※本記事は、株式会社ソラコム の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ソラコムってどんな会社?
IoTプラットフォーム「SORACOM」を提供し、世界中のヒトとモノをつなぐグローバル企業です。
■(1) 会社概要
2014年に株式会社ヴイコネックとして設立され、2015年に現社名へ変更しIoTプラットフォーム「SORACOM」の提供を開始しました。2017年にはKDDIグループに参画し連結子会社化されました。その後、2024年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、同年10月には株式会社キャリオットを子会社化しています。
同社の従業員数は連結で176名、単体で110名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は事業会社(親会社・提携先)のKDDIで、第2位はベンチャーキャピタルファンド、第3位は創業者の玉川憲氏です。KDDIとは資本業務提携を結び、協業体制を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KDDI | 42.52% |
| WiL Ventures III, L.P.(常任代理人 みずほ証券) | 7.22% |
| 玉川 憲 | 6.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長CEOは玉川憲氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 玉川 憲 | 代表取締役社長CEO | 2000年日本IBM入社。アマゾンデータサービスジャパンを経て、2014年ヴイコネック(現同社)設立、代表取締役社長就任。2017年より現職。 |
| 安川 健太 | 常務取締役CTO | 2008年エリクソン・ジャパン入社。アマゾンデータサービスジャパンを経て、2015年同社取締役就任。2017年より現職。 |
| 五十嵐 知子 | 取締役CFO | 1986年国際電信電話(現KDDI)入社。2017年同社取締役就任。2021年同社に転籍し現職。 |
| 藤井 彰人 | 取締役 | 1993年富士通入社。グーグル等を経て2013年KDDI入社。2017年同社取締役就任。2025年KDDI執行役員先端技術統括本部長より現職。 |
| 福原 成吾 | 取締役(監査等委員) | 1987年国際電信電話(現KDDI)入社。KDDIフランス社長等を歴任し、2024年同社顧問を経て取締役(監査等委員)に就任。 |
社外取締役は、入山章栄(早稲田大学大学院教授)、伊佐山元(WiL代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「IoTプラットフォーム事業」を展開しています。
■IoTプラットフォーム事業
同社は、IoTプラットフォーム「SORACOM」を通じて、IoTデバイスやSIM、通信回線、データ保存・可視化アプリケーション、ネットワークサービスなどをワンストップで提供しています。スタートアップから大企業まで、顧客企業は設備投資を抑えつつ迅速にIoTサービスを立ち上げることが可能です。
収益モデルは、通信サービスやネットワークサービスの利用に応じた従量課金による「リカーリング収益(プラットフォーム利用料)」と、SIMやデバイスの販売等による「インクリメンタル収益」で構成されています。運営は主に同社および海外子会社のSoracom Global, Inc.、SORACOM CORPORATION, LTD.などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間のデータを見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けています。利益面では、積極的な投資や上場関連費用等の影響もあり変動が見られますが、当期は黒字を確保しています。リカーリング収益の積み上げにより、安定的な収益基盤の構築が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 43億円 | 55億円 | 63億円 | 79億円 | 90億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 5億円 | 1億円 | 6億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | 17.4% | 8.5% | 1.8% | 8.1% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 3億円 | -3億円 | -2億円 | 1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、増収基調を維持しています。一方、営業利益はコスト増により若干減少しました。売上総利益率は高い水準を維持しており、プラットフォームビジネスとしての収益性の高さが表れています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 79億円 | 90億円 |
| 売上総利益 | 45億円 | 50億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.7% | 56.0% |
| 営業利益 | 7億円 | 7億円 |
| 営業利益率(%) | 9.2% | 7.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が21億円(構成比49%)、広告宣伝費が5億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループはIoTプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な増減分析は省略します。連結全体の傾向として、リカーリング収益とインクリメンタル収益が共に堅調に推移し、増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 連結(合計) | 79億円 | 90億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ソラコムは、IoTプラットフォーム事業を単一セグメントとして展開しており、そのキャッシュ・フローの状況は以下の通りです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、デバイスや受託開発案件の納品に伴う売上債権の増加や、リカーリング収益の前受額を売上認識したことによる契約負債の減少などにより、前連結会計年度の収入から支出へと転じました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、ソフトウェア開発に伴う無形固定資産の取得や、投資有価証券の取得による支出が増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、第三者割当増資や新株予約権の行使による株式発行、および長期借入れによる収入が主な要因となり、増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | -7億円 |
| 投資CF | -2億円 | -5億円 |
| 財務CF | 38億円 | 25億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界中のヒトとモノをつなげ、共鳴する社会へ」をビジョンとして掲げています。IoT導入のハードルを下げ、多くの企業が技術を活用できる「テクノロジーの民主化」を実現し、社会変革を目指しています。グローバルでNo.1のIoTプラットフォームとなることを目標としています。
■(2) 企業文化
同社は「SORACOM Leadership Statement」に基づき、最も顧客至上主義な会社であることを重視しています。社員がお互いを信頼し、最良のアイデアを出し合い、フラットに議論できるチームを目指しています。居住国やワークスタイルの違いを意識せずコラボレーションできる環境整備にも力を入れています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、リカーリング収益の持続的な成長を経営上の重要目標としています。具体的な数値目標として以下の指標を重視しています。
* 課金アカウント数
* リカーリング収益のARPA(1アカウントあたりの平均売上金額)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、継続的な機能強化によるリカーリング収益の成長、グローバル展開に向けた販売体制の強化、大規模案件の安定的獲得、および戦略的アライアンスの推進を基本戦略としています。日米欧の三拠点で販売体制を拡充し、顧客獲得を進めるほか、特定業界に特化したサービス開発による垂直展開も強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な成長のために多様な経歴を持つ優秀な人材の採用と育成を重視しています。特に、顧客ニーズを把握できる営業や開発人員の強化が求められており、ミッションや事業内容に共感し高い意欲を持った人材を積極的に採用する方針です。また、リモートワークやフレックス制など、柔軟に働ける環境整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.1歳 | 4.0年 | 11,495,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先に対する売上比率について
同社グループの売上高の一部は、特定の主要取引先(株式会社エナジー宇宙やKDDI)に依存しています。これらの顧客企業における事業動向や戦略変更があった場合、同社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) IoTプラットフォームについて
通信回線の調達に支障が生じた場合や調達コストが上昇した場合、事業運営に影響が出る可能性があります。また、サービス提供基盤としてAWS等の外部クラウドサービスを利用しており、システム障害やサービス停止が発生した場合には、サービス提供の不全や信頼性の毀損につながる可能性があります。
■(3) 海外事業展開について
米国や欧州などで事業展開を進めていますが、海外での認知度向上や顧客獲得が想定通りに進まない可能性があります。また、各国における地政学的リスク、法規制の変更、為替変動などが、海外事業の拡大や収益性に影響を与える可能性があります。
■(4) 競争状況について
IoT関連業界には大手通信事業者や他のMVNO事業者など多数の競合が存在し、競争が激しい状況です。競合他社との競争激化や、類似サービスの出現により優位性が損なわれた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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