ヤシマキザイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤシマキザイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤシマキザイは東証スタンダード市場に上場し、鉄道用車両部品等を扱う鉄道事業と、産業向け電子部品を扱う一般事業を展開する専門商社です。直近の業績では、鉄道事業者の設備投資増や案件の前倒し効果が寄与し、前期の最終赤字から黒字転換を果たして大幅な増収増益を達成し、安定した成長軌道に回帰しています。


※本記事は、ヤシマキザイの有価証券報告書(第82期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤシマキザイってどんな会社?


鉄道・交通分野に特化した専門商社として、各種車両部品や電子部品の提供を通じ社会インフラを支えています。

(1) 会社概要


1948年に八洲器材として設立され、鉄道や船舶等の機械器具の販売を開始しました。1965年に日立製作所の鉄道車両用品において旧国鉄向け販売代理店となり、事業基盤を確立しました。2013年にヤシマキザイへ商号変更し、2019年には東証二部へ上場を果たしています。また、海外展開も積極的に進めています。

従業員数は連結で268名、単体で246名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位は香港上海銀行東京支店、第3位には投資育成事業を行う東京中小企業投資育成が名を連ねています。国内外の拠点網を活かし、持続的な成長に向けた体制を構築しています。

氏名 持株比率
管理信託(A031)受託者 SMBC信託銀行 31.32%
THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD - SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENTS A/C 8221-623793(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 27.29%
東京中小企業投資育成 6.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長執行役員は関正一郎氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
関正一郎 代表取締役社長執行役員 1985年イトーヨーカ堂入社。1993年同社入社。総務部長、中国本部長などを経て、2026年より現職。
佐藤厚 取締役会長 1960年丸紅飯田(現丸紅)入社。1993年同社入社。代表取締役社長等を経て、2026年より現職。
阿部昌宏 代表取締役副社長執行役員管理本部長 1985年太陽神戸銀行(現三井住友銀行)入行。2016年同社入社。財務経理部長等を経て、2026年より現職。
髙田一昭 取締役副会長執行役員 1977年同社入社。海外営業本部長、代表取締役社長等を経て、2026年より現職。
下川雄輔 取締役常務執行役員 1992年同社入社。交通営業本部長、東京支店長等を経て、2024年より現職。
和田信一郎 取締役常務執行役員大阪支店長 1980年日立製作所入社。2018年同社入社。営業統括本部長等を経て、2026年より現職。
鈴木祐子 取締役執行役員営業統括本部長 1995年同社入社。海外営業本部長等を経て、2026年より現職。
堀越秀幸 取締役(常勤監査等委員) 1982年同社入社。システム室長、内部監査室長等を経て、2021年より現職。


社外取締役は、木村恵子(安西法律事務所入所)、澤田裕美子(澤田税理士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鉄道事業」および「一般事業」の報告セグメントを展開しています。

(1) 鉄道事業


鉄道車両製品を主な商材とし、鉄道事業者や鉄道車両メーカー、電気品メーカー等を顧客としています。具体的には、鉄道車両用電気品、車体用品、車載品、コネクタ・電子部品等の販売や各種システムのメンテナンス契約等を提供しています。

主な収益源は、各種機器や部材の販売代金およびメンテナンス契約による対価です。日立製作所など主要な仕入先と連携して顧客ニーズに応える商流を構築しており、本事業の運営は主に同社および連結子会社のヤシマ物流、亜西瑪(上海)貿易有限公司が担っています。

(2) 一般事業


鉄道事業で培ったノウハウを活かし、産業機械メーカーや自動車関連メーカー、業務用機器通販事業者等に対してコネクタや電子部品を販売しています。また、海外発電所用の補修用品やパワーデバイス、環境機器等の販売も行っています。

収益は、産業用コネクタや各種電子部品、設備機器等の販売代金から得ています。道路交通インフラ業界など新たなビジネスフィールドの開拓にも注力しており、本事業の運営は同社と連結子会社のヤシマ物流、亜西瑪(上海)貿易有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績をみると、売上高は一時的な増減があるものの直近で大幅な増加を記録し、339億円に達しています。利益面では前期に赤字を計上しましたが、当期は鉄道事業者の設備投資増加などが寄与し、大幅な黒字回復を果たしています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 282.9億円 255.2億円 277.3億円 290.5億円 338.6億円
経常利益 5.5億円 2.3億円 4.9億円 -5.1億円 7.6億円
利益率(%) 1.9% 0.9% 1.8% -1.8% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.1億円 1.6億円 3.5億円 -6.9億円 5.0億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も前期間から大きく増加しています。また、積極的な営業活動による費用増を吸収し、営業利益も赤字から黒字へと劇的な改善を遂げており、収益性の回復が明確に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 290.5億円 338.6億円
売上総利益 36.3億円 46.6億円
売上総利益率(%) 12.5% 13.8%
営業利益 -0.4億円 7.3億円
営業利益率(%) -0.2% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料が12.4億円(構成比31.6%)、諸手数料が4.4億円(同11.3%)を占めています。売上原価は292.1億円であり、売上高に対する構成比は86.3%となっています。

(3) セグメント収益


主力の鉄道事業は、国内鉄道事業者の業績好調による設備投資増や案件の前倒し効果により、大幅な増収を達成しました。一方、一般事業は電子部品等の供給不安定や需要低迷の影響を受け、低調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
鉄道事業 266.1億円 313.6億円
一般事業 24.4億円 25.0億円
連結(合計) 290.5億円 338.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で投資と借入金返済を賄う「健全型」の傾向を示しています。本業で安定した現金を生み出しており、財務状況は良好といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4.3億円 7.6億円
投資CF -1.1億円 -16.2億円
財務CF -0.8億円 -0.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も37.1%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「鉄道・交通ビジネスに強い専門商社として、限りの無い成長を目指します」「人材育成を通して、会社の成長を社員と分かち合います」「法令を遵守し、良き企業市民として社会に貢献します」と掲げており、社会インフラの発展を支える使命感を持っています。

(2) 企業文化


顧客の本当のニーズをくみ取り、最適なソリューションを提案するため、「現場・現物・現実」をキーワードとする「3現主義」を掲げています。現場の声を重視し、流通機能の向上と市場調査に基づく戦略を徹底することで、取引先との強固な信頼関係を築く文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2024年度からの3ヵ年中期経営計画の最終年度(2027年3月期)において、自己資本利益率(ROE)5%超の確保を目標として掲げています。

* 売上高:320億円
* 営業利益:6億円
* 経常利益:7.1億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:4.6億円

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の基盤強化に加え、次世代を担う新事業の開拓や一般セグメントの収益性向上を進めます。また、ODAによる鉄道インフラ整備案件を通じたグローバル市場の開拓や、人的資本への投資を通じた持続的成長の実現に注力し、グループ全体の企業価値向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


組織の持続的成長を支える原動力は「人」であるとし、専門性の向上と3現主義に基づく営業力強化を目指しています。また、多様な人材が活躍できる柔軟な制度の導入や、エンゲージメント強化を主眼とした働きやすい職場環境の整備を通じて、組織全体の生産性を高める方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.7歳 15.2年 6,366,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.4%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全) 72.0%
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職(管理職候補者)割合(29.2%)、女性労働者割合(28.9%)、育児休業取得率(女性)(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定仕入先への依存


日立製作所への仕入依存度が51.6%と高く、同社との取引方針変更や供給停滞などが生じた場合、安定的な商材の調達が困難となり、事業に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定業界への依存


鉄道分野への売上依存度が高く、特にJR3社向けの売上が全体の約46%を占めるため、各社の設備投資計画の動向や業界全体の事業環境の変化が業績に影響する可能性があります。

(3) 海外事業の展開リスク


中国や東南アジア、インド等でのグローバル展開において、政情不安や経済的変動、予期せぬ法的規制等のカントリーリスクが存在し、事象が発生した場合に業績へ影響を及ぼす可能性があります。

(4) 長期請負契約に伴う見積変動


工事案件や海外ODA案件などの長期契約において、コスト変動や進捗の遅れなどにより当初の見積りが見直されるリスクがあり、採算性の悪化につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。