※本記事は、株式会社リスキルの有価証券報告書(第4期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リスキルってどんな会社?
企業向け研修サービスの提供を通じ、人材育成課題を解決する社会人教育事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1986年に日本ライセンスバンクが創業した社会人教育事業を源流とします。2001年にtech研修の前身事業を、2019年にbiz研修を開始しました。2022年にリカレントの法人事業部が分社化される形で設立され、2024年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。
現在は単体で59名の従業員を抱える体制で事業を展開しています。大株主の状況としては、筆頭株主は創業者であり代表取締役社長を務める松田航氏が名を連ねており、第2位には信託業務を行う日本カストディ銀行が位置しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松田 航 | 70.14% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 11.18% |
| SBI証券 | 2.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は松田航氏が務めています。取締役4名のうち3名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松田 航 | 代表取締役社長 | 2012年日本ライセンスバンク入社。オンシー設立、リカレント代表取締役等を経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、清水達也(元ベネッセホールディングス経営企画部長)、竹上創(元エアウィーヴ執行役員)、東伸之(元INCJ常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「人材育成事業」の単一セグメントを展開しています。
■(1) biz研修
全業種を対象としたビジネススキル全般に関する研修サービスです。一社単独で行う「一社研修」、複数企業が参加する「公開講座」、一名から手軽に導入できる「動画講座」の3つの提供形式を用意し、企業規模を問わず幅広い顧客にサービスを提供しています。
顧客企業から一社当たり、または一名当たり等の料金体系で研修費用を受け取る収益モデルです。WebサイトをEC化して利便性を高めており、研修コンテンツは同社が作成し、外部パートナーの講師が登壇します。運営は同社が行っています。
■(2) tech研修
主にIT企業を対象とした、IT未経験者向けのエンジニア・DX研修です。プログラミング言語やインフラ技術等の初期研修に特化し、数日から3ヵ月の長期間にわたって提供されるのが特徴です。
企業から一社研修や公開講座の利用料金を受け取る収益モデルです。長期の受講に対応するため、システムを通じた情報管理やAIによる自動質問回答システム等の育成サポート機能を提供しています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期間の業績は、企業の研修需要の増加を背景に順調に規模を拡大しています。売上高は一貫して高い成長率を維持し、それに伴い経常利益も大きく伸長しました。利益率も年々向上し、高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9億円 | 15億円 | 20億円 | 25億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 4億円 | 7億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 24.3% | 27.2% | 34.3% | 36.5% |
| 当期利益 | 1億円 | 3億円 | 5億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の堅調な増加とともに、売上総利益と営業利益も拡大しています。利益率も改善傾向にあり、事業のスケールに伴ってコストコントロールが適切に行われ、収益性が高まっていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 20億円 | 25億円 |
| 売上総利益 | 13億円 | 17億円 |
| 売上総利益率(%) | 64.9% | 66.8% |
| 営業利益 | 7億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 34.9% | 36.2% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が3億円(構成比38%)、給与手当が2億円(同27%)を占めています。売上原価の内訳は、外注費が6億円(構成比76%)、その他の経費が2億円(同24%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は人材育成事業の単一セグメントであるため、全社の売上収益の推移を示しています。企業の研修需要の増加を背景に、売上高は前期から順調に拡大しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 人材育成事業 | 20億円 | 25億円 |
| 連結(合計) | 20億円 | 25億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型と判定できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 6億円 |
| 投資CF | -1億円 | -0.9億円 |
| 財務CF | 3億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は36.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.0%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「一人でも多くの人に社会人教育を届ける」というミッションを掲げています。社会人教育を通して生涯にわたって「やりなおしの可能となる社会」を実現することを目指しています。また、「アジアNo.1の社会人教育企業になる」というビジョンのもと、売上高・利益額・顧客数がもっとも多い社会人教育企業になることを志向しています。
■(2) 企業文化
価値観(行動指針)として4つを掲げています。迅速な意思決定と行動を重んじる「早く!速く!捷く!」、教育と娯楽の融合を目指す「Edutainmentの実現」、徹底した顧客中心主義の「Customer is Boss」、そして見栄のための費用を使わず顧客価値に繋がる投資を優先する「倹約のカルチャー」です。
■(3) 経営計画・目標
同社はシェアを拡大することを意図していることから「顧客企業数」を重要視し、これをKPIとして設定しています。特に、biz研修の一社研修の顧客企業数と、tech研修の一社研修・公開講座の顧客企業数を客観的な指標として定め、事業の継続的な拡大と企業価値の向上を図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
現事業に注力し、特にbiz研修を成長ドライバーとして顧客企業数を増加させることを基本方針としています。また、国内市場でのシェア拡大だけでなく、シンガポール支店を通じたアジア市場への展開や、人材育成関連ITサービス等の新規事業の開発、さらにはM&Aによる商材の拡充等により、企業価値の向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社はシェア拡大を牽引する営業部門およびサービス基盤を支えるエンジニア部門の人材採用と育成を重要視しています。ダイレクトリクルーティング等の多角的なチャネル運用で採用を進める一方、社内人材に対しては階層別研修や自社研修サービスの自由受講、書籍購入補助制度等を通じて自律的な能力開発を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 29.6歳 | 2.4年 | 4,273,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(59%)、女性管理職比率(20%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業績の季節変動
同社の売上高および営業利益は、新入社員や若手人材の育成需要が高まる第1四半期に偏る傾向があります。年間営業利益の約72%が第1四半期に計上されるため、この時期に研修サービスの需要が低下する事象が生じた場合、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 同業者間での競争激化
研修サービス事業は許認可や大規模な設備投資が不要であり、相対的に参入障壁が低い特徴があります。そのため、大手から個人まで多数の事業者が展開しており、今後豊富な研修コンテンツを提供する競合が増加し競争が激化した場合、財政状態および経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 優秀な人員と講師の確保
研修サービスの拡大や品質維持には、優秀な従業員および同社の品質基準を満たす外部講師の確保が不可欠です。国内の人材獲得競争等の要因により、計画通りの採用や契約締結が進まない場合、競争力の低下や事業規模拡大の制約が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報セキュリティおよび個人情報の管理
サービスの提供に際し、顧客の機密情報や講師の個人情報を取り扱っています。サイバー攻撃や不測の事態によりこれらの情報が外部に漏洩した場合、社会的信用の失墜や損害賠償対応等により、同社の財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。



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