日東製網 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日東製網 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する日東製網は、漁業用や陸上用の無結節網の製造および漁業関連商品の販売を主力とする企業です。直近の業績では、漁業関連事業においてアジア向けの輸出や水産部門の取扱高が好調に推移したことなどにより、増収および最終増益となっています。


※本記事は、日東製網株式会社の有価証券報告書(第125期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日東製網ってどんな会社?


漁業用・陸上用の無結節網の製造販売や、漁労関係省力機械器具などの仕入販売を手掛けるメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1910年に普通綟網の製造販売を目的に西備綟織として設立されました。1937年に日本製網へと商号を変更し、1963年には東洋組網工業と合併して現在の日東製網となりました。1987年にチリ、2012年にタイに子会社を設立するなど海外展開も進めており、2005年にはマルハグループから海洋事業部門などを引き継ぎ、事業基盤を強化しています。

現在、同社グループの従業員数は連結で953名、単体で333名体制となっています。大株主については、事業会社や持株会が上位を占めており、筆頭株主は土屋、第2位および第3位には同社の取引先持株会や従業員持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
土屋 8.75%
日東製網取引先持株会 7.92%
日東製網従業員持株会 6.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役取締役社長は小林宏明氏が務めています。また、役員のうち2名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
小林宏明 代表取締役取締役社長 2000年広島銀行入行。2002年同社入社。2007年同社代表取締役取締役社長就任。日本ターニング代表取締役、泰東代表取締役等を兼任し、現在に至る。
小林重久 専務取締役製造本部本部長 1985年同社入社。2007年函館工場副工場長、2010年製造本部副本部長を経て、2012年取締役就任。2023年より現職。
北方浩樹 取締役経営管理本部本部長 1985年広島銀行入行。2016年同社経営管理本部副本部長兼総務部長、同年取締役就任。2020年より現職。
野村芳徳 取締役営業本部本部長兼第2事業部長 1984年同社入社。2006年旋網部門部門長、2016年営業本部第2事業部長を経て、2017年取締役就任。2021年より現職。


社外取締役は、岡耕一郎氏(せとうち中央法律事務所所長)、杉之原祥二氏(マナック・ケミカル・パートナーズ代表取締役会長兼社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「漁業関連事業」「陸上関連事業」および「その他」事業を展開しています。

漁業関連事業


無結節漁網、有結節漁網、綟網、ロープなどの製造・販売を行うほか、漁労関係省力機械器具、漁船、飼料、水産物の仕入販売などを提供しています。また、定置網漁業や漁場指導を含めた経営指導サービスも展開しており、国内外の漁業者や水産関連企業を主な顧客としています。

収益は、製品や商品の販売代金、および漁獲物の売上などから得ています。製品の製造・販売や受託加工は、同社および多久製網、レデス・ニットー・チリ・リミターダ、タイ・ニットウセイモウ・グローバルなどの子会社が手掛けています。定置網漁業等の運営は、温泉津定置や吉田漁業部などの子会社が行っています。

陸上関連事業


獣害防止ネット、無結節網、防虫ネットなどの製造・販売のほか、ゴルフ練習場や各種スポーツネット等の設計・施工・加工・販売を行っています。また、農業用資材や培土の仕入販売も展開しており、スポーツ関連施設や農業従事者などをターゲットとしています。

収益は、製品の販売代金やスポーツネットの施工工事などの請負代金から得ています。同事業の運営は、主に子会社の泰東が手掛けており、同社から製品を仕入れて販売・施工を行っています。

その他


同社グループの産業用機械の製作および修理などを行っています。運営は日本ターニングが担っており、機械の部品加工や組網機等のメンテナンスによる収益を計上しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は安定した推移を見せており、直近の期間では増収基調となっています。一方で、利益面は原材料費や人件費の高騰などの影響を受け、各年度で増減を繰り返す変動的な推移となっています。

項目 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期 2026年4月期
売上高 184億円 193億円 209億円 216億円 221億円
経常利益 5億円 5億円 8億円 8億円 10億円
利益率(%) 3.0% 2.6% 4.0% 3.8% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 -2億円 4億円 2億円 7億円

(2) 損益計算書


直近期間では、売上高は増加したものの、原油価格の高騰や為替相場の変動による原材料費の上昇などにより、売上総利益および営業利益は減少しています。

項目 2025年4月期 2026年4月期
売上高 216億円 221億円
売上総利益 42億円 41億円
売上総利益率(%) 19.3% 18.4%
営業利益 7億円 6億円
営業利益率(%) 3.1% 2.5%


販売費及び一般管理費(35億円)のうち、従業員給料及び手当が11億円(構成比31%)、運搬費が3億円(同8%)を占めています。また、売上原価は180億円で、売上高に対する構成比は82%となっています。

(3) セグメント収益


漁業関連事業はアジア向け輸出や水産部門の取扱高が堅調に推移し増収となったものの、コスト上昇により減益となりました。陸上関連事業も獣害防止ネットの受注増や施工工事の好調により増収でしたが、経費上昇の影響で減益となっています。

区分 売上(2025年4月期) 売上(2026年4月期) 利益(2025年4月期) 利益(2026年4月期) 利益率
漁業関連事業 174億円 178億円 4億円 3億円 1.8%
陸上関連事業 42億円 43億円 3億円 2億円 5.6%
その他 0.0億円 0.0億円 -0.0億円 -0.0億円 -12.3%
連結(合計) 216億円 221億円 7億円 6億円 2.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来成長のため借入等で投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2025年4月期 2026年4月期
営業CF 10億円 -1.0億円
投資CF -6億円 -12億円
財務CF -3億円 12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「創意・誠実・努力」を基本理念とし、それに「挑戦」を加えた基本方針を掲げています。社会に役立つ製品を開発し、これを合理的な価格で提供していくことこそがメーカーの社会的使命であるとの強い信念を持ち、ステークホルダーの期待に応えることを目指しています。

(2) 企業文化


「安易に模倣することを恥ずべき事と考えて、1910年創立以来、一貫して研究開発に多大な努力をはらってまいりました」とあるように、独自性と技術力を重んじる文化が根付いています。また、経営の合理化やコストダウンを絶えず追求し続ける姿勢も重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な目標として、安定した収益力と財務体質の強化を目指す以下の経営指標を掲げて経営を行っています。

* 売上高経常利益率:6%
* 自己資本比率:30%
* 配当性向:30%

(4) 成長戦略と重点施策


「海外売上高目標30億円」としてチリとタイの現地法人を中心とした拡販を図るほか、産学官連携によるオリジナル商材の開発で他社との差別化を推進しています。また、安定的な収入源となる原反・消耗品の販売強化や、廃棄漁網のリサイクルなど環境配慮型の取り組みにも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な人材の活躍や育成、従業員が心身ともに健康で働ける環境づくりが不可欠であると認識しています。階層別研修の拡充による次世代リーダーの育成や、タレントマネジメントシステムを通じた適材適所の配置を推進し、ワークライフバランスの充実にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年4月期 40.8歳 13.0年 5,103,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 88.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める女性社員の比率(35%)、新入社員の女性採用の比率(31%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 漁業者の経営動向の影響


同社グループの主要事業である漁網の製造販売や漁業関連商品の販売は、漁業者の経営動向に大きく左右されます。異常気象や海洋環境の変化による漁獲量の減少、魚価の下落、漁業者の事業費用増加などが生じた場合、製品の買い控えや債権回収の長期化を招くリスクがあります。

(2) 原材料の調達価格の上昇


同社グループの漁網製品は、主原材料である原糸の大半を石油精製品に依存しています。そのため、原油価格が高騰した場合には原材料の調達価格が上昇し、利益率を圧迫することで、同社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 有利子負債と金利上昇


同社グループの有利子負債は総資産に占める割合が依然として高水準となっています。そのため、今後の市場金利の上昇局面においては金融コスト(支払利息など)が増加し、収益性にマイナスの影響を与えるリスクがあります。

(4) 海外売上増加に伴う為替変動


中南米や東南アジアなどへの拡販戦略により、同社グループの海外売上高の割合は少しずつ増加しています。急激な円高の進行など、想定を超える為替相場の変動が生じた場合には、海外事業の円換算額が減少し、業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。