※本記事は、株式会社マツモト の有価証券報告書(第37期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. マツモトってどんな会社?
マツモトは、学校卒業アルバムの製造販売を主力とし、企画から製本までの一貫生産体制を持つ印刷会社です。
■(1) 会社概要
同社は1949年に母体となる合資会社松本写真印刷社が設立され、1989年に現商号へ変更しました。1994年に株式を店頭登録し、2004年にはジャスダック証券取引所へ上場しています。2013年には大阪証券取引所と東京証券取引所の統合に伴い東証JASDAQ(スタンダード)へ上場し、2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行しました。
同社(単体)の従業員数は187名です。筆頭株主は同社取締役会長の松本敬三郎氏で、第2位は代表取締役社長の松本大輝氏、第3位は投資ファンドであるBrand New Retail Initiative Fundです。創業家が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松本 敬三郎 | 11.78% |
| 松本 大輝 | 5.59% |
| Brand New Retail Initiative Fund | 4.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松本大輝氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松本 大輝 | 代表取締役社長 | 2007年富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション)入社。2008年同社入社。東京営業所長、常務取締役営業本部長を経て2022年より現職。 |
| 松本 敬三郎 | 取締役会長 | 1975年松本写真印刷社入社。1989年同社専務取締役、1992年代表取締役社長を経て2022年より現職。 |
| 柳川 尚 | 常務取締役 | 1982年大日本スクリーン製造(現SCREENホールディングス)入社。富士フイルムグラフィックソリューションズ常務執行役員などを経て2024年より現職。 |
| 德永 和敏 | 取締役 | 1986年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。明菱取締役などを経て2022年同社入社、顧問を経て同年より現職。 |
社外取締役は、杉本佳彦(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「学校アルバム」および「一般商業印刷」事業を展開しています。
■学校アルバム事業
主力製品である学校向けの卒業記念アルバムを製造・販売しています。全国の学校を顧客とし、企画、撮影、編集、製版、印刷、製本までの一貫した生産体制を構築しています。
収益は、学校や保護者からのアルバム代金によって得ています。運営は主にマツモトが行っており、少子化による市場縮小に対応するため、短納期・高品質化やAIを活用した編集の効率化を進めています。
■一般商業印刷事業
ポスター、カタログ、パンフレット等の一般商業印刷物を製造するほか、デジタル写真アルバム、自費出版、印刷通信販売、写真プリント販売等のインターネット関連事業も手掛けています。
収益は、一般企業や個人顧客からの印刷物製造代金やサービス利用料から得ています。運営はマツモトが行っており、従来の紙媒体に加え、ホログラム印刷などの高付加価値商品やWeb3.0事業などの新規領域にも取り組んでいます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は22億円前後で推移しており、成長は停滞傾向にあります。利益面では赤字計上が続いており、特に直近2期は原材料高騰やコスト増により損失幅が拡大しています。2025年4月期は営業損失および当期純損失となり、厳しい経営状況が続いています。
| 項目 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 23億円 | 23億円 | 22億円 | 22億円 | 22億円 |
| 経常利益 | -3.4億円 | -1.9億円 | 0.3億円 | -1.4億円 | -2.6億円 |
| 利益率(%) | -15.2% | -8.0% | 1.5% | -6.2% | -12.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3.9億円 | -12.9億円 | 0.7億円 | -0.9億円 | -6.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となりましたが、売上総利益は大幅に減少しました。売上原価の増加や販管費の負担増により、営業損失は前期の1.5億円から2.7億円へと拡大しています。売上総利益率も14.8%から11.0%へ低下しており、収益性の悪化が顕著です。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 22億円 | 22億円 |
| 売上総利益 | 3.3億円 | 2.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.8% | 11.0% |
| 営業利益 | -1.5億円 | -2.7億円 |
| 営業利益率(%) | -6.6% | -12.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が1.7億円(構成比33%)、その他経費が1.5億円(同29%)を占めています。また、売上原価は19億円で、売上高に対する構成比は89%に達しており、高い原価率が利益を圧迫しています。
■(3) セグメント収益
学校アルバム部門は少子化や競争激化の影響を受け、売上高が減少しました。一方、一般商業印刷部門は新商品の投入や新規顧客の獲得により増収となりましたが、全体としての減収を補うには至りませんでした。
| 区分 | 売上(2024年4月期) | 売上(2025年4月期) |
|---|---|---|
| 学校アルバム | 18億円 | 17億円 |
| 一般商業印刷 | 4億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 22億円 | 22億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の収益力が低下し営業キャッシュ・フローがマイナスとなる中、設備投資や財務活動でも資金が流出しており、資金繰りが逼迫している「末期型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.7億円 | -1.4億円 |
| 投資CF | -0.8億円 | -0.6億円 |
| 財務CF | -2.8億円 | -1.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-57.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.4%で市場平均(スタンダード市場製造業平均57.5%)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は情報産業の一翼を担う印刷産業として、「印刷とITの融合」をテーマに掲げています。各種メディアに対応し、印刷業界において常に新技術の開発・導入を図ることで、各分野におけるパイオニアとなることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、最新技術の開発・導入を重視する文化を持っています。ペーパーレス化が進む経営環境の変化に対応するため、従来の紙を主体とする印刷から情報産業への収益構造改革を進めており、インターネット関連事業など新たな分野への取り組みを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、「売上高の拡大」および「営業利益の継続的な黒字化」を目指しています。具体的な数値目標は記載されていませんが、収益基盤の拡充と安定化を最優先課題としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的には情報メディアのデジタル化に対応し、インターネット関連事業の伸長に積極的に取り組んでいます。短期的には最新型インクジェットプリンターによる小ロット・短納期体制の強化や、ホログラム印刷などの戦略的商品の販売促進を図ります。
* 学校アルバム販売価格の適正化による収益改善
* 営業費用の削減(人件費、経費の見直し)
* 自律的な資金調達の実施(保有資産の売却や収益化)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的運営のために社内人材の活性化を重視しており、人材の多様性確保と自律的人材の育成を最大のリスク管理と位置づけています。各部門に多様なバックグラウンドを持つ人材を外部採用するとともに、従来の社内研修に加え、他社社員も参加する外部教育・研修機関への派遣を開始し、多様な視点を持つ人材の育成を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月期 | 43.7歳 | 15.4年 | 4,146,088円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 継続企業の前提に関する重要事象等
同社は2期連続の営業損失および当期純損失を計上し、3期連続で営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスの状況です。手元資金の減少により資金繰りに懸念があり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しています。これに対し、価格適正化や費用削減、資金調達などの解消策を進めています。
■(2) 少子化によるリスク
売上高の約8割を占める学校アルバム事業は、少子化による生徒数や学校数の減少により市場縮小が続いています。同業他社との競争も激化しており、厳しい経営環境が見込まれます。同社は短納期・高品質化やAI活用による生産効率化で競争優位性の確立を図っています。
■(3) 情報メディアのデジタル化によるリスク
一般商業印刷部門では、ペーパーレス化の加速により紙媒体の需要減少が予想されます。同社は「印刷とITの融合」を掲げ、デジタル写真アルバムや自費出版サービス、Web3.0事業などのインターネット関連事業を強化することで構造転換を進めています。
■(4) 固定資産の減損リスク
生産設備や土地などの固定資産を保有しており、事業環境の変化により将来キャッシュ・フローが減少した場合、減損損失が発生する可能性があります。実際に2025年4月期には特別損失として減損損失を計上しており、経営成績に影響を与えています。



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