※本記事は、株式会社ハンモックの有価証券報告書(第32期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ハンモックってどんな会社?
企業の生産性向上を支援するIT資産管理や営業支援、AIデータ入力などのソフトウェアを開発・販売しています。
■(1) 会社概要
1994年の設立後、2000年に統合型IT運用管理ツール「AssetView」の提供を開始しました。その後、2014年に営業支援ツール「ホットプロファイル」、2015年に帳票データ化OCRソフト「AnyForm OCR」をリリースし事業を拡大しました。2024年に東京証券取引所グロース市場へ上場しています。
従業員数は単体で218名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は代表取締役社長の若山大典氏であり、第2位および第3位も若山氏をはじめとする創業者一族の個人株主が上位を占めています。安定した経営基盤のもとで自社開発を中心としたスピーディーな製品展開を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 若山 大典 | 35.36% |
| 若山 正美 | 9.49% |
| 若山 悠 | 8.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は若山大典氏が務め、取締役4名中2名(50.0%)が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 若山 大典 | 代表取締役社長 | 1997年アルファ入社、2000年ハンモック入社。2009年取締役、2014年常務取締役を経て、2018年より現職。 |
| 冨來 美穂子 | 取締役CFO兼管理本部長 | 1988年リクルート入社。複数企業で取締役CFOなどを歴任後、2021年ハンモック取締役CFO兼管理本部長に就任。2023年より現職。 |
社外取締役は、小林保裕(セレス常務取締役兼管理本部長)、後藤恒久(ネットイヤーグループ内部監査室長)です。
2. 事業内容
同社は、「ソリューション提供事業」を展開しています。
■(1) ネットワークソリューション
PCやネットワークのIT資産管理、セキュリティ対策を統合的に管理するソフトウェア「AssetView」シリーズの開発・販売と運用支援サービスを行っています。ウイルス対策や情報漏洩阻止、ログ管理などを1つの画面で操作でき、幅広い業種の民間企業から官公庁まで導入されています。
オンプレミス型の製品販売および保守・導入サービス収益と、クラウド型の一定期間のサービス利用権利に対するリカーリング収益が主な収益源です。顧客の要望に応じて必要な機能だけを選択購入できる仕組みで、事業の運営は同社が行っています。
■(2) セールスDXソリューション
法人営業の生産性向上や売上拡大を支援する「ホットプロファイル」および「ホットアプローチ」の開発・販売・運用支援を提供しています。名刺管理、SFA/CRM、MAを統合した営業プラットフォームや、独自AIを活用した新規顧客開拓に特化した営業支援ツールを展開しています。
定額のクラウド型サービスとして提供しており、プランごとに一定の利用量を含む月額利用料によるリカーリング収益が主な収益源です。複数の機能を組み合わせて利用することで営業プロセスのDX化を促進し、継続的な収益基盤を形成しています。事業の運営は同社が行っています。
■(3) AIデータエントリーソリューション
AI OCR技術をベースとしたデータ入力業務効率化ソリューションを提供しています。手書きや非定型帳票の高精度な文字認識が可能なオンプレミス型「AnyForm OCR」や、帳票設計不要のクラウド型「DX OCR」、データ確認作業まで請け負う「WOZE」などを展開しています。
オンプレミス型製品の販売・保守による収益と、クラウド型サービスでの従量課金制または固定料金制によるリカーリング収益を獲得しています。労働人口減少による人手不足を背景に入力業務の効率化ニーズを取り込んでいます。事業の運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、企業のDX推進やクラウド化ニーズを背景に主力ソフトウェアの販売が好調に推移し、継続的な増収増益のトレンドを描いています。特にリカーリング収益の拡大により、利益率も安定して高い水準を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 36.5億円 | 39.9億円 | 42.8億円 | 47.1億円 | 48.9億円 |
| 経常利益 | 4.1億円 | 5.0億円 | 7.8億円 | 8.3億円 | 8.7億円 |
| 利益率(%) | 11.2% | 12.6% | 18.2% | 17.6% | 17.7% |
| 当期利益 | 9.3億円 | 4.2億円 | 6.5億円 | 6.2億円 | 6.9億円 |
■(2) 損益計算書
クラウドサービスの好調等により売上高が増加し、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る実績となりました。開発費等の固定費負担が相対的に低減し、安定した利益構造を構築しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 47.1億円 | 48.9億円 |
| 売上総利益 | 20.6億円 | 21.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.8% | 43.3% |
| 営業利益 | 7.9億円 | 8.3億円 |
| 営業利益率(%) | 16.8% | 17.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.1億円(構成比32.1%)、広告宣伝費が1.4億円(同11.1%)を占めています。また、売上原価(当期総製造費用)においては経費が22.3億円(構成比67.4%)、労務費が10.8億円(同32.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力であるネットワークソリューションはクラウドサービスが牽引し増収となりました。セールスDXソリューションは既存顧客の更新等で堅調に推移し、AIデータエントリーソリューションはオンプレミス製品からクラウドへの移行途上で減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ネットワークソリューション | 28.7億円 | 31.4億円 |
| セールスDXソリューション | 13.6億円 | 13.6億円 |
| AIデータエントリーソリューション | 4.8億円 | 4.0億円 |
| 合計 | 47.1億円 | 48.9億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業利益と資産の売却等による資金で借入返済等を進める改善型のパターンとなっています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も45.2%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9.2億円 | 16.2億円 |
| 投資CF | -3.7億円 | 0.6億円 |
| 財務CF | -0.4億円 | -1.2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「テクノロジーの力で、未来をつくる新しい体験を提供し、ひとりひとりが輝く社会へ」というパーパスのもと、顧客の企業価値向上に資するべく、ITで経営課題を解決し、業務の生産性向上・信頼性向上を図ることを使命としています。時代に合わせた高付加価値のITソリューションを提供し、社会になくてはならないリーディングカンパニーを目指しています。
■(2) 企業文化
従業員一人ひとりが強みを発揮し、主体的に挑戦と成長を続ける組織づくりを重視しています。自らの「なりたい姿」に向かって挑戦し続ける文化の醸成を図っており、専門性と主体性を備え、顧客への価値提供を通じて新たな体験を創出できる人材を育成する風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
リカーリング型のビジネスモデルを展開していることから、継続的に売上を成長させていくことが重要と位置づけ、「売上高成長率」と「営業利益」を重要な経営指標として掲げています。安定した成長率と利益を継続して確保し、今後も利益率の向上を図っていく方針です。
* 2027年3月期(予想)売上高成長率:8.1%
* 2027年3月期(予想)営業利益:8.8億円
■(4) 成長戦略と重点施策
リカーリング型ビジネスモデルへの移行を進め、新規顧客の獲得と既存顧客の継続率(チャーンレート)維持により成長性を高めます。市場ニーズを的確に捉え、自社開発による新機能・新製品の投入サイクルを高速化して事業領域を拡大します。また、カスタマーサクセスを強化し、導入・運用支援を通じて顧客満足度を高め、長期的な収益確保と利益率の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を企業価値向上の源泉となる最も重要な経営資源と位置付け、採用・育成・配置・評価・報酬を一体的に設計して人材ポートフォリオの最適化を図っています。新卒・中途・第二新卒を組み合わせた多様な人材の確保と適材適所の配置を基本とし、半年ごとの目標設定を通じた自律的な成長を促進する育成基盤を構築しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 36.5歳 | 6.4年 | 5,928,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.9% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業界動向及び市場ニーズの変化
AIの急速な普及に伴う業務プロセスや顧客の購買行動の変化など、市場ニーズの方向性が大きく変化するリスクがあります。同社は、カスタマーサクセスおよび営業の強化によって顧客ニーズを適時に捉え、マーケティングに注力することで市場変化へ早期に対応する方針です。
■(2) 優秀な人材の確保および育成
エンジニア等の人材が不足する中、計画通りに人材が確保できない場合や想定以上の退職者が発生した場合、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。自社製品開発の魅力を伝え、多様な働き方を提供することで採用を強化し、教育体制の充実により定着率を高めています。
■(3) 競合製品との競争激化
特出した機能的優位性を持つ新製品の参入や極端に安価な価格設定により競争が激化した場合、業績に影響する可能性があります。他社にない機能追加やクラウド化対応、導入しやすい価格設定などで差別化を図るとともに、顧客ニーズを的確に掴み優位性を確保する方針です。
■(4) ネットワークやシステムの安定稼働
同社の製品はクラウド環境での提供が多く、ネットワークの安定稼働が必須となります。災害等で長期の障害が発生した場合、サービス利用に支障が出る可能性があります。稼働状況の監視体制やセキュリティ体制を整備し、障害発生の防止と影響の最小化に努めています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。