※本記事は、株式会社北里コーポレーション の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
北里コーポレーションは、人工授精や体外受精、細胞凍結保存、再生医療における生殖工学技術に特化し、不妊治療をサポートする医療機器や試薬等の開発・製造・販売を手がけています。同社グループは、不妊治療の全工程で製品を提供し、世界約110か国・地域に製品を供給しています。
単体従業員数は75名、連結従業員数は83名です。同社グループは医療機器事業の単一セグメントで事業を展開しています。
主な国内グループ会社は、北里商事(資産管理会社)、北里バイオサイエンス、北里検査センター(出生前遺伝学的検査の受託)、北里クライオバンク(生体細胞の受託管理・(未稼働))、北里ヘルスケアなどです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
北里コーポレーションは、不妊治療分野の医療機器開発・製造・販売を通じて社会に貢献しており、人材を重要な経営資本と位置付けています。専門性と技術力の向上、そして多様な人材が活躍できる職場環境の整備に力を入れていることが特徴です。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、従業員の定着を重視し、長期的なキャリア形成を支援する環境を提供している傾向が見られます。平均勤続年数と平均年齢からは、比較的安定した人材構成であることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 4,760,000円 |
| 平均勤続年数 | 4.8年 |
| 平均年齢 | 40.3歳 |
| 単体従業員数 | 75人 |
| 連結従業員数 | 83人 |
| 単体のグループ内比率 | 90.4% |
退職給付制度に関する記載はありません。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、生殖医療分野における専門性と技術力を競争力の源泉と捉え、人材の確保・育成を重要な経営課題としています。製品開発、製造、品質保証、薬事、営業といった各領域で専門性を高める人材育成に注力しています。
従業員の自己成長と業績達成、動機付けを目的とした人事評価制度を運用しており、給与や賞与は評価結果と外部労働市場の賃金水準を考慮して決定されます。給与は職責と役割に基づき、成果や業績への貢献度を評価軸として反映される仕組みです。
未来の生殖医療業界を牽引する人材育成のため、海外の大学や医療機関への留学奨学金制度を設けています。また、海外市場での事業展開を見据え、外国籍従業員の採用を通じて人材基盤の強化にも取り組んでいます。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体のデータを示します。連結子会社は法定開示の公表義務対象外のため、記載を省略しています。また、男女賃金差異は、女性活躍推進法に基づく公表義務の対象項目として選択しておらず、公表されていません。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 58.8% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
北里コーポレーションは、人工授精や体外受精、細胞凍結保存、再生医療といった生殖工学技術に特化し、不妊治療をサポートする医療機器や試薬の開発・製造・販売を手がけています。世界約110か国・地域に自社製品を供給しており、グローバルに事業を展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、不妊治療の中でも特に高度な専門性を要する体外受精や顕微授精で利用される研究用試薬や医療機器を主力製品としています。具体的には、「Cryotop」、「ETカテーテル」、「卵子・受精卵凍結用試薬」などが多くの患者に利用されています。これらの製品は、卵子や精子の採取、洗浄、培養、受精、凍結保存、融解に至る不妊治療の全ての工程で活用されており、幅広いニーズに対応しています。
同社グループの強みは、全ての製品を国内工場で製造する「Made in Japan」の技術力に裏打ちされた品質水準と、超急速ガラス化法といった凍結分野における先駆的な開発力です。また、世界約80社の代理店ネットワークを通じて、世界中の医療機関に製品を供給するグローバルな販売力を有しています。特に欧米諸国を中心に販売が伸長しており、海外市場が収益の大きな柱となっています。
収益は、主に医療機関や代理店への製品販売から得ています。海外売上高比率は高く、当連結会計年度末では66.6%を占めており、海外市場の動向が同社グループの業績に大きく影響する構造です。特定の海外代理店であるBiomedical Supply, S.L.やBiomedical Supply US, Inc.への販売実績も大きな割合を占めています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの売上高は過去5期にわたり増加傾向にあり、当連結会計年度も前期から伸長しました。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益も、売上高の増加に伴い堅調に推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | 93.5億円 | 101億円 | 103億円 | 109億円 |
| 経常利益 | - | 51.2億円 | 60.0億円 | 57.7億円 | 59.0億円 |
| 経常利益率 | - | 54.7% | 59.5% | 56.0% | 53.9% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | - | 33.7億円 | 39.7億円 | 37.9億円 | 39.0億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | - | 84.26 | 99.32 | 94.72 | 97.38 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高は前期から減少しており、従業員1人あたり営業利益も同様に減少しています。これは、売上高の増加を上回る従業員数の増加や、海外展開強化に伴う学会出展費用、各国認証取得費用、上場維持体制構築費用などの増加が影響していると考えられます。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 139.2百万円 | 131.9百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 78.1百万円 | 70.6百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループは、安定した事業活動を通じて資金を生み出し、財務基盤を強化しています。本業で得た資金を適切に活用し、将来に向けた投資も行っている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、高い自己資本比率と潤沢な手元資金によって特徴づけられています。自己資本比率はプライム市場平均を大きく上回っており、強固な財務体質を示しています。ROEもプライム市場平均を上回る水準で推移しており、収益性も高い状況です。これらの財務指標は、事業の安定性と将来の成長に向けた基盤が整っていることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 182億円 | 205億円 |
| 自己資本比率 | 92.4% | 93.2% |
| ROE(自己資本利益率) | 22.1% | 20.1% |
| 現金及び預金 | 115億円 | 134億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローは、本業で安定的に資金を創出している状況を示しています。営業活動によるキャッシュフローは38.7億円の収入となり、税金等調整前当期純利益が主な要因となっています。棚卸資産や売上債権の増加、法人税等の支払いがあったものの、本業で着実に資金を稼ぎ出していることがわかります。
投資活動によるキャッシュフローは△2.4億円の支出となり、主に有形固定資産の取得によるものです。前期と比較すると投資支出は減少していますが、事業に必要な投資は継続して行われています。財務活動によるキャッシュフローは△17.4億円の支出となり、配当金の支払いが主な要因です。
営業活動で得た資金が投資活動による支出を上回るフリーキャッシュフローは36.3億円のプラスとなっており、本業で稼いだ資金で投資を賄い、なお余剰資金がある優良な状態です。これは、同社グループが安定した事業運営と健全な財務体質を維持しており、将来の成長に向けた基盤が整っていることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 35.3億円 | 38.7億円 |
| 投資CF | △8.8億円 | △2.4億円 |
| 財務CF | △16.6億円 | △17.4億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 26.5億円 | 36.3億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、特定の取引先への依存に関するリスクを認識しています。主要販売先上位3社が売上高の一定割合を占めており、これらの取引先との関係に変化が生じた場合、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
また、海外販売先のカントリーリスクも挙げられています。海外事業の拡大を図る中で、政情不安や貿易制裁、文化・法制度の相違などにより、円滑な業務運営が妨げられる可能性が示されています。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、将来の持続的な発展のために優秀な人材の確保が重要な課題であると認識しています。雇用情勢の変化による採用難や、想定外の人材流出が進んだ場合、生産能力の低下や販売機会の損失、技術継承の困難が生じる可能性が示されています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
北里コーポレーションは、「Happiness, for the Next Generations ― 笑顔を新しい世代に」を企業理念に掲げています。不妊治療という医療を通じて、多くの喜びを次の新しい世代に継続させることを目指している会社です。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
北里コーポレーションは、「Happiness, for the Next Generations ― 笑顔を新しい世代に」を企業理念としています。不妊治療という医療を通じて、多くの喜びが次の新しい世代に継続する仕事を目指しています。不妊治療に苦しむ患者様が笑顔に変わる日を夢見て、より良い製品を提供する使命感を大切にしています。生殖医療分野における高品質な製品とサービスの提供を通じて、患者様、医療従事者、そして社会への貢献を目指している会社です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
北里コーポレーションは、お客様と共に未来を創る会社として、常に挑戦を続け、結果を残し、期待される企業であることを約束しています。誠実かつ迅速で正確な対応に努め、技術と品質向上への意識を常に持ち、母親には安心を、未来の子供たちには安全を贈ることを大切にしています。感謝の気持ちを忘れず仕事に取り組み、社会と共存し利益を還元する企業市民を目指しています。また、医療に国境はないとの考えから、日本企業としての誇りと謙虚さを持ち、グローバルな活動を推進する姿勢です。人財を重要な経営資本と位置づけ、多様な人財が活躍できる職場環境の整備にも取り組んでいます。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
北里コーポレーションは、持続的な成長と企業価値向上のため、いくつかの経営課題に取り組んでいます。人財の確保・育成及び組織基盤の強化を重点課題の一つとしており、専門性やグローバル対応力の向上を目的とした教育・研修の充実、評価・処遇制度の整備、多様な人財が活躍できる環境の構築を進めています。また、ガバナンス及びリスク管理体制の強化にも注力し、内部統制の整備・運用高度化とコンプライアンスの徹底を図っています。環境配慮と持続可能な事業運営への対応も重要な課題と認識し、省資源化や効率的なエネルギー利用の推進に取り組んでいます。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
北里コーポレーションは、監査役会設置会社として、経営の透明性と機動的な意思決定を重視したガバナンス体制を構築しています。取締役会は社外取締役を含めて構成され、監査役会が経営の監視・監督機能を果たしています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
北里コーポレーションの株主構成を見ると、筆頭株主は北里商事であり、同社代表取締役社長が間接的に100%保有する資産管理会社となっています。このことから、創業家が関連会社を通じて同社グループの経営に深く関与している資本構成であることがうかがえます。その他、信託銀行が上位株主として名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 北里商事 | 55.75% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.87% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.11% |
なお、前事業年度末に主要株主であった井上 太綬氏は、当事業年度末では主要株主ではなくなっています。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は12名(男性8名・女性4名)で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は井上 太綬氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上 太綬 | 代表取締役社長 | 1996年4月北里サプライ入社。2007年4月北里メディカル(現同社)代表取締役。2016年9月北里商事代表取締役。2023年6月Kitazato America, Inc.代表取締役より現職。 |
| 和泉 杏子 | 常務取締役品質保証部長 | 2011年5月北里バイオファルマ入社。2021年3月同社入社 品質保証部長。2023年11月同社常務取締役品質保証担当 品質保証部長より現職。 |
| 小川 真希 | 取締役マーケティング部長兼営業部長 | 2010年2月同社入社。2021年4月同社マーケティング部長。2023年6月Kitazato America, Inc.取締役。2024年9月同社取締役マーケティング部長兼営業部長より現職。 |
| 柴田 和美 | 取締役製造部長 | 2013年8月同社入社。2021年3月同社製造部長。2022年6月同社取締役製造部長。2023年11月同社取締役製造担当 製造部長より現職。 |
| 鈴木 祐尚 | 取締役経営企画部長 | 1997年4月エッチ・ケー・エス入社。2024年1月同社入社。2024年2月同社取締役。2024年10月同社取締役管理部門担当 経営企画部長より現職。 |
社外取締役は、新谷 誠氏(元株式会社ニコン シニアフェロー・特別委員会委員長)、イグナシオ・バメホ氏(Biomedical Supply, S.L. Chief Executive Officer)、山口 重則氏(地方独立行政法人静岡県立病院機構副理事長・指名・報酬委員会委員)、佐藤 明夫氏(佐藤総合法律事務所弁護士)です。
同社は監査役会設置会社を採用しており、社外取締役が客観的・中立的な視点から経営判断や透明性、健全性の確保に貢献しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
北里コーポレーションの役員報酬は、固定報酬としての基本報酬と業績連動型の賞与で構成されています。社外取締役には基本報酬のみが支給される仕組みです。報酬の決定にあたっては、任意の指名・報酬委員会が取締役会の諮問機関として機能し、報酬決定方針の策定や報酬内容の審議・検討を行っています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 5名 | 1.5億円 | 30.0百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 7百万円 | 7.0百万円 |
| 社外役員 | 8名 | 56百万円 | 7.0百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。