日本動物高度医療センター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本動物高度医療センター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本動物高度医療センターは、東京証券取引所グロース市場に上場し、かかりつけの動物病院からの紹介による完全紹介制の小動物向け二次診療サービスや画像診断サービス、在宅ケア機器のレンタル・販売を展開しています。直近の業績は、診療件数や単価の拡大が寄与し、売上高および各段階利益が過去最高を更新する増収増益のトレンドです。


※本記事は、株式会社日本動物高度医療センターの有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本動物高度医療センターってどんな会社?


日本動物高度医療センターは、完全紹介制による高度な小動物向け二次診療と画像診断等を提供する専門機関です。

(1) 会社概要


同社は、動物医療界において高度医療(二次診療)を提供することを目的として2005年に設立されました。2007年に川崎本院を開院し、2014年には画像診断を行うキャミックを子会社化しました。2015年に上場を果たし、その後も名古屋、東京、大阪へ診療施設を展開するなど順調に事業を拡大しています。

現在の従業員数は連結で328名、単体で251名です。筆頭株主はKCPエクイティアシスト1号投資事業有限責任組合で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も信託銀行となっています。また、創業に携わる平尾秀博氏なども大株主に名を連ねており、安定した経営基盤を構築しています。

氏名 持株比率
KCPエクイティアシスト1号投資事業有限責任組合 11.74%
MSIP CLIENT SECURITIES 7.38%
日本カストディ銀行(信託E口) 5.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は平尾秀博氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
平尾秀博 代表取締役社長 有限会社センターヴィル動物病院等を経て、2007年に入社。各診療科長や診療本部長を歴任し、2014年に代表取締役社長に就任。テルコムの代表取締役社長も兼務。
松永悟 取締役 東京大学農学部附属家畜病院助手等を経て、2007年入社。川崎本院院長などを経て、2014年に取締役就任。キャミックの代表取締役社長も兼務。
大江正巳 取締役 住友生命保険相互会社等を経て、アクアクララやパシフィックネット等で取締役を歴任。2025年に同社の取締役管理本部長に就任。
長谷川輝夫 取締役(監査等委員) 協和銀行(現りそな銀行)等を経て、2012年に監査役就任。2013年に取締役管理本部長となり、2018年より取締役(監査等委員)を務める。


社外取締役は、坪川郁子(元新日本有限責任監査法人)、吉島彰宏(Y's Associates代表)、小林利明(高樹町法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「動物医療関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 二次診療サービス


同社は、一次診療施設(かかりつけの動物病院)からの紹介を受け、専門獣医師が高度な医療機器を使用して診察、検査、手術、入院等の二次診療サービスを提供しています。12の専門診療科を有する総合病院として、複数の獣医師やスタッフからなるチーム診療体制を敷き、高度な動物医療を実践しています。

本サービスの収益源は、診療や手術等の提供に伴い飼い主から受け取る診療費です。一次診療施設からの紹介料などは受け取っていません。運営は主に親会社である日本動物高度医療センターが行っており、川崎、東京、名古屋、大阪の各施設でサービスを展開しています。

(2) 画像診断サービス


同サービスは、一次診療施設からの紹介を受け、画像診断の専門知識を有する獣医師が、MRIやCT等の高度な医療機器を使用して画像の撮影、読影、診断等を行うサービスです。首都圏を拠点に展開しており、専門的な読影所見を付した報告を通じてかかりつけ医の診療をサポートしています。

本サービスの収益源は、飼い主から直接受け取る診断費であり、一次診療施設からの紹介料などは受け取っていません。運営は子会社のキャミックが行っており、完全紹介制を採用して事業を展開しています。

(3) 動物用医療機器・健康管理機器のレンタル・販売


動物の飼い主向けに、在宅ケアで使用する酸素濃縮器とケージがセットになった酸素ケージのレンタルサービスを提供しています。また、一次診療施設などの動物病院向けには、同酸素ケージなどの販売も行っています。飼い主へのレンタルは、主に一次診療施設からの紹介に基づいて行われます。

本事業の収益源は、飼い主から受け取る機器のレンタル料や、動物病院などから受け取る機器の販売代金です。運営は子会社のテルコムが行っており、全国の営業所を通じて直接顧客へ提供する場合と、代理店を通じて提供する場合があります。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高および経常利益は5期連続で増加傾向にあり、順調な事業拡大が続いています。特に直近の決算では診療件数や単価の向上が寄与し、利益率も18.4%まで大幅に改善するなど、収益性の高さが際立っています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 30億円 39億円 43億円 53億円 62億円
経常利益 4億円 5億円 5億円 7億円 11億円
利益率(%) 14.7% 13.8% 11.5% 13.6% 18.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 4億円 3億円 5億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に伸長しており、売上総利益率は40.5%と高い水準を維持しています。営業利益も前年度から大幅に増加し、営業利益率は18.6%を記録するなど、本業での稼ぐ力が一段と高まっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 53億円 62億円
売上総利益 18億円 25億円
売上総利益率(%) 34.7% 40.5%
営業利益 7億円 12億円
営業利益率(%) 13.7% 18.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3億円(構成比20%)、支払手数料が2億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である二次診療サービスは、診療技術の向上や受け入れ能力の拡大が奏功し、売上が大きく成長しています。また、画像診断サービスおよび在宅ケア向けの機器レンタル・販売事業も、価格改定や営業強化により順調に売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
二次診療サービス 38億円 45億円
画像診断サービス 6億円 6億円
動物用医療機器・健康管理機器のレンタル・販売 9億円 10億円
その他 0.1億円 0.1億円
連結(合計) 53億円 62億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で安定的に資金を稼ぎ出し、借入などによる資金調達を活用しながら、設備等への積極的な投資を継続している状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.1%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 14億円 14億円
投資CF -10億円 -25億円
財務CF -6億円 16億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「かかりつけの動物病院と連携し、より高度な医療・寄り添う心で、どうぶつを愛する家族の希望となる。」を企業ミッションとして掲げています。動物にも人間と同じような高度な医療を受けさせたいという飼い主のニーズに応えるべく、最先端の医療設備や治療技術を追求し、社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「前例なき挑戦」の精神を重んじており、動物と飼い主の心に寄り添うホスピタリティを追求する文化を大切にしています。また、多様な専門性を持つ獣医師や動物看護師が知識を結集し、最適な治療法を探求する「チーム診療」を全従業員の行動指針とし、互いの能力を高め合いながら協力し合う組織風土を築いています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、売上高の成長や各段階利益率の向上を伴った業績の達成を経営上の目標としています。この目標の進捗を測るため、二次診療や画像診断においては初診数、総診療数、手術数、連携病院数、獣医師数などを、在宅ケア領域では新規レンタル件数を重要な指標として定期的にモニタリングしています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、持続的な成長と企業価値向上のため、新規エリアへの計画的な拠点拡大や、次世代型電子カルテなどのDXによる診療プロセスの最適化を推進しています。また、グループ各社のサービス基盤を統合して連携を深める包括的なグループ戦略に加え、蓄積された国内トップクラスの診療データを活用した新たな動物医療プラットフォーム構想の実現にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人的資本への投資を最重要課題と位置づけ、業界トップランナーにふさわしい人事制度や処遇の充実を図っています。専門性の高い人材の確保と定着に向けて、若手の早期戦力化を促す育成プログラムの整備や、資格取得の支援を強化しています。あわせて、働きがいを実感できる職場環境づくりや従業員エンゲージメントの向上にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.7歳 5.2年 6,161,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 43.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は従業員規模が300人以下であり、労働者の男女の賃金の差異に関する公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全獣医師数(100人)、有給取得率(85%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 専門人材の確保と育成における競争激化


高度な二次診療を維持・拡大するためには、専門知識を持つ獣医師や動物看護師の確保が不可欠ですが、人材獲得競争は年々激しくなっています。必要な人材を採用・育成できない場合や、育成した人材が社外へ流出した場合、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 施設拡大や設備投資に伴う収益変動リスク


新規拠点の開設においては、損益分岐点に達するまで一定の時間を要し、一時的に赤字となるリスクがあります。また、建設費の高騰や工事の長期化により投資額が計画を上回る懸念や、高額な最新医療機器への継続的な投資負担が重荷となり、稼働率が想定を下回った場合には業績に影響する可能性があります。

(3) 動物医療サービスにおける過誤や風評被害


同社は医療サービスの品質管理に細心の注意を払っていますが、万が一診療に過誤が生じた場合、損害賠償責任を問われるリスクがあります。それに伴い社会的信用が低下し、かかりつけの動物病院からの紹介や飼い主からのニーズが減少すれば、経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。

(4) 動物医療や機器販売に関する法的規制の動向


同社の事業は「獣医師法」「獣医療法」「医薬品医療機器等法」などの各種法令による規制を受けています。将来的にこれらの法令が改廃されたり、愛玩動物看護師法のような新たな制度に基づく規制強化がなされた場合、追加的な対応費用の発生などにより事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。