※本記事は、黒田グループ株式会社の有価証券報告書(第9期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 黒田グループってどんな会社?
電子部品等の専門商社機能と、ニッチ分野での独自技術を活かした製造機能をあわせ持つ企業です。
■(1) 会社概要
同社グループのルーツは1945年の創業に遡り、1947年に黒田商事として設立されました。翌年、黒田電気に商号変更して電子部品の販売網を拡大し、2003年にはコムラテックの子会社化などで製造事業を本格化させました。その後、2017年に設立された持株会社のもとで組織再編を進め、2020年に現在の黒田グループへ商号変更し、2024年に東京証券取引所スタンダード市場に上場しました。
現在は連結で2,643名、単体で67名の従業員を抱える規模に成長しています。主要株主の状況を見ると、筆頭株主は信託業務を担う日本カストディ銀行(信託口)となっており、第2位および第3位にも海外の信託銀行やカストディアンといった金融機関等の法人株主が名を連ねている点が特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託口) | 2.65% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103 | 1.99% |
| JP JPMSE LUX RE UBS AG LONDON BRANCH EQ CO | 1.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は細川浩一氏が務めており、社外取締役の比率は40.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 細川浩一 | 代表取締役社長執行役員 | 1981年黒田電気入社。同社執行役常務などを経て2014年代表執行役社長に就任。2018年KMホールディングス(現黒田グループ)代表取締役社長となり2023年より現職。 |
| 田尾吉伸 | 取締役副社長執行役員 | 1986年日本電装(現デンソー)入社。同社調達グループ上席執行幹部等を経て2025年黒田グループ副社長執行役員に就任。同年より現職。 |
| 森安伸 | 取締役(常勤監査等委員) | 1981年黒田電気入社。同社執行役常務管理統括などを歴任し2020年黒田グループ管理統括に就任。2023年より現職。 |
社外取締役は、戸澤晃広(長島・大野・常松法律事務所出身の弁護士)、川井一男(監査法人朝日会計社出身の公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「製造」および「商社」を報告セグメントとし、「全社」を含めた事業を展開しています。
■(1) 製造事業
絞り込まれたニッチな事業分野で、日本をはじめタイ、中国、ベトナムなどの顧客に対し、液晶用配向膜印刷版、各種自動化装置、ハードディスク・ドライブ用部品、車載用樹脂成形品などの開発・製造・販売を行っています。
顧客へ製品や設備を納入し対価を得るモデルです。運営は主にコムラテック、日動電工、Z.クロダ(タイランド)、ボラムテックなどの国内外の製造事業会社が行っています。
■(2) 商社事業
国内外のネットワークを活かし、主に車載関連やハードディスク・ドライブメーカー等の顧客に対して、電気材料、一般電子部品、半導体、機器・装置などのグローバルな供給体制を構築しています。
仕入先から調達した電子部品や材料を顧客に販売することで収益を得ています。運営は主に中核企業である黒田電気のほか、海外の多数の販売子会社が各地域で事業を展開しています。
■(3) 全社・管理事業(その他)
グループ全体の経営に関する企画、調査、支援、業務の受託および管理ならびにそれらに関連するコンサルティング業務を行っています。
持株会社として子会社からの経営指導料や配当金などを収益源としています。運営は黒田グループおよび上海やシンガポールに拠点を置く管理事業会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は1,200億円台から1,300億円台で推移しています。2024年3月期は利益が一時的に落ち込みましたが、その後は収益性の改善が進み、直近の2026年3月期は税引前利益が60億円、利益率も4.9%と安定した水準を確保しています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,393億円 | 1,267億円 | 1,213億円 | 1,228億円 |
| 税引前利益 | 41億円 | 12億円 | 55億円 | 60億円 |
| 利益率(%) | 2.9% | 0.9% | 4.6% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 26億円 | 4億円 | 39億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期比で微増となりました。売上総利益率は若干低下したものの、販売費及び一般管理費のコントロールやその他の収益の計上などにより、営業利益および営業利益率は改善傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,213億円 | 1,228億円 |
| 売上総利益 | 214億円 | 209億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.6% | 17.0% |
| 営業利益 | 59億円 | 65億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 5.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が86億円(構成比55%)、荷造運送費が19億円(同12%)を占めています。また、売上原価においては、材料及び商品仕入高が948億円と全体の93%を占め、次いで従業員給付費用が41億円(構成比4%)となっています。
■(3) セグメント収益
商社事業が売上収益の大半を占めていますが、利益面では製造事業が商社事業を上回っており、高い収益性を誇っています。製造事業は自動化設備等の需要増や売上増に牽引されて増収増益となりました。商社事業は車載向け電子部品の売上増がある一方、中国の景気低迷等の影響を受け、売上・利益ともに横ばいで推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 製造 | 304億円 | 319億円 | 41億円 | 45億円 | 14.1% |
| 商社 | 929億円 | 930億円 | 33億円 | 33億円 | 3.5% |
| 調整額 | -20億円 | -21億円 | -14億円 | -12億円 | - |
| 連結(合計) | 1,213億円 | 1,228億円 | 59億円 | 65億円 | 5.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 70億円 | 97億円 |
| 投資CF | -35億円 | -20億円 |
| 財務CF | -30億円 | -64億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%でスタンダード市場の平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「大地深く生命の根を張り大空高く自由に伸びよ」というMission(グループ社是)を掲げています。また、商社事業およびそれを通じて生まれた製造事業の両輪でビジネスを展開していることから、「価値をつくりお取引先様によろこんでいただく」ことをVision(経営の基本方針)として定めています。
■(2) 企業文化
ビジョンの実現に向け、グループ全員が共通理解に立つためのValue(グループ行動指針)を定めています。具体的には、「常に挑戦し価値を創造する」「お互いに尊敬と信頼の念をもつ」「誠実に行動し説明責任を果たす」の3つを掲げ、製造・商社の両輪で付加価値の創造に努め、取引先とともに発展する企業文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
変化が激しく不確実性が高い事業環境に柔軟に対応するため、同社は3ヵ年経営計画(2026年3月期~2028年3月期)を策定しています。また、事業運営上の客観的な指標として、付加価値の源泉である営業利益および営業利益率を重視するほか、財務の健全性と効率性を示す自己資本比率、ROE、ROICを重要な財務指標に設定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「製造1:商社2の売上構成を基本としたグループ運営」を事業展開の基本方針とし、以下のグループ共通課題を設定して解決に取り組んでいます。
・次の成長の柱となる製造事業の新規組み入れを目指すポートフォリオマネジメントの推進
・AIを活用した各種デジタル対応および技術力の強化
・事業環境や顧客ニーズの変化に迅速かつ機動的に対応するための現地化の徹底
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「これから」の価値を創造し事業の持続可能性を高めるため、各事業分野での十分な知識とマネジメントに精通した人材の確保と育成に注力しています。個々の実力と実績に基づいた評価や登用を行うとともに、従業員の自発的な能力開発を促進する「学び直し」を推進し、自己実現を果たせる働きやすい職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.7歳 | 7.7年 | 8,040,531円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | -% |
※対象となる労働者がいない項目は「-」としています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要動向や供給網の混乱による業績変動リスク
世界的な需給環境の変動、通商・金融政策の変更、地政学リスクの高まりに伴い、同社グループの取扱製品の需要が短期間に減退する可能性があります。また、大規模な自然災害やテロ・紛争などによりサプライチェーンが混乱し、顧客へのサービス提供や製品の出荷が停止するなど、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 品質保証と損害賠償に関するリスク
同社グループが供給する製品等に品質不良が発生し、顧客から求償を受けるリスクがあります。国際的な品質マネジメント規格等に従い品質管理を徹底し、仕入先等との責任範囲の明確化に努めていますが、重大な損害賠償費用を負担することになった場合、財政状態が悪影響を被る可能性があります。
■(3) 情報セキュリティとサイバー攻撃リスク
事業活動を通じて取引先の機密情報を扱っており、ISO27001等の取得を通じてセキュリティ体制を強化しています。しかし、サイバー攻撃によるウイルス感染や不正アクセス等で重大な障害や情報漏洩が発生した場合、サービス提供の停止や業務処理の遅延、信用失墜につながるリスクがあります。



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