ムサシ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ムサシ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ムサシは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、情報・印刷・産業機材、金融・選挙機材、紙・紙加工品の販売を手がける商社です。直近の業績は、売上高が前期比で増加したものの、経常利益や親会社株主に帰属する当期純利益は減少し、増収減益の傾向となっています。


※本記事は、株式会社ムサシ の有価証券報告書(第105期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ムサシってどんな会社?


情報・印刷、金融・選挙システム機材、紙・紙加工品などを展開し、システム構築を提案する専門商社です。

(1) 会社概要


1946年12月に文房具類等の販売を目的に武蔵商事として設立されました。その後、紙加工製品の販売や現金処理機器、選挙用機器の販売へと事業を拡大し、1991年にムサシへ社名を変更しました。2004年にジャスダック証券取引所に株式を上場し、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。

従業員数は連結で544名、単体で201名です。筆頭株主は事業会社である上毛実業で、第2位も事業会社のショウリン商事、第3位は従業員によるムサシ社員持株会となっています。

氏名 持株比率
上毛実業 20.37%
ショウリン商事 13.16%
ムサシ社員持株会 4.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性17名、女性0名の計17名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は小野貢市氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
小林厚一 代表取締役名誉会長 1972年入社。取締役綜合企画部長、常務取締役、代表取締役専務取締役などを経て、1992年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長を務め、2025年より現職。
羽鳥雅孝 代表取締役会長 1984年入社。代表取締役専務取締役経営本部長、代表取締役副社長などを経て、2013年に代表取締役社長に就任。2025年より現職。
小野貢市 代表取締役社長 1985年入社。各支店長を務めた後、取締役経営企画本部長、常務取締役、取締役副社長経営本部長などを歴任し、2025年より現職。
小林将治 専務取締役経営本部長 2009年入社。紙・紙加工事業部長などを経て、取締役、常務取締役東京第一支店長、専務取締役第一営業本部長を歴任し、2025年より現職。
羽鳥智紀 専務取締役役員室長兼グループ企業管理室長 2010年入社。経営企画部長を経て、取締役役員室長兼経営企画本部長、常務取締役役員室長などを歴任し、2023年より現職。
山本義明 取締役財務部長 1985年入社。2019年に取締役に就任し、財務部長として2019年より現職。
村田一則 取締役第一営業本部長 1985年入社。ムサシ・エービーシー取締役や名古屋支店長、東京第一支店長などを歴任し、2025年より現職。
森山明彦 取締役第二営業本部長兼東京第二支店長 1986年入社。札幌支店長や東京第二支店長を経て、2021年に取締役第二営業本部長に就任。2023年より現職。
横尾孝之 取締役紙・紙加工事業部長 1988年入社。紙・紙加工事業部営業部長などを経て、2021年に取締役に就任し、紙・紙加工事業部長として2021年より現職。
池田哲郎 取締役東京第一支店長 1987年入社。北関東支店長や取締役名古屋支店長などを歴任し、2025年より現職。
荻野勝紀 取締役大阪支店長 1993年入社。福岡支店長や大阪支店長などを経て、2025年より現職。
田島賢大 取締役名古屋支店長 1993年入社。東京第二支店長や北関東支店長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、髙原巨章(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報・印刷・産業システム機材」、「金融汎用・選挙システム機材」、「紙・紙加工品」および「不動産賃貸・リース事業等」を展開しています。

情報・印刷・産業システム機材


電子メディアやマイクロフィルム総合システムの機器・材料、印刷システムの機器・材料、産業用検査の機器・材料と保守サービスを提供しています。官公庁や自治体、民間企業を対象に業務効率化を提案しています。

機器や材料の販売、役務提供、保守サービスなどから収益を得ています。運営は主にムサシ、ムサシ・フィールド・サポート、エム・ビー・エスなどが担当しています。

金融汎用・選挙システム機材


貨幣処理システム、選挙システム、セキュリティシステムの機器および関連機材と保守サービスを提供しています。主に金融機関や全国の自治体を対象としています。

機器の販売や保守サービスから収益を得ています。運営は主にムサシ、武蔵エンジニアリング、ムサシ・フィールド・サポートが担当しています。

紙・紙加工品


印刷・出版・情報・事務用紙、紙器用板紙、特殊紙、紙加工品、感圧紙などを顧客に提供しています。

用紙や板紙、紙加工品の販売を通じて収益を得ています。運営は主にムサシ、エム・ビー・エスが担当しています。

不動産賃貸・リース事業等


不動産の賃貸業やリース業、損害保険代理業、人材事業を展開しています。

不動産の賃貸料やリース料などから収益を得ています。運営は武蔵興産、武蔵エンタープライズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5年間で増減を繰り返しながらも、直近2期間は連続して増加し成長傾向にあります。一方で経常利益や当期利益については増減の波が大きく、直近の利益率は高水準を維持しているものの、微減または減少に転じています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 362億円 371億円 331億円 374億円 406億円
経常利益 18億円 27億円 11億円 47億円 47億円
利益率(%) 5.1% 7.3% 3.4% 12.7% 11.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 18億円 8億円 34億円 28億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で順調に増加しており、売上総利益も拡大しています。また、営業利益も増加し、営業利益率が上昇していることから、本業における収益性が高まっていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 374億円 406億円
売上総利益 107億円 118億円
売上総利益率(%) 28.6% 29.0%
営業利益 34億円 47億円
営業利益率(%) 9.0% 11.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料が24億円(構成比34%)、役員報酬が6億円(同8%)、厚生費が6億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


金融汎用・選挙システム機材セグメントは、衆議院議員選挙に向けた機器の販売が好調に推移し、大幅な増収となりました。一方で、情報・印刷・産業システム機材セグメントや紙・紙加工品セグメントは、需要の減少や予算縮小の影響を受け、減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
情報・印刷・産業システム機材 188億円 178億円
金融汎用・選挙システム機材 94億円 139億円
紙・紙加工品 89億円 86億円
不動産賃貸・リース事業等 3億円 3億円
連結(合計) 374億円 406億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益に加えて資産の売却等による資金で借入の返済を進める「改善型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 33億円 26億円
投資CF 23億円 5億円
財務CF -4億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も69.9%でいずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、企業理念として「人とシステムの創造と調和を実現し、健全で信頼される企業を目指し続けます」を掲げています。"特長のある商社"であることを意識し、"システム"をキーワードに、お客様の要望に合わせてソフトと先進機器を組み合わせ、価値を創造し提供することを役割としています。

(2) 企業文化


同社グループは、各社の特徴や強みを活かしたグループ経営により既存事業の強化を図りつつ、周辺分野での新規事業開拓や自社開発商品・サービスの拡充に積極的に取り組んでいます。ただ単に商品を提供するだけでなく、付加価値を持ったオリジナルの新しい商品を創り出す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


企業価値向上の観点から、収益性の継続的かつ安定的な成長を実現することを目指しています。そのため、売上高経常利益率を重要指標と位置づけています。

* 国政選挙など特需の発生しない期における連結売上高経常利益率を3%以上とすること

(4) 成長戦略と重点施策


グループ一体としてのシステム構築力や提案力の強化を図る一方で、新商品の開発や新規事業の開拓に注力し、収益力の向上と事業領域の拡大に取り組んでいます。文書のデジタル化事業における官公庁向けの電子化提案や、印刷システム機材での自社開発ソフトウェア拡販などを推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財」を経営の最も重要な資産と位置づけ、企業戦略と一体となった人的資本戦略を推進しています。能力や適性に基づくローテーションと次世代リーダー育成により人材の流動性を高めるとともに、柔軟な勤務形態の導入や多様性を尊重する職場環境の整備を進め、従業員の働きがい創出を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.0歳 20.0年 6,809,331円

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(26.3%)、希望職務マッチ率(93.5%)、社内研修の受講率(100%)、障害者雇用率(3.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報・サイバーセキュリティへの脅威


個人情報等を取り扱う中でセキュリティ管理体制を整備していますが、サイバー攻撃の高度化やサプライチェーンを通じた攻撃、不正アクセスなどにより情報漏洩やシステム障害が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償が生じるリスクがあります。

(2) 製品やサービスの欠陥・瑕疵の発生


デジタル化サービスやソフトウェアを含む製品の製造・開発において品質管理を強化していますが、欠陥や瑕疵が発生した場合、製品の回収や補修、補償に伴う費用が発生し、事業に影響を及ぼす可能性があります。

(3) ペーパーレス化等の市場環境の変動


印刷機材や紙関連部門では、デジタル化に伴う需要縮小が長期化しています。これに対し高付加価値商品などで対応を図っていますが、需要縮小が想定を超えて進んだ場合、経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 半導体等を含む原材料・部品の調達難


世界的な半導体の需給ひっ迫や地政学的緊張、各国の規制強化により、原材料や部品の供給不足・調達コスト上昇が生じる懸念があります。これにより生産の中断や遅延が発生し、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。