※本記事は、株式会社ヒューマンテクノロジーズの有価証券報告書(第15期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヒューマンテクノロジーズってどんな会社?
同社は、勤怠管理システムを中心に、人事労務や給与計算の自動化など業務全体の効率化支援を展開しています。
■(1) 会社概要
2001年に前身の会社が設立され、2003年にクラウド勤怠管理システム「KING OF TIME」の提供を開始しました。2012年に現在のヒューマンテクノロジーズへ商号変更し、2023年に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。2025年には「KING OF TIME 電子契約」の提供を開始しています。
同社の従業員数は連結で336名、単体で323名です。筆頭株主は同社の代表取締役会長である恵志章夫氏の資産管理会社とみられるニューホライズンで、第2位は信託業務を行う日本カストディ銀行、第3位は恵志章夫氏個人となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ニューホライズン | 37.53% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 12.42% |
| 恵志章夫 | 11.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は家﨑晃一氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 恵志章夫 | 代表取締役会長 | 日本アイ・ビー・エムや伊藤忠商事等を経て2011年に同社代表取締役に就任。2022年より現職。 |
| 家﨑晃一 | 代表取締役社長 | リョーサンを経て2009年に同社入社。2021年に取締役やITエージェント代表取締役に就任し、2022年より現職。 |
| 篠田修 | 取締役 | シャープや太田昭和監査法人等を経て2019年に同社入社。2021年より現職。 |
社外取締役は、青島矢一(一橋大学イノベーション研究センター教授)、滝澤美帆(学習院大学経済学部経済学科教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「勤怠管理SaaS事業」を展開しています。
■勤怠管理SaaS事業
同社グループは、クラウド勤怠管理システム「KING OF TIME」を中心とした勤怠管理SaaS事業を展開しています。業種や企業規模を問わず幅広い企業を顧客とし、複雑化する法規制や多様な働き方に対応した勤怠管理から給与計算までの包括的なソリューションを提供し、労働生産性の向上を支援しています。
収益の柱は、顧客企業から受け取るシステムの月額利用料です。従来の打刻ベースから登録人数ベースへの課金移行を進め、安定的な収益基盤を構築しています。事業の運営は主にヒューマンテクノロジーズが行うほか、海外展開やシステム開発、販売業務を複数の子会社が分担して担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。経常利益は一時的に落ち込む時期があったものの、その後は力強い回復を見せ、直近の決算では大幅な増益を達成しました。利益率も改善傾向にあり、成長性と収益性の両立が着実に進展していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 42億円 | 50億円 | 61億円 | 75億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 3億円 | 5億円 | 9億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 16.3% | 7.7% | 9.9% | 15.4% | 18.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 3億円 | 3億円 | 7億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の順調な拡大に伴い、売上総利益と営業利益も力強い伸びを示しています。売上総利益率は高い水準を維持しており、営業利益率も前期と比較して大きく向上しました。コストコントロールと売上成長の相乗効果により、効率的な収益基盤が確立されていることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 61億円 | 75億円 |
| 売上総利益 | 42億円 | 49億円 |
| 売上総利益率(%) | 69.1% | 64.7% |
| 営業利益 | 9億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 15.4% | 18.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比31%)、販売促進費が4.4億円(同13%)、システム利用料が3.8億円(同11%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業であると言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 9億円 |
| 投資CF | -2億円 | -24億円 |
| 財務CF | -1億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「お客様の飛躍的な労働生産性向上を目指す」をパーパスとして掲げています。また、「オペレーションからの解放と創造的業務への後押し」をミッションとし、勤怠管理を中心に給与計算の自動化など業務全体の効率化支援に取り組んでいます。日々の煩雑なオペレーション業務から、人材のデータを利活用できる創造的業務へと転換することを目指し、社会全体の生産性向上に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、企業にとって最も重要な経営資源は「ヒト(人材)」であるという価値観を重視しています。先進的なデジタル技術の活用と従業員の活躍を通じて新たな価値の創造をし続ける文化があり、全従業員に対するAIツールの付与や社内業務での活用を推進しています。また、リモートワークの推進や地方居住可能な就業制度など、多様な人材が柔軟に働ける環境を自社で実践し、持続的な企業価値の向上に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、「KING OF TIME」の価値向上と安定的なサービス提供を目的として、AIやセキュリティに関連する戦略的な先行投資を実行しています。これらの投資を優先する判断から、中長期的な収益目標として営業利益率30%程度の達成時期を2030年3月期に見据えています。月額1人300円で全ての機能が利用できる「ワンプライス戦略」を維持しつつ、投資の成果を段階的に収益性向上へ繋げる計画です。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、継続的な事業成長に向けて「サブスクリプションマネジメントプラットフォーム(SMP)」構想を推進しています。「KING OF TIME」を入口として多様なサービスを販売し、顧客当たり売上高の向上を図る戦略です。有力パートナーとの関係強化による新規顧客獲得に加え、給与計算業務の受託や電子契約などの付加価値提供を進めます。さらに、グローバル基準のサービスをタイなどの東南アジア市場へ展開し、新たな収益源の開拓に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な事業成長を支える基盤として人材への戦略的な投資を最重要課題と位置付けています。求める人物像を「経営者目線を持つプロフェッショナル」と定義し、プロフェッショナル軸とマネジメント軸の複線型キャリアを備えた新人事制度を導入しています。キャリア面談や学習支援を通じて専門性の向上を促すとともに、働く場所を問わない柔軟なワークスタイルや健康経営の推進により、多様な人材が長期にわたり活躍できる環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.0歳 | 4.4年 | 6,506,000円 |
※平均年間給与は賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 25.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 75.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 76.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 41.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(45%)、外国人比率(4%)、有給消化率(83%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 生成AIの進化に伴うリスク
先端技術の急速な進化は脅威と機会の両面をもたらします。AIを活用した新興競合の参入や顧客自身による内製化が進展した場合、サービスの競争優位性が損なわれる恐れがあります。同社はAI関連の積極的な投資を行い業務効率化や機能拡充を進めていますが、技術進化のスピードに対応できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) サイバーセキュリティ管理
膨大な個人情報や顧客機密情報をクラウド上で預かる事業特性上、データ保護は事業継続の根幹です。サイバー攻撃の高度化や生成AIを悪用した新たな攻撃、外部連携先からの情報漏洩リスクが増大しています。万一インシデントが発生した場合、個人情報の漏洩に伴う損害賠償請求や社会的信用の失墜により、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法令等の改正に伴うシステム改修
同社のサービスは、複雑かつ毎年改正される日本の労働関係法令への適合を前提に提供されています。法令対応は極めて重要な責務ですが、改正の周知期間が短い場合や複雑なシステム改修を要する場合、対応の遅延や改修費用の増加、誤った計算結果による顧客への損害賠償などが発生し、財政状態に影響を与えるリスクがあります。



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