インスペック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インスペック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インスペックは東証スタンダード上場の検査装置メーカーです。半導体パッケージ基板や精密プリント基板の外観検査装置を開発・製造・販売しています。直近の業績は、半導体関連の需要回復や大型受注により前期比で大幅な増収となり、経常損益は黒字転換を果たしましたが、事業撤退損等の計上で最終損益は赤字でした。


※本記事は、インスペック株式会社 の有価証券報告書(第37期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. インスペックってどんな会社?


半導体や電子部品の製造ラインで使用される外観検査装置を主力とし、画像処理技術に強みを持つ企業です。

(1) 会社概要


1984年に創業し、1988年に有限会社として設立されました。2001年に現社名へ変更し、2006年に東証マザーズへ上場を果たしました。2017年に東証二部へ市場変更し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しました。近年では、海外市場への展開やAI技術を活用した検査精度の向上に取り組んでいます。

2025年4月末時点の単体従業員数は85名です。筆頭株主は創業者で社長の菅原雅史氏で、第2位、第3位はいずれも個人株主です。

氏名 持株比率
菅原 雅史 5.90%
緒方 顯吉 5.58%
塩谷 亮子 2.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名(女性比率20.0%)で構成されています。代表執行役員社長は菅原雅史氏です。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
菅原 雅史 代表取締役社長兼代表執行役員 1974年森永乳業入社。1984年同社創業、1988年代表取締役就任。2008年より代表取締役社長兼代表執行役員。創業以来、経営トップとして同社を牽引し、2020年より現職。
冨岡 喜榮子 常務取締役 1973年三菱電機入社。1984年同社入社。1997年取締役就任。2017年取締役兼執行役員管理本部長を経て、2022年より現職。管理部門を統括。
渡辺 晃彦 取締役兼執行役員営業部長 1985年丸紅マシナリー入社。2003年同社入社、営業部長。2016年執行役員営業統括部長を経て、2022年より現職。営業部門を統括。
菅原 亮太 取締役兼台湾英視股份有限公司董事長兼総経理 2006年東北パイオニア入社。2012年同社入社。2021年社長室長兼DI開発部長を経て、2024年より現職。台湾子会社の代表も兼務。


社外取締役は、小林英明(H2Rコンサルティング代表取締役)、土門孝彰(秋田銀行営業支援部チーフアドバイザー)、陶山さなえ(元SOMPOコミュニケーションズ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「基板検査装置関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 基板検査装置関連事業


生成AIの普及により需要が拡大しているデータセンター向けCPU・GPU用半導体パッケージ基板や、スマートフォン等のデジタル機器に使用される精密プリント基板の外観検査装置を開発、製造、販売しています。主力製品には、フラットベッド型検査装置やロールtoロール型検査装置などがあります。

収益は、顧客である基板メーカーや電子部品メーカーへの検査装置の販売代金および保守サービス料から得ています。運営は主にインスペックが行っており、台湾においては子会社の台湾英視股份有限公司が事業活動を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は年度ごとの変動が見られますが、直近は22億円規模まで回復しています。利益面では黒字と赤字を繰り返しており、安定的な収益確保が課題となっています。第37期は大幅な増収により経常利益は黒字化しましたが、最終損益は赤字となりました。

項目 2021年4月期 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期
売上高 13億円 18億円 23億円 17億円 22億円
経常利益 -3.1億円 1.3億円 0.8億円 -2.6億円 1.2億円
利益率(%) -24.4% 7.5% 3.6% -15.8% 5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -12.0億円 1.6億円 0.8億円 -3.5億円 -1.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は約1.3倍に伸長し、売上総利益も大幅に増加しました。これにより営業損益および経常損益は黒字転換を果たしました。一方で、事業撤退に伴う特別損失を計上した影響などにより、最終的な当期純損益は赤字となっています。

項目 2024年4月期 2025年4月期
売上高 17億円 22億円
売上総利益 6.1億円 9.0億円
売上総利益率(%) 36.5% 40.4%
営業利益 -2.3億円 1.1億円
営業利益率(%) -14.0% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が3.6億円(構成比45%)と高い割合を占めており、技術開発への投資を積極的に行っています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、製品別の販売状況を見ると、ロールtoロール型検査装置が大幅に伸長し、全体の売上増を牽引しました。フラットベッド型検査装置は減少しましたが、インライン検査装置は増加しました。

区分 売上(2024年4月期) 売上(2025年4月期)
基板検査装置関連事業 17億円 22億円
連結(合計) 17億円 22億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスで「健全型」に該当します。本業で得た現金で借入金の返済を進めつつ、一定の投資を行っている状態です。

項目 2024年4月期 2025年4月期
営業CF 1.1億円 5.4億円
投資CF -0.8億円 -0.7億円
財務CF 1.3億円 -6.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-17.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「確かな技術とあくなき挑戦で、創造社会を切り拓く」というパーパス(存在意義)を掲げています。このパーパスのもと、基板検査装置関連事業を通じて、創造社会の実現に貢献することを目指して経営課題に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は「社員が幸せになれる会社」への取り組みこそが創造社会の実現につながると認識しています。パーパスやバリューを日々の意思決定の指針として全従業員に浸透させ、同じ目標に向かって一丸となり、企業価値の向上を実現することを目指す組織風土を重視しています。また、人的資本への投資や働きがいのある職場環境の整備にも注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2028年4月期をゴールとした中期経営計画を策定しています。基板検査装置関連事業の成長持続と稼ぐ力の向上を図り、中長期的な目標として以下の数値を掲げています。

* 営業利益率:15%以上
* ROE(自己資本利益率):15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、基板検査装置関連事業に経営資源を集中し、高い競争力を持つ装置の開発と収益体質の強化を進めています。特に、生成AI向けに需要が拡大する半導体パッケージ基板に対応する高性能検査装置の開発や、海外市場(東アジア、東南アジア)での販売強化に注力しています。一方で、露光装置関連事業からは撤退を決断し、選択と集中を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本を最重要課題と位置づけ、次世代リーダーと高度専門人材の育成を進めています。人事評価制度の活用や階層別の教育研修制度を充実させるとともに、初任給の引き上げやベースアップを行い、従業員エンゲージメントの向上を図っています。若手からシニアまで幅広い世代が活躍できる職場づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年4月期 41.6歳 10.9年 5,855,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 100.0%
男女賃金差異(正規雇用) 62.2%
男女賃金差異(非正規雇用) -


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性雇用比率(15.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備投資需要の変動


同社の業績は、半導体や電子部品業界の設備投資動向に大きく影響を受けます。日本および主要市場である台湾、中国において、景気変動等の要因で設備投資需要が落ち込んだ場合、受注が減少し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新製品の開発・販売


同社は画像処理システムをコアとした新製品開発を行っていますが、先行投資や資源投入が必ずしも新製品・新技術の創造につながらない可能性があります。また、市場やユーザーの変化を予測できず魅力ある製品を開発できない場合、開発投資が回収できず業績に影響する可能性があります。

(3) 製品のライフサイクル


デジタル家電分野の技術革新は早く、顧客からは短期間での性能向上が求められます。同社の開発に遅れが生じ、顧客ニーズに対応しきれずに受注機会を逸した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。