TalentX 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TalentX 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するTalentXは、AIを活用した統合型タレントアクイジションプラットフォーム「MyTalent Platform」を提供し、企業の採用マーケティングを支援しています。当期は継続課金による利用企業の増加が牽引し、売上高18億円、経常利益3億円の増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社TalentXの有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. TalentXってどんな会社?


統合型タレントアクイジションプラットフォーム「MyTalent Platform」を展開し、企業の採用マーケティングを支援しています。

(1) 会社概要


2018年5月にMyReferとして設立され、同年8月にパーソルキャリアよりMBOを実施しました。2022年2月に採用CRMツール「MyTalent」をリリースし、2023年2月にTalentXに商号変更。2025年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場し、2026年3月にプラットフォームの提供を開始しました。

現在、連結従業員数は140名、単体では137名体制で事業を展開しています。大株主の筆頭は同社創業者の鈴木貴史氏で、第2位は役員の細田亮佑氏、第3位は大瀧大悟郎氏となっています。経営陣を中心に持株比率が高く、機動的な意思決定と事業成長を推進する体制が整えられています。

氏名 持株比率
鈴木 貴史 43.37%
細田 亮佑 4.33%
大瀧 大悟郎 2.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOの鈴木貴史氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 貴史 代表取締役社長CEO 2012年4月インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。2018年5月の設立時に代表取締役社長に就任し、現在に至る。
細田 亮佑 取締役上席執行役員 2012年4月インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。2018年5月の設立時に取締役に就任し、2025年4月より現職。


社外取締役は、北川貞光(USEN WORK WELL 取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「採用マーケティング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

MyTalent Platformの提供


AIを活用した統合型タレントアクイジションプラットフォーム「MyTalent Platform」を提供しています。大企業や成長企業を対象に、採用ブランディング、採用CRM、採用管理(ATS)、リファラル採用といった各機能を通じ、候補者データの蓄積・活用による企業の採用力強化を支援しています。

主な収益源は、プラットフォームの利用に基づく月額サブスクリプション利用料です。利用企業が増加するほど候補者やコンテンツ等のデータが蓄積され、AIの精度向上とサービスの価値向上が図られる仕組みとなっています。本事業はTalentXが単独で開発および運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して成長を続けており、毎期確実な増収を達成しています。利益面では事業立ち上げに伴う先行投資により赤字が続いていましたが、事業基盤の拡大とストック収益の積み上がりにより直近2期間で黒字化を果たしており、収益力の向上が確認できます。

項目 第4期 第5期 第6期 第7期 第8期
売上高 4億円 7億円 11億円 14億円 18億円
経常利益 -3億円 -1億円 0億円 3億円 3億円
利益率(%) -68.3% -13.1% 2.5% 19.3% 19.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -3億円 -1億円 0億円 4億円 3億円

(2) 損益計算書


収益構造を見ると、売上高の順調な拡大とともに売上総利益も増加しており、80%台半ばの高い売上総利益率を維持しています。営業利益も安定して黒字を確保しており、継続課金を主体とした高収益なビジネスモデルが定着していることがうかがえます。

項目 第7期 第8期
売上高 14億円 18億円
売上総利益 12億円 15億円
売上総利益率(%) 83.4% 86.4%
営業利益 3億円 3億円
営業利益率(%) 20.5% 19.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比47%)、法定福利費が1億円(同9%)、賞与引当金繰入額が1億円(同9%)を占めています。また、売上原価については、労務費が1億円(構成比58%)、経費が1億円(同37%)となっています。

(3) セグメント収益


同社グループは採用マーケティング事業の単一セグメントで事業を展開しており、継続課金を主体としたプラットフォーム利用企業の拡大により、売上高は着実な成長を遂げています。特に大企業への導入が進んだことで単価の上昇や複数プロダクトの利用が促進され、順調な増収に寄与しました。

区分 売上(第7期) 売上(第8期)
採用マーケティング事業 14億円 18億円
連結(合計) 14億円 18億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で生み出した資金と調達した資金を成長投資に充てる「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は28.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も52.7%で市場平均を上回っています。

項目 第7期 第8期
営業CF 4億円 4億円
投資CF - -2億円
財務CF - 2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


ビジョンとして「未来のインフラを創出し、HRの歴史を塗り替える」を掲げています。また、パーパス(存在意義)として「人と組織のポテンシャルを解放する社会の創造」を設定し、人や組織が固有の強みを見出せる新たな出逢いの機会を創出することで、個人のキャリア自律や企業の事業成長、社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


企業の発展・成長の源泉は人材と文化であると考え、バリュー(Leadership Principles)として「User First(顧客価値の創造)」「Bold mistake(果敢な失敗をしよう)」「Be Columbus(コロンブスの卵であろう)」などを定めています。これらは採用基準や個人の目標設定と連動し、日々の行動指針として浸透しています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と企業価値の向上を目指し、客観的な経営指標として以下の数値を重要視し、継続的な向上に努めています。
・売上高
・サブスクリプション売上高比率
・売上高総利益率
・調整後営業利益率
・ARR(年間経常収益)
・課金利用社数
・ARPA(1社当たりの月額サブスクリプション売上高)

(4) 成長戦略と重点施策


「AIネイティブ採用」を実現するプラットフォームを通じて人材獲得活動を変革するため、AI機能の継続的なリリースで利便性を高める「AIネイティブ戦略」、各プロダクトを単一の基盤に統合する「統合プラットフォーム戦略」を推進しています。また、大企業への深耕と中堅・成長企業への展開を加速する「市場拡大戦略」を実行しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業戦略と組織戦略を一体で推進することを重視し、AIネイティブ化やプラットフォーム統合を進める事業戦略に連動した採用・育成・配置・制度設計を行っています。特にエンジニアやコンサルタント等の専門人材の採用・育成を重要課題と位置付け、個人のキャリアビジョンに基づく人材開発と成長機会の提供を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第8期 32.6歳 2.1年 5,781,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 73.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には一部項目の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員に占める新卒採用者の割合(22.1%)、年次有給休暇の取得率(74.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と生成AI技術の進展


人材採用市場においてAI活用が急速に進む中、新技術への対応が遅れた場合や、AI領域への投資シフトにより求められる機能が変化した場合、競争力の低下や追加投資の発生により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報管理体制とシステムトラブル


顧客情報や個人情報を扱うクラウドサービスにおいて、不正アクセスや自然災害等によるシステム停止、重要な情報資産の漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により事業に深刻な影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保と育成


今後の事業拡大と持続的な成長を実現するためには、優秀な専門人材の確保と定着が不可欠です。求める人材を十分に獲得できない場合や、社内育成が計画通りに進まない場合、適正な人員配置が困難となり業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。