※本記事は、株式会社ソラコムの有価証券報告書(第13期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ソラコムってどんな会社?
■(1) 会社概要
2014年11月にヴイコネックとして設立され、2015年にソラコムへ社名変更し、IoTプラットフォーム「SORACOM」の提供を開始しました。2017年にはKDDIの連結子会社となり事業を拡大しています。2024年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、その後も同業の連結子会社化を進めています。
同社グループは、連結従業員数201名、単体従業員数101名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は事業会社であるKDDIで、第2位はベンチャーキャピタル業務を行うWiL Ventures III, L.P.、第3位は創業者の玉川憲氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KDDI | 42.13% |
| WiL Ventures III, L.P. | 7.15% |
| 玉川 憲 | 6.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長CEOは玉川憲氏が務めており、社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 玉川 憲 | 代表取締役社長CEO | 2000年日本IBM入社。アマゾンデータサービスジャパン等を経て2014年に同社設立、代表取締役社長就任。Soracom Global, Inc. Directorなどを経て現職。 |
| 安川 健太 | 常務取締役CTO | 2008年エリクソン・ジャパン入社。2012年アマゾンデータサービスジャパン入社。2015年に同社取締役となり、2017年より現職。 |
| 五十嵐 知子 | 取締役CFO | 1986年国際電信電話(現KDDI)入社。2017年に同社取締役へ就任後、2021年に転籍し現職。 |
| 藤井 彰人 | 取締役 | 1993年富士通入社。グーグル等を経て2013年KDDI入社。2017年より同社取締役。KDDI執行役員先端技術統括本部長などを現職。 |
| 福原 成吾 | 取締役(監査等委員) | 1987年国際電信電話(現KDDI)入社。KDDIフランス社長、ヨーロッパ社長等を歴任後、2024年に同社顧問となり現職。 |
社外取締役は、入山章栄(早稲田大学大学院教授)、伊佐山元(World Innovation Lab General Partner & CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、AI/IoTプラットフォーム事業およびその他事業を展開しています。
■AI/IoTプラットフォーム事業
IoTデバイスや通信用SIM、通信回線、データの保存・可視化を行うアプリケーション、セキュアなネットワークなどを統合したIoTプラットフォーム「SORACOM」を提供しています。スタートアップから大企業まで多様な顧客が、システム開発の初期投資を抑えつつ、1回線から迅速かつ効率的にIoTを導入できるのが特徴です。
主な収益源は、通信やネットワークのデータ利用量に応じた従量課金である「リカーリング収益(継続収入)」と、SIMやデバイス機器の販売等による「インクリメンタル収益」です。運営はソラコムを中心に、海外子会社やミソラコネクト、キャリオットなどが連携しグローバルに展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、直近では100億円を突破する規模に達しました。利益面では過去に人材投資等による一時的なマイナスを経験したものの、着実に収益性が改善し、直近では経常利益および当期利益ともに大幅な増益を達成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 55億円 | 63億円 | 79億円 | 90億円 | 124億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 1億円 | 6億円 | 6億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 8.5% | 1.8% | 8.1% | 6.9% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | -3億円 | -2億円 | 1億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は90億円から124億円へと大きく伸長し、それに伴い売上総利益も拡大しました。売上総利益率は低下したものの、売上の伸びが費用の増加を吸収したことで、営業利益は7億円から9億円へと堅調な増益を果たしています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 90億円 | 124億円 |
| 売上総利益 | 50億円 | 61億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.0% | 49.4% |
| 営業利益 | 7億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 7.3% | 7.0% |
販売費及び一般管理費(合計約53億円)のうち、給料手当が22億円(構成比約42%)、広告宣伝費が5億円(同約9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
単一セグメントでの事業展開であるため、全売上がAI/IoTプラットフォーム事業によるものです。国内外での課金アカウント数の継続的な増加や、ミソラコネクトの連結子会社化などが貢献し、売上高は前期比で大きく増加しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| AI/IoTプラットフォーム事業 | 90億円 | 124億円 |
| 連結(合計) | 90億円 | 124億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金を将来の成長に向けたソフトウェア開発や子会社株式取得などの投資に充て、借入金の返済も進めている健全型です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -7億円 | 18億円 |
| 投資CF | -5億円 | -14億円 |
| 財務CF | 25億円 | -0.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「Making Things Happen for a world that works together」を企業理念に掲げています。オープンでフェアな共通基盤の提供を通じて、顧客がテクノロジーを活用し社会課題を解決することを支援し、モノや人がつながり価値が増幅し合う世界の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「SORACOM Leadership Statement」という行動指針を定めており、採用や評価などあらゆる判断の基軸として役職員に実践が求められています。年齢や役職、居住国やワークスタイルの違いに関係なくフラットに議論し、互いを信頼して最良のアイデアを出し合うチーム文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標達成状況を判断する上で、経常的に得られる利用料である「リカーリング収益」の拡大を重要視しています。特に、1ヶ月間にリカーリング収益が発生した口座数を示す「課金アカウント数」と、1アカウントあたりの平均売上金額である「リカーリング収益のARPA」の拡大を指標として管理しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「IoT中核事業の成長と拡張」および「海外展開の加速」を主要な成長ドライバーとし、M&Aやアライアンスを組み合わせた持続的な成長基盤の確立を図ります。海外では販売体制を強化し、グローバル売上比率50%超を目指すほか、コネクテッドカーや通信事業者向けサービスなどの新たな成長市場への展開も加速させます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
先端技術領域において、卓越した人材が集い互いに高め合える組織文化の構築を目指しています。国籍、性別、バックグラウンドを問わず多様な個性が活躍できるグローバルな職場環境を整備し、競争力ある報酬水準と挑戦できる環境づくりを通じて、優秀な人材に選ばれ続ける会社となることを方針としています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.9歳 | 4.8年 | 11,425,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外部クラウドサービスへの依存リスク
IoTプラットフォームのシステムを外部クラウドサービス上に構築しているため、大規模なシステム障害やクラウドサービスの継続利用に支障が生じた場合、サービスの提供不全や損害賠償対応などが発生するリスクがあります。
■(2) 通信回線の安定調達とコスト上昇
国内外の通信事業者から通信回線を調達しており、一部の代替困難な回線で調達に支障が生じた場合や、将来的に調達コストが上昇した場合には、事業運営の制約や収益性の低下につながる可能性があります。
■(3) 技術革新等への対応遅れリスク
IoT領域は技術革新のスピードが非常に速く、先端技術に対応した機能の拡充が常に求められます。優秀なエンジニアの確保が計画通り進まず、技術への対応が困難となった場合は、サービスの陳腐化や競争力低下を招くリスクがあります。



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