**記事タイトル:「柿安本店転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」**
※本記事は、株式会社柿安本店の有価証券報告書(第58期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 柿安本店ってどんな会社?
同社は精肉、惣菜、和菓子、レストラン、食品事業を展開する総合食品企業です。
■(1) 会社概要
同社は1871年に牛鍋店として創業し、1968年に法人組織として設立されました。1998年には洋惣菜店舗「柿安ダイニング」の第1号店を開設し、事業を拡大しました。2004年にジャスダック証券取引所に上場し、2019年には東京証券取引所市場第一部へ上場市場を変更し、成長を続けています。
現在の従業員数は連結で853名、単体で813名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務などを行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は事業会社(金融機関)である百五銀行、第3位は創業家であり代表取締役社長を務める赤塚保正氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.90% |
| 百五銀行 | 3.90% |
| 赤塚保正 | 3.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は赤塚保正氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 赤塚保正 | 代表取締役社長 | 1989年同社入社。レストラン営業部長や常務取締役等を歴任。2006年代表取締役社長兼レストラン事業本部長に就任し、2019年より現職。 |
| 岡本卓也 | 取締役(事業本部長) | 2004年同社入社。惣菜営業部長、執行役員事業本部副本部長を経て、2021年KHフードサービス代表取締役社長。2024年より現職。 |
社外取締役は、上垣清澄(元モスフードサービス専務)、木立真直(中央大学名誉教授)、大上有衣子(JLX PARTNERS法律事務所所属弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「精肉事業」「惣菜事業」「和菓子事業」「レストラン事業」「食品事業」を展開しています。
■精肉事業
松阪牛や自社ブランド「三重柿安牛」をはじめ、全国のブランド牛肉、豚肉、鶏肉から肉加工品などを販売しています。厳選された契約牧場からの仕入れと社内一貫体制により、安全でおいしい牛肉を店舗や産地直送ギフト等で提供しています。
売上は一般消費者からの商品代金が主な収益源です。運営は同社が行っています。
■惣菜事業
百貨店を中心とした洋惣菜「柿安ダイニング」や中華惣菜「柿安上海DELI」、黒毛和牛牛めし専門店「柿安牛めし」など多様な店舗を展開しています。厳選食材を使用した出来立ての創作惣菜を提供しています。
売上は一般消費者からの惣菜・弁当等の商品代金が主な収益源です。運営は同社が行っています。
■和菓子事業
ショッピングセンター等に出店する「口福堂」で定番和菓子や季節商品を取り揃えています。また、高速道路のサービスエリアを中心に、惣菜や弁当も提供する「柿次郎」を展開し、幅広いニーズに応えています。
売上は一般消費者からの和菓子・弁当等の商品代金が主な収益源です。運営は同社が行っています。
■レストラン事業
松阪牛のすき焼などを提供する料亭「柿安」や、フードコートの「柿安 Meat Express」、中華ビュッフェ「上海柿安」などを展開しています。趣のある空間やフードコートで多彩なメニューを提供しています。
売上は来店客からの飲食代金が主な収益源です。運営は子会社であるKHフードサービスが行っています。
■食品事業
「料亭しぐれ煮」を看板商品とし、レトルト食品や瓶詰めシリーズなどを百貨店や高級スーパー向けに展開しています。伝統製法で柔らかく炊き上げたしぐれ煮は自家需要から贈答用まで幅広く利用されています。
売上は百貨店や量販店等からの商品卸売代金や一般消費者からの商品代金が主な収益源です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は439億円を記録した期を経て、直近では361億円水準で安定して推移しています。経常利益は原材料高騰等の影響を受け減少傾向にありますが、当期利益は直近で増益に転じています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 380億円 | 439億円 | 371億円 | 361億円 | 361億円 |
| 経常利益 | 33億円 | 36億円 | 22億円 | 15億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 8.7% | 8.1% | 6.0% | 4.3% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 22億円 | 13億円 | 7億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比でほぼ横ばいとなる一方、売上原価の増加等により売上総利益は微減となりました。それに伴い、営業利益および営業利益率も前期と比較してわずかに低下しています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 361億円 | 361億円 |
| 売上総利益 | 196億円 | 193億円 |
| 売上総利益率(%) | 54.2% | 53.6% |
| 営業利益 | 15億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 4.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が87億円(構成比48%)、店舗家賃が33億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
精肉事業やレストラン事業が前期比で微減となった一方、和菓子事業や食品事業は売上を伸ばしました。主力である精肉事業と惣菜事業が全社売上の多くを占めています。
| 区分 | 売上(2025年4月期) | 売上(2026年4月期) |
|---|---|---|
| 精肉事業 | 138億円 | 136億円 |
| 惣菜事業 | 128億円 | 128億円 |
| 和菓子事業 | 66億円 | 69億円 |
| レストラン事業 | 13億円 | 13億円 |
| 食品事業 | 15億円 | 15億円 |
| その他事業 | 0.0億円 | - |
| 連結(合計) | 361億円 | 361億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.6%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 15億円 |
| 投資CF | -30億円 | -7億円 |
| 財務CF | -9億円 | -8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は『おいしいものをお値打ちに提供する』を経営理念として掲げています。徹底しておいしさの追求を行うとともに、潜在ニーズの掘り起こしを新業態や新商品の開発により行い、事業の新陳代謝を図ることを経営の基本方針として定めています。変化する消費者のニーズに柔軟に対応する総合食品企業を目指しています。
■(2) 企業文化
おいしさの追求を同社の原点として位置づけ、企業メッセージを『おいしさ、育む。』と表現しています。『素材へのこだわり』『職人の技と発想』『おもてなしの心』を大切にし、伝統が培った『柿安のこだわり』を実践することで、お客様に高い価値を感じていただけるような商品と接客サービスの提供に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は『豊かな食文化の創造』を通じて地域の食文化の醸成に貢献し、持続的に事業を成長させることを目指しています。強固な経営基盤の獲得と確かな収益性の向上を測る重要な指標として『売上高営業利益率』を位置づけており、収益性の維持向上に努めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
原材料や人件費の高止まりなど厳しい経営環境が続く中、既存店を中心とした業務の見直しや効率化を図り、全社的なコスト削減活動を徹底することで堅調な利益確保を目指しています。また、155周年の歴史を支えてきた『おいしさ』『おもてなし』『こだわり』を大切にしながら、新業態や販路拡大などの成長戦略にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人財こそが会社にとっての最大の資産であり、価値創出の源泉であると位置づけています。『人財が集まり、人財が成長する』というサイクルが回る会社を目指し、多様性と専門性の2軸で人財の獲得と育成を進めています。挑戦し続ける自走型の人財と組織を作り上げ、柿安ブランドの永続性を実現することを方針としています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月期 | 44.0歳 | 12.5年 | 5,025,623円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.9% |
| 男性育児休業取得率 | 20.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 46.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 90.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(4.3%)、60歳以上雇用比率(16.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品の安全性と風評被害に関するリスク
異物混入や食中毒、産地偽装等の食品衛生に関する問題が発生した場合、回収費用や訴訟により収益に影響を及ぼす可能性があります。また、家畜感染症など社会的な問題による安定調達への影響や、「食の安全性」に対する不安から買い控えが起こるリスクを抱えています。
■(2) 原材料の価格変動に関するリスク
食品衛生問題による輸入停止や自然災害、世界情勢による物流費の高騰などにより、畜産物や農作物の市場価格が大幅に変動する可能性があります。これらの原材料の調達価格や生産原価が影響を受けることで、同社グループの経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 人財の確保及び育成に関するリスク
積極的な店舗展開を行うためには、店舗運営の経験を持った人財の確保と育成が重要な課題です。求人・採用の強化や研修制度の充実に取り組んでいますが、人財の確保・育成が出店スピードに追いつかない場合、同社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 新規出店計画に関するリスク
商圏人口や賃料などを調査し、投資採算性を勘案して新規出店を行っていますが、景気動向や消費者の嗜好の変化により店舗が不採算化するリスクがあります。これに伴う退店や業態変更、出店立地の確保に支障が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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