※本記事は、マツモトの有価証券報告書(第38期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. マツモトってどんな会社?
学校向けの卒業記念アルバムの製造販売を主力とし、インターネット関連事業も手掛ける印刷会社です。
■(1) 会社概要
1949年に合資会社松本写真印刷社として設立され、1989年にニュー北九州との合併により現在のマツモトに商号変更しました。1994年に株式を店頭登録し、その後2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。現在は学校向け卒業記念アルバムを主力としつつ、各種インターネット関連事業にも注力しています。
従業員数は164名です。筆頭株主は投資事業組合で、第2位および第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Brand New Retail Initiative Fund | 9.93% |
| 中村 規 | 8.83% |
| 松本 敬三郎 | 7.62% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松本大輝氏が務めており、社外取締役の比率は約17%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松本大輝 | 代表取締役社長 | 2007年富士ゼロックス入社。2008年同社入社、2009年常務取締役営業本部長を経て、2022年より現職。 |
| 柳川尚 | 常務取締役アルバム・新規事業営業推進本部長 | 1982年大日本スクリーン製造入社。富士フイルム関連会社で要職を歴任後、2024年同社入社し同年より現職。 |
社外取締役は、杉本佳彦(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社は「印刷事業」の単一セグメントですが、主に以下の製品・サービスを展開しています。
■学校アルバム事業
同社は、学校向けの卒業記念アルバムを主力製品として製造販売しています。少子化の影響を受けつつも、顧客ニーズに合わせた多様なタイプのアルバムや、短納期・高品質な製品を教育機関向けに提供しています。
収益は、学校などから受け取る卒業記念アルバムの制作・販売代金が主な源泉です。企画から製版、印刷、製本までの全工程を一貫して自社の最新設備で行う体制を敷いており、事業の運営は同社が単独で行っています。
■一般商業印刷およびインターネット関連事業
ポスター、カタログ、パンフレットなどの一般商業印刷物の製造販売に加え、デジタル写真アルバム、写真プリント販売、自費出版サービス、印刷通信販売などのインターネット関連事業を展開しています。
一般企業や個人顧客から受け取る印刷代金やサービス利用料が主な収益源です。情報メディアのデジタル化に対応するため、ITと印刷を融合させた各種インターネットサービスを拡充しており、同社が事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は少子化やペーパーレス化の影響により漸減傾向にあり、21億円から23億円付近で推移しています。経常利益は厳しい市場環境からマイナスが続く年度が多いものの、直近ではコスト削減や特別利益の計上により最終黒字を確保しています。
| 項目 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 23億円 | 22億円 | 22億円 | 22億円 | 21億円 |
| 経常利益 | -2億円 | 0億円 | -1億円 | -3億円 | -1億円 |
| 利益率(%) | -8.0% | 1.5% | -6.2% | -12.1% | -4.0% |
| 当期利益 | -13億円 | 1億円 | -1億円 | -7億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年比で微減となったものの、労務費の減少や減価償却費の減少による製造原価の低減が進み、売上総利益および営業利益は改善傾向を示しています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 22億円 | 21億円 |
| 売上総利益 | 2億円 | 4億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.0% | 16.5% |
| 営業利益 | -3億円 | -2億円 |
| 営業利益率(%) | -12.2% | -7.5% |
販売費及び一般管理費(5.1億円)のうち、給料及び賞与が1.7億円(構成比32%)、役員報酬が0.5億円(同9%)を占めています。売上原価(17.7億円)は、労務費が7.7億円(構成比44%)、材料費が5.2億円(同29%)となっています。
■(3) セグメント収益
学校アルバム部門は少子化等により横ばい傾向が続く一方、一般商業印刷部門はペーパーメディア需要の変化を受けて売上が減少しています。
| 区分 | 売上(2025年4月期) | 売上(2026年4月期) |
|---|---|---|
| 学校アルバム | 17億円 | 17億円 |
| 一般商業印刷 | 4億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 22億円 | 21億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがマイナス、投資CFと財務CFがプラスとなっており、本業の資金流出を資産売却や資金調達で補う救済型のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1億円 | -3億円 |
| 投資CF | -0.6億円 | 5億円 |
| 財務CF | -1億円 | 3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、情報産業の一翼を担う印刷産業として各種メディアに対応し、「印刷とITの融合」をメインテーマに掲げています。印刷業界において常に新技術の開発や導入を図り、各分野におけるパイオニアとなることを目指す経営スタンスを持っています。ペーパーレス化が進む中で、情報産業への構造改革を志向しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業活動を取り巻く自然環境を永続的に保つことが、持続的発展に結びつくと認識し、省エネや環境負荷低減に取り組む文化を持っています。また、社内人材の活性化を重視し、単一志向に陥らないような人材の多様性の確保や、自律的な人材を育成する風土づくりを大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高の拡大および営業利益の継続的な黒字化を目指しています。厳しい市場環境や季節変動による影響を乗り越え、価格の適正化やコスト削減を通じて収益基盤を強化し、安定した黒字体質の構築を経営目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的には紙からデジタルへの情報媒体の変化に対応すべく、インターネット関連事業の伸長や教育分野での新サービス「DAT構想」の推進に取り組んでいます。短期的には以下の重点施策を通じて収益性の改善を図ります。
・学校アルバム販売価格の適正化による収益改善
・労務費および人件費の削減
・拠点の集約や売却等による効率化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を重要な経営資源と位置づけ、AI・デジタル時代を支える専門人材の確保と育成に注力しています。AIを活用した業務改善を推進できるリーダーの計画的育成や、生産性向上による働きやすい職場環境の実現を目指しています。また、公正な評価制度に基づく処遇やキャリア形成支援にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月期 | 45.4歳 | 16.4年 | 4,250,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 少子化による市場縮小リスク
売上高の大半を占める学校アルバム事業は、少子化に伴う学生生徒数や学校数の減少により市場規模が縮小傾向にあります。同業他社との競争も激化しており、最新設備の導入やAIを活用した省力化などによる競争力強化が求められています。
■(2) デジタル化の進展による需要減少リスク
一般商業印刷部門において、情報メディアのデジタル化やペーパーレス化の加速により、紙媒体の需要が減少する見込みです。この構造的な変化に対応するため、同社は各種のインターネット関連事業の拡充を進めています。
■(3) 固定資産の減損リスク
同社は生産設備や土地等の固定資産を多数保有しており、事業環境の悪化により将来キャッシュ・フローが著しく減少した場合、減損損失が発生して経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 学校アルバム事業における季節変動リスク
学校アルバム部門は卒業シーズンの2月、3月に年間売上の大半が集中します。一方、固定費は先行して発生するため、繁忙期に感染症の流行等で製造・納品に大幅な遅延が生じた場合、資金繰りや業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。



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