TalentX 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TalentX 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社はグロース市場に上場し、リファラル採用やタレントプール構築を支援する採用マーケティング事業を展開しています。直近の業績は、売上高が14.3億円(前期比34.9%増)、営業利益が2.9億円(同979.8%増)と大幅な増収増益を達成しており、SaaSモデルによるストック収益が成長を牽引しています。


※本記事は、株式会社TalentX の有価証券報告書(第7期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. TalentXってどんな会社?


同社は、企業が自前で人材を獲得するための「採用マーケティング」を支援するSaaS型サービスを提供しています。

(1) 会社概要


同社は、2015年に株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)の社内ベンチャーとしてリファラル採用サービス「MyRefer」を開始しました。2018年にMBOを実施して独立し、2022年には採用MAサービス「MyTalent」をリリースしました。2023年に現在の社名へ商号変更し、2025年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。

同社(単体)の従業員数は110名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の鈴木貴史氏(資産管理会社含む)で、第2位はパーソルグループの投資会社であるパーソルデジタルベンチャーズ、第3位は同社取締役の細田亮佑氏です。

氏名 持株比率
鈴木 貴史 40.74%
パーソルデジタルベンチャーズ 4.88%
細田 亮佑 4.53%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は鈴木貴史氏が務めています。取締役3名のうち社外取締役は1名で、比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 貴史 代表取締役社長 2012年インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。2018年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2015年に社内ベンチャーとしてMyReferを立ち上げより現職。
細田 亮佑 取締役上席執行役員 2012年インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。2018年同社設立時に取締役に就任。2025年より取締役上席執行役員としてタレントアクイジション本部を担当。


社外取締役は、北川 貞光(株式会社U-NEXT HOLDINGS執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「採用マーケティング事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) リファラル採用サービス「MyRefer」

従業員をリクルーター化し、知人や友人の紹介による採用(リファラル採用)を促進するSaaSです。大手企業や成長企業が主な顧客です。
収益は、主に利用企業の従業員数に応じた月額システム利用料(MRR)を受け取るストック型モデルです。運営はTalentXが行っています。

(2) 採用MAサービス「MyTalent」

過去の応募者や退職者(アルムナイ)などをデータベース化し、AIを活用して再アプローチを行う採用マーケティングオートメーション(MA)ツールです。
収益は、候補者の登録数などに応じた月額利用料を受け取ります。運営はTalentXが行っています。

(3) 採用ブランディングサービス「MyBrand」

ノーコードで自社独自の採用メディアを作成・運用できるサービスです。検索エンジン最適化(SEO)などを通じて求職者を集客します。
収益は、利用機能に応じた月額利用料を受け取ります。運営はTalentXが行っています。

(4) コンサルティング・その他

上記のSaaSプロダクト導入に伴う採用戦略全般のコンサルティング(RXO事業)や、採用決定時の成果報酬型サービスなどを提供しています。
収益は、コンサルティングフィーや採用決定時の成果報酬を受け取ります。運営はTalentXが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で3.8億円から14.3億円へと一貫して右肩上がりの成長を続けています。利益面では、先行投資により赤字が続いていましたが、前期に黒字化を達成しました。当期は売上拡大に伴い利益率が大きく改善し、経常利益、当期純利益ともに大幅な増益となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3.8億円 4.5億円 7.3億円 10.6億円 14.3億円
経常利益 -1.5億円 -3.1億円 -1.0億円 0.3億円 2.8億円
利益率(%) -38.9% -68.3% -13.1% 2.5% 19.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.5億円 -3.1億円 -0.9億円 0.3億円 3.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加率(約35%増)に対して売上原価の増加が抑制されており、売上総利益率が向上しています。販管費も増加していますが、売上成長がそれを上回ったことで、営業利益率は前期の2.6%から20.5%へと飛躍的に改善しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 10.6億円 14.3億円
売上総利益 8.6億円 12.0億円
売上総利益率(%) 81.2% 83.4%
営業利益 0.3億円 2.9億円
営業利益率(%) 2.6% 20.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.0億円(構成比44%)、賞与が0.8億円(同9%)と人件費関連が大きな割合を占めています。売上原価においては、労務費が1.6億円(構成比65%)を占めており、全体として人的リソースへの投資が費用の中心となっています。

(3) セグメント収益


同社は「採用マーケティング事業」の単一セグメントですが、事業全体の成長により売上高は前期比で大幅に増加しました。利益面でも、増収効果とコストコントロールにより、利益額・利益率ともに大きく伸長しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
連結(合計) 10.6億円 14.3億円 0.3億円 2.9億円 20.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、営業活動で得た資金を確保しつつ、財務活動でも資金調達を行っている「積極型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.5億円 4.3億円
投資CF -0.1億円 -0.0億円
財務CF -0.2億円 0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は140.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「未来のインフラを創出し、HRの歴史を塗り替える」をビジョンに掲げています。日本の採用市場を、企業が待つだけの姿勢から、自らタレントを惹きつける「人材獲得」へと変革することを目指しています。また、パーパスとして「人と組織のポテンシャルを解放する社会の創造」を掲げ、本来巡り合えなかったマッチングの創出を通じて社会に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、「Leadership Principles」として10個のバリュー・行動指針を定めています。具体的には、顧客価値を最優先する「User First」、恐れず挑戦する「Bold mistake」、前例のないものを生み出す「Be Columbus」、当事者意識を持つ「Ownership」、スピードを重視する「Gale」などを掲げ、これらを評価や表彰制度にも反映させています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長(サステナブル・グロース)を重視し、売上高成長率と利益率の合計が40%以上であることを理想とする「Rule of 40」を重要な経営指標として位置づけています。また、ARR(年間経常収益)、課金利用社数、ARPA(1社当たりの月額サブスクリプション売上高)などをKPIとして設定し、これらを継続的に向上させることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、大手企業への新規開拓と既存顧客へのアップセル・クロスセルを成長戦略の柱としています。特に、「MyRefer」「MyTalent」「MyBrand」を組み合わせたプラットフォーム展開により、顧客単価の向上と解約率の低下を図ります。また、AI技術の実装による機能強化や社内業務の自動化を推進し、生産性の向上と利益成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材と文化を成長の源泉と捉え、新卒採用やリファラル採用等の採用マーケティング手法を自ら実践して人材獲得に取り組んでいます。育成面では、事業戦略と連動した人材戦略に加え、個人のキャリアビジョンに基づく開発に注力し、社員が主体的かつ自律的にキャリアを形成できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 32.5歳 1.8年 570.8万円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 75.3%
男女賃金差異(正規雇用) 74.5%
男女賃金差異(非正規) -


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用者の割合(22.5%)、年次有給休暇の取得率(66.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向の影響


同社のSaaS型サービスは企業のDX投資需要に支えられていますが、経済情勢や景気動向の変化により顧客企業の投資意欲が減退した場合、解約の増加や新規獲得の鈍化などにより、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合との競争激化


人材関連市場には資金力やブランド力を持つ競合が存在し、新規参入も想定されます。同社は独自データの蓄積や機能強化で差別化を図っていますが、競争が激化した場合には顧客の流出や価格競争などが生じ、事業及び業績に影響を与える可能性があります。

(3) 技術革新への対応


インターネット業界は技術変化が激しく、AIなどの新技術への適応が重要です。技術革新への対応が遅れた場合や、予期せぬ開発投資が必要となった場合、競争力の低下やコスト増加を招き、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) システムトラブル


サービス提供は通信ネットワークやシステム基盤に依存しています。自然災害、事故、アクセス集中、サイバー攻撃などによりシステム障害が発生した場合、サービスの停止や社会的信用の低下を招き、事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。