ダイナミックマッププラットフォーム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイナミックマッププラットフォーム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するダイナミックマッププラットフォームは、自動運転や先進運転支援システムに不可欠な高精度3次元地図データの生成・販売を主力とします。世界の主要道路のデータ整備を概ね完了し、ライセンス提供へ移行中です。直近の業績は、初期整備の一巡等により減収、赤字幅拡大となっています。


※本記事は、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社の有価証券報告書(第10期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイナミックマッププラットフォームってどんな会社?


自動運転に不可欠な高精度3次元地図データの生成・販売と多用途展開を行う企業の特徴を解説します。

(1) 会社概要


同社は2016年に内閣府のプロジェクトから高精度3次元地図データを研究開発する目的で設立され、2017年に事業会社化しました。2019年の米国企業子会社化による北米展開を経て、2025年に東証グロース市場へ上場しました。近年は測量会社の子会社化など関連事業のグループ化を推進しています。

現在の従業員数は連結で210名、単体で72名です。筆頭株主は官民ファンドの産業革新投資機構であり、第2位はインフラ支援を担う官民ファンドの海外交通・都市開発事業支援機構、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
産業革新投資機構 31.32%
海外交通・都市開発事業支援機構 14.72%
日本カストディ銀行(信託口) 4.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は吉村修一氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
吉村修一 代表取締役社長 三井物産、産業革新投資機構を経て、2020年に同社取締役副社長に就任。2022年より現職。国内外のグループ会社の要職も兼任。
麻生紀子 取締役グループ技術・生産担当 三菱電機にて衛星情報システム等の業務に従事後、宇宙航空研究開発機構を経て、2019年に同社へ出向。執行役員を経て2024年より現職。


社外取締役は、鈴木秀和氏(アトラエ取締役CFO)、志賀俊之氏(元日産自動車最高執行責任者・副会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内」および「海外」事業を展開しています。

国内


日本の自動車専用道路、高速道路及び一般道の計測・図化を行い、自動運転や先進運転支援システム向けのオートモーティブビジネスと、計測データを用いた他産業向けの3Dデータビジネスを展開しています。また、子会社による測量事業も行っています。

自動車メーカー等からデータ整備・更新の対価や量産車搭載時のライセンスフィーを受け取ります。また、3Dデータは自治体や民間企業等へ提供されます。運営は同社やダイナミックマッププラットフォームAxyzなどが担っています。

海外


北米、欧州、中東、韓国において高速道路や一般道の計測・図化を行い、国内同様に自動運転および先進運転支援システム用の高精度3次元地図データを生成・販売しています。また、3Dデータビジネスの顧客開拓にも取り組んでいます。

自動車メーカーへの量産ライセンス提供やAI用途向けの法人ライセンス契約により収益を得ています。運営はDynamic Map Platform North America, Inc.など海外の各現地法人が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は量産車向けライセンスの拡大などにより成長してきましたが、直近ではプロジェクト型売上の減少等により減収に転じました。また、先行投資負担や関係会社株式評価損等の影響もあり、経常損失および最終赤字が続いています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 37億円 56億円 75億円 57億円
経常利益 -35億円 -25億円 -14億円 -17億円
利益率(%) -93.8% -44.7% -18.9% -29.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -47億円 -32億円 -12億円 -45億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益も減少しました。さらに先行投資やシステム運用等に伴う固定費の負担が重く、営業赤字幅が拡大する厳しい損益構造となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 75億円 57億円
売上総利益 13億円 8億円
売上総利益率(%) 17.7% 14.2%
営業利益 -12億円 -19億円
営業利益率(%) -16.3% -33.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が9億円(構成比34%)、支払報酬料が5億円(同17%)を占めています。また、売上原価においては、外注費が4億円(構成比47%)、労務費が2億円(同30%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内は法人ライセンスが拡大したものの、国家プロジェクトの受注規模縮小等により減収となり赤字が継続しました。海外は量産車搭載増加も新規整備の一巡等によるプロジェクト型売上の減少から減収となり、赤字幅が拡大しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
国内 27億円 15億円 -10億円 -10億円 -66.9%
海外 48億円 42億円 -3億円 -9億円 -21.7%
調整額 -億円 -億円 0億円 0億円 -%
連結(合計) 75億円 57億円 -12億円 -19億円 -33.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な末期型の状態となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -23億円 -1億円
投資CF -25億円 -19億円
財務CF 28億円 -28億円


企業の収益力を測るROEは当期純損失のため算出されませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「デジタル社会のインフラとして高精度位置情報基盤をグローバルに構築し、自動運転をはじめとする新しい未来を拓く」をパーパスに掲げています。自動車関連やスマートシティなど様々な用途に向けたデータの構築を通じ、社会課題の解決に資するイノベーションに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


社員が大切にすべきバリューとして「GIFT!」(Global Mindset、Innovate、Fast Move、Trust and Respect、!be youthful!)を掲げています。多様なバックグラウンドを持つ社員が互いを尊重し合う風土を重視し、柔軟な働き方を促進してエンゲージメントを高める環境作りを推進しています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な売上収益の成長、収益性の向上、キャッシュ・フローの創出を重視し、「売上高」「ライセンス型売上高」「調整後EBITDA」を重要な経営指標に位置付けています。早期の黒字化実現に向け、継続的な受注と限界利益率が高いライセンス型売上の比率向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存顧客との長期的な取引関係深化に加え、車載向け事業やAI用途、産業・インフラ分野に向けた法人ライセンス事業など、複数の収益機会を組み合わせたポートフォリオ構築を推進しています。また、フィジカルAIの進展を背景とした需要への対応や、M&A・アライアンスを活用した測量ネットワークの構築と事業拡大に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を競争優位の源泉と位置付け、経営戦略と一体となった人材戦略を推進しています。AI分野を支える専門人材の採用・育成を強化するほか、リファラル採用にも注力しています。また、オンデマンド動画配信サービスの導入によるスキル高度化や、語学学習補助による多様な人材の活躍促進、柔軟な働き方による定着率向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.3歳 2.9年 9,128,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動運転市場の立ち上がり遅れ


自動運転市場の本格的な立ち上がりは、設立当初の想定から遅れている状況にあります。技術・安全性の課題や部品供給不足により、自動車メーカーの車種開発や販売時期に遅れが生じるなど、市場の成長が想定通りに進まない場合、同社グループの事業や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 高精度3次元地図データ領域の競合激化


同社グループは広範な道路整備範囲と精緻な位置精度を背景に競争優位性を確保しています。しかし、代替技術や低コストな計測手法を確立した他社の参入、営業力・価格競争力に勝る競合との競争激化、さらにはAI用途等で顧客ニーズに適合したデータ提供ができない場合、市場シェアを喪失するリスクがあります。

(3) データ整備の先行投資に伴う継続的な赤字


同社グループの事業は高精度3次元地図データの整備を先行して行うため、多額の投資が必要となり赤字が継続しています。今後、多様な用途における顧客利用の拡大や市場の立ち上がりが想定通りに進まない場合、整備コストの回収や収益構造の転換が遅れ、業績や財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。