記事タイトル:JSH転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社JSHの有価証券報告書(第10期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. JSHってどんな会社?
地方において企業の障がい者雇用を支援する事業と、精神疾患者向けの訪問看護サービスを展開しています。
■(1) 会社概要
同社は2016年に設立され、医療機関等を対象とした訪問診療コンサルティング業務を開始しました。2017年には企業買収等により訪問看護サービスを開始するとともに、子会社を通じて障がい者雇用支援事業などの地方創生事業にも参入しました。その後、順調に事業を拡大し、2024年に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしています。
同社グループの従業員数は連結579名、単体572名です。筆頭株主は創業者の野口和輝氏で、第2位および第3位は投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野口和輝 | 34.87% |
| ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合 | 17.28% |
| ジャフコSV5スター投資事業有限責任組合 | 4.27% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役会長兼社長は野口和輝氏です。社外取締役比率は16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野口和輝 | 代表取締役会長兼社長 | 1983年医療法人河崎会水間病院入職。複数の病院等を経て2003年N・フィールド設立し代表取締役社長就任。2016年同社設立し代表取締役社長就任。2019年より現職。 |
| 市川伸二 | 取締役経営管理本部長 | 2010年N・フィールド入社。2017年トレースエンタープライズ入社。2019年同社入社し執行役員就任。取締役副社長等を経て2026年より現職。 |
| 鎌田聖一 | 取締役東日本在宅医療事業本部長 | 1993年医療法人仁誠会大湫病院入職。2009年N・フィールド入社。2017年日本在宅医療設立し代表取締役社長就任。2018年同社取締役就任。取締役副社長等を経て2026年より現職。 |
| 山田平和 | 取締役地方創生事業本部長 | 1986年野村證券入社。2017年格付投資情報センター入社。2019年同社取締役就任。代表取締役社長等を経て2026年より現職。 |
| 北村充永 | 取締役西日本在宅医療事業本部長 | 2000年淀川キリスト教病院入職。2013年N・フィールド入社。2017年日本在宅医療設立し代表取締役常務就任。2019年同社取締役就任。2026年より現職。 |
| 濵西望 | 取締役 | 2009年野村證券入社。2014年UBS銀行入行。2016年同社専務取締役就任。2019年ジャパンサポート代表取締役就任。2020年同社取締役就任。2025年より現職。 |
| 矢野翔太郎 | 取締役営業本部長 | 2006年JTB西日本入社。2018年トレースエンタープライズ代表取締役就任。2019年同社入社。営業部長、執行役員等を経て2026年より現職。 |
社外取締役は、津田和義(公認会計士・税理士事務所代表)、江尻琴美(敬和綜合法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「地方創生事業」「在宅医療事業」および「その他」事業を展開しています。
■地方創生事業
障がい者の雇用義務がある民間企業等と、就労機会が限られている地方在住の障がい者をマッチングする障がい者雇用支援事業、および旅行代理店や民泊等の観光物産事業を提供しています。水耕栽培設備を活用した農園を開設し、障がい者が働きがいをもって就労できる環境を整備しています。
企業等に障がい者を紹介した際の人材紹介料に加え、農園利用料、水耕栽培設備レンタル料、定着支援サポート料等の月額費用を得ています。運営は同社が行っています。
■在宅医療事業
精神疾患を抱える方を主な対象として、看護師等が居宅を訪問して療養上の世話等を行う訪問看護サービスと、医療機関への訪問診療コンサルティングを提供しています。医師による訪問診療と看護師による訪問看護を組み合わせ、地域での生活支援を推進しています。
国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金等からの診療報酬、および利用者本人からの自己負担分によって収益を得ています。また、一部は医療機関へのコンサルティング収入も含まれます。運営は同社が行っています。
■その他
テクノロジーを活用したソリューション提供として、IoTを活用した不動産管理システム開発や無人内見システムなどを展開しています。不動産業界の持続的成長と価値創出に寄与するサービスの提供を進めています。
新規顧客の獲得等を通じたソリューションサービスの対価として収益を得ています。運営は子会社のショウタイム24が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
地方創生事業の順調な拡大により売上高は右肩上がりの増収基調にある一方で、事業規模拡大に伴う人員増加や新規拠点開設による先行投資が重み、直近では経常利益および当期利益ともに赤字へと転落しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39.7億円 | 47.4億円 |
| 経常利益 | 1.9億円 | -1.1億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | -2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.4億円 | -1.2億円 |
■(2) 損益計算書
増収に伴い売上総利益の絶対額は維持しているものの、新規拠点の立ち上げや人材採用等に伴う固定費の増加が先行し、営業利益率が悪化しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39.7億円 | 47.4億円 |
| 売上総利益 | 14.5億円 | 14.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.5% | 30.0% |
| 営業利益 | 1.8億円 | -1.1億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | -2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.6億円(構成比30%)、役員報酬が2.5億円(同16%)を占めています。また、売上原価のうち、労務費が18.0億円(構成比54%)、経費が14.2億円(同43%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である地方創生事業は利用企業数の増加により大幅な増収増益を達成しています。一方、在宅医療事業は新規拠点の開設や人員の積極採用による費用増が響き、減収かつ赤字転落となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 地方創生事業 | 25.1億円 | 32.1億円 | 5.6億円 | 7.8億円 | 24.2% |
| 在宅医療事業 | 14.5億円 | 14.5億円 | 1.6億円 | -2.0億円 | -13.6% |
| その他 | - | 0.9億円 | - | -0.6億円 | -66.6% |
| 連結(合計) | 39.7億円 | 47.4億円 | 1.8億円 | -1.1億円 | -2.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
勝負型(本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続)
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.4億円 | -0.4億円 |
| 投資CF | -6.9億円 | -6.5億円 |
| 財務CF | 1.7億円 | 7.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人を通じて、喜びを作り、幸せを作る」を企業理念とし、「地域を問わず全ての人が、心豊かに、能力や個性を発揮できる社会の実現」を目指すゴールとして掲げています。在宅医療・地方創生領域において、地域社会と日本の未来に貢献することに取り組んでいます。
■(2) 企業文化
「従業員一人ひとりの個性を尊重し、強みを最大限活かすこと、従業員の努力を支援すること、成果に対して正しく報いること」に注力しています。ICT技術を最大限に活用してノンコア業務の負担軽減を図り、生産性の向上や学習機会の増加につなげる環境づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の客観的な指標として、地方創生事業の障がい者雇用支援事業では障がい者受入純増数や障がい者受入数合計を、観光物産事業では旅行及び民泊取扱人数を目標としています。在宅医療事業においては、利用者数、訪問件数、常勤換算看護師数、1利用者あたり訪問件数などを指標に掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
地方創生事業では、農園の新規開設を進めるとともに、障がい者の能力開発に対する利用企業のサポート体制を強化し、サービスの質的向上を図ります。在宅医療事業では、質の高い訪問看護サービスを提供するため、医療機関との連携強化や効率的な訪問体制の構築に向けた積極的な拠点展開を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の成長とサービス品質の維持・向上には専門性を有する人材の確保と育成が不可欠であるとし、人事評価制度の見直しによる処遇の適正化や、DX推進による生産性の向上を図っています。多様な勤務形態の導入やICTの活用により、従業員がいきいきと働ける環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 2.6年 | 3,488,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 46.1% |
| 男性育児休業取得率 | 133.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 97.0% |
| 男女賃金差異(正規労働者) | 73.0% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 119.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(71.9%)、障がい者雇用率(2.72%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 障がい者雇用に関する制度動向
民間企業における障がい者の法定雇用率は引き上げられる傾向にありますが、今後の法改正等によって引き上げが中止された場合や雇用義務がなくなった場合には、同社の事業及び業績が影響を受ける可能性があります。
■(2) 障がい者雇用支援事業への法的規制と風評
同社の障がい者雇用支援事業の仕組みに対する否定的な風評が生じた場合や、ビジネスモデルを規制する法改正・条例制定等が行われた場合には、事業展開に支障をきたすリスクがあります。
■(3) 在宅医療事業における許認可と法的規制
在宅医療事業は介護保険法や健康保険法に基づく指定を受けており、これらの許可が取り消されたり更新されなかったりした場合や、関連する法的規制の改正等が行われた場合には、事業の継続が困難になる可能性があります。
■(4) 人材の確保と定着
両事業ともに労働集約的な事業であり、看護師をはじめとする人材の安定的確保が必要です。従業員の定着策が効果を発揮せず、人材の流出や採用難が生じた場合には、持続的な成長に支障をきたす恐れがあります。



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