※本記事は、株式会社淺沼組 の有価証券報告書(第90期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 淺沼組ってどんな会社?
建築・土木工事を主軸とする創業130年超のゼネコン。歴史的建造物から現代建築まで幅広い実績を持ちます。
■(1) 会社概要
1892年に奈良県で創業し、1937年に設立されました。1963年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、1969年には東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2018年にはシンガポールの塗装会社を子会社化するなど海外展開を進め、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。
連結従業員数は1,796名、単体では1,261名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社の持株会、第3位は不動産事業やゴルフ場経営を行う事業会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.45% |
| 淺沼組弥生会持株会 | 5.14% |
| 平和 | 3.97% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は浅沼誠氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浅沼 誠 | 代表取締役社長執行役員 | 1996年入社。社長室次長、建築事業本部営業推進室長、副社長執行役員建築事業本部長などを経て、2018年より現職。淺沼建物代表取締役会長を兼任。 |
| 豊田 彰啓 | 代表取締役専務執行役員戦略企画本部長 | 1981年入社。広島支店営業部長、大阪本店副本店長、常務執行役員大阪本店長などを経て、2024年より現職。 |
| 藤沢 正宏 | 取締役専務執行役員建築事業本部長 | 1982年入社。東京本店営業第2部・第3部統括部長、常務執行役員東京本店長などを経て、2023年より現職。 |
| 寺井 到 | 取締役常務執行役員土木事業本部長 | 1982年入社。東京本店土木営業部長、土木事業本部営業部東日本部長、執行役員土木事業本部副本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 八木 良道 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1984年入社。経理部長、執行役員社長室次長兼経理部長兼コーポレート・コミュニケーション部長などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、船本美和子(弁護士)、森川卓也(元コクヨS&T社長)、木下誠也(元国土交通省近畿地方整備局長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建築」「土木」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 建築事業
庁舎、学校、病院などの公共施設から、オフィスビル、マンション、商業施設などの民間建築物まで、多岐にわたる建築工事を請け負っています。新築工事だけでなく、リニューアル工事にも注力しています。
収益は主に顧客からの工事請負代金によって得ています。運営は主に同社が担い、海外においてはSINGAPORE PAINTS & CONTRACTOR PTE. LTD.等の子会社も事業を行っています。
■(2) 土木事業
トンネル、橋梁、ダム、鉄道、道路、上下水道などの社会インフラ整備に関わる土木工事を請け負っています。官公庁発注の公共工事に加え、民間企業からの造成工事なども手掛けています。
収益は主に発注者からの工事請負代金によって得ています。運営は主に同社が行い、タイ王国においてはTHAI ASANUMA CONSTRUCTION CO.,LTD.などが事業を展開しています。
■(3) その他
不動産事業、PFI事業(公共施設の建設・運営)、保険代理業、物品販売などを行っています。
収益は不動産の賃貸・販売収入、PFI事業における運営・維持管理料、保険手数料などから得ています。運営は同社のほか、淺沼建物、長泉ハイトラストなどのグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近では1,670億円に達しています。利益面では、経常利益が変動しつつも40億〜60億円台を維持しており、当期純利益も安定的に推移しています。全体として堅調な成長を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,389億円 | 1,355億円 | 1,444億円 | 1,527億円 | 1,670億円 |
| 経常利益 | 54億円 | 49億円 | 59億円 | 43億円 | 65億円 |
| 利益率(%) | 3.9% | 3.6% | 4.1% | 2.8% | 3.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 41億円 | 39億円 | 36億円 | 36億円 | 39億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しており、利益率も改善傾向にあります。営業利益率は上昇しており、本業の収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,527億円 | 1,670億円 |
| 売上総利益 | 132億円 | 171億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.6% | 10.2% |
| 営業利益 | 41億円 | 69億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が48億円(構成比43%)、賃借料が13億円(同11%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が売上原価合計の98%を占めています。
■(3) セグメント収益
建築事業は大型民間工事の進捗により増収増益となり、土木事業も堅調に推移しました。その他事業は売上が微増したものの、利益は減少しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建築 | 1,290億円 | 1,414億円 | 106億円 | 144億円 | 10.2% |
| 土木 | 205億円 | 223億円 | 26億円 | 27億円 | 12.2% |
| その他 | 33億円 | 33億円 | 8億円 | 6億円 | 19.2% |
| 調整額 | 5億円 | 5億円 | -99億円 | -109億円 | -% |
| 連結(合計) | 1,527億円 | 1,670億円 | 41億円 | 69億円 | 4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
淺沼組は、建設事業を中心に、積極的な事業展開により、キャッシュ・フローの改善を図っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加があったものの、未成工事の入金増加や利益計上により、前年度の資金減少から資金増加へと転換しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得による支出が主な要因となり、資金の減少となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入があったものの、借入金の返済や配当金の支払い、子会社株式の取得による支出により、資金の減少となりました。これらの結果、現金及び現金同等物は増加し、期末残高も増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -32億円 | 52億円 |
| 投資CF | 26億円 | -8億円 |
| 財務CF | 14億円 | -9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業者の「仕事が仕事を生む」という信念を実現するため、「和の精神」「誠意・熱意・創意」を創業理念としています。立派な仕事をすることで信用が生まれ、その信用が次の仕事につながるという考えのもと、誠実なモノづくりに専心し、社会の安全・安心・快適の増進に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「現場・現物・現人主義」を貫き、技術力・知力・感性を磨くことを重視しています。また、「堅実経営」に徹し、顧客や協力会社、株主、社員など全てのステークホルダーに満足してもらえるよう、「淺沼組で良かった」と思われる事業活動を行うことを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
創業140年(2032年)に向けた長期ビジョンのもと、2024年度から2026年度までの中期3ヵ年計画を推進しています。最終年度の目標として以下を掲げています。
* 売上高:1,510億円
* 営業利益:64億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:49億円
* 営業利益率:4.2%
* ROE:10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期3ヵ年計画では、「国内コア事業の強化」「リニューアル事業の強化」「人材の獲得・確保・育成」「DX推進」「ガバナンス・コンプライアンス・リスク管理の強化」「環境・社会への貢献」の6つを重要テーマとして掲げています。特にリニューアル事業では独自ブランドを展開し、収益の柱として育成を図っています。また、DXによる業務効率化や、脱炭素社会の実現に向けた環境配慮型技術の開発にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な人材が個々の能力を十分に発揮できるよう、国籍や性別等による差別を行わず、個性を尊重した人材育成を行っています。また、柔軟な働き方やワークライフバランスの実現に向けた制度整備を進めるとともに、社員の意識醸成や社内風土改革のための研修制度の充実を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.0歳 | 22.0年 | 8,962,119円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.3% |
| 男性育児休業取得率 | 76.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 62.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外情勢や経済動向等の外部経営環境に関わるリスク
国内および海外で事業を展開しているため、各国の政治・経済動向、テロや紛争、疫病の発生などが工事需要の減少を招く可能性があります。また、取引先の信用不安が生じた場合、請負代金の回収に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市況変動に関わるリスク
建設事業は協力会社や資材業者に依存しており、主要資材価格や労務費が高騰した場合、事業運営に影響を与える可能性があります。また、海外事業における為替変動や、資金調達における金利変動などのリスクもあります。
■(3) 災害に関わるリスク
事業地が広範囲にわたり屋外作業が主であるため、大規模な震災、台風、火山の噴火等の自然災害や、現場での火災、事故等が発生した場合、工事の遅延や追加費用の発生により、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 法的規制・訴訟に関わるリスク
建設業法や建築基準法などの法的規制の変更や、法令違反による行政処分は、事業運営に影響を与える可能性があります。また、契約不適合責任や損害賠償請求などの訴訟が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。