JSH 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

JSH 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。地方に在住する障がい者の雇用を支援する「地方創生事業」と、精神科に特化した訪問看護を行う「在宅医療事業」を展開しています。2024年3月の上場後初の通期決算となる当期は、連結売上収益39.7億円を計上し、事業規模を拡大させる増収となりました。


※本記事は、株式会社JSH の有価証券報告書(第9期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. JSHってどんな会社?


地方での障がい者雇用支援農園の運営と、精神科特化型の在宅医療サービスを二本柱とする企業です。

(1) 会社概要


2016年に医療機関向けコンサルティング会社として設立され、2017年に在宅医療事業と障がい者雇用支援事業を開始しました。2019年には事業子会社4社を吸収合併して体制を強化し、2024年3月に東証グロース市場へ上場を果たしました。2025年1月にはIoTを活用した不動産管理システムを提供する企業を子会社化するなど、事業領域の拡大を進めています。

同社グループは連結従業員488名、単体従業員484名の体制で運営されています。筆頭株主は代表取締役会長兼社長の野口和輝氏で、第2位、第3位はベンチャーキャピタルが運営する投資事業組合です。経営陣やファンドが大株主となっており、成長段階にある企業の資本構成といえます。

氏名 持株比率
野口 和輝 35.13%
ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合 19.95%
ジャフコSV5スター投資事業有限責任組合 4.93%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役会長兼社長は野口和輝氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
野口 和輝 代表取締役会長兼社長 1983年医療法人河崎会水間病院入職。複数の精神科病院勤務を経て、2003年株式会社N・フィールド設立、代表取締役社長就任。2016年4月同社設立、代表取締役社長就任。2019年11月より現職。
宮﨑 洋祐 代表取締役専務経営管理本部長 1993年野村證券入社。2017年同社入社。専務取締役、代表取締役社長、子会社代表取締役等を歴任。2024年4月より現職。
鎌田 聖一 取締役在宅医療事業本部長 1993年医療法人仁誠会大湫病院入職。医療法人勤務を経て2009年株式会社N・フィールド入社。2017年日本在宅医療代表取締役社長。2018年同社取締役就任。2023年4月より現職。
市川 伸二 取締役地方創生事業共同本部長 2010年株式会社N・フィールド入社。2017年株式会社トレースエンタープライズ入社、代表取締役社長を経て2019年同社入社。2021年取締役就任。2025年4月より地方創生事業本部長(現任)。
山田 平和 取締役地方創生事業共同本部長 1986年野村證券入社。2017年株式会社格付投資情報センター入社。2019年同社取締役、代表取締役社長等を歴任。2025年4月より地方創生事業本部担当(現任)。
北村 充永 取締役 2000年淀川キリスト教病院入職。複数の病院勤務を経て2013年株式会社N・フィールド入社。2017年日本在宅医療設立、代表取締役社長等を経て2019年同社取締役就任(現任)。
濵西 望 取締役 2009年野村證券入社。2014年UBS銀行入行。2016年同社入社。専務取締役、子会社代表取締役等を歴任。2020年取締役就任(現任)。


社外取締役は、津田和義(公認会計士・税理士)、江尻琴美(敬和綜合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「地方創生事業」および「在宅医療事業」と「その他」事業を展開しています。

地方創生事業


都市部の企業向けに、地方在住の障がい者を雇用するための支援サービスを提供しています。具体的には、障がい者の採用・定着支援、および同社が運営する屋内型水耕栽培農園「コルディアーレ農園」の就労スペース貸し出し等を行います。また、長崎県五島市を中心とした観光物産事業も手掛けています。

収益は、サービス利用企業からの人材紹介料(スポット)、および農園利用料や定着支援サポート料、水耕栽培設備レンタル料(リカーリング)等から構成されています。運営は主にJSHが行っています。

在宅医療事業


精神疾患を抱える患者を主たる対象として、訪問看護サービスを提供しています。医療機関に対して訪問診療のコンサルティングを行い、医師による訪問診療と連携した看護サービスを展開しています。

収益は、国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金等からの診療報酬、および利用者本人からの自己負担分が9割以上を占めています。運営はJSHが行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、コンサルティング事業およびIoTソリューションサービス事業を行っています。2025年1月に子会社化したショウタイム24が、スマートロック等のIoTを活用した無人内見システムサービスなどを提供しています。

収益は、コンサルティング報酬やシステム利用料等からなります。運営はJSHおよびショウタイム24が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第9期より連結決算を開始しています。売上高は約40億円規模に達しており、事業拡大が続いています。利益面では、連結経常利益1.9億円、親会社株主に帰属する当期純利益1.4億円を計上し、黒字を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) - - - - 40億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 - - - - 1.9億円
利益率(%) - - - - 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) - - - - 1.5億円

(2) 損益計算書


当連結会計年度の売上高は約40億円、営業利益は約1.8億円となりました。売上総利益率は36.5%を確保していますが、販売費及び一般管理費の負担により営業利益率は4.4%となっています。

項目 2025年3月期
売上高 40億円
売上総利益 14億円
売上総利益率(%) 36.5%
営業利益 1.8億円
営業利益率(%) 4.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.8億円(構成比29%)、役員報酬が2.0億円(同16%)、広告宣伝費が1.7億円(同14%)を占めています。売上原価においては、労務費や地代家賃が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


地方創生事業が全社売上の約6割を占める主力事業となっており、セグメント利益率も22.1%と高い収益性を誇ります。在宅医療事業も売上の約3割強を占め、11.3%の利益率を確保しています。両事業ともに黒字で全社利益に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
地方創生事業 25.1億円 5.6億円 22.1%
在宅医療事業 14.5億円 1.6億円 11.3%
その他 0.0億円 0.0億円 46.7%
調整額 -0.0億円 -5.5億円 -
連結(合計) 39.7億円 1.8億円 4.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

第5期はキャッシュ・フロー計算書を作成しておりませんが、第6期以降は連結財務諸表を作成しております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、地方創生事業における農園開設等に伴う固定費負担の増加等の影響を受けております。投資活動によるキャッシュ・フローは、連結子会社の買収や農園開設等に関連する資金の動きを示しております。財務活動によるキャッシュ・フローは、優先株式の取得・消却や株式分割等による資金調達・返済の状況を表しております。

項目 2025年3月期
営業CF 1.4億円
投資CF -6.9億円
財務CF 1.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「人を通じて、喜びを作り、幸せを作る」を企業理念として掲げています。また、目指すゴールとして「地域を問わず全ての人が、心豊かに、能力や個性を発揮できる社会の実現」を設定し、在宅医療および地方創生領域において、地域社会と日本の未来への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「従業員一人ひとりの個性を尊重し、強みを最大限活かすこと、従業員の努力を支援すること、成果に対して正しく報いること」を重視しています。また、SDGsを意識した取り組みも推進しており、障がい者の働き甲斐向上やサステイナブル・ツーリズムの推進などを通じて、社会課題の解決と事業成長の両立を図る文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、地方創生事業における「障がい者受入純増数」や「障がい者受入数合計」、在宅医療事業における「利用者数」「訪問件数」「常勤換算看護師数」などを経営上の重要な指標(KPI)として設定しています。具体的な数値目標としては、以下のような長期的な指標を掲げています。

* 2030年までに女性役員比率を30%以上とする
* 2030年までに障がい者雇用率を3%以上とする
* 2030年までに有給休暇取得率を80%以上とする

(4) 成長戦略と重点施策


地方創生事業では、障がい者雇用支援サービスの利用企業拡大と、紹介する障がい者数の増加に取り組みます。特に、精神障がい者の定着率向上に向け、在宅医療事業のノウハウを活用した支援を強化します。また、新たな農園の開設や、観光物産事業での民泊拡大なども推進します。

在宅医療事業では、医療機関との連携を深め、訪問診療の支援を通じた患者紹介の増加を図ります。効率的な訪問看護体制を構築するため、既存拠点の訪問効率向上や、ドミナント戦略を考慮した新規出店を進めます。さらに、子会社化したショウタイム24との連携による新たな付加価値創出も目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、従業員の個性を尊重し、自律的な成長を支援する方針を掲げています。多様な勤務形態(週4日勤務、時短勤務、在宅勤務等)の導入やICT活用による業務負担軽減を進め、働きやすい環境を整備しています。また、研修制度の充実や評価制度の改定を通じて、従業員のスキルアップとモチベーション向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 2.6年 3,574,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.8%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 107.5%
男女賃金差異(正規雇用) 77.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 157.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.1%)、有給休暇取得率(73.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 障がい者雇用に関する制度変更等の影響


民間企業の障がい者法定雇用率は段階的に引き上げられる傾向にあり、同社事業への需要拡大が見込まれますが、将来的に法改正等により法定雇用率の引き上げ中止や雇用義務の撤廃などが行われた場合、同社の事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 障がい者雇用支援事業のビジネスモデルに関するリスク


同社の障がい者雇用支援事業は、企業に採用された障がい者が同社の農園で就労するモデルです。適法性は確認されていますが、この仕組みに対する否定的な風評の発生や、ビジネスモデルを規制するような法改正・条例制定等が行われた場合、事業運営に支障が生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 許認可等の法的規制に関するリスク


地方創生事業では有料職業紹介事業や旅行業法、在宅医療事業では指定居宅サービス事業者や指定訪問看護事業者など、多岐にわたる許認可を受けて事業を行っています。法令違反等によりこれらの許認可の取り消しや停止処分を受けた場合、事業の継続が困難となり、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。