※本記事は、飛島ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第1期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 飛島ホールディングスってどんな会社?
土木・建築事業を中核に、防災技術や建設DXなどの成長領域も展開する総合建設グループの純粋持株会社です。
■(1) 会社概要
同社は2024年10月、飛島建設の単独株式移転により完全親会社として設立され、東京証券取引所プライム市場に上場しました。その後、2025年1月にグループ再編を実施し、飛島建設が保有していた子会社や関連会社を吸収分割および現物配当により直接保有化し、持株会社体制を本格始動させました。
連結従業員数は1,470人(単体34人)です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は取引先持株会等と思われるトビシマ共栄会、第3位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行(信託口)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.88% |
| トビシマ共栄会 | 6.51% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は髙橋光彦氏です。社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙橋光彦 | 代表取締役社長上席執行役員社長 | 1985年飛島建設入社。経営企画室室長、執行役員、専務執行役員等を経て、2024年10月より現職。 |
| 奥山誠一 | 取締役上席執行役員副社長 | 1987年富士銀行(現みずほ銀行)入行。執行役員等を経て、2020年飛島建設取締役兼執行役員副社長。2024年10月より現職。 |
| 荒尾拓司 | 取締役(常勤監査等委員) | 1983年飛島建設入社。常務執行役員、代表取締役兼専務執行役員等を経て、2024年10月より現職。 |
社外取締役は、齋木昭隆(元外務事務次官)、政井貴子(元日銀政策委員会審議委員)、相原敬(元きんぱい社長)、名取俊也(元最高検検事)、中西晶(明治大学経営学部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業(土木事業)」、「建設事業(建築事業)」、「グロース事業等」を展開しています。
■(1) 建設事業(土木事業)
トンネル、ダム、橋梁などの土木工事全般の請負およびこれに付帯する事業を行っています。官公庁や民間企業が顧客となります。
収益は、顧客からの工事請負代金等が主な源泉です。運営は主に飛島建設が担っており、海外ではTOBISHIMA BRUNEI SDN.BHD.などが事業を行っています。
■(2) 建設事業(建築事業)
オフィスビル、マンション、工場、公共施設などの建築工事全般の請負およびこれに付帯する事業を行っています。
収益は、顧客からの工事請負代金等が主な源泉です。運営は主に飛島建設が担っており、設計・施工から維持管理まで幅広く対応しています。
■(3) グロース事業等
建設関連事業、不動産開発、建設DXサポートなど多角的な事業を展開しています。具体的には、島しょ振興、舗装、潜水、水中土木、木造建設、耐震補強設計、不動産販売・賃貸、ITシステム開発などを手掛けています。
収益は、工事代金、不動産販売・賃貸収入、システム開発費などが源泉です。運営は、杉田建設、ロード・システム、テクアノーツ、極東建設、デム工業、ウッドエンジニアリング、E&CS、大起造船工業、フォーユー、アクシスウェアなどのグループ各社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年10月設立の第1期であるため、当期の数値のみを表示します。売上高は約1,383億円、経常利益は約57億円となり、売上高経常利益率は4.1%でした。
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 売上高 | 1,383億円 |
| 経常利益 | 57億円 |
| 利益率(%) | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 37億円 |
■(2) 損益計算書
第1期決算のため、当期の数値のみを表示します。売上原価率が高く、建設業特有の収益構造が見て取れます。
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 売上高 | 1,383億円 |
| 売上総利益 | 158億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.4% |
| 営業利益 | 64億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が37億円(構成比40%)を占めています。売上原価の内訳等の詳細な構成比は、連結注記等には記載がありません。
■(3) セグメント収益
第1期決算のため、当期の数値のみを表示します。売上高・利益ともに土木事業が最大の規模を誇り、次いで建築事業、グロース事業等と続きます。グロース事業等は売上規模に対し比較的高い利益率を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 建設事業(土木事業) | 687億円 | 55億円 | 8.0% |
| 建設事業(建築事業) | 511億円 | 26億円 | 5.0% |
| グロース事業等 | 185億円 | 21億円 | 11.2% |
| 調整額 | -167億円 | -37億円 | - |
| 連結(合計) | 1,383億円 | 64億円 | 4.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
飛島ホールディングスグループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、建設事業における研究開発投資等を通じて、事業基盤の強化に繋がっています。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に設備投資や研究開発活動への支出が見られます。財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの借入れ等により、資金調達を行っています。
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 営業CF | 28億円 |
| 投資CF | -13億円 |
| 財務CF | 3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「創業の精神」を時代に合わせて再定義し、未来の産業振興・発展を支える「なくてはならない企業」であり続けることを経営ビジョンとしています。また、未来のConstructionをつくる「New Business Contractor」への変革を掲げ、建設業の枠を超えたビジネスプラットフォームの形成を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「New Business Contractor」実現のため、「創造」「共創」「共生」の3つのバリューを掲げています。これらを通じ、自らが新たなビジネスを創造するとともに、多様なパートナーとの共創や、地球環境・地域社会との共生を重視する企業文化の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、ホールディングカンパニーへの移行を契機に、経営指針「未来を革新するStory」を策定しました。その一環である「中期経営計画(~2027年度)」では、企業価値向上と持続的成長に向けたアクションプランを示し、収益基盤の拡充や資本コストを意識した経営、ガバナンス強化を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
複合企業体として、ドメイン・ポートフォリオ・戦略・ビジネスモデル・オペレーションの変革を推進し、事業成長、資本効率、サステナブルへの適合の最適解を追求しています。特に、ホールディングス機能を活用して事業ポートフォリオを不断に見直し、企業価値向上とトランスフォーメーションの実現を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「未来の産業振興・発展を支える企業グループ」を目指し、革新と挑戦の精神を持ち、自発的に行動できるプロフェッショナルを育成する方針です。ダイバーシティ推進による多様性の尊重や、健康経営を通じた活気ある職場づくりにも注力し、能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 48.0歳 | 21.1年 | 9,495,318円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
主要事業子会社である飛島建設株式会社の数値を記載しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.0% |
| 男性育児休業取得率 | 65.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 55.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人権啓発研修受講率(100%)、ワークエンゲージメント(50.1)、ダイバーシティ率(26.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 企業買収・提携及び事業再編のリスク
成長に向けたM&Aや資本提携において、当初期待したシナジーが得られない場合や、事業再編に伴う不採算事業からの撤退等が発生した場合、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。事業ポートフォリオの見直しによりリスクの最小化を図っています。
■(2) 法令等コンプライアンスのリスク
企業活動に関する様々な法的規制の変更や、行政処分等を受けた場合、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。法令改正の注視、社内規程の改定、役職員へのコンプライアンス教育の実施などにより、体制の充実に努めています。
■(3) 情報セキュリティリスク
サイバー攻撃や内部不正等による情報漏洩は、社会的信用の失墜や損害賠償等により業績に影響を与える可能性があります。物理的・人的・IT的側面からの対策や、役職員向けセキュリティ教育を実施しています。
■(4) 建設事業固有のリスク
国内建設市場の縮小、資機材価格や労務費の高騰、取引先の信用リスク、品質不良や工事災害、技能労働者の不足などが業績への懸念材料となります。価格変動条項の導入、与信管理の徹底、安全管理活動、省力化施工の推進等により対策を講じています。



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