トーエル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーエル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーエルはスタンダード市場に上場し、LPガスを中心としたエネルギー事業と、アルピナやハワイ産ウォーターなどのピュアウォーターを製造・販売するウォーター事業を展開しています。直近の業績は、売上高がわずかに減少したものの、顧客件数の増加や業務効率化により、経常利益・当期純利益ともに増益を達成しています。


※本記事は、株式会社トーエルの有価証券報告書(第63期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トーエルってどんな会社?


同社はエネルギー事業とウォーター事業を中心に、ライフラインを支える地域密着型企業です。

(1) 会社概要


1963年にLPガス小売業を目的として設立され、1999年にトーエルへ社名変更しました。2002年にハワイウォーター事業を立ち上げ、2006年からは国産ピュアウォーターの製造を開始しています。2013年に東証一部に指定され、2022年にスタンダード市場へ移行しました。

従業員数は連結450名、単体245名です。筆頭株主はMONYで、第2位はミナックス、第3位は創業家の役員である中田みち氏です。

氏名 持株比率
MONY 11.90%
ミナックス 8.33%
中田 みち 8.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役会長CEOに中田みち氏、代表取締役社長執行役員に横田孝治氏が就いています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
中田 みち 代表取締役会長CEO(最高経営責任者) 1986年同社入社。1996年取締役、2006年専務取締役、2010年代表取締役社長COOなどを歴任し、2018年より現職。
横田 孝治 代表取締役社長執行役員 1992年同社入社。2007年取締役、2016年取締役副社長などを歴任。2018年に代表取締役社長に就任し、現在に至る。
後藤 真 取締役副社長執行役員営業本部長 2013年同社入社。2014年営業本部LPG営業部長および取締役に就任。2016年専務取締役を経て、2018年より現職。
室越 義和 専務取締役執行役員 1986年東京興発入社、2001年同社入社。2009年取締役、2013年常務取締役などを歴任し、2018年より現職。
敷地 晃 専務取締役執行役員供給本部長 1997年同社入社。2010年ウォーター部門生産品質管理部長などを経て、2018年供給本部長。2025年より現職。
渋谷 成寿 常務取締役執行役員営業本部副本部長 1996年同社入社。2010年製造物流部門製造部長、2012年取締役を経て、2026年営業本部副本部長に就任し、現在に至る。
牧野 宏道 取締役執行役員ウォーター業務本部長 2021年同社入社。ITシステム室理事、執行役員などを経て、2024年ウォーター業務本部長および取締役に就任し、現在に至る。
八尋 敏行 取締役執行役員LPG保安・工事本部長内部統制委員会委員長 1995年同社入社。2018年エンジニアリング本部長および取締役に就任。2026年よりLPG保安・工事本部長として現職。
稲永 昌也 取締役(監査等委員) 1992年同社入社。1996年取締役、2016年専務取締役などを経て、2018年に取締役に就任し現職。


社外取締役は、谷口五月(平野・谷口法律事務所弁護士)、枝村和道(枝村和道税理士事務所税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギー事業」および「ウォーター事業」を展開しています。

(1) エネルギー事業


LPガスおよび関連器具の卸売や小売、それに付随する配管等工事、保安管理、顧客サービス業務などを提供しています。一般家庭用や業務用の大口顧客などを対象としています。

顧客のLPガス使用量に基づく料金や、ガス関連器具の販売代金から収益を得ています。運営は主に同社が行うほか、LPガス容器再検査などはLPG物流が、コールセンター業務などはTOMが担当しています。

(2) ウォーター事業


国産ピュアウォーター「アルピナ」とハワイ産ピュアウォーター「Pure Hawaiian」の製造・販売を行っています。リターナブルやワンウェイなどの専用ボトルで顧客へ宅配しています。

ウォーター商品の販売代金から収益を得ています。国産ウォーターの製造はアルプスウォーターが、ハワイ産ピュアウォーターの製造はTOELL U.S.A. CORPORATIONが担当し、商品の販売は同社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は260億円から270億円台で安定して推移しています。経常利益も21億円から29億円規模で推移しており、当期は顧客件数の増加などにより増益となっています。

項目 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期 2026年4月期
売上高 259億円 279億円 271億円 274億円 270億円
経常利益 22億円 25億円 29億円 23億円 25億円
利益率(%) 8.4% 8.8% 10.6% 8.3% 9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 15億円 19億円 9億円 15億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高はわずかに減少していますが、売上総利益と営業利益は増加しています。原価率の低減や販売効率の向上が利益率の改善に寄与しています。

項目 2025年4月期 2026年4月期
売上高 274億円 270億円
売上総利益 107億円 109億円
売上総利益率(%) 39.1% 40.3%
営業利益 19億円 20億円
営業利益率(%) 7.1% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が25億円(構成比29%)、減価償却費が6億円(同7%)、業務委託料が5億円(同5%)を占めています。売上原価(161億円)は売上高に対して60%を占めています。

(3) セグメント収益


エネルギー事業はLPガス輸入価格の低下による販売価格低下で減収となったものの、顧客件数増により増益を確保しました。ウォーター事業は物流コストや広告宣伝費の増加により減益となっています。

区分 売上(2025年4月期) 売上(2026年4月期) 利益(2025年4月期) 利益(2026年4月期) 利益率
エネルギー事業 206億円 203億円 20億円 22億円 10.7%
ウォーター事業 67億円 68億円 13億円 12億円 18.0%
連結(合計) 274億円 270億円 19億円 20億円 7.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスであり、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業です。

項目 2025年4月期 2026年4月期
営業CF 25億円 33億円
投資CF -8億円 -11億円
財務CF -22億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.8%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは創業以来、「商いは全ての人に仕えること」を企業理念として掲げています。ライフライン事業を中心に、地域密着型経営を目指し、顧客や地域社会、株主などすべてのステークホルダーを尊重しながら持続可能な社会の実現と企業価値の向上に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


社員の行動規範(バリュー)として、ライフライン事業者としての「安全」「安心」「安定供給」を第一主義に掲げる地域貢献企業を標榜しています。自社配送にこだわり、社員による対面チャネルの強みを活かすことで、顧客とのリレーションシップを強化しサービスを充実させる文化が定着しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長と安定した収益性を目指す観点から、主な経営指標としてセグメント別の売上高および営業利益を重視しています。また、女性の管理職登用については一般事業主行動計画において、現在約21%である女性管理職の割合を2028年3月までに25%以上とする目標を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


物流事業での競争力を成長戦略の中心に置き、大型タンクローリーの導入等による物流密度の向上と効率化を図っています。ガス、水、電気、通信をパッケージ化した商品の拡販に注力するほか、ブランディング戦略や広告媒体の活用で顧客基盤を関東圏に集中させ、コスト競争力を高める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業戦略と密接に連動する人材投資を推進し、新卒・中途の継続的な採用に加え、性別や国籍などの多様な背景を持つ人材を公平に評価し登用する方針です。未経験者やシニア層でも活躍できるよう、社内トレーニングセンターを活用した積極的な研修や育成を行い、働きがいのある職場環境づくりに努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年4月期 45.2歳 13.7年 5,519,346円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.1%
男性育児休業取得率 45.5%
男女賃金差異(全労働者) 66.4%
男女賃金差異(正規労働者) 63.7%
男女賃金差異(非正規労働者) 81.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) LPガスの売上原価変動リスク


LPガスはその大半を輸入に依存しているため、地政学的要因や需給バランス、為替変動の影響を受けます。卸売等の大口顧客とは輸入価格連動性を採用していますが、一般家庭用は価格改定に慎重を期すため、売上原価の変動が販売価格に反映されるまでにタイムラグが生じ、利益に影響を与える可能性があります。

(2) ウォーター事業の供給に対するリスク


自社工場での徹底した品質管理と安定供給に努めていますが、特にハワイ工場で製造する商品からの輸入については、長距離海上輸送に伴う諸々のリスクが存在します。輸送上の問題が発生した場合、商品供給に支障をきたす恐れがあります。

(3) 業績に及ぼす季節変動リスク


エネルギー事業は冬季に需要のピークを迎え、ウォーター事業は夏季に需要のピークとなります。両事業は季節間の需要格差を補完し合う関係にありますが、冷夏や暖冬といった異常気象に見舞われた場合は、想定通りの需要が得られず業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 個人情報の管理リスク


顧客の個人情報を自社の情報管理システムで管理しています。情報漏洩防止のために厳格な管理と法令遵守に努めていますが、万一大規模な情報の流出等が生じた場合には、企業の信用の失墜や損害賠償金の支払いなどにより、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。