※本記事は、株式会社yutori の有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. yutoriってどんな会社?
Z世代に向けたストリートファッションブランドを中心に、衣料品やコスメの企画・販売を展開しています。
■(1) 会社概要
2018年4月にアパレル販売を目的として設立されました。2020年にZOZOと資本業務提携を結び、2022年には複数ブランドを取得・子会社化して統合ECサイトの運営を開始しました。2023年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、近年もビューティ領域の事業譲受などM&Aを推進しています。
従業員数は連結261名、単体159名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の片石貴展氏で、第2位は事業会社であるZOZO、第3位はpoolとなっています。ZOZOとは資本業務提携を結んでおり、ZOZOTOWNを通じたオンライン販売等で取引関係があります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 片石 貴展 | 23.79% |
| ZOZO | 16.78% |
| pool | 8.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は片石貴展氏が務めています。社外取締役の比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 片石 貴展 | 代表取締役社長 | 2016年アカツキ入社。2018年同社を設立し、代表取締役社長に就任。以来、現職。 |
| 瀬之口 和磨 | 取締役副社長 | 2018年同社に入社し、取締役に就任。以来、現職。 |
社外取締役は、廣瀬文慎(ZOZO取締役兼COO)、佐々木翔平(SQUEEZE社外監査役など歴任)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファッション事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) ヤングカルチャー事業
Z世代を中心とした若年層に向け、90年代や2000年代のストリートカルチャーを現代的に再解釈したストリートファッションブランドを展開しています。主なブランドには「9090」や「Younger Song」などがあります。
収益は、自社ECサイトや実店舗を通じた衣料品などの販売代金から得ています。運営は同社および連結子会社のYZが行っています。
■(2) Her lip to事業
小嶋陽菜氏がプロデュースするライフスタイルブランドとして、気品と華やかさを備えたアパレル商品や、フレグランス・ボディケアアイテム、ランジェリーなどを展開し、日常に特別感を添える商品を提案しています。
収益は、アパレル商品やビューティー商材の販売代金から得ています。運営は連結子会社のheart relationが行っています。
■(3) その他ブランド展開(韓国事業・コスメ事業など)
韓国の人気ブランドを日本向けに展開するほか、新ミニサイズコスメをワンコイン価格で提供するコスメブランドなどを展開しています。多様なブランドのポートフォリオを構築し、特定のブランドに依存しない安定した売上の確保を目指しています。
収益は、小売・卸売による販売代金から得ています。運営は同社や連結子会社のpoolなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近2期間の業績を見ると、売上高は83億円から142億円へと大きく拡大し、経常利益も順調に推移しています。一方で、最終利益は直近でマイナスに転じていますが、これは事業譲受やM&A、新規出店などの積極的な投資を背景としているためと見られます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 83億円 | 142億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 7.8% | 7.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | -1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益も順調に増加しています。特に売上総利益率は高い水準を維持しており、ブランドビジネスとしての収益性の高さがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 83億円 | 142億円 |
| 売上総利益 | 51億円 | 90億円 |
| 売上総利益率(%) | 61.5% | 63.1% |
| 営業利益 | 7億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 7.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が12億円(構成比15%)、広告宣伝費が11億円(同14%)を占めています。売上原価の大半は商品の仕入によるものです。
■(3) セグメント収益
同社グループはファッション事業の単一セグメントであるため、事業全体の売上推移を示します。実店舗の拡大やECでの販売好調、さらにM&Aを通じたブランドポートフォリオの拡充により、売上は大幅な増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ファッション事業 | 83億円 | 142億円 |
| 連結(合計) | 83億円 | 142億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
直近のキャッシュ・フローは、営業活動で利益を創出しつつ、借入等の資金調達によって積極的な事業投資を行う「積極型」の状況となっています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.4%でグロース市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.0%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -5億円 | 5億円 |
| 投資CF | -11億円 | -8億円 |
| 財務CF | 20億円 | 18億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「TURN STRANGER TO STRONGER(ハグレモノをツワモノに)」をミッションに掲げています。これは「ファッションブランドを纏うことで、未知の才能をもつ世界中のハグレモノが、そのズレを強さに反転させられるように」という願いに基づくものであり、複数のブランドを創造することでこのミッションの実現に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は、各ブランドが自ら利益を獲得して自走できるようにする「自律分散型ブランド運営」を重視しています。また「Yリーグ」という独自の制度を導入し、ブランドごとの採算を定量的に管理し、明確な撤退基準に基づく迅速で合理的な意思決定を行っています。ブランドの個性を活かしつつ機動的な投資を行う文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、企業価値を継続的に拡大することが重要であると考え、売上高、売上総利益、調整後EBITDA、および営業利益を重要な経営指標として位置付けています。事業規模と事業領域を拡大していくことを目標として掲げています。
* 売上高の向上
* 売上総利益の向上
* 調整後EBITDAの向上
* 営業利益の向上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、既存ブランドの成長、Z世代向け・それ以外の世代向けの新規ブランド創出、商材の多様化という3つの経営戦略を掲げています。具体的には、SNSマーケティングを起点としたオンライン販売の強化や、インフルエンサーを店舗スタッフに起用した実店舗の展開を進めます。また、親和性や収益性を勘案したM&Aによるブランドポートフォリオの多様化にも積極的に取り組んでいきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、多様性ある人材と組織の育成が持続的な企業価値の向上に不可欠であると認識しています。定期的な1on1面談を通じて従業員の期待される役割を明確にするとともに、キャリアに関する希望を配属に反映させています。さらに、テレワークやフレックスタイム制を導入し、柔軟な働き方ができる就業環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 27.1歳 | 1.8年 | 4,469,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 112.9% |
※男性の育児休業取得対象者はいません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客嗜好の変化について
同社グループは、流行の影響を受けやすいストリートブランド等の衣料品や雑貨を中心に展開しています。感染症拡大の影響による生活様式の変化や新規参入企業による競争激化などにより、顧客の嗜好変化に適切に対応できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合環境について
アパレル小売市場は国内外の企業と厳しい競争状態にあり、商品企画に失敗し顧客ニーズにマッチした商品を提供できない場合や、ブランド価値が陳腐化した場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、主力とするSNSマーケティング環境の変動もリスクとなります。
■(3) ZOZOとの関係について
同社の主要株主であるZOZOとは、同社の運営するプラットフォームへの出店等で取引関係があります。ZOZOの経営方針の変更や経営状態の悪化等により、取引関係に影響が生じた場合には、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 業績の季節偏重について
同社グループはアパレル商品を中心に取り扱っており、商品単価が高く購入アイテム数が多い秋冬シーズンに売上高が偏重する傾向があります。気候や気温の変化による影響も受けやすく、予期せぬ天候不順等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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