リスキル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リスキル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証グロース市場に上場し、企業向け研修サービス「biz研修」「tech研修」を提供する人材育成事業を展開しています。第3期の業績は、リスキリング需要の高まりを背景に、売上高19.6億円(前期比32.0%増)、当期純利益4.7億円(同66.2%増)と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社リスキル の有価証券報告書(第3期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. リスキルってどんな会社?


企業向け研修サービスを主力とし、標準化とDX化による「安価ですぐに使える研修」を提供する企業です。

(1) 会社概要


2015年に現社長が前身企業の代表に就任し、2019年に主力の「biz研修」を開始しました。2022年5月に株式会社リカレントから法人事業部を分社化して設立され、2024年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。創業以来、社会人教育事業に特化して展開しています。

同社(単体)の従業員数は52名です。筆頭株主は創業者で社長の松田航氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位は外資系金融機関のカストディアン(常任代理人:三井住友銀行)となっています。

氏名 持株比率
松田 航 68.61%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 10.24%
BBH LUX/BROWN BROTHERS HARRI MAN(LUXEMBOURG) SCA CUSTODIAN FOR SMD・AM FUNDS・DSBI JAPAN EQUITY SMALL CAP ABSOLUTE VALUE 1.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は松田航氏が務めています。社外取締役比率は75.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松田 航 代表取締役社長 2012年日本ライセンスバンク入社。リカレント代表取締役等を経て、2022年5月より現職。


社外取締役は、清水達也(元リクルート取締役常務執行役員)、竹上創(株式会社TSMマネジメント代表取締役)、東伸之(株式会社INCJ常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「人材育成事業」を展開しています。

人材育成事業


企業向け研修サービスとして、ビジネススキル全般を扱う「biz研修」と、IT未経験者向けのエンジニア・DX研修を行う「tech研修」を提供しています。提供形態には、講師派遣やオンラインによる「一社研修」、複数企業参加型の「公開講座」、eラーニング形式の「動画講座」があります。顧客は全業種の企業およびIT企業が中心です。

収益は、研修サービスを利用する顧客企業から支払われる受講料やレンタル料等から得ています。また、WebサイトをEC化し、検索から見積り作成までをシステム上で完結させることで利便性を高めています。運営は主にリスキルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第3期までの業績推移を見ると、売上高は順調に拡大しており、特に直近の第3期では前期比で大幅な増収を達成しています。利益面でも、経常利益および当期純利益ともに増加傾向にあり、高い利益率を維持しながら成長を続けています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 9.2億円 14.8億円 19.6億円
経常利益 2.2億円 4.0億円 6.7億円
利益率(%) 24.3% 27.2% 34.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.5億円 2.9億円 4.7億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は高い水準を維持しており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。営業利益率も前期より上昇しており、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 14.8億円 19.6億円
売上総利益 9.4億円 12.7億円
売上総利益率(%) 63.1% 64.9%
営業利益 4.0億円 6.8億円
営業利益率(%) 27.1% 34.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が1.8億円(構成比31%)、広告宣伝費が1.5億円(同25%)を占めています。売上原価に関しては、外注費が5.1億円(売上原価に対する構成比74%)と大半を占めており、これは主に研修講師への業務委託報酬です。

(3) セグメント収益


同社は人材育成事業の単一セグメントですが、サービス区分ごとの売上高を見ると、biz研修、tech研修ともに増加しています。特にtech研修はIT人材不足を背景に堅調に推移しており、biz研修もEC化による利便性向上等が寄与して顧客数を伸ばしています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
人材育成事業 15億円 20億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得たキャッシュを元手に、将来の成長に向けた投資を行いつつ、株式発行による資金調達も実施している「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.7億円 5.5億円
投資CF -0.2億円 -1.1億円
財務CF -0.9億円 2.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は45.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「一人でも多くの人に社会人教育を届ける」をミッションに掲げ、企業の人材育成課題の解決を通じて、社会人になっても学ぶのが当たり前の社会を創ることを目指しています。また、「アジアNo.1の社会人教育企業になる」というビジョンのもと、売上高・利益額・顧客数においてアジアトップを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Edutainment産業」と自社ドメインを定義し、教育と娯楽の融合を目指しています。行動指針として、早い意思決定と行動を重視する「早く!速く!捷く!」、顧客中心主義を徹底する「Customer is Boss」、顧客価値につながらない費用を削減する「倹約のカルチャー」を掲げています。

(3) 経営計画・目標


同社は市場シェアの拡大を意図し、重要な経営指標(KPI)として「顧客企業数」を設定しています。具体的には、「biz研修の一社研修の顧客企業数」と「tech研修の一社研修・公開講座の顧客企業数」の増加を重視し、事業規模の拡大を目指しています。

* biz研修(一社研修)顧客企業数:1,371社(2025年3月期)
* tech研修(一社研修・公開講座)顧客企業数:267社(2025年3月期)

(4) 成長戦略と重点施策


市場の成長性を背景に、現事業の「biz研修」を成長ドライバーと位置づけ、マーケティング強化や営業人員の増員により顧客企業数の増加を図ります。また、研修実施プロセスのDX化を推進し、顧客利便性を向上させることで新規および継続利用を促進します。さらに、2025年4月に開設したシンガポール支店を拠点に、成長著しいアジア市場への展開も進めていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大に伴い、主に営業人員の増加を計画しており、採用手法の多様化や採用担当の増員等、採用活動への投資を行う方針です。また、人員増加に対応するための事業所の増床や、研修サービスの品質向上・均一化を目的とした社内ナレッジの共有、研修等の育成施策にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 29.9歳 1.8年 4,443,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公認会計士等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(52%)、女性役員比率(17%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業績の季節変動


同社の売上高および利益は、新入社員や若手人材の育成需要が高まる第1四半期に偏る傾向があります。年間売上高の約57%、営業利益の約76%がこの期間に計上されるため、当該時期の需要低下や受注減は、通期の財政状態および経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合との競争激化


研修サービスは許認可や大規模設備投資が不要で参入障壁が低く、多数の事業者が存在します。今後、豊富なコンテンツを提供する他社との競争が激化した場合、業績に影響が出る可能性があります。同社はサービスの標準化やプロセスのDX化、安価な価格設定により差別化を図っています。

(3) 人材および講師の確保


事業拡大には優秀な従業員の採用・育成および質の高い外部講師との契約が不可欠です。しかし、人材獲得競争の激化により計画通りの採用や契約が困難になった場合、サービス品質の低下や事業成長の鈍化を招き、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。