※本記事は、日東製網株式会社 の有価証券報告書(第124期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日東製網ってどんな会社?
無結節網の製造技術を核に、漁業用および陸上用の網製品、関連機械器具の製造・販売を行うメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1910年に西備綟織として設立され、1937年に日本製網へ商号変更、1939年に大阪株式取引所へ上場しました。1946年には無結節網製造のため工場を新設し、1963年の合併により現社名の日東製網となりました。1973年には東証・大証・名証の各一部銘柄に指定され、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場等へ移行しました。
同社の従業員数は連結942名、単体317名です。筆頭株主は株式会社土屋で、第2位は取引先持株会、第3位は従業員持株会となっており、特定の事業会社による支配関係は見られず、持株会が上位を占める安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 土屋 | 8.75% |
| 日東製網取引先持株会 | 7.34% |
| 日東製網従業員持株会 | 6.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長には小林宏明氏が就任しており、社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小 林 宏 明 | 代表取締役取締役社長 | 2000年広島銀行入行。2002年同社入社。2007年より同社代表取締役取締役社長。日本ターニング、泰東等の代表取締役やレデス・ニットー・チリ・リミターダ総支配人を兼務。 |
| 小 林 重 久 | 専務取締役製造本部本部長 | 1985年同社入社。函館工場副工場長、福山工場副工場長、製造本部副本部長等を経て、2023年より同社専務取締役製造本部本部長。 |
| 北 方 浩 樹 | 取締役経営管理本部本部長 | 1985年広島銀行入行。同行向洋支店長等を経て、2016年同社入社。2020年より同社取締役経営管理本部本部長。 |
| 野 村 芳 徳 | 取締役営業本部本部長兼第2事業部長 | 1984年同社入社。旋網部門部門長、東京営業所所長等を歴任。2021年より同社取締役営業本部本部長兼第2事業部長。 |
社外取締役は、岡耕一郎(せとうち中央法律事務所所長)、杉之原祥二(マナック・ケミカル・パートナーズ代表取締役会長兼社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「漁業関連事業」、「陸上関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■漁業関連事業
漁業用無結節網や綟網、ロープ等の製造販売に加え、漁労関係省力機械器具や船舶、水産物の仕入販売を行っています。また、定置網漁業等のサービスも提供しています。顧客は漁業者や水産関連企業が中心です。
収益源は製品・商品の販売代金やサービス料です。運営は、同社が製造・販売を行うほか、多久製網が海苔網等の製造を行い、日東ネットが仕立て・加工を担当しています。海外ではレデス・ニットー・チリ・リミターダやタイ・ニットウセイモウ・グローバルなどが製造・販売を行っています。また、温泉津定置などが漁業を営んでいます。
■陸上関連事業
陸上用無結節網や獣害防止ネット、防球ネット、各種スポーツネット等の設計、施工、加工および販売を行っています。また、培土などの農業用資材の仕入販売も手がけています。ゴルフ練習場や農業従事者などが主な顧客です。
収益源は製品・商品の販売代金や設計・施工料です。運営は主に泰東が行っており、同社から獣害防止ネット等を仕入れて販売するとともに、スポーツネット等の施工・販売を展開しています。
■その他
上記セグメントに含まれない事業として、機械設備の製作や修理等を行っています。
収益源は機械設備の製作費や修理代金等です。運営は日本ターニングが行っており、同社の組網機等の機械設備の製作・修理のほか、機械の部品加工等を手がけています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあります。利益面では、2023年4月期に当期純損失を計上しましたが、翌期には黒字回復し、売上高経常利益率は3~4%台で推移しています。
| 項目 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 177億円 | 184億円 | 193億円 | 209億円 | 216億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 5億円 | 5億円 | 8億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 3.0% | 2.6% | 4.0% | 3.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 2億円 | -2億円 | 4億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率はほぼ横ばいです。営業利益率は前期より改善しており、本業の収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 209億円 | 216億円 |
| 売上総利益 | 39億円 | 42億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.7% | 19.3% |
| 営業利益 | 4億円 | 7億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が11億円(構成比31%)、運搬費が3億円(同8%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注加工費などが主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
漁業関連事業は魚価の回復や定置網漁の水揚高増加により増収増益となりました。陸上関連事業も獣害防止ネットや防砂ネット等が好調で大幅な増益を達成しました。その他事業は売上高が減少しました。
| 区分 | 売上(2024年4月期) | 売上(2025年4月期) | 利益(2024年4月期) | 利益(2025年4月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 漁業関連事業 | 170億円 | 174億円 | 3億円 | 4億円 | 2.2% |
| 陸上関連事業 | 39億円 | 42億円 | 1億円 | 3億円 | 7.2% |
| その他 | 0.1億円 | 0.0億円 | -0.0億円 | -0.0億円 | -23.7% |
| 調整額 | - | - | -0.0億円 | -0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 209億円 | 216億円 | 4億円 | 7億円 | 3.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスであることから「健全型」と判定されます。本業で得た現金を投資に回しつつ、借入金の返済も進めている状態です。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1億円 | 10億円 |
| 投資CF | -9億円 | -6億円 |
| 財務CF | 10億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.2%で市場平均(スタンダード市場製造業57.5%)を大きく下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、社是である「創意・誠実・努力」を基本理念とし、さらに「挑戦」を加えた基本方針を掲げています。社会に役立つ製品を開発し、合理的な価格で提供することこそがメーカーの社会的使命であるとの信念を持ち、安易な模倣を恥ずべきこととして、創業以来一貫して研究開発に注力しています。
■(2) 企業文化
長期的な視野に立ち、株主、ユーザー、取引先、従業員の期待に応えることを優先する文化があります。合理的な価格達成のために経営の合理化とコストダウンを絶えず追求し続けるとともに、過去の慣習や価値観にとらわれることなく、事業環境の変化や各種リスクにリアルタイムで対応できる体制づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、目標とする経営指標として以下の数値を掲げています。
* 売上高経常利益率:6%
* 自己資本比率:30%
* 配当性向:30%
■(4) 成長戦略と重点施策
海外市場の拡販や高付加価値製品の開発、消耗品の販売強化などを通じた収益基盤の強化を目指しています。また、産学官連携によるオリジナル商材の開発や、人材の確保・育成にも注力し、持続的な成長を図ります。
* 海外売上高目標を30億円
* 高付加価値製品・サービスの開発と販売
* 原反・消耗品の販売強化
* 連結グループ会社の経営一元管理体制推進
* 業界のリーダーとしての自覚を持ち新たな時代の先頭に立ち行動
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
少子高齢化や働き方の多様性に対応し、優秀な人材の確保と育成を重要課題としています。社員の定着率向上を図るため、人材育成の拡充や採用戦略の強化に取り組んでいます。また、多様な人材の採用・登用を行い、性別に関係なく能力・適性に基づいた採用や、ワークライフバランスに配慮した取り組みを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月期 | 42.0歳 | 13.3年 | 5,155,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 29.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 86.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 74.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める女性社員の比率(34%)、新入社員の女性採用の比率(11%)、パート社員からの正社員の登用(7名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 漁業者の経営リスク
主要事業である漁網の製造販売等は、漁業者の経営動向に左右されます。異常気象による漁獲量減少、魚価の下落、原油高による費用増加、漁獲量制限などの要因で漁業者の経営が悪化した場合、製品の買い控えや売上債権の回収長期化につながり、同社グループの業績や財務内容に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 原材料の調達
同社グループの漁網製品の主原材料である原糸の大半は石油精製品に依存しています。原油価格が高騰した場合、原材料の調達価格が上昇し、同社グループの業績と財務内容に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 調達金利の上昇
同社グループの有利子負債は総資産に占める割合が高水準となっています。そのため、今後市場金利が上昇した場合には、支払利息などの金融コストが増加するリスクがあります。
■(4) 為替変動
海外売上高の割合が徐々に増加しており、為替変動の影響を受けます。特に急激な円高が進行した場合などには、業績に悪影響を与える可能性があります。



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