※本記事は、株式会社ナルネットコミュニケーションズの有価証券報告書(第7期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナルネットコミュニケーションズってどんな会社?
同社グループは、自動車のメンテナンス受託やリース車両の管理を支援するBPO事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1978年に日本オートリースとして設立され、リース車両のメンテナンス管理業務を開始しました。2019年に現法人が設立されて旧ナルネットコミュニケーションズを完全子会社化し、2022年に吸収合併して現在の社名に変更しました。2023年に東京証券取引所グロース市場へ株式を上場しています。
従業員数は単体で108名です。筆頭株主のMobility&Maintenance Japanは伊藤忠商事と伊藤忠エネクスの共同出資会社です。第2位株主のイエローハットとは車両の整備委託等で資本業務提携を結んでおり、大手事業会社との強固なネットワーク基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Mobility&Maintenance Japan | 35.62% |
| イエローハット | 20.01% |
| 大和証券 | 2.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は鈴木隆志氏です。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木隆志 | 代表取締役社長 | 1988年日本オートリース入社。同社常務取締役などを経て、2014年より同社代表取締役社長。2022年より現職。 |
| 田中慎二郎 | 代表取締役社長 | 1985年伊藤忠商事入社。同社執行役員やWECARS代表取締役社長などを経て、2026年より現職。 |
| 東村大介 | 常務取締役 | 2012年グローバルワイズ代表取締役などを経て、2022年同社入社。2024年より現職。 |
| 服部正次 | 取締役 | 1986年丸万証券入社。1990年日本オートリース入社。同社執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 永冶健 | 取締役 | 2004年愛知中央三菱自動車販売入社。2005年同社入社。東日本営業部長などを経て、2025年より現職。 |
| 加藤明弘 | 取締役 | 2000年伊藤忠商事入社。関連会社への出向などを経て、2024年同社取締役就任。2025年より現職。 |
| 小田康裕 | 取締役 | 1996年伊藤忠エネクス入社。関連会社代表取締役社長などを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、花井浩(元メルセデス・ベンツ・ファイナンス社長)、横山純一(元日興ビジネスシステムズ取締役)です。
2. 事業内容
同社は「自動車関連BPO事業」の単一セグメントにおいて事業を展開しています。
自動車関連BPO事業として、法人・個人向けのリース車両における点検・車検・修理等のメンテナンス管理業務を一括受託しています。また、タイヤ保管サービスや納税管理サービス、中古車販売の納車前整備など、自動車に関わる多種多様な周辺BPOサービスも提供しています。
リース会社などの顧客からメンテナンス料金や業務委託手数料を受け取るストック型の収益モデルです。サービスの運営は同社が主体となり、全国の提携整備工場と連携して品質の高いメンテナンスの提供と生産性の向上を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大を続けており、直近5年間で継続的な増収を達成しています。経常利益も成長基調にあり、一時的な踊り場を経て直近では大幅な増益を記録するなど、着実な事業成長と収益性の向上が伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 64.2億円 | 70.3億円 | 76.7億円 | 85.4億円 | 99.3億円 |
| 経常利益 | 3.9億円 | 4.9億円 | 5.1億円 | 4.3億円 | 8.0億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 7.0% | 6.7% | 5.0% | 8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.1億円 | 6.2億円 | 3.1億円 | 2.4億円 | 5.0億円 |
■(2) 損益計算書
販売管理費の増加を吸収して売上総利益が大きく伸びており、結果として営業利益の倍増につながっています。売上総利益率および営業利益率もともに改善しており、収益構造の良化が進んでいます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 85.4億円 | 99.3億円 |
| 売上総利益 | 23.8億円 | 29.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.8% | 29.3% |
| 営業利益 | 4.4億円 | 8.1億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 8.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が7.0億円(構成比33%)、顧客関連資産償却が1.9億円(同9%)を占めています。また、売上原価の大部分は整備工場等への外注費(構成比98%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は自動車関連BPO事業の単一セグメントであるため、全社の売上高がそのまま該当します。リース企業からの受注増加や受託価格の見直しにより、増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車関連BPO事業 | 85.4億円 | 99.3億円 |
| 連結(合計) | 85.4億円 | 99.3億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す健全型のキャッシュ・フローです。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.3億円 | 8.4億円 |
| 投資CF | -0.9億円 | -0.8億円 |
| 財務CF | -5.0億円 | -5.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「Mobility’s Transformer」を経営理念に掲げ、モビリティ業界全体の課題を解決する受け皿として機能することを目指しています。また、新たなステートメントとして「移動を止めない 安心を創造する モビリティ・インフラ カンパニー」を掲げ、広く社会に貢献する意欲を示しています。
■(2) 企業文化
同社は多様性を最大限に活かし、「多様な個の活性化」を実現する経営を推進しています。社員一人ひとりが自らのキャリアオーナーシップを持ち、能力を発揮できる環境整備を重視し、「内側から輝ける健全な組織風土」を創っていくことを行動の基盤としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2027年3月期から2029年3月期までの3カ年を対象とする中期経営計画を策定しています。「収益の多様化」「デジタル変革」「収益性の確保」の3軸を成長の柱に据え、持続的な企業価値向上を目指しています。
* 2029年3月期売上高:133.2億円
* 2029年3月期営業利益:12.4億円
* ROE:15%(2030年3月期以降)
* BPO事業の売上比率:16%超
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、自動車メンテナンス受託事業を軸とした新規領域の取引規模拡大や、AIを活用したシステム開発による整備工場ネットワークの拡充を推進します。また、モビリティ市場での新しい付加価値サービスの創出や、DXを加速させるためのIT投資強化に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従来の労働集約型モデルから「価値創造・企画型モデル」への変革を目指し、AIと人間の役割分担を再定義しています。定型業務の自動化を進め、既存インフラを活用した「営業企画型」と最新技術を導入する「運営企画型」の2つの「企画創造型人財」を育成・創出する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.0歳 | 9.1年 | 5,973,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.8% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 41.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 55.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 外注費の変動による収益圧迫
自動車整備の工賃や部品価格の高騰、サプライチェーンの分断による供給不足が外注費を押し上げるリスクがあります。リース期間中の価格転嫁が難しい構造的課題があり、収益を圧迫する可能性があります。
(2) のれん及び顧客関連資産の減損
旧ナルネットコミュニケーションズの株式取得に伴う多額ののれん及び顧客関連資産を計上しています。急激な事業環境の悪化等により将来の収益性が低下した場合、減損処理により業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 基幹システムのリニューアルと障害
同社のビジネスは独自開発した基幹システムに大きく依存しています。現在進行中のリニューアルプロジェクトが遅延・中断した場合や、大規模なシステム障害が発生した場合、業務遂行や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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