ダイナミックマッププラットフォーム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイナミックマッププラットフォーム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するダイナミックマッププラットフォームは、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)に不可欠な高精度3次元地図データ(HDマップ)を生成・提供しています。第9期の業績は売上高が前期比34.1%増の75億円と拡大しましたが、先行投資により経常損失が継続しています。


※本記事は、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社 の有価証券報告書(第9期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイナミックマッププラットフォームってどんな会社?


自動運転や先進運転支援システム(ADAS)の安全な走行制御に不可欠な高精度3次元地図データ(HDマップ)をグローバルに提供する企業です。

(1) 会社概要


2016年6月に高精度3次元地図データ(HDマップ)の研究開発を目的に前身企業が設立され、2017年6月に事業会社化しました。2019年4月には米国Ushr Inc.を買収し、グローバル展開を加速させています。2023年2月に現社名へ変更し、2025年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

連結従業員数は224名、単体従業員数は72名です。筆頭株主は官民ファンドの株式会社INCJで、第2位はインフラ輸出支援を行う株式会社海外交通・都市開発事業支援機構、第3位は設立時からの出資者である三菱電機株式会社です。

氏名 持株比率
INCJ 27.83%
海外交通・都市開発事業支援機構 14.72%
三菱電機 6.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は吉村修一氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
吉村 修一 代表取締役社長 三井物産を経て産業革新機構(現INCJ)に入社。2020年よりダイナミックマッププラットフォーム取締役副社長、2022年1月より現職。北米・欧州子会社の役員も兼務。
麻生 紀子 取締役グループ技術・生産担当 三菱電機にて衛星情報システム等の開発に従事。2019年にダイナミックマッププラットフォームへ出向し、執行役員技術企画部長等を経て2023年6月より取締役。
鈴木 秀和 取締役 大和証券SMBC(現大和証券)を経てアトラエに入社し取締役CFOを務める。2020年よりアルティーリ取締役CFO。2022年6月より現職。


社外取締役は、鈴木秀和(元アトラエ取締役CFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内」および「海外」事業を展開しています。

(1) 国内


国内の高速道路、自動車専用道路、一般道の計測・図化を行い、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)向けのHDマップを生成・販売しています。また、計測で得た高精度3次元点群データを活用し、インフラ維持管理や除雪支援などのソリューション(3Dデータビジネス)も提供しています。

主な収益は、自動車メーカー等からのHDマップ開発プロジェクト売上、量産車への搭載数に応じたライセンスフィーやメンテナンスフィーです。また、3Dデータビジネスでは政府・自治体等からの受託開発売上やViewer等の利用料を得ています。運営は主にダイナミックマッププラットフォームが行っています。

(2) 海外


北米、欧州、中東、韓国における高速道路や一般道の計測・図化を行い、自動運転および先進運転支援システム用HDマップを生成・販売しています。また、国内と同様に3Dデータビジネスの立ち上げも進めており、2025年3月末時点で世界26か国において事業を展開しています。

収益源は、自動車メーカー等からの地図データ整備・更新に伴うプロジェクト型売上や、量産車搭載時のライセンスフィー等です。特に北米ではゼネラルモーターズ(GM)向けの売上が大きく寄与しています。運営はDynamic Map Platform North America, Inc.等の現地法人が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第7期の37億円から第9期の75億円へと急速に拡大しており、グローバルでのHDマップ需要の増加を反映しています。一方、利益面では先行投資が続いており、経常損失および当期純損失の計上が続いていますが、赤字幅は縮小傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 6億円 6億円 37億円 56億円 75億円
経常利益 -16億円 -18億円 -35億円 -25億円 -14億円
利益率(%) -286.7% -298.2% -93.8% -44.7% -18.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -16億円 -198億円 -47億円 -32億円 -12億円

(2) 損益計算書


直近2期間では、売上高が大幅に伸長したことで売上総利益が黒字転換し、13億円を確保しました。しかし、事業拡大に伴う販売費及び一般管理費の負担が依然として重く、営業損失となっています。ただし、営業損失の額は前期の26億円から12億円へと半減しており、収益構造の改善が進んでいます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 56億円 75億円
売上総利益 -0.9億円 13億円
売上総利益率(%) -1.6% 17.7%
営業利益 -26億円 -12億円
営業利益率(%) -45.9% -16.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が10億円(構成比38%)、支払報酬料が4億円(同15%)、研究開発費が3億円(同10%)を占めています。売上原価では、減価償却費が5億円(構成比9%)となっています。

(3) セグメント収益


国内事業は、国家プロジェクトの受注等により売上が前期比約1.6倍に拡大し、営業損失も縮小しました。海外事業は、北米での新規道路整備やライセンス売上の増加により増収となり、営業損失も大幅に改善しました。全体として、両セグメントともに売上成長と損益改善が進んでいます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
国内 17億円 27億円
海外 39億円 48億円
その他・調整額 - -
連結(合計) 56億円 75億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「勝負型」(本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続)です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -32億円 -23億円
投資CF -8億円 -25億円
財務CF 2億円 28億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.9%で市場平均(グロース市場:43.3%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「デジタル社会のインフラとして高精度位置情報基盤をグローバルに構築し、自動運転をはじめとする新しい未来を拓く」をパーパスとして掲げています。現実世界をデジタル空間に複製するプラットフォーマーとして、様々な産業のイノベーションを支えることを目指しています。

(2) 企業文化


社員が大切にすべきバリューとして「GIFT!」を掲げています。「Global Mindset(国際的視野)」「Innovate(革新)」「Fast Move(迅速な行動)」「Trust and Respect(信頼と尊重)」「!be youthful!(若々しさ)」の頭文字を取ったもので、多様な背景を持つ社員が互いを尊重し合う風土を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「売上収益の中長期的な成長」「ライセンス型売上の成長」「調整後EBITDAの向上」を重要な経営指標と位置付けています。特に、限界利益率が高いライセンス型売上の比率を高めることで、将来の黒字化と高い収益性の実現を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


オートモーティブビジネスでは、国内外の有力自動車メーカーやTier1サプライヤー等との連携を強化し、搭載車種の拡大を図ります。特に北米でのカバレッジ拡充や中東への展開を進めます。3Dデータビジネスでは、「データ連携基盤」を構築し、防災・インフラ管理など多様な用途への展開や、政府・自治体との連携による社会課題解決型プロジェクトを推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


技術革新が激しい事業領域において競争優位性を維持するため、優秀なエンジニアの獲得と育成を最重要課題としています。多様な国籍の社員が在籍しており、グローバルマインドセットを持つ人材の育成を推進しています。また、OKRを用いた評価制度やフレックスタイム制、フル在宅勤務制度などを導入し、パフォーマンスを発揮できる環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.3歳 2.5年 9,170,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動運転市場の立ち上がり遅延


売上の大部分は自動車向けHDマップに関連していますが、自動運転レベル3以上の本格的な普及が当初想定より遅れています。技術的課題や部品供給不足等により市場拡大が更に遅延した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社の参入


HDマップ分野にはHere、TomTom、Google等の競合が存在します。これら競合他社が同社を上回る技術力や価格競争力、あるいはHDマップを代替する技術ソリューション(SDマップとセンサー情報の組み合わせ等)を確立した場合、市場シェアを失う可能性があります。

(3) 特定販売先への依存


特に北米子会社において、ゼネラルモーターズ(GM)向けの売上が過半を占めています。他の取引先への拡大を進めていますが、GMとの関係悪化や同社の業績不振、戦略変更等が生じた場合、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。

(4) 先行投資型ビジネスモデル


HDマップの整備範囲拡大が搭載の前提となるため、多額の先行投資が必要です。北米での一般道整備や中東展開などで今後も費用負担が続く見込みであり、収益化が遅れた場合、赤字が継続するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。