※本記事は、株式会社yutori の有価証券報告書(第7期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. yutoriってどんな会社?
Z世代向けのストリートブランドを多数展開し、SNSマーケティングに強みを持つアパレル企業です。
■(1) 会社概要
2018年に設立され、古着の販売やInstagramメディアの運営から事業を開始しました。2020年にZOZOと資本業務提携を締結。2022年に複数のブランドを扱う自社ECサイト「YZ Store」をオープンし、2023年に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。2024年には「Her lip to」を運営するheart relationを子会社化しています。
連結従業員数は197名(単体110名)です。筆頭株主は創業者の片石貴展氏で、第2位は資本業務提携先である株式会社ZOZOです。第3位は片石氏の資産管理会社である株式会社poolとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 片石 貴展 | 27.17% |
| ZOZO | 19.16% |
| pool | 9.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名、計7名で構成され、女性役員比率は29.0%です。代表取締役社長は片石貴展氏です。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 片石 貴展 | 代表取締役社長 | 2016年アカツキ入社。2018年4月同社設立とともに代表取締役就任。2023年より現職。 |
| 瀬之口 和磨 | 取締役副社長 | 2018年6月同社入社。同年同社取締役就任。2023年より現職。 |
社外取締役は、廣瀬文慎(ZOZO取締役兼COO)、佐々木翔平(有限会社カイカイキキCOO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アパレル事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ブランド運営
Z世代(1997年〜2009年生まれ)を対象としたストリートファッションブランド等を企画・販売しています。主なブランドには、90年代カルチャーを再解釈した「9090」や「HTH」、韓国ブランドを取り扱う「codegraphy」、小嶋陽菜氏がプロデュースする「Her lip to」などがあり、多様なポートフォリオを構築しています。
収益は、自社ECサイトやZOZOTOWN、実店舗等での商品販売により一般消費者から代金を受け取ることで発生します。運営は主に同社および連結子会社の株式会社heart relation、株式会社えをかく等が行っています。また、コスメブランド「minum」の展開も行っています。
■(2) 販売チャネル
主な販売チャネルとして、自社ECサイト「YZ Store」、株式会社ZOZOが運営する「ZOZOTOWN」、および実店舗(POPUP含む)を展開しています。「YZ Store」では複数ブランドのセット購入提案や会員プログラムを提供し、顧客エンゲージメントを高めています。
収益は各チャネルを通じた商品販売によって得られます。実店舗ではSNSフォロワーの多いインフルエンサーをスタッフとして配置し、SNS集客を活かした運営を行っています。運営は同社グループが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第7期より連結財務諸表を作成しているため、第7期の連結数値のみを表示します。当期はM&A等により事業規模が拡大し、黒字を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 売上高 | 83.1億円 |
| 経常利益 | 6.5億円 |
| 利益率(%) | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.1億円 |
■(2) 損益計算書
第7期より連結決算を開始したため、2期間の比較は行わず当期の数値を表示します。高い売上総利益率を維持しつつ、営業利益を計上しています。
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 売上高 | 83.1億円 |
| 売上総利益 | 51.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 61.5% |
| 営業利益 | 6.7億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% |
販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が8.5億円(構成比19.1%)、給料及び手当が7.0億円(同15.7%)、広告宣伝費が5.8億円(同13.1%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続する「勝負型」です。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 |
|---|---|
| 営業CF | -5.4億円 |
| 投資CF | -11.1億円 |
| 財務CF | 20.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は32.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は14.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「TURN STRANGER TO STRONGER(ハグレモノをツワモノに)」をミッションに掲げています。ファッションブランドを纏うことで、未知の才能をもつ世界中のハグレモノが、そのズレを強さに反転させられるようにという願いのもと、複数のブランド創造を通じてミッションの実現に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
各ブランドが自走して利益を獲得できるよう「Yリーグ」という独自の制度を導入しています。ブランドごとの月間平均売上金額に応じてランク付けを行い、成長ストーリーを定量的に示すとともに、撤退基準も明確にすることで迅速な意思決定を促しています。また、ブランド担当者にはターゲット層と年齢の近いスタッフを配置し、当事者意識を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
企業価値の継続的な拡大を目指し、売上高、売上総利益、調整後EBITDA、および営業利益を重要な経営指標としています。具体的な数値目標としては、ブランドごとの採算管理を徹底し、特定のブランドに依存しない安定的な売上の構築に努めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存ブランドの成長に加え、Z世代向け新規ブランドの創出、Y世代等をターゲットとしたブランドの新規創出、商材の多様化(アパレル以外への展開)を掲げています。また、M&Aを積極的に活用して事業規模を拡大し、ブランドポートフォリオの多様化を進めるとともに、東名阪を中心とした実店舗の拡大や海外市場の開拓も目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続可能な成長のために多様性ある人材及び組織の育成が重要であると認識し、従業員一人ひとりの自己実現の機会を提供することを目指しています。定期的な1on1面談や社内イベントを通じた対話の活性化、テレワークやフレックスタイム制の活用による柔軟な働き方の実現に努めています。また、クリエイティブ職の育成と採用強化によりSNS発信力を高める方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 25.4歳 | 1.9年 | 4,901,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合目標(35.0%(2030年12月末まで))などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客嗜好の変化について
流行の影響を受けやすい衣料品等を扱っているため、顧客の嗜好や生活様式の変化に対応できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。SNSや実店舗を活用したリサーチと新たな販売チャネルの展開により、これらの変化に対応していく方針です。
■(2) 商品の品質について
検品や商品管理の不備により不適切な商品を販売した場合、ブランドイメージの毀損や賠償等の支払いが生じる可能性があります。生産委託先との契約における納入前検査条項や品質保証条項を含めることで、商品管理体制を強化しリスク低減を図っています。
■(3) 株式会社ZOZOとの関係について
同社はZOZOの関連会社であり、ZOZOは第2位株主です。ZOZOの議決権行使が意思決定に影響を及ぼす可能性や、取引関係に変更が生じた場合に業績に影響が出る可能性があります。独立社外役員の選任や、関連当事者取引管理規程に基づく適切な取引条件の確保により独立性を維持しています。
■(4) 業績の季節偏重について
秋冬シーズンは商品単価が高く購入アイテム数が多いため、売上高が同シーズンに偏重する傾向があります。気候や気温の変化による影響を受けやすく、暖冬等の天候不順が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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