※本記事は、株式会社ムサシ の有価証券報告書(第104期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ムサシってどんな会社?
選挙システム機材や貨幣処理機、印刷・情報システム機材などを幅広く展開する「特長のある商社」です。
■(1) 会社概要
1946年に武蔵商事として設立され、1965年には選挙用機器の販売を開始しました。1996年に日本証券業協会へ店頭登録、2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしています。2013年には東証と大証の統合に伴い東証JASDAQ(スタンダード)へ上場し、2022年の市場区分見直しにより、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
同グループは連結533名、単体190名の従業員体制で事業を展開しています。筆頭株主は上毛実業で、第2位はショウリン商事、第3位はムサシ社員持株会となっており、上位株主には資産管理会社や関連会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 上毛実業 | 20.37% |
| ショウリン商事 | 13.16% |
| ムサシ社員持株会 | 4.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性17名、女性0名の計17名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は小野 貢市氏が務めています。社外取締役比率は5.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小林 厚一 | 代表取締役名誉会長 | 1972年入社。常務、専務を経て1992年に社長就任。2013年より会長を務め、2025年6月より現職。 |
| 羽鳥 雅孝 | 代表取締役会長 | 1984年入社。常務、専務、副社長を経て2013年に社長就任。2025年6月より現職。 |
| 小野 貢市 | 代表取締役社長 | 1985年入社。支店長、経営企画本部長、常務、副社長を経て2025年6月より現職。 |
| 小林 将治 | 専務取締役経営本部長 | 2009年入社。紙・紙加工事業部長、東京第一支店長、第一営業本部長を経て2025年6月より現職。 |
| 羽鳥 智紀 | 専務取締役役員室長兼 グループ企業管理室長 | 2010年入社。経営企画部長、役員室長等を歴任。2023年6月より現職。 |
| 山本 義明 | 取締役財務部長 | 1985年入社。2019年6月より現職。 |
| 村田 一則 | 取締役第一営業本部長 | 1985年入社。名古屋支店長、東京第一支店長を経て2025年6月より現職。 |
| 森山 明彦 | 取締役第二営業本部長兼 東京第二支店長 | 1986年入社。札幌支店長、東京第二支店長を経て2021年6月より現職。 |
| 横尾 孝之 | 取締役紙・紙加工事業部長 | 1988年入社。紙・紙加工事業部営業部長を経て2021年6月より現職。 |
| 池田 哲郎 | 取締役東京第一支店長 | 1987年入社。北関東支店長、名古屋支店長を経て2025年6月より現職。 |
| 荻野 勝紀 | 取締役大阪支店長 | 1993年入社。福岡支店長を経て2025年6月より現職。 |
| 田島 賢大 | 取締役名古屋支店長 | 1993年入社。東京第二支店長、北関東支店長を経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、髙原 巨章(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報・印刷・産業システム機材」「金融汎用・選挙システム機材」「紙・紙加工品」「不動産賃貸・リース事業等」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 情報・印刷・産業システム機材
電子メディアやマイクロフィルムシステム、印刷システム、産業用検査機器などを提供しています。官公庁や自治体、民間企業を顧客とし、文書のデジタル化や印刷機材、工業用検査機材などを販売しています。
収益は、機器・材料の販売代金や情報処理サービス料、保守サービス料などから得ています。運営は主にムサシ、ムサシ・フィールド・サポート、エム・ビー・エス、エフ・ビー・エム、ムサシ・エービーシー、ムサシ・イメージ情報、ムサシ・アイ・テクノ、ジェイ・アイ・エムなどが行っています。
■(2) 金融汎用・選挙システム機材
貨幣処理機や選挙システム、セキュリティシステムなどを提供しています。金融機関や運輸業界、地方自治体を主な顧客とし、現金処理業務の効率化や選挙事務のサポートを行っています。
収益は、貨幣処理機や投票用紙交付機、読取分類機などの機器販売代金および保守サービス料などから得ています。運営は主にムサシ、武蔵エンジニアリング、ムサシ・フィールド・サポートが行っています。
■(3) 紙・紙加工品
印刷・出版・情報・事務用紙、紙器用板紙、特殊紙、紙加工品などを提供しています。印刷会社や出版会社、一般企業などを顧客とし、多様な紙製品を販売しています。
収益は、各種用紙や加工品の販売代金から得ています。運営は主にムサシ、エム・ビー・エスが行っています。
■(4) 不動産賃貸・リース事業等
不動産の賃貸やリース、損害保険代理業、人材事業などを展開しています。グループ内外の企業や個人に対してサービスを提供しています。
収益は、不動産賃料やリース料、保険手数料などから得ています。運営は主に武蔵興産、武蔵エンタープライズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台で推移しており、当期は374億円と過去5期で最高を記録しました。利益面では、選挙需要等の有無により変動が見られますが、当期は経常利益47億円、当期純利益34億円と大幅な増益となり、利益率も大きく向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 303億円 | 362億円 | 371億円 | 331億円 | 374億円 |
| 経常利益 | 0.2億円 | 18億円 | 27億円 | 11億円 | 47億円 |
| 利益率(%) | 0.1% | 5.1% | 7.3% | 3.4% | 12.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.8億円 | 8.6億円 | 11億円 | 5.2億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しました。これに伴い、売上総利益率も改善しています。営業利益は前期の約3倍となる34億円を計上し、営業利益率は9.0%に達しました。増収効果に加え、利益率の高い製品・サービスの販売が寄与した形です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 331億円 | 374億円 |
| 売上総利益 | 81億円 | 107億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.4% | 28.6% |
| 営業利益 | 11億円 | 34億円 |
| 営業利益率(%) | 3.2% | 9.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が23億円(構成比31.2%)、役員報酬が6億円(同8.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
「金融汎用・選挙システム機材」セグメントが売上高・利益ともに倍増以上となり、全社の業績を牽引しました。選挙特需や新紙幣対応などが寄与しています。「情報・印刷・産業システム機材」も高採算機器の販売で増益を確保しました。「紙・紙加工品」は需要減少の影響を受け減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 情報・印刷・産業システム機材 | 190億円 | 188億円 | 5億円 | 8億円 | 4.4% |
| 金融汎用・選挙システム機材 | 47億円 | 94億円 | 2億円 | 21億円 | 22.6% |
| 紙・紙加工品 | 92億円 | 89億円 | 2億円 | 2億円 | 2.0% |
| 不動産賃貸・リース事業等 | 3億円 | 3億円 | 2億円 | 2億円 | 71.9% |
| 連結(合計) | 331億円 | 374億円 | 11億円 | 34億円 | 9.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ムサシのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
同社は、営業活動により潤沢な資金を獲得し、投資活動では貸付金の回収等により資金が増加しました。一方で、財務活動では配当金の支払い等により資金が使用されました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -3.2億円 | 33億円 |
| 投資CF | -34億円 | 23億円 |
| 財務CF | -3.2億円 | -4.3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、企業理念として「人とシステムの創造と調和を実現し、健全で信頼される企業を目指し続けます」を掲げています。「特長のある商社」であることを意識し、単に商品を提供するだけでなく、ソフトと先進機器を組み合わせた「システムの構築」を通じて付加価値を創造し、顧客に提供することを役割としています。
■(2) 企業文化
各社の特徴や強みを活かしたグループ経営を重視しています。また、既存事業の強化だけでなく、周辺分野における新規事業の開拓や自社開発商品・サービスの拡充に積極的に取り組む姿勢を持っています。常に安定した業績を確保できる体制の確立を目指し、変化に対応しながら挑戦を続ける風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、企業価値向上の観点から収益性の継続的かつ安定的な成長を目指しています。そのために「売上高経常利益率」を重要指標と位置づけています。
* 国政選挙など特需の発生しない期における連結売上高経常利益率:3%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
システム構築力や提案力の強化、新商品開発、新規事業開拓に注力し、収益力向上と事業領域拡大に取り組みます。情報・産業分野ではデジタル化やAI-OCR活用、印刷分野では独自商品の拡販、金融分野では内部管理強化やBPOサービス提案、選挙分野では自治体システム標準化対応、紙分野では高付加価値商品の開発を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営理念のもと、企業価値向上と持続可能な社会実現に向け、自ら考え積極的に行動する人材の育成に取り組んでいます。多様な人材確保のため、働きやすい就業環境の整備、仕事と育児等の両立支援、メンタルヘルスケア体制の強化を進め、社員が能力を発揮し活躍できる環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.3歳 | 21.4年 | 6,557,343円 |
※平均年間給与は、基準外賃金、賞与及び一時金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(38%)、社内研修の受講率(100%)、障害者雇用率(2.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報セキュリティに関するリスク
顧客企業情報や個人情報を取り扱っているため、万一情報漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、プライムマークやISMSの認証取得などを通じて管理を徹底しています。
■(2) 製品やサービスの欠陥や瑕疵に関するリスク
製造、開発、調達の各段階やサービス提供において品質管理を強化していますが、欠陥や瑕疵が発生する可能性は排除できません。万一発生した場合、製品回収や補修、補償、機会損失などが生じる可能性があります。
■(3) 市場環境変動のリスク
デジタル化に伴い、印刷物や紙に対する需要縮小が長期的に続いています。これに対し、印刷後加工分野の機器販売や自社開発ソフトウエアの拡販、高付加価値商品の取り扱いなどで対応していますが、想定を超えて需要縮小が進んだ場合、業績に影響を与える可能性があります。



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