黒田グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

黒田グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する独立系の電子部品・電気材料商社グループです。商社機能に加え、HDD部品や車載部品などを自社生産する製造機能を持ちます。直近の業績は、売上収益が減収となったものの、前期の減損損失がなくなり営業利益は増益、親会社所有者帰属当期利益も大幅な増益となりました。


※本記事は、株式会社黒田グループ の有価証券報告書(第8期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 黒田グループってどんな会社?


電気材料・電子部品の専門商社機能と、独自製品を持つ製造機能を併せ持つ「ものづくりのできる商社」です。

(1) 会社概要


同グループの源流は1945年創業の黒田電気です。2000年に東証一部へ上場しましたが、2018年にKMホールディングス(現同社)による公開買付を経て非公開化しました。その後、持株会社体制への移行や商号変更を経てガバナンスと事業構造の改革を進め、2024年12月に東証スタンダード市場へ再上場を果たしました。

連結従業員数は2,520名、単体では56名です。筆頭株主は投資事業有限責任組合のケイエム・ツー・エルピー(67.09%)で、第2位は野村證券(1.32%)、第3位はモルガン・スタンレーMUFG証券(1.11%)です。なお、筆頭株主はMBKパートナーズグループが運営するファンドです。

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は細川浩一氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
細川 浩一 代表取締役社長執行役員 1981年黒田電気入社。同社代表執行役社長等を経て、2020年4月より現職。
田尾 吉伸 取締役副社長執行役員 1986年日本電装(現デンソー)入社。同社調達グループ上席執行幹部等を経て、2025年6月より現職。
森 安伸 取締役(常勤監査等委員) 1981年黒田電気入社。同社常務執行役員、同社代表取締役副社長執行役員等を経て、2023年4月より現職。


社外取締役は、金子哲也(MBKパートナーズ パートナー)、戸澤晃広(T&K法律事務所パートナー)、川井一男(公認会計士)、太田光俊(MBKパートナーズ ディレクター)です。

2. 事業内容


同社グループは、「製造」「商社」および「その他」事業を展開しています。

製造事業


液晶用配向膜印刷版、自動化装置、車載用金型、HDD用部品、電設資材、アルミダイカスト製品などの製造・販売を行っています。ニッチな分野で独自の技術を活かした製品を供給しています。

製品の販売により収益を得ています。運営は、コムラテック、日動電工、Z.クロダ(タイランド)、ボラムテック(ベトナム)などの国内外の子会社が担っています。

商社事業


車載関連やエレクトロニクス業界の顧客に対し、電気材料、一般電子部品、半導体などを販売しています。独自のグローバルネットワークを活用し、各国の顧客ニーズに合わせた供給体制を構築しています。

商品の販売により収益を得ています。運営は主に黒田電気および、米国、中国、アセアンなどに展開する海外現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第7期までは減収減益傾向でしたが、第8期は売上収益が減少したものの、前期に計上した多額の減損損失がなくなったことなどから各利益段階で大幅な増益となり、V字回復を果たしています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,393億円 1,267億円 1,213億円
税引前利益 41億円 12億円 55億円
利益率(%) 2.9% 0.9% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 4億円 39億円

(2) 損益計算書


売上収益は減少しましたが、売上原価の低減により売上総利益は増加し、利益率が改善しています。営業利益も大幅に伸長しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,267億円 1,213億円
売上総利益 174億円 214億円
売上総利益率(%) 13.8% 17.6%
営業利益 20億円 59億円
営業利益率(%) 1.6% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が82億円(構成比53.8%)、その他経費が34億円(同21.9%)を占めています。売上原価においては、材料及び商品仕入高が905億円で全体の90.5%を占めています。

(3) セグメント収益


製造事業はHDD部品等が好調でしたが設備関連が減少し減収増益となりました。商社事業は中国市場の減速等により減収となりましたが、利益率は改善し増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
製造 313億円 304億円 14億円 41億円 13.4%
商社 973億円 929億円 24億円 33億円 3.5%
調整額 -19億円 -20億円 -17億円 -14億円 -
連結(合計) 1,267億円 1,213億円 20億円 59億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 104億円 70億円
投資CF -1億円 -35億円
財務CF -59億円 -30億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは「大地深く生命の根を張り大空高く自由に伸びよ」をMission(グループ社是)として掲げています。また、「価値をつくりお取引先様によろこんでいただく」をVisionとし、顧客ニーズに応じたサービスや技術を提供することで、取引先と共に発展し社会に貢献する企業を目指しています。

(2) 企業文化


同グループはValue(グループ行動指針)として、「常に挑戦し価値を創造する」「お互いに尊敬と信頼の念をもつ」「誠実に行動し説明責任を果たす」の3つを定めています。これらを全社員が共通理解とし、製造事業と商社事業の両輪で付加価値の創造に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期から2028年3月期までの3ヵ年経営計画において、「製造1:商社2の売上構成を基本としたグループ運営」を基本方針としています。10年先の事業継続を見据え、収益性と資本効率を重視した自律的な成長を目指します。

* 営業利益、営業利益率
* ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)

(4) 成長戦略と重点施策


ポートフォリオマネジメントを推進し、収益性・成長性・資本効率を勘案した経営資源の配分を行います。また、情報セキュリティ体制の強化やDX推進による技術力の蓄積、現地化の徹底による迅速な意思決定を進めます。製造事業では品質を基盤とした製造力の底上げ、商社事業では顧客密着度の向上による安定収益確保を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「これから」の価値を創造し事業継続性を高めるため、各分野で専門知識とマネジメント能力を持つ人材の確保・育成に注力しています。個々の実力に基づく評価・登用を行うとともに、従業員の自発的な能力開発を促す「学び直し」を推奨し、自己実現と成長を支援する環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.2歳 9.2年 9,409,546円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.6%
男女賃金差異(正規) 77.6%
男女賃金差異(非正規) -


※上記は提出会社が公表義務対象外のため、主要連結子会社である黒田電気株式会社のデータを記載しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 需要動向等に関するリスク


同グループは生産用部品・材料を広範囲な産業に供給しており、世界的な需給環境の変動や取引先の購買方針変更の影響を受けます。これらにより取扱製品等の需要が急減したり価格が下落したりした場合、業績が悪影響を受ける可能性があります。

(2) 自然災害及び不測の事態に関するリスク


事業展開する国や地域において、大規模災害、感染症、テロ・紛争等の予期せぬ事態が発生し、サプライチェーンの混乱や業務停止が生じた場合、顧客へのサービス提供や出荷が滞り、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法令違反に関するリスク


国内外で事業を行う中で様々な法令の適用を受けています。コンプライアンス体制の整備に努めていますが、万が一法令違反が発生した場合、社会的信用の失墜や法的制裁などにより、事業活動や業績に重大な影響を与える可能性があります。

(4) 品質保証に関するリスク


国際品質規格等に基づき品質管理を行っていますが、供給製品に品質不良が発生し顧客から求償を受ける可能性があります。仕入先起因の場合は補填を求めますが、協議の結果同社グループが損害賠償費用を負担することになった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。