アイリッジ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイリッジ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所グロース市場に上場しており、スマートフォンアプリ開発やOMOソリューションを提供するOMO事業と、デジタル地域通貨を展開するフィンテック事業を運営しています。直近の決算では売上高は増収となりましたが、のれん減損等の影響で営業損失および当期純損失となり、赤字に転落しています。


※本記事は、株式会社アイリッジ の有価証券報告書(第16期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイリッジってどんな会社?


スマートフォンアプリを活用したOMO(Online Merges with Offline)ソリューションとデジタル地域通貨プラットフォームを提供するIT企業です。

(1) 会社概要


同社は2008年に設立され、2009年より位置連動型情報配信サービス「popinfo」の提供を開始しました。2015年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たし、2018年には電子地域通貨事業を株式会社フィノバレーへ承継するとともに、マーケティング支援を行う企業を子会社化しました。2023年にはアプリビジネスプラットフォーム「APPBOX」の提供を開始しています。

2024年3月31日現在、連結従業員数は256名、単体では184名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長の小田健太郎氏(32.10%)で、第2位は資産管理業務を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)(5.10%)、第3位は個人投資家の五味大輔氏(3.47%)となっており、経営トップが主要株主となっています。

氏名 持株比率
小田健太郎 32.10%
日本カストディ銀行(信託口) 5.10%
五味大輔 3.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は小田健太郎氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
小田健太郎 代表取締役社長 NTTデータ、ボストンコンサルティンググループを経て、2008年に同社を設立し代表取締役社長に就任。グループ会社の株式会社Qoilや株式会社フィノバレーの代表取締役も兼務する。2008年より現職。
渡辺智也 取締役営業本部長 楽天を経て2013年に同社入社。O2O事業部長、テクノロジーパートナー本部長などを歴任し、2021年より現職。
森田亮平 取締役CFO 兼 経営管理本部長 野村證券、DBJ投資アドバイザリー、シタテルを経て2020年に同社入社。経営企画部長等を務め、2020年6月より現職。
山下紘史 取締役ビジネスプロデュース本部長 ダイエー、D2Cなどを経て、2022年に同社入社。株式会社Qoilの取締役を経て、2024年より現職。


社外取締役は、藤原彰二(ディップ株式会社執行役員)、染原友博(オフィス染原株式会社代表取締役)、有賀貞一(AITコンサルティング株式会社代表取締役)、隈元慶幸(堀総合法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「OMO事業」および「フィンテック事業」を展開しています。

(1) OMO事業


スマートフォンアプリの企画・開発・運用支援や、アプリマーケティングツール「FANSHIP」、アプリビジネスプラットフォーム「APPBOX」などを提供しています。企業の顧客とのコミュニケーション活性化を支援し、実店舗への送客などのマーケティング施策を実行します。また、イベントや店舗集客促進等のオフラインマーケティング支援も行っています。

収益は、アプリ開発の受託費用、プラットフォームのライセンス料、運用保守料などが主な柱です。また、オフライン施策における企画・制作費も収益源となります。運営は、オンライン領域をアイリッジと株式会社プラグインが、オフライン領域を株式会社Qoilが主に担当しています。

(2) フィンテック事業


地域で利用可能な通貨や商品券を電子化するデジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」を提供しています。「お金の地産地消」をコンセプトに、岐阜県の「さるぼぼコイン」や千葉県の「アクアコイン」など、自治体や金融機関と連携して導入を進めています。

収益は、プラットフォームのライセンス提供に伴う初期導入費用や、月額のシステム利用料、運用保守料などから構成されています。運営は、同社の連結子会社である株式会社フィノバレーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は50億円台で推移し、直近では過去最高を記録しましたが、利益面では変動が見られます。特に直近の決算では、売上高は増加したものの、投資有価証券評価損やのれんの減損損失を計上した影響により、各利益段階で赤字に転落しました。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上高 53億円 44億円 54億円 54億円 57億円
経常利益 1億円 1億円 3億円 4億円 -0.9億円
利益率(%) 2.1% 2.8% 6.3% 7.2% -1.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.8億円 1.9億円 2.1億円 1.4億円 -14.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益および利益率は低下しました。販売費及び一般管理費も増加しており、これらの要因により営業損益は赤字となりました。

項目 2023年3月期 2024年3月期
売上高 54億円 57億円
売上総利益 20億円 17億円
売上総利益率(%) 37.0% 30.6%
営業利益 4億円 -0.9億円
営業利益率(%) 7.0% -1.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7.5億円(構成比41%)、賞与引当金繰入が0.8億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


OMO事業は、デジタルマーケティング需要が堅調で増収となりましたが、開発案件の原価増と新プロダクト「APPBOX」への先行投資により損失を計上しました。フィンテック事業は、複数の大型案件があった前期と比較して減収減益となりました。

区分 売上(2023年3月期) 売上(2024年3月期) 利益(2023年3月期) 利益(2024年3月期) 利益率
OMO事業 47億円 51億円 1億円 -3億円 -5.2%
フィンテック事業 7億円 6億円 2億円 2億円 25.8%
調整額 -0.1億円 -0.0億円 0.1億円 0.2億円 -
連結(合計) 54億円 57億円 4億円 -0.9億円 -1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、借入による資金調達も行いながら投資活動を継続している「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2023年3月期 2024年3月期
営業CF 4億円 13億円
投資CF -7億円 -5億円
財務CF 7億円 2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できず、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Tech Tomorrow ~テクノロジーを活用して、わたしたちがつくった新しいサービスで、昨日よりも便利な生活を創る~」をミッションとして掲げています。このミッションの下、テクノロジーを活用した新サービスの提供を通じて社会課題の解決と企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社はミッション実現のため、テクノロジーを活用した新しいサービスの提供に積極的に取り組む姿勢を重視しています。OMO事業やフィンテック事業などの事業活動を通じて社会課題をビジネス機会と捉え、持続可能な成長と新たな事業創出につなげることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画を策定しています。「当社グループの強みである開発力とビジネス創出力を活かした顧客企業のTech & Innovation Partnerへの成長」をテーマとしています。

* 売上高:82億円(2027年3月期目標)
* 調整後営業利益:5億円以上(同上、オーガニック成長のみ)

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画達成に向け、アプリ関連領域のOMO事業を中核として「APPBOX」の機能拡張やプロデュース支援を強化します。また、既存顧客基盤を活かした生成AI活用等のDXサービス創出、ビジネスプロデュース領域への進出、フィンテック等の新規事業の成長加速に取り組みます。さらに、顧客企業とのパートナーシップ強化による収益機会の拡大を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは持続的成長のため、多岐にわたる経歴を持つ優秀な人材の採用と育成を重視しています。ミッションや事業内容に共感し、高い意欲を持つ人材を積極的に採用するとともに、働きやすい職場環境やモチベーション向上につながる人事制度の構築に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年3月期 39.8歳 3.7年 6,535,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.7%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新への対応


インターネット関連市場は技術やサービスの変化が激しいため、同社は新技術の開発と人材確保に取り組んでいます。しかし、環境変化への対応が遅れた場合や開発に多額の支出が必要となった場合、競争力の低下や業績への悪影響が生じる可能性があります。

(2) 市場競争と需要変動


デジタルマーケティング市場の拡大が見込まれる中、競争激化や新たなビジネスモデルの登場により市場競争力が低下するリスクがあります。また、景気後退等により顧客企業のマーケティング予算が削減された場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。

(3) システム開発の採算性管理


開発案件においては、プロジェクト管理や仕様変更により想定以上のコストが発生し、採算が悪化するリスクがあります。特に個別性の高い契約において顧客要望の追加等で見積総原価の見直しが必要となった場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。