IACEトラベル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

IACEトラベル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、法人向けの業務渡航管理(BTM)サービスを主力とする旅行会社です。独自のクラウド出張手配システムの導入によりデジタル化を推進しています。直近の業績は、売上高が前期比11.3%増、経常利益が同37.1%増と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社IACEトラベル の有価証券報告書(第44期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. IACEトラベルってどんな会社?


同社グループは、法人向けの業務出張手配・管理を行うBTMサービスを主力とし、官公庁や在日米軍向けの手配も行う旅行会社です。

(1) 会社概要

同社は、創業者が米国での旅行会社設立に関与した経験をもとに1975年に創業し、1982年に法人化されました。当初は個人向け航空券販売を行っていましたが、2013年に法人向けのBTM(ビジネストラベル・マネジメント)サービスへ主力事業を転換しました。2021年にはクラウド出張手配システム「Smart BTM」をリリースし、2025年4月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしました。

2025年3月31日現在、従業員数は連結144名、単体119名です。筆頭株主は代表取締役社長の西澤重治氏、第2位は取締役専務執行役員の灰田俊也氏、第3位は従業員持株会となっており、経営陣と従業員が主要な株主となっています。

氏名 持株比率
西澤 重治 32.70%
灰田 俊也 15.14%
IACEトラベル従業員持株会 12.63%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性1名(監査役含む)の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は西澤重治氏です。取締役会における社外取締役の比率は50.0%(3名/6名)です。

氏名 役職 主な経歴
西澤 重治 代表取締役社長執行役員 1987年同社入社。取締役東京支店長、取締役ゼネラルマネージャーを経て、2000年代表取締役社長に就任。2019年より現職。
灰田 俊也 取締役専務執行役員 1997年同社入社。札幌支店長、経営企画室マネージャー、経営管理本部長などを歴任。2016年取締役、2019年取締役上席執行役員を経て、2022年より現職。
横田 卓也 取締役上席執行役員 2002年同社入社。大阪支店長、西日本統括営業部部長などを歴任。2019年執行役員を経て、2022年より現職。


社外取締役は、川中浩平(弁護士)、酒井大輔(株式会社LALALA Plus代表取締役)、浦部智壽子(公認会計士・元警視庁警視)です。

2. 事業内容


同社グループは、「旅行業」の単一セグメントですが、サービスごとの特性に合わせて以下の5つのサービス事業を展開しています。

(1) BTMサービス

法人顧客向けに国内・海外出張の航空券・宿泊手配、査証代行、精算代行、危機管理などを包括的に提供しています。独自のクラウド出張手配システム「Smart BTM」により、オンラインでの一元管理と予約を可能にしつつ、複雑な旅程はオペレーターが対応するハイブリッド型サービスが特徴です。
収益は、航空券やホテルの予約件数ごとに顧客企業から受け取る手数料収入が中心です。運営は主にIACEトラベルが行っており、個人事業主向けの「Easy Booking」や出張管理システム「Travel Manager」も提供しています。

(2) 官庁・公務サービス

農林水産省や国土交通省内に店舗を構え、中央省庁を中心に国内・海外出張の手配を行っています。多くの省庁で国内出張指定旅行会社となっており、旅費関連のデータ入力代行や団体出張も取り扱っています。
収益は、公募により契約した各省庁からの手配業務に対する対価です。運営はIACEトラベルが行っており、公務出張特有の手続きに関する高い専門性を強みとしています。

(3) 個人サービス

個人顧客向けに、ポータルサイト経由のオンライン予約を主軸として国内・海外旅行の販売・手配を行っています。また、BTMサービスの取引企業の従業員からのプライベート旅行や団体旅行の相談にも対応しています。
収益は、個人顧客への旅行商品販売による代金です。運営はIACEトラベルが行っており、法人取引とのシナジーを活かした展開を進めています。

(4) 米軍サービス

在日米軍基地内に店舗を展開し、基地所属の軍人、職員、家族に対して観光や帰省目的の旅行手配を行っています。英語力に加え、米国の商慣習を理解したスタッフによる接客を提供しています。
収益は、公募入札により契約した顧客からの旅行手配に対する対価です。運営はIACEトラベルが行っています。

(5) 海外サービス

カナダとメキシコにある現地子会社を通じて、現地進出日系企業向けの出張手配や、駐在員・留学生向けの個人旅行手配を行っています。また、外国人向けの日本行き旅行商品の手配も手掛けています。
収益は、現地法人顧客や個人顧客からの手配料および旅行代金です。運営は、連結子会社のIACE Travel,Inc(カナダ)およびIACE TRAVEL MEXICO S.A. DE C.V.(メキシコ)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は第40期、第41期に大きく落ち込み赤字を計上していましたが、第42期以降はV字回復し、黒字転換を果たしています。特に直近の第44期は売上高、利益ともに過去最高水準で推移しており、利益率も20%を超える高い水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 7.3億円 6.3億円 17億円 24億円 27億円
経常利益 -2.0億円 -2.8億円 1.8億円 4.3億円 5.9億円
利益率(%) -27.3% -43.5% 10.8% 17.7% 21.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.9億円 -2.8億円 2.0億円 3.1億円 3.6億円

(2) 損益計算書

直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。販管費は横ばいで推移しており、その結果として営業利益が大きく伸長しています。効率的な事業運営により、高い収益性を確保していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 24億円 27億円
売上総利益 18億円 20億円
売上総利益率(%) 76.0% 75.0%
営業利益 4.3億円 6.1億円
営業利益率(%) 17.6% 22.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が6.8億円(構成比48%)、賞与引当金繰入が0.3億円(同2%)を占めています。人件費が主なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益

同社は単一セグメントですが、サービス別の売上高を見ると、主力のBTMサービスが順調に拡大しており、全体の成長を牽引しています。海外サービスや個人サービスも増加傾向にあり、全サービスにおいて堅調な推移を見せています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
BTMサービス 11億円 13億円
官庁・公務サービス 2.7億円 2.7億円
個人サービス 4.0億円 4.4億円
米軍サービス 1.6億円 1.7億円
海外サービス 3.6億円 4.1億円
その他 1.1億円 1.1億円
連結(合計) 24億円 27億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスであり、本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を行っている「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -0.1億円 4.1億円
投資CF -0.2億円 -0.6億円
財務CF -1.9億円 -0.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「社会に価値を提供し、幸福を創造することにより、必要とされる存在となる」を企業理念として掲げています。また、「出張をもっとスマートに」をミッションとし、BTM(ビジネストラベル・マネジメント)サービスを通じて、より良い社会づくりや全関係者の幸せに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化

同社は創業からのコアバリューとして「IACE's Culture」を掲げています。具体的には、「公明正大な企業文化」「仕事への情熱」「変化へのチャレンジ」「迅速な行動」「顧客目線とプロフェッショナル精神」「周囲への感謝」の6つの項目を重視し、これらを実践できる人材づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標

同社は、BTMサービスのデジタル化による競争優位性の強化と生産性向上を目指し、経営指標として売上高営業利益率20%以上、自己資本利益率(ROE)10%以上を目標としています。また、重要KPIとしてBTMサービスのMAU(月間利用企業社数)、予約件数、売上単価を設定し、中期経営計画に基づきアクティブユーザー数の増加を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策

同社は「ビジョン2030」として、日本の業務出張市場において「BTMで一番多くの企業に利用されるデジタルサービスとなる」ことを掲げています。
具体的には、クラウド出張手配システム「Smart BTM」の認知拡大とユーザー企業数の増加を図るとともに、バックオフィス向けSaaS「Travel Manager」を新たな収益源として育成します。また、手数料収入の多様化、デジタルトランスフォーメーションの推進、マーケティングおよび営業力の強化を重点施策として進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社はBTM分野において「デジタルサービス」と「ヒューマンサービス」を融合させたハイブリッドサービスを強みとしており、これを支える人材の育成を重視しています。「IACE's Culture」を実践できる人材づくりを進めるとともに、多様な人材が活躍し、心身ともに健康で安心して働ける職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.0歳 15.5年 5,164,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.5%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.9%
男女賃金差異(正規雇用) 72.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ワーキングマザー比率(49.1%)、ITパスポート取得率(95.5%)、月平均時間外労働時間(21.8時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害及び国際情勢等

地震や台風などの自然災害、感染症の流行、国際的な紛争や政治・経済の不安定化により、観光インフラの停止や渡航制限が発生した場合、旅行需要が減退する可能性があります。また、海外子会社を有するため、現地の情勢変化や法規制の影響を受けるリスクもあります。

(2) 人口動態による出張需要の縮小

同社は日本企業との取引が多く、国内の労働人口減少に伴い企業の従業員数が減少することで、全体的な出張需要が縮小する可能性があります。これにより受注が減少し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 競合他社との競争激化

既存の旅行会社との競争に加え、新興企業の参入やサプライヤーによる直販の強化、技術革新によるシステムの陳腐化などが想定されます。競争が激化した場合や技術対応が遅れた場合、競争力が低下し業績に影響を与える可能性があります。

(4) システム障害

BTMサービスにおいて顧客に提供しているシステムに障害や通信不具合が発生した場合、サービス提供に支障をきたす可能性があります。特にサイバー攻撃や災害等でシステムが長期停止した場合、受注停止などにより業績や業務運営に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。