この企業分析記事は、イシン株式会社の有価証券報告書(2025年3月期)に基づいて作成されています。
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イシン転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、イシン株式会社 の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イシンってどんな会社?
同社は「自治体通信」などのメディアを起点に、自治体と企業、企業とスタートアップをつなぐソリューションを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2005年に設立され、ベンチャー企業向けメディアなどを手掛けてきました。2014年には自治体向け情報誌「自治体通信」を創刊し、現在の主力事業である公民共創事業の基盤を築きました。2015年には米国子会社を設立してグローバル展開を開始し、2024年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。
2025年3月末時点の従業員数は、連結で84名、単体で83名です。筆頭株主は代表取締役会長である明石智義氏の資産管理会社であるBright Stoneで、第2位株主は創業者の明石智義氏本人となっています。経営陣が株式の過半数を保有しており、オーナーシップの強い経営体制と言えます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Bright Stone | 39.65% |
| 明石 智義 | 22.54% |
| 村口 和孝 | 2.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は西中 大史氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 明石 智義 | 代表取締役会長 | ベンチャー通信代表理事を経て、2005年に同社(旧幕末)設立し社長就任。2011年より現職。 |
| 西中 大史 | 代表取締役社長 | 2011年三井住友銀行入行。2015年Ishin USA入社、2017年同社転籍。2025年4月より現職。 |
| 片岡 聡 | 取締役 | リクルートを経て2013年同社入社。専務、社長、関連会社代表等を歴任。2025年4月より現職。 |
| 丸山 広大 | 取締役 | 2008年同社入社。Ishin USA CEOなどを経て、2018年より現職。 |
社外取締役は、上山 亨(カケルパートナーズ代表)、郭 翔愛(合同会社Tasuki代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「公民共創事業」「グローバルイノベーション事業」および「メディアPR事業」を展開しています。
■公民共創事業
自治体DXや防災、地方創生などをテーマに、大手・中堅企業の自治体向けマーケティング活動を一気通貫で支援しています。自治体職員向けWebメディア「自治体通信Online」や情報誌『自治体通信』を提供しています。
収益は、Webプラットフォームの月額利用料(STOCK売上)や、情報誌への記事広告掲載料、テレマーケティング等の業務支援による対価(SPOT売上)から構成されます。運営は主にイシンが行っています。
■グローバルイノベーション事業
日系大手企業と国内外のスタートアップをつなぎ、オープンイノベーションを推進するサービスを提供しています。成長産業に特化したポータルサイト「BLITZ Portal」や、研修・イベントなどを展開しています。
収益は、ポータルサイトのID数に応じた月額利用料(STOCK売上)や、研修提供、イベント協賛金(SPOT売上)などから得ています。運営はイシンおよびIshin USA, Inc.が行っています。
■メディアPR事業
成長ベンチャー企業向けにブランディングや採用支援を行っています。ベンチャー業界メディア『ベンチャー通信』や会員制サービス「ベストベンチャー100」、採用CMS「HIKOMA CLOUD」などを提供しています。
収益は、メディアへの記事広告掲載料やイベント協賛金(SPOT売上)、会員企業の月額会費やCMSの月額利用料(STOCK売上)などから得ています。運営は主にイシンが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、成長が続いています。利益面においても、経常利益、当期利益ともに増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は高い利益率を維持しながら増益を達成しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7.2億円 | 10.2億円 | 11.5億円 | 12.8億円 | 13.9億円 |
| 経常利益 | 0.1億円 | 1.2億円 | 0.9億円 | 1.9億円 | 2.1億円 |
| 利益率(%) | 1.7% | 11.4% | 8.3% | 14.9% | 15.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.2億円 | 1.0億円 | 1.3億円 | 1.2億円 | 1.5億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。営業利益率も前期より改善しており、収益性が向上しています。販売費及び一般管理費は増加していますが、売上高の伸びがそれを上回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 12.8億円 | 13.9億円 |
| 売上総利益 | 9.6億円 | 10.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 75.3% | 76.3% |
| 営業利益 | 2.0億円 | 2.5億円 |
| 営業利益率(%) | 15.7% | 17.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3.2億円(構成比39%)、役員報酬が1.1億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となっており、特に公民共創事業の伸びが顕著です。利益面ではメディアPR事業が微減となったものの、公民共創事業とグローバルイノベーション事業が大きく伸長し、全体としての増益を牽引しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 公民共創事業 | 4.7億円 | 5.5億円 | 1.3億円 | 1.7億円 | 30.9% |
| グローバルイノベーション事業 | 3.9億円 | 4.1億円 | 1.4億円 | 1.6億円 | 39.3% |
| メディアPR事業 | 4.2億円 | 4.3億円 | 2.6億円 | 2.5億円 | 57.5% |
| 調整額 | - | - | -3.3億円 | -3.4億円 | - |
| 連結(合計) | 12.8億円 | 13.9億円 | 2.0億円 | 2.5億円 | 17.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
イシン社のキャッシュ・フローの状況について解説します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益の計上や減価償却費の計上があったものの、売上債権の増加や法人税等の支払いが影響し、前年と比較して収入額が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の取得やファンドへの出資による支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に株式の発行による収入がありました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.3億円 | 1.0億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -0.9億円 |
| 財務CF | 2.1億円 | 0.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、社是に「事業家創発」を置き、理念として「世界的視野を持った事業家たちが差別化された事業を通じて社会の進化に貢献する」を掲げています。事業活動を通じて様々な社会課題を解決していくことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「事業家創発」の社是のもと、経営者や意思決定者への企画提案営業の機会創出や独自の研修制度を通じて人材開発に取り組んでいます。既存事業でのキャリア形成から新規事業への抜擢、運営責任までを一貫して担う体制を構築し、事業家人材を創出する文化を育んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画を策定し、2030年3月期の数値目標を掲げています。2026年3月期より年平均成長率(CAGR)25%を超える売上成長を計画しています。
* 売上高:45.1億円
* 営業利益:9.0億円(営業利益率20%)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、HR事業を新たな高成長領域と位置づけ、積極的なリソース投下やM&Aを通じて事業を拡大する方針です。公民共創事業では、支援領域の拡張による売上最大化を目指し、BtoGソリューションの開発を推進します。また、生成AIや自治体DXなどをテーマにした新規事業開発にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「事業家創発」を掲げ、事業家の採用・育成を最重要課題の一つとしています。経営理念やビジョンに基づいた採用活動を行い、適性に応じた配置と育成に取り組んでいます。魅力的な仕事内容や育成環境、報酬体系の整備を進めるとともに、入社後の早期戦力化に向けた教育制度の充実を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 34.4歳 | 3.9年 | 5,228,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.4% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男女間賃金差異は、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット関連市場の動向
同社はWebメディア関連事業を主力としており、インターネット利用環境の向上や市場拡大が事業成長に重要です。予期せぬ要因により市場拡大が阻害された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新や顧客ニーズへの対応
インターネット業界の激しい技術革新や顧客ニーズの変化に対応するため、同社は投資や体制強化を行っています。しかし、予期しない変化への対応が遅れた場合、競争力が低下し業績に影響が出る可能性があります。
■(3) 競合他社の状況及び新規参入
HR事業や公民共創事業などの各領域には競合が存在します。同社は独自ポジションの確立に努めていますが、競争激化により相対的な競争力が低下した場合、収益性の低下や業績への悪影響が生じる可能性があります。
■(4) 検索アルゴリズムの影響
同社メディアへのアクセス数は検索エンジンの表示結果に依存する側面があります。記事品質の向上に努めていますが、検索アルゴリズムの変更によりユーザー流入数が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(5) 景気の変動について
顧客企業の広告宣伝や採用予算は景気変動の影響を受けやすいため、景況感が著しく悪化した場合、同社のHR事業、メディアPR事業、公民共創事業などの受注が減少し、業績に悪影響を与える可能性があります。



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