスなどを展開しています。
収益は、自動車関連企業等から受領する業務受託料から成ります。運営は主にナルネットコミュニケーションズが行っています。
■(4) その他事業
上記に含まれない周辺事業を展開しています。具体的には、リース満了後の中古車売却、故障修理を保証するワランティ(故障修理保険)、メンテナンスパックの提供、オートリース事業などが該当します。
収益は、中古車販売代金や保証料収入などが含まれます。運営は主にナルネットコミュニケーションズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近4期間で一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では変動が見られ、直近の2025年3月期は増収ながらも減益となりました。全体として成長基調を維持しつつ、利益率の安定化が課題となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 64億円 | 70億円 | 77億円 | 85億円 |
| 経常利益 | 3.9億円 | 4.9億円 | 5.1億円 | 4.3億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 7.0% | 6.7% | 5.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.1億円 | 6.2億円 | 3.1億円 | 2.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しました。事業拡大に伴うコスト増が利益を圧迫している構造が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 77億円 | 85億円 |
| 売上総利益 | 23億円 | 24億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.1% | 27.8% |
| 営業利益 | 5億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 6.9% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が7億円(構成比35%)、顧客関連資産償却が2億円(同10%)を占めています。売上原価においては、外注費が57億円(売上原価の98%)と大半を占めており、提携整備工場への支払いが主なコスト要因となっています。
■(3) セグメント収益
全事業区分において売上高は概ね増加傾向にあります。特に主力であるメンテナンス受託事業と成長中のMLS事業が業績を牽引しました。一方、その他事業は若干の減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| メンテナンス受託事業 | 63億円 | 70億円 |
| MLS事業 | 5億円 | 5億円 |
| BPO事業 | 8億円 | 9億円 |
| その他事業 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 77億円 | 85億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ現金を借入金の返済や投資に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー構造となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.3億円 | 4.3億円 |
| 投資CF | -1.4億円 | -0.9億円 |
| 財務CF | -2.6億円 | -5.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「Mobility’s Transformer」を経営理念に掲げ、「世の中のあらゆる移動を支える、BPOプレイヤーへの新化」というビジョンの実現を目指しています。変化するモビリティ業界において、移動に関する課題解決を担う存在となることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、顧客が抱える「複雑で煩わしい業務」を「より心地よく、よりシンプルに、より高品質のサービス」に変えることで価値を提供することを重視しています。この顧客志向のアプローチを通じて、モビリティ社会への貢献を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させるため、以下の指標を重視しています。また、事業拡大のKPIとして「管理台数」、収益性のKPIとして「売上総利益率」を設定しています。
* 売上総利益
* 営業利益
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、自動車メンテナンス受託事業を軸にしつつ、事業領域の拡大と収益の多様化を目指しています。具体的には、新規顧客の獲得や提携整備工場ネットワークの拡充に加え、整備以外のBPOサービスやモビリティ市場全体での付加価値創出に取り組んでいます。
* 新規領域の取引規模拡大
* 整備工場ネットワークの拡充(2025年3月末時点で13,031ヵ所)
* 新規事業の開発
* ITシステムの高度化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、事業拡大と企業価値向上のため、専門性や資質を備えた人材の確保と育成を不可欠としています。採用の強化に加え、社内研修による成長促進、リモートワークや福利厚生の充実による職場環境の整備に取り組み、「アナログ×デジタル」で多様なニーズに対応できる体制構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.6歳 | 8.4年 | 5,703,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.9% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 40.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 82.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金利変動による影響
同社は事業運営において有利子負債による資金調達を行っています。そのため、市場金利が上昇した場合には支払利息などの資金調達コストが増加し、同社の経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 新規取引先に対する与信リスク
新規事業領域への拡大に伴い新たな企業との取引が増加していますが、取引先の財務状況悪化による債権回収不能や、提携サービスの停止に伴う風評被害などのリスクがあります。これに対し、同社は信用調査の徹底や与信限度額の管理、モニタリングを通じてリスク低減に努めています。
■(3) のれん及び顧客関連資産の減損リスク
同社は過去のLBOによる買収に関連して、多額ののれん及び顧客関連資産(2025年3月末時点で約42億円)を計上しています。事業環境の変化等により将来の収益性が低下した場合には、これらの資産について減損損失が発生し、業績に重大な影響を与える可能性があります。
■(4) 競合環境と価格競争
主力であるメンテナンス受託事業は参入障壁が高いものの、競合他社のサービス向上や価格競争により競争力が低下した場合、収益性が悪化する恐れがあります。また、主要顧客であるリース会社の方針転換や、業界共通プラットフォームの普及などが受注に影響を与える可能性もあります。



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