IACEトラベル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

IACEトラベル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するIACEトラベルは、法人向けの出張手配システムを軸としたBTMサービス等の旅行業を単一セグメントで展開しています。直近の業績は、主力サービスの利用企業増加により売上高が前期比12%増、経常利益が同29%増と堅調な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社IACEトラベルの有価証券報告書(第45期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. IACEトラベルってどんな会社?


法人向けのBTMサービスを中心に、多様な旅行関連事業を展開する旅行会社です。

(1) 会社概要


1982年に旅行代理店業を目的に設立され、1995年に国際航空運送協会の公認代理店として認可を受けました。2013年には個人向けのツアー販売から法人向けのBTMサービスへと主力事業を転換しています。2021年にクラウド出張手配システムをリリースし、2025年に上場を果たしました。

同社グループの従業員数は連結で137名、単体で114名です。筆頭株主は代表取締役社長執行役員の西澤重治氏で、第2位は取締役専務執行役員の灰田俊也氏、第3位は同社の従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
西澤重治 23.46%
灰田俊也 10.86%
IACEトラベル従業員持株会 9.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は西澤重治氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
西澤重治 代表取締役社長執行役員 1987年4月同社入社。1992年取締役東京支店長等を経て、2000年代表取締役社長に就任。2019年より現職。
灰田俊也 取締役専務執行役員 1997年4月同社入社。札幌支店長、経営管理本部部長、取締役経営管理本部長等を経て、2022年より現職。
横田卓也 取締役上席執行役員 2002年1月同社入社。大阪支店長、関西地区部長、西日本統括営業部部長等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、川中浩平(ユナイト法律会計事務所代表パートナー)、酒井大輔(LALALA Plus代表取締役)、浦部智壽子(元警視庁管理官)です。

2. 事業内容


同社グループは旅行業の単一セグメントですが、主に以下のサービスを展開しています。

(1) BTMサービス


法人顧客向けに国内・海外の出張に係る航空券や宿泊の手配を行う主力サービスです。クラウド出張手配システム「Smart BTM」によるオンライン予約と、自社オペレーターによる24時間体制のオフライン対応を組み合わせたハイブリッドサービスを提供しています。

予約件数ごとに徴収する手数料が主な収益源です。また、バックオフィス向けにクラウド出張管理システム「Travel Manager」をSaaS型の課金体系で展開しており、これらの運営は同社が行っています。

(2) 官庁・公務サービス


農林水産省や国土交通省など中央省庁を中心に、公務出張における手配や手続きの専門サービスを提供しています。各組織の特性に応じた接客対応力を活かし、国内・海外出張の手配業務を担っています。

各省庁との公募入札による契約に基づき、出張手配や旅費関連の申請データ入力代行等に伴う手数料収入を主な収益源としており、運営は同社が行っています。

(3) その他のサービス(個人・米軍・海外)


個人向けパッケージツアーの企画・販売、在日米軍基地内での旅行手配、およびカナダとメキシコに進出した日系企業向けの出張手配サービスを展開しています。

旅行商品の販売代金や手配手数料が収益源です。日本国内および米軍向けサービスは同社が運営し、海外サービスはカナダ法人のIACE Travel,Incとメキシコ法人のIACE TRAVEL MEXICO S.A. DE C.V.が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間において売上高は一貫して増加傾向にあります。特に当期は主力サービスの利用企業増加により売上高と利益が順調に成長しており、利益率も25.0%と高い水準で推移し、堅調な増収増益を実現しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 17億円 24億円 27億円 30億円
経常利益 2億円 4億円 6億円 8億円
利益率(%) 10.8% 17.7% 21.8% 25.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 3億円 4億円 5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高の成長に伴い売上総利益も順調に増加しています。利益率も改善傾向にあり、営業利益率は25.0%に達するなど、収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 27億円 30億円
売上総利益 20億円 23億円
売上総利益率(%) 74.9% 77.2%
営業利益 6億円 8億円
営業利益率(%) 22.5% 25.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比44%)、支払手数料が2億円(同12%)を占めています。売上原価は7億円で、企画旅行販売の取り扱い増加が主な要因となっています。

(3) セグメント収益


同社は旅行業の単一セグメントですが、サービスごとの売上高を見ると、主力のBTMサービスが大きく成長を牽引しています。官庁・公務サービスや米軍サービスも好調に推移し、全社的な増収に寄与しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
BTMサービス 13億円 15億円
官庁・公務サービス 3億円 3億円
個人サービス 4億円 4億円
米軍サービス 2億円 2億円
海外サービス 4億円 4億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 27億円 30億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスであり、営業利益と資産の回収等で資金を創出しながら借入金の返済を進める改善型のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4億円 5億円
投資CF -0.6億円 338万円
財務CF -0.9億円 -1.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.8%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も74.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社会に価値を提供し、幸福を創造することにより、必要とされる存在となる」を企業理念に掲げています。「出張をもっとスマートに」をミッションとし、コアサービスであるBTMサービスを通じてより良い社会づくりに貢献し、全関係者の幸せに寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は創業以来培ってきたコアバリューである「IACE's Culture」の実践を通じて、企業理念の浸透と組織文化の醸成を図っています。具体的には「公明正大な企業文化」「仕事への情熱」「変化へのチャレンジ」「迅速な行動」「顧客目線とプロフェッショナル精神」「周囲への感謝」を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社はBTMサービスのデジタル化による競争優位性の強化を目指しており、中期経営計画における2030年3月期の目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高営業利益率27%以上
* 自己資本利益率15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「Vision2030」として、日本の業務出張市場において「BTMで一番多くの企業に利用されるデジタルサービスとなる」ことを目指しています。アナログ対応が多い出張手配においてデジタル化を推進し、新たな手配商材や新サービスの拡充で手数料収入の多様化を図るとともに、マーケティングや営業体制の強化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を持続的成長を支える重要な経営資本と位置づけています。業務渡航に関する専門知識に加え、DX推進やデータ活用に関する知見を有する人材の確保と育成に注力しています。従業員一人ひとりの主体的な学習や挑戦を支援し、教育研修制度の充実やリスキリングを通じて変化に対応できる人材基盤の強化を図ります。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.0歳 16.0年 5,322,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.3%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 78.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ワーキングマザー比率(50.0%)、月平均時間外労働時間(24.0時間)、ITパスポート取得率(96.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合他社や新規参入に関するリスク


同社は顧客ニーズに応じたシステム開発やサポート体制で差別化を図っていますが、既存の旅行会社との競争激化や新興企業の革新的なビジネスモデルによる市場参入、航空会社等の直販強化により、同社の競争力が低下するリスクがあります。

(2) 顧客情報の漏洩リスク


プライバシーマークを取得し、個人情報保護マネジメントシステムを構築して厳格な管理に努めていますが、サイバー攻撃や従業員の過失等により個人情報が漏洩した場合、社会的信用の失墜や法的責任が生じ、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) システム障害によるサービス停止のリスク


クラウド出張手配システムの安定稼働に向けてセキュリティや冗長化対策を行っていますが、ハッキング、ウイルス感染、自然災害などによるシステム障害や通信ネットワークの不具合が発生した場合、サービス提供に支障をきたし、受注が停止するリスクがあります。

(4) 公募入札への依存リスク


官庁および在日米軍との取引においては、安定した契約の維持に努めていますが、これらの取引は公募入札により決定されるため、入札結果や先方の予算削減、方針変更等によって契約が終了、または大幅に縮小するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。