トヨコー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トヨコー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トヨコーは東京証券取引所グロース市場に上場しており、老朽化した屋根の改修を行うSOSEI事業と、レーザーでサビを除去するCoolLaser事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比約85%増と急拡大し、営業損益も黒字転換するなど、大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社トヨコー の有価証券報告書(第30期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トヨコーってどんな会社?


独自の樹脂工法による屋根改修と、高出力レーザーを用いたインフラメンテナンス技術で、社会課題の解決に取り組む企業です。

(1) 会社概要


同社は1996年に塗装防水工事業として設立されました。2006年に独自の屋根改修技術「SOSEI工法」を開発し、2008年にはレーザーによるクリーニング技術「CoolLaser」の開発に着手しました。2023年にはCoolLaser初の市販モデルを発売し、2025年3月に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。

同社の従業員数は単体で39名です。筆頭株主は創業者の豊澤一晃氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は取締役CFOの白井元氏です。

氏名 持株比率
豊澤 一晃 30.15%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.01%
白井 元 4.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは豊澤 一晃氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
豊澤 一晃 代表取締役CEO 1996年ジャパンアートプランニングセンター入社。個人事業主を経て2003年同社入社、取締役就任。2014年5月より現職。
鈴木 紀行 取締役COO 東光(現村田製作所)、ロームを経て、NVIDIAにてシニアマネージャー、EDGEMATRIX執行役員を歴任。2024年4月同社入社、6月より現職。
白井 元 取締役CFO あらた監査法人、フロンティア・マネジメント、トーマツを経て、グリンティー代表取締役。2020年6月同社入社、取締役CFO就任。より現職。


社外取締役は、藤田和久(光産業創成大学院大学教授)、守屋実(株式会社守屋実事務所代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「SOSEI事業」および「CoolLaser事業」を展開しています。

(1) SOSEI事業


高度経済成長期に建設された工場や倉庫の老朽化したスレート屋根に対し、独自開発の樹脂と塗料を用いた「SOSEI工法」による改修工事を提供しています。屋根を補強・防水・断熱することで、建物の延命化や省エネに貢献します。顧客は工場や建物の所有者です。

収益は、工事の発注者(メーカーや流通業者など)から受け取る工事代金が中心です。同社が元請け、または他の建設会社の下請けとして参画し、実際の吹き付け作業は協力施工会社に外注する体制をとっています。運営は主に同社が行っています。

(2) CoolLaser事業


橋梁や鉄塔などの社会インフラ構造物に対し、高出力レーザーを用いてサビや塗膜を除去する「CoolLaser」技術を提供しています。従来の工法に比べ、産業廃棄物の削減や作業環境の改善が期待できます。顧客はインフラを保有する官公庁や民間企業、工事会社などです。

収益は、建機レンタル会社や工事会社等への装置販売、消耗品販売、保守サービスの提供、および同社が請け負う試験施工などの工事代金からなります。装置の販売に加え、継続的な収益確保を目指しています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期には大きく伸長しました。利益面では、先行投資により赤字が続いていましたが、2025年3月期には営業利益、経常利益、当期純利益のいずれも黒字転換を果たし、収益性が大幅に改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 9.2億円 10.5億円 11.2億円 11.0億円 20.3億円
経常利益 -3.3億円 -5.6億円 -1.2億円 -1.6億円 2.6億円
利益率(%) -36.2% -53.3% -10.5% -14.4% 13.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.6億円 -9.0億円 -1.1億円 -1.6億円 3.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で倍増に近い成長を見せています。売上総利益率も大きく改善し、販管費の増加を吸収して営業黒字を達成しました。収益構造が大きく好転していることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 11.0億円 20.3億円
売上総利益 3.1億円 8.6億円
売上総利益率(%) 27.9% 42.6%
営業利益 -1.9億円 3.0億円
営業利益率(%) -17.3% 14.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が1.6億円(構成比29%)、支払手数料が1.1億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


SOSEI事業は売上が約1.5倍に拡大し、利益も倍増するなど好調を維持しています。CoolLaser事業は装置の納入開始により売上が急増しましたが、開発投資等の影響でセグメント損失が続いています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
SOSEI事業 10.6億円 16.0億円 2.8億円 5.7億円 35.7%
CoolLaser事業 0.4億円 4.2億円 -3.3億円 -0.7億円 -16.4%
調整額 - - -1.4億円 -2.0億円 -
連結(合計) 11.0億円 20.3億円 -1.9億円 3.0億円 14.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金と財務活動で調達した資金を、将来の成長に向けた投資に充てている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -1.8億円 1.8億円
投資CF -0.2億円 -5.2億円
財務CF 7.4億円 15.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.2%で市場平均を上回っています(いずれもグロース市場平均との比較)。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「キレイに、未来へ」をミッションに掲げています。インフラメンテナンス現場の3K(キツい、汚い、危険)を、テクノロジーによって「3C(Cool、Clean、Creative)」に変えることを目指しています。老朽化した社会インフラを次世代へ持続可能な状態で受け継ぎ、循環型社会の実現に貢献することを重要なテーマとしています。

(2) 企業文化


経営判断の基本方針として、「現場主義」「市場創造」「協創」の3つを定めています。現場の働き手目線でのモノづくりを重視し、既存工法の置き換えではなく新しい市場を創出することを目指しています。また、自前主義にこだわらず、積極的に他社との協業体制を構築することでイノベーションの実現と模倣困難性の向上を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な利益およびキャッシュ・フローの最大化を目指しています。具体的な数値目標として、CoolLaser事業における装置販売等の収益化を通じた成長を掲げています。また、インフラメンテナンスにおける事後保全から予防保全へのシフトという社会的ニーズに応えることで、継続的な事業成長を見込んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


SOSEI事業では、太陽光パネル設置工事会社との協創を深め、老朽化した屋根上へのパネル設置を可能にする取り組みを強化します。CoolLaser事業では、装置の販売やレンタル、保守サービス等の継続収益モデルへの転換を進めます。また、米国進出に向けたパートナー選定や、新型レーザーヘッドの開発などの研究開発も継続して行います。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


建設業界の課題である若年労働力不足に対応するため、幅広い人材紹介会社との連携や各種媒体への採用記事配信を行い、採用確度を高める方針です。特にCoolLaser事業では、エンジニア人材の確保を重視しています。また、現場主義に基づき、作業者が使いたいと思うテクノロジーの開発を通じて、担い手の確保に繋げることを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.8歳 5.8年 6,679,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合技術と技術革新


CoolLaser事業やSOSEI事業において、同社を上回る技術を持つ新規参入企業の出現や、同社の特許技術に抵触しない代替技術の開発が行われる可能性があります。これにより競争優位性が低下したり、レーザー施工のニーズ自体が減退したりすることで、事業戦略や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定取引先への依存


SOSEI事業の売上の約2割を株式会社フジタが占めており、特定取引先への依存度が高い状況です。また、CoolLaser事業でも特定の工事会社や建機レンタル会社への依存度が高まる可能性があります。これら取引先の経営方針や取引条件の変更があった場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。

(3) 建設関連の法的規制


SOSEI事業を中心に、特定建設業許可などの許認可が必要不可欠です。現時点で取り消し事由は発生していませんが、将来的に何らかの理由で許可が取り消された場合、事業活動に支障をきたし、業績や財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。