※本記事は、株式会社ヤシマキザイ の有価証券報告書(第78期、自 2021年4月1日 至 2022年3月31日、2022年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヤシマキザイってどんな会社?
鉄道関連製品を主力とする専門商社です。JR各社や鉄道車両メーカー向けに電気品や車体用品を安定供給しています。
■(1) 会社概要
1948年に八洲器材として設立され、1965年に日立製作所の鉄道車両用品販売代理店となりました。1995年に物流子会社を設立し、2004年には中国現地法人を設立するなど事業を拡大しました。2013年に現社名へ変更し、2019年に東証二部へ上場、2022年4月にスタンダード市場へ移行しました。
連結従業員数は265名、単体では241名です。筆頭株主は会長の佐藤厚氏等の資産管理を行う信託銀行で、第2位は香港上海銀行の顧客口座、第3位は東京中小企業投資育成です。創業家および役員関係者が大株主として名を連ねており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 管理委託(A031)受託者 株式会社SMBC信託銀行 | 28.00% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD - SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENTS A/C 8221-623793 | 26.10% |
| 東京中小企業投資育成 | 6.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名(うち社外2名)の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は髙田一昭氏です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙田 一昭 | 代表取締役社長 | 1977年同社入社。海外営業本部長、取締役副社長等を経て2014年4月より現職。 |
| 佐藤 厚 | 代表取締役会長 | 1960年丸紅飯田(現丸紅)入社。1993年同社入社。社長等を経て2014年4月より現職。 |
| 中村 修 | 取締役副社長東京支店長 | 1980年同社入社。大阪支店長、常務取締役等を経て2022年4月より現職。 |
| 関 正一郎 | 取締役副社長海外営業本部長 | 1985年イトーヨーカ堂入社。1993年同社入社。常務取締役等を経て2022年4月より現職。 |
| 和田 信一郎 | 取締役大阪支店長 | 1980年日立製作所入社。2018年同社入社。執行役員等を経て2022年4月より現職。 |
| 阿部 昌宏 | 取締役管理本部長 | 1985年太陽神戸銀行(現三井住友銀行)入行。2016年同社入社。執行役員等を経て2022年4月より現職。 |
| 下川 雄輔 | 取締役営業統括本部長東京支店上席副支店長 | 1992年同社入社。執行役員交通営業本部長等を経て2022年6月より現職。 |
| 堀越 秀幸 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年同社入社。システム室長、内部監査室長等を経て2021年6月より現職。 |
社外取締役は、木村恵子(弁護士)、富永由加里(元日立ソリューションズ常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鉄道事業」「一般事業」を展開しています。
■鉄道事業
鉄道車両用電気品、車体用品、車載品、コネクタ・電子部品などを主な商材として取り扱っています。JR各社をはじめとする鉄道事業者、鉄道車両メーカー、鉄道車両用電気品メーカーなどが主な顧客です。また、発変電設備や鉄道用システム、各種設備品のメンテナンスや部品販売も行っています。
収益は、これらの商品を顧客へ販売することで得ています。また、顧客のニーズに応じた新商材の開発や、仕入先からの要望に基づく拡販も行います。運営は主にヤシマキザイが行い、中国では子会社の亜西瑪(上海)貿易有限公司が事業を展開しています。在庫保管等はヤシマ物流が行っています。
■一般事業
産業機械メーカー、自動車関連メーカー、業務用機器通販事業者などを対象に、主にコネクタや電子部品を販売しています。鉄道事業以外の分野を対象としており、自動車用、建機用、船舶用、工作機械用などのコネクタや、スイッチ、光モジュール製品などを取り扱っています。
収益は、これらの商品を顧客へ販売することで得ています。近年は道路交通インフラ業界への進出も図っています。運営は主にヤシマキザイが行い、中国では亜西瑪(上海)貿易有限公司も販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2019年3月期をピークに減少傾向にあります。特に2021年3月期以降は減収が続いており、2022年3月期は収益認識会計基準の適用影響もありさらに減少しました。利益面では、経常利益は変動しつつも黒字を維持していますが、利益率は1%台から2%台前半で推移しており、薄利多売の商社ビジネスモデルを示しています。
| 項目 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 335億円 | 370億円 | 361億円 | 318億円 | 283億円 |
| 経常利益 | 5.3億円 | 7.6億円 | 4.4億円 | 6.5億円 | 5.5億円 |
| 利益率(%) | 1.6% | 2.0% | 1.2% | 2.1% | 1.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.6億円 | 5.4億円 | 4.2億円 | 3.7億円 | 5.1億円 |
■(2) 損益計算書
2021年3月期から2022年3月期にかけて、売上高は減少しました。これは主に鉄道事業者の設備投資抑制や会計基準の変更によるものです。売上総利益率は約13%前後で推移しています。販管費が増加した影響もあり、営業利益は減少しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 318億円 | 283億円 |
| 売上総利益 | 38億円 | 38億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.8% | 13.3% |
| 営業利益 | 5.3億円 | 3.7億円 |
| 営業利益率(%) | 1.7% | 1.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が12億円(構成比36%)、賞与引当金繰入額が2.5億円(同7%)、販売費が2.3億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の鉄道事業は、顧客である鉄道事業者の設備投資抑制や会計基準適用の影響により減収減益となりました。一方、一般事業は一部業界での回復が見られましたが、セグメント損失が続いています。全社的に厳しい事業環境が反映された結果となりました。
| 区分 | 売上(2021年3月期) | 売上(2022年3月期) | 利益(2021年3月期) | 利益(2022年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉄道事業 | 291億円 | 253億円 | 7.4億円 | 4.9億円 | 1.9% |
| 一般事業 | 27億円 | 30億円 | -2.2億円 | -1.2億円 | -4.1% |
| 調整額 | - | - | - | - | - |
| 連結(合計) | 318億円 | 283億円 | 5.3億円 | 3.7億円 | 1.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ヤシマキザイのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、債務保証引当金や売上債権の減少、受注損失引当金や棚卸資産の減少がプラス要因となった一方、税金等調整前当期純損失や法人税等の支払い、長期未収入金の増加、保証債務の履行による支出がマイナス要因となり、前年同期比で増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資不動産の賃貸収入がプラスとなったものの、貸付けや投資有価証券、有形固定資産の取得による支出がマイナスとなり、前年同期比で支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いが主なマイナス要因となり、前年同期比で支出が増加しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.1億円 | -15.0億円 |
| 投資CF | -1.2億円 | -4.7億円 |
| 財務CF | -0.7億円 | -0.7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、鉄道・交通ビジネスに強い専門商社として限りの無い成長を目指すこと、人材育成を通じて会社の成長を社員と分かち合うこと、そして法令を遵守し良き企業市民として社会に貢献することを経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「現場・現物・現実」をキーワードとする「3現主義」を掲げています。「現場」で顧客の声を拾い、「現物」としての流通機能を強化し、「現実」に基づいた市場分析でニーズを掘り起こすことを重視しており、これらを実践することで永続的な発展を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2021年度から2023年度の3ヶ年中期経営計画を策定しています。最終年度である2024年3月期の目標数値は以下の通りです。
* 売上高:366億円
* 営業利益:5.9億円
* 経常利益:7.1億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:4.6億円
* ROE:5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、既存事業基盤の強化による持続的成長に加え、鉄道分野での事業領域拡大や一般セグメントの収益性向上、グローバル市場の開拓を基本方針としています。
* 鉄道分野:JR各社以外の公営・民間鉄道事業者への営業強化、検修設備・保線等への深耕。
* 一般セグメント:人的リソースの適正配置、新規商材の開拓。
* グローバル:ODAによる鉄道インフラ整備案件への注力、海外パートナーとの連携強化。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、グローバル化と持続的成長のために優秀な人材の確保が重要であると考えています。採用および教育研修の充実により専門知識を持つ人材を育成するとともに、人的資本への投資を行い、従業員エンゲージメントの強化や働きやすい環境の整備を推進する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | 42.4歳 | 14.9年 | 5,955,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、公表義務の対象ではなく、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定仕入先への依存
同社の主要な仕入先は日立製作所であり、連結仕入高の約4割を占めています。同社とは特約店契約を締結し安定的な関係を維持していますが、仕入先の政策変更や事業再編、製品供給の停滞などが発生した場合、同社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定業界への依存
同社グループの売上は鉄道事業の割合が高く、特にJR3社(東日本、東海、西日本)への売上が連結売上高の3割以上を占めています。そのため、これら主要顧客の設備投資計画の動向や鉄道業界全体の事業環境の変化が、同社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。
■(3) 海外事業展開に伴うリスク
中国や東南アジア、インド等に拠点を展開しているため、各国の経済情勢、政治的・社会的リスク(戦争、テロ、感染症等)の影響を受ける可能性があります。また、予期せぬカントリーリスクの顕在化や、先行投資に対する収益化の遅れなどが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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