ヒューマンテクノロジーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒューマンテクノロジーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場で、勤怠管理システム「KING OF TIME」等のクラウドサービス(SaaS)を開発・提供しています。中小企業から大企業まで幅広い顧客基盤を持ち、直近の業績は売上高が前期比20.3%増、経常利益が同86.7%増と大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社ヒューマンテクノロジーズ の有価証券報告書(第14期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヒューマンテクノロジーズってどんな会社?


勤怠管理SaaS市場でトップクラスのシェアを持つ「KING OF TIME」を展開する企業です。

(1) 会社概要


2001年に前身となる株式会社エス・エヌ・シーが設立され、2003年に勤怠管理システム「KING OF TIME」の提供を開始しました。2011年にLBO(レバレッジド・バイ・アウト)に伴う受け皿会社として株式会社H&Tホールディングスを設立し、翌2012年に事業会社を吸収合併して現商号へ変更しました。その後、東南アジアへの拠点展開などを経て、2023年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

同グループの連結従業員数は318名、単体では306名体制です。大株主については、筆頭株主は代表取締役会長の資産管理会社であるニューホライズンで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は代表取締役会長の恵志章夫氏となっています。

氏名 持株比率
ニューホライズン 37.53%
日本カストディ銀行(信託口) 13.01%
恵志章夫 11.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名、計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長は恵志章夫氏、代表取締役社長は家﨑晃一氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
恵志 章夫 代表取締役会長 日本アイ・ビー・エム、伊藤忠商事等を経て、2010年より旧ヒューマンテクノロジーズ代表取締役に就任。2011年に現法人を設立し代表取締役に就任。2022年より現職。
家﨑 晃一 代表取締役社長 1998年リョーサン入社。2009年に同社入社。2021年取締役を経て、2022年より現職。
篠田 修 取締役 シャープ、太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)を経て、複数の企業で役員を歴任。2019年に同社入社、2021年より現職。公認会計士・税理士。


社外取締役は、青島矢一(一橋大学イノベーション研究センター教授)、滝澤美帆(学習院大学経済学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「勤怠管理SaaS事業」を展開しています。

勤怠管理SaaS事業


主力のクラウド勤怠管理システム「KING OF TIME」を中心に、人事管理や給与計算システムなどの開発・販売を行っています。PCやスマートフォンだけでなく、生体認証(顔・指紋・静脈)やICカードなど多様な打刻手段に対応し、複雑な就業規則にも柔軟に対応できる点が特徴です。中小・中堅企業をコア顧客としつつ、大企業への導入も進んでいます。

収益は主に、サービスの利用企業から受け取る月額利用料(サブスクリプション収入)から成り立っています。また、専用端末の販売や導入支援などの一時的な収益もあります。運営は主にヒューマンテクノロジーズが行っており、海外ではシンガポールやタイの連結子会社が開発・販売の一部を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年3月期から2025年3月期までの4期間において、売上高は36億円から61億円へと順調に拡大しています。経常利益も一時的な変動はあるものの、直近では9億円を超え、利益率は15%台まで向上しました。SaaSモデル特有の積み上げ型収益により、安定的な成長トレンドを維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 36億円 42億円 50億円 61億円
経常利益 6億円 3億円 5億円 9億円
利益率(%) 16.3% 7.7% 9.9% 15.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 2億円 3億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しました。特に営業利益率は前期の10.3%から当期は15.4%へと5ポイント以上改善しており、収益性が高まっています。増収効果がコスト増加を上回り、利益体質が強化されていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 50億円 61億円
売上総利益 34億円 42億円
売上総利益率(%) 67.9% 69.1%
営業利益 5億円 9億円
営業利益率(%) 10.3% 15.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比32%)、販売促進費が4億円(同12%)、外注費が3億円(同10%)を占めています。売上原価においては人件費などの固定費的な性質の費用が含まれますが、売上拡大による利益率向上に寄与しています。

(3) セグメント収益


同社は「勤怠管理SaaS事業」の単一セグメントですが、サービス利用の拡大により売上高は前期比20.3%増と好調に推移しました。「KING OF TIME」のID数増加や機能拡張に伴う単価向上などが寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
勤怠管理SaaS事業 50億円 61億円
連結(合計) 50億円 61億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ヒューマンテクノロジーズは、勤怠管理SaaS事業を単一セグメントとして展開しています。
同社の営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益により増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得等により支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4億円 10億円
投資CF -3億円 -2億円
財務CF 14億円 -1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人時生産性をお客様と共に考える」を企業理念とし、「オペレーションから解放し、創造的業務への後押し」をミッションに掲げています。勤怠管理を中心に「給与計算の自動化」の実現を目指し、企業の最も重要な経営資源である「ヒト」の時間を管理し、生産性を向上させることを使命としています。

(2) 企業文化


事業拡大の根幹をなす概念として「TOP3 コンセプト」を定めています。具体的には、「TOPコストパフォーマンス」「TOPセールスチャネル」「TOPパートナーシップ」の3つであり、これらを通じて企業の生産性改善をもとにした「お客様の飛躍的な労働生産性向上」を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は経営上の目標達成状況を判断する指標として、単体ベースの売上高や利益のほか、SaaSビジネスに特有の指標を重視しています。具体的には、ARR(年間経常収益)、月次換算解約率、利用社数、利用ID数、課金ID数などを重要な経営指標(KPI)と位置づけ、これらを継続的に増加させることを目標としています。

* ARR:5,749百万円(2025年3月期)
* 課金ID数:2,897千ID(2025年3月期)
* 月次換算解約率:0.30%(2025年3月期)

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として「顧客当たり売上高の向上」を掲げています。具体的には、有力パートナーとの連携による顧客基盤の拡大、勤怠だけでなく人事労務・給与計算までサービス範囲を広げることによる顧客体験の向上、さらにデータ活用やBPOサービスなどの新しい付加価値の提供を進めています。

* KOT SaaS売上高:5,346百万円(2025年3月期)
* 利用社数:61,444社(2025年3月期)
* 利用ID数:3,853千ID(2025年3月期)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源と位置づけ、オンボーディングやキャリアデザインを実現する制度・教育により、社会に貢献する人材の育成を目指しています。また、健康診断受診率向上やメンタルヘルス対策などの「健康経営」を推進し、多様な人材が長期にわたり活躍できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.5歳 4.0年 5,816,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.0%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.0%
男女賃金差異(正規雇用) 77.0%
男女賃金差異(非正規) 46.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(44%)、外国人比率(3%)、退職率(7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システムトラブルについて


クラウド上の汎用IaaS上にサービスを構築しているため、災害やハッキング、ソフトウェアの不具合などによりシステム障害が発生した場合、サービス提供が妨げられ、事業や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 重大な不具合について


サービスのリリース前に品質チェックを実施していますが、リリース後に重大な不具合(バグ等)が発生した場合、想定外のコスト発生や信用の失墜、損害賠償責任などが生じ、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報管理体制について


顧客企業の機密情報や個人情報を扱っているため、情報漏洩が発生した場合には社会的信用の失墜や損害賠償などの費用負担が発生し、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。ISMS認証やPマークの取得など管理体制の強化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。