日本動物高度医療センター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本動物高度医療センター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所グロース市場に上場しており、かかりつけ動物病院からの紹介による二次診療(高度医療)や画像診断サービス等を展開しています。直近の業績は、売上高43億円(前期比10.3%増)、経常利益4.9億円(同8.3%減)と、事業拡大に伴い増収となったものの、コスト増により減益となりました。


※本記事は、株式会社日本動物高度医療センター の有価証券報告書(第19期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本動物高度医療センターってどんな会社?


高度な医療機器と専門知識を持つ獣医師による「二次診療」に特化した動物病院グループです。全国の連携病院と協力し、動物医療の質向上に取り組んでいます。

(1) 会社概要


同社は2005年に設立され、2007年に神奈川県川崎市で高度医療を行う二次診療施設「川崎本院」を開業しました。2014年には画像診断を行うキャミックを子会社化し、2015年に東証マザーズへ上場しました。その後、東京、名古屋に病院を開設し、2022年には酸素ケージ事業を行うテルコムを子会社化しました。直近では2023年6月に大阪病院を開業し、西日本エリアへの展開を進めています。

同社グループの従業員数は連結で256名、単体で201名です。筆頭株主は外資系証券のMSIP CLIENT SECURITIESで、第2位は投資ファンドが運営する組合、第3位は横浜市の建設会社である風越建設です。

氏名 持株比率
MSIP CLIENT SECURITIES 14.68%
KCPエクイティアシスト1号投資事業有限責任組合 11.88%
風越建設 4.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は平尾秀博氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
平尾 秀博 代表取締役社長 動物病院勤務、東京農工大学技術職員を経て同社入社。循環器科・呼吸器科等の科長や診療本部長を歴任し、2014年より現職。
松永 悟 取締役 東京大学農学部附属家畜病院助手などを経て同社入社。脳神経科等の科長、川崎本院院長を歴任。2015年よりキャミック代表取締役社長も務める。
石川 隆行 取締役 東海銀行(現三菱UFJ銀行)、安田企業投資などを経て同社入社。管理部長、管理本部長を歴任し、2014年より現職。
長谷川 輝夫 取締役(監査等委員) 協和銀行(現りそな銀行)入行後、りそな総合研究所東京本社営業部長などを歴任。同社監査役、取締役管理本部長を経て2018年より現職。


社外取締役は、坪川郁子(公認会計士)、吉島彰宏(Y's Associates代表)、小林利明(高樹町法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「動物医療関連事業」および「その他」事業を展開しています。

**(1) 二次診療サービス**
一次診療施設(かかりつけ動物病院)からの紹介を受け、専門知識を持つ獣医師が高度な医療機器を使用して診察、検査、手術等を行います。川崎、東京、名古屋、大阪の各病院で展開しています。
収益は、サービスの提供を行った際に飼い主から診療費を受け取っています。運営は主に日本動物高度医療センターが行っています。

**(2) 画像診断サービス**
一次診療施設からの紹介を受け、MRIやCTを用いて画像の撮影・読影・診断等を行います。首都圏3ヶ所の施設で展開し、一次診療施設の診療をサポートしています。
収益は、飼い主から診断費を受け取っています。運営は主に子会社のキャミックが行っています。

**(3) 酸素ケージのレンタル及び販売**
在宅ケアが必要な動物の飼い主に対して、酸素濃縮器とケージのセットをレンタルするほか、動物病院向けに販売を行っています。
収益は、飼い主からのレンタル料や動物病院からの販売代金等です。運営は主に子会社のテルコムが行っています。

**(4) その他**
上記以外の、一次診療施設や研究機関、一般消費者向けの物品販売やサービス提供を行っています。
収益は、顧客からの物品販売代金やサービス料等です。運営は日本動物高度医療センターが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は27億円から43億円へと右肩上がりで成長しています。特に直近2期はM&Aや新病院の開設効果もあり規模が拡大しています。一方、経常利益は4億円から5億円台で推移しており、第19期は大阪病院の開設費用や人件費増などが影響し、増収ながらも減益となりました。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上高 27億円 28億円 30億円 39億円 43億円
経常利益 4.5億円 4.1億円 4.4億円 5.3億円 4.9億円
利益率(%) 16.5% 14.4% 14.7% 13.8% 11.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.1億円 2.9億円 2.9億円 3.8億円 3.4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の39億円から当期は43億円へ増加しました。売上総利益率は37.3%から34.3%へ低下しています。営業利益は前期の5.8億円から5.0億円へ減少し、営業利益率も15.0%から11.6%へ低下しました。新拠点の開設に伴うコスト負担が利益率を押し下げている構造が見て取れます。

項目 2023年3月期 2024年3月期
売上高 39億円 43億円
売上総利益 14億円 15億円
売上総利益率(%) 37.3% 34.3%
営業利益 5.8億円 5.0億円
営業利益率(%) 15.0% 11.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.1億円(構成比22%)、支払手数料が1.0億円(同11%)を占めています。売上原価は売上高に対して66%程度で推移しています。

(3) セグメント収益


全てのサービス区分で増収となりました。主力の二次診療サービスは大阪病院の稼働等が寄与し売上を伸ばしました。画像診断サービスも検査件数が増加し、健康管理機器レンタル・販売サービスも堅調に推移しています。

区分 売上(2023年3月期) 売上(2024年3月期)
二次診療サービス 26億円 29億円
画像診断サービス 4.7億円 5.4億円
健康管理機器レンタル・販売サービス 7.7億円 8.1億円
その他 0.3億円 0.1億円
連結(合計) 39億円 43億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本動物高度医療センターは、営業活動で資金を創出し、投資活動で事業基盤を強化し、財務活動で資金調達と返済を行っています。営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動を通じて得られた利益により大幅に増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に設備投資に資金を使用しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や自己株式の取得により資金が減少しました。

項目 2023年3月期 2024年3月期
営業CF 8.1億円 9.0億円
投資CF -7.8億円 -9.9億円
財務CF 8.2億円 -3.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「動物医療の「できない」をなくし、動物とともに生きる人の希望になる。」をミッションとして掲げています。「動物にも人間と同じような高度な医療を受けさせたい」というニーズに応え、最先端の医療設備や技術を追求し、かかりつけ医と連携して動物の健康を支えることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「専門性」・「人間味」・「一体感」の3つをバリューとして重視しています。高度な専門知識を持つだけでなく、飼い主や動物に寄り添う人間味を持ち、チームとして一体感を持って医療に取り組む姿勢を大切にしています。また、獣医師と動物看護師の役割分担と連携を通じた「チーム獣医療」の実践を推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、売上高成長を伴った業績予想値の達成を経営目標としています。その達成状況を測るため、二次診療・画像診断サービスにおいては初診数、総診療件数、手術数、連携病院数などを、在宅ヘルスケアサービスにおいては契約数や代理店数などを重要な指標(KPI)としてモニタリングしています。

(4) 成長戦略と重点施策


成長に向けて、二次診療および画像診断サービスの拡大と、在宅ヘルスケア等の新規サービス展開を掲げています。具体的には、大阪病院の稼働向上や新施設の展開、生産性向上を進めるとともに、動物用医療機器の開発・製造事業への参入を目指します。

* 次期業績予想:売上高48.2億円、営業利益6.3億円、親会社株主に帰属する当期純利益4.4億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


専門的で優秀な獣医師や動物看護師を確保するため、給与水準の向上や働きがいのある環境整備に取り組んでいます。また、若い臨床獣医師が最先端医療を学べる「教育の場」を提供し、「専門性・人間味・一体感」を体現する人材の早期育成を最優先課題としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年3月期 34.9歳 5.3年 5,508,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 31.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全獣医師数(82人)、有給取得率(87%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 獣医療関連法令・規制の変更


事業は「獣医師法」や「獣医療法」等の規制を受けています。特に小動物分野におけるチーム獣医療体制の充実や、愛玩動物看護師法の施行など、法改正や新たな規制の動向によっては、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 専門人材の確保・育成


高度な動物医療を提供するためには、専門性の高い獣医師等の確保と育成が不可欠です。しかし、必要とする人材を十分に採用できない場合や、育成した人材が流出した場合には、サービスの質や事業展開に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 施設展開と設備投資のリスク


新病院の開設や既存施設への高度医療機器導入には多額の投資が必要です。新設地域での立ち上がりに時間を要したり、想定した症例数が確保できなかった場合、減価償却費等の固定費負担を吸収できず、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。