※本記事は、リョーサン菱洋ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第2期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. リョーサン菱洋ホールディングスってどんな会社?
同社は、デバイス事業とソリューション事業を展開し、顧客の課題解決を支援するエレクトロニクス商社です。
■(1) 会社概要
2023年5月にリョーサンと菱洋エレクトロが経営統合に関する基本合意書を締結し、2024年4月に共同持株会社としてリョーサン菱洋ホールディングスを設立し、東京証券取引所プライム市場へ新規上場しました。その後、2026年4月にリョーサンと菱洋エレクトロが合併し、リョーサン菱洋へと社名を変更し事業基盤を統合しています。
従業員数は連結で1,644名、単体で59名です。大株主については、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位がエス・エッチ・シー、第3位が事業会社である住友生命保険相互会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.43% |
| エス・エッチ・シー | 5.28% |
| 住友生命保険相互会社 | 3.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は中村守孝氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村守孝 | 代表取締役社長執行役員 | 伊勢丹(現三越伊勢丹)入社後、同社常務執行役員等を経て、2018年菱洋エレクトロ代表取締役社長。2024年4月より現職。 |
| 稲葉和彦 | 代表取締役副社長執行役員 | リョーサン入社後、電子部品事業本部長等を経て、2020年同社代表取締役社長執行役員。2024年4月より現職。 |
| 遠藤俊哉 | 取締役常務執行役員 | リョーサン入社後、リョーサンタイランド社長、営業統括本部長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 髙橋則彦 | 取締役常務執行役員 | 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行後、リョーサン入社。企画本部長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 佐野修 | 取締役常務執行役員 | 菱洋電機(現リョーサン菱洋)入社後、技術戦略本部長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 脇清 | 取締役(常勤監査等委員) | 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行後、菱洋エレクトロ入社。管理本部長等を経て、2024年4月より現職。 |
社外取締役は、髙田信哉(元三越伊勢丹ホールディングス代表取締役専務執行役員)、川辺春義(元ニュートラル代表取締役社長)、金子好久(大和ファンド・コンサルティング代表取締役社長)、小川真人(ACEコンサルティング代表取締役)、大井素美(大井公認会計士事務所開設)、福田佐知子(公認会計士高屋(福田)佐知子事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デバイス事業」および「ソリューション事業」を展開しています。
■(1) デバイス事業
半導体や電子部品の販売および製造などを行う事業です。国内外の様々な電子機器メーカー等の顧客に向けて、ものづくりや事業成長を支援する製品を提供しています。
収益は、顧客への商品または製品の販売対価として受け取ります。同事業は主にリョーサンや菱洋エレクトロをはじめ、香港、中国、台湾、シンガポールなどの海外子会社群によって運営されています。
■(2) ソリューション事業
IT機器やそれに付随するシステムの販売、製造および構築などを行う事業です。企業のDX推進や業務効率化、生成AIやクラウド技術を活用したITインフラ整備への投資ニーズに応えるソリューションを提供しています。
収益は、IT製品の販売やソリューション提供に伴う対価として顧客から受け取ります。同事業は主にリョーサン、菱洋エレクトロのほか、スタイルズやリョーヨーセミコン、海外の各子会社によって運営されています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近2期間の業績を見ると、売上高はほぼ横ばいで推移していますが、経常利益は71億円から89億円へと増加し、利益率も改善しています。一方で、当期利益は段階取得に係る差益の剥落等により減少しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,598億円 | 3,599億円 |
| 経常利益 | 71億円 | 89億円 |
| 利益率(%) | 2.0% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 94億円 | 74億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、売上原価の減少により売上総利益は増加し、売上総利益率も改善しています。これに伴い、営業利益も85億円から101億円へと順調に拡大し、本業の収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,598億円 | 3,599億円 |
| 売上総利益 | 349億円 | 376億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.7% | 10.4% |
| 営業利益 | 85億円 | 101億円 |
| 営業利益率(%) | 2.4% | 2.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が85億円(構成比31%)、賞与引当金繰入額が10億円(同3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
デバイス事業はテレビやOA機器向けの需要減により減収となりましたが、高収益製品の売上構成比上昇により増益を達成しました。ソリューション事業は幅広い商材の販売が堅調で、AI分野での高付加価値型案件の拡大が牽引し、増収増益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デバイス事業 | 2,596億円 | 2,547億円 | 45億円 | 57億円 | 2.3% |
| ソリューション事業 | 1,002億円 | 1,053億円 | 36億円 | 44億円 | 4.1% |
| 連結(合計) | 3,598億円 | 3,599億円 | 85億円 | 101億円 | 2.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業赤字を資産売却や借入などで補填する救済型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 132億円 | -15億円 |
| 投資CF | -153億円 | 38億円 |
| 財務CF | -176億円 | 16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客様のニーズにお応えし 社会に必要とされる企業になる」をビジョンに掲げています。このビジョンのもと、顧客のものづくりや事業成長を支援するとともに、その先のエンドユーザーに至るまでの課題解決に貢献することを通じて、中長期的な企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「貢献・協働・賞賛」を行動指針として掲げており、これに基づくコミュニケーションを活発に行うことで、お互いから学びあうことができる企業文化の醸成を図っています。社員一人ひとりが活躍し、成長できる環境づくりを進めることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営統合後の2024年に、2029年3月期までの5ヶ年を対象とした中長期的な経営計画を策定・公表しました。しかし、主要仕入先からの特約店契約終了の申し入れにより、現段階で合理的に今後の業績動向を見通すことが困難となったため、新たな方針・目標を改めて公表する予定としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
AI関連需要の拡大やサプライチェーンの高度化といった構造変化を成長機会と捉え、事業子会社の合併による組織・機能の一体化を進めています。重点施策として、効率的かつ付加価値の高い営業体制を構築する「生産性の向上」、重点領域へのリソース集中による「統合シナジーの創出」、AI・ロボティクスなどの成長領域における知見蓄積による「独自性の創出」を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員一人ひとりが「会社利益に貢献できる人材へと成長する」ことを重要な取り組みと位置づけています。難易度の高いテーマへの積極的な挑戦を促し、自律的な能力向上を後押しする仕組みを整えるとともに、誰もが働きやすい環境づくりを推進し、持続的な成長につなげることを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.0歳 | 18.0年 | 7,648,361円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 33.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 63.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 31.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループの管理職に占める女性労働者割合(6.8%)、グループの男性労働者の育児休業取得率(72.2%)、グループの労働者の男女賃金の差(65.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 世界マクロ経済環境の変化によるリスク
同社グループは国内外のメーカーに対して商品の販売を行っているため、米国、欧州、中国、新興国や日本の景気減速により、個人消費や設備投資が低下した場合、顧客からの製品需要が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 固定資産に関する減損リスク
同社グループは多額の固定資産を保有しており、資産価値の下落に起因する減損リスクを有しています。事業計画や経営環境などの前提条件の変化により減損処理が必要となった場合、財務状態および経営成績に影響を及ぼす恐れがあります。
■(3) 仕入先に関するリスク
国内外の複数の仕入先と代理店契約を締結し、良好な取引関係を維持していますが、仕入先の事業再編や販売チャネル政策の見直しが行われた場合、同社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報セキュリティリスク
取引先から預かった機密情報や個人情報を保有しており、セキュリティ管理を実施していますが、不正アクセスやウイルス感染などにより情報流出が発生した場合、損害賠償だけでなく社会的信用の低下により業績に影響を及ぼす恐れがあります。



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