※本記事は、株式会社アインホールディングス の有価証券報告書(第56期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アインホールディングスってどんな会社?
調剤薬局チェーンを中核に、コスメティックストアやインテリアショップ等の物販事業も展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
1969年に第一臨床検査センターとして設立され、1993年に薬局事業へ参入しました。1998年に現在の主力事業会社となるアインファーマシーズへ商号変更し、2002年にはコスメティックストア「アインズ&トルペ」の出店を開始しています。2015年に持株会社体制へ移行し現社名となりました。2024年には株式会社Francfrancを子会社化し、リテール事業を拡大しています。
2025年4月30日現在、連結従業員数は13,009名、単体では169名です。筆頭株主は代表取締役社長の大谷喜一氏で、第2位は資本業務提携先であるセブン&アイ・ホールディングス、第3位は投資ファンドのオアシス・ジャパン・ストラテジック・ファンド・リミテッドとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大谷 喜一 | 9.17% |
| 株式会社セブン&アイ・ホールディングス | 7.78% |
| OASIS JAPAN STRATEGIC FUND LTD. (常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店カストディ業務部) | 7.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性6名の計14名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長は大谷喜一氏が務めています。取締役会における社外取締役の比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大谷 喜一 | 代表取締役社長 | 1980年オータニ(現同社)社長。1983年第一臨床検査センター(旭川市、現同社)社長。1988年5月より現職。 |
| 首藤 正一 | 代表取締役専務開発統括及び医薬運営統括管掌 | 1982年入社。経営企画室長、医薬事業部長、専務取締役等を歴任。2015年代表取締役専務、2024年5月より現職。 |
| 水島 利英 | 代表取締役専務業務サポート及びデジタル推進管掌兼 リテール運営統括本部長 | 1986年入社。物販事業部長、管理本部長等を歴任。ホールセールスターズ社長兼任。2015年代表取締役専務、2024年10月より現職。 |
| 大石 美也 | 代表取締役専務渉外担当 | 1993年ダイチク取締役。同社社長、アインメディカルシステムズ社長等を歴任。2015年運営統括本部長。2023年7月より現職。 |
| 木明 理絵子 | 取締役人事本部長 | 1995年入社。物販事業部商品部長、アユーララボラトリーズ社長等を歴任。2014年取締役。2022年5月より現職。 |
| 髙倉 信行 | 取締役サステナビリティ推進本部長 | 1981年厚生省入省。年金管理審議官等を歴任。帝人グループ執行役員を経て2020年入社。2025年5月より現職。 |
社外取締役は、遠藤典子(慶應義塾大学大学院特任教授)、栗山英樹(北海道日本ハムファイターズCBO)、綿引万里子(元名古屋高等裁判所長官)、服部暢達(早稲田大学大学院客員教授)、木村成樹(セブン&アイ・ホールディングス代表取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファーマシー事業」、「リテール事業」および「その他の事業」を展開しています。
■ファーマシー事業
主に調剤薬局の経営および開設に係るコンサルティング等を行っています。処方箋に基づき調剤を行う保険調剤薬局事業として、医療機関との連携や在宅医療への対応を進め、地域医療のインフラとしての役割を担っています。
収益は、患者に対する調剤・投薬等のサービス提供対価として、患者本人からの自己負担分および社会保険診療報酬支払基金等からの給付分を受け取るモデルです。運営は主に株式会社アインファーマシーズ、株式会社アイン北陸、株式会社アイン中央、株式会社アイン信州、株式会社ファーマシィなどが行っています。
■リテール事業
コスメティックストア「アインズ&トルペ」やインテリアショップ「Francfranc」の経営を行っています。コスメを中心とした独自性のある商品構成や、家具・インテリア雑貨の企画・製造・販売を一貫して行うことで、他社との差別化を図っています。
収益は、一般消費者への商品販売による代金です。運営は主に株式会社アインファーマシーズ(アインズ&トルペ事業)および株式会社Francfrancが行っています。
■その他の事業
化粧品や飲食料品の販売、建物の賃貸等を行っています。
収益は、商品の販売代金や不動産の賃貸料収入などです。運営は主に株式会社アインファーマシーズ、株式会社アユーララボラトリーズなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近の2025年4月期は前期比で大幅な増収となりました。一方、利益面では2024年4月期まで拡大基調でしたが、2025年4月期は経常利益、当期純利益ともに減少しており、増収減益となりました。利益率は4%前後で推移しています。
| 項目 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,973億円 | 3,162億円 | 3,587億円 | 3,998億円 | 4,568億円 |
| 経常利益 | 126億円 | 160億円 | 171億円 | 214億円 | 181億円 |
| 利益率(%) | 4.3% | 5.1% | 4.8% | 5.3% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 67億円 | 71億円 | 92億円 | 114億円 | 93億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上総利益率の低下や販管費の増加により、営業利益および営業利益率は低下しました。事業規模の拡大に伴い売上総利益額自体は増加しています。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,998億円 | 4,568億円 |
| 売上総利益 | 595億円 | 744億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.9% | 16.3% |
| 営業利益 | 204億円 | 169億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が142億円(構成比25%)、地代家賃が87億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ファーマシー事業は堅調に推移し増収となりましたが、利益は減少しました。リテール事業はFrancfrancのグループ入りにより売上が倍増し、利益も大きく伸長しました。
| 区分 | 売上(2024年4月期) | 売上(2025年4月期) | 利益(2024年4月期) | 利益(2025年4月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ファーマシー事業 | 3,576億円 | 3,848億円 | 276億円 | 243億円 | 6.3% |
| リテール事業 | 311億円 | 610億円 | 31億円 | 48億円 | 7.9% |
| その他の事業 | 112億円 | 110億円 | 0.5億円 | 0.0億円 | 0.0% |
| 調整額 | -0.5億円 | -0.5億円 | -94億円 | -110億円 | - |
| 連結(合計) | 3,998億円 | 4,568億円 | 214億円 | 181億円 | 4.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「積極型」です(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 230億円 | 231億円 |
| 投資CF | -157億円 | -659億円 |
| 財務CF | -51億円 | 211億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「すべては、お客さまの元気と笑顔のために」をグループ・ステートメント(企業理念)として掲げています。また、これまで培ってきた知見とサービスを通じて人々の健康と生活に貢献することを使命とし、ステークホルダーから「この街にアインがあって良かった」と実感される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
「健康でありたい」「自分らしくありたい」という多様化・高度化するニーズに対し、柔軟かつ的確に対応することを重視しています。常に相手の想いに寄り添う「ホスピタリティ」をベースに、自ら考え実践し、提案と挑戦を積み重ねて進化し続ける姿勢を求めており、良識と倫理観を持った企業活動を行うことを文化としています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは中長期ビジョン「Ambitious Goals 2034 1兆円への果敢なる挑戦と革新の10年」を発表しています。以下の数値目標を掲げています。
* 2030年4月期:売上高7,000億円、売上高純利益率4.0%、ROE13.0%
* 2034年4月期:売上高1兆円、売上高純利益率4.0%、ROE15.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
ファーマシー事業では、積極的な出店とM&A、DX推進による効率化を進め、次世代薬局の創出を目指しています。リテール事業では、アインズ&トルペとFrancfrancのシナジー発揮や好立地への出店、EC強化を図ります。全体として、人的資本投資やサステナビリティ経営を推進し、事業規模の拡大と企業価値向上に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員一人ひとりの多様性を尊重し、能力を最大限発揮できる環境整備を推進しています。「ホスピタリティ」をベースに自ら考え進化し続ける人材を求め、育成しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンを重要課題とし、女性活躍推進や人権課題への対応、育児・介護との両立支援など、多様な社員が活躍できる仕組みを構築しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月期 | 43.8歳 | 11.3年 | 7,485,000円 |
※平均年間給与は、正社員の税込支払給与額であり、賞与及び基準外賃金を含め、通勤手当は含めておりません。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 33.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 67.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 70.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 59.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(7.9%)、正社員数(13,009人)、月間平均残業時間(7.2時間)、有給休暇取得率(74.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 各種規制及び法制度等の変更
ファーマシー事業は診療報酬や薬価の公定価格に基づいており、国の医療費抑制策による改定が経営成績に影響を与える可能性があります。また、一般用医薬品販売の規制緩和による異業種参入や、消費税率変更に伴う薬価への転嫁状況なども、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) コンプライアンスに関わるリスク
人々の健康を担う事業のため、法令遵守は不可欠です。しかし、贈収賄や不正請求、法令違反等が発生した場合、行政処分による業務停止や社会的信用の失墜を招き、経営成績に重大な影響を与える可能性があります。特に調剤報酬請求や医薬品販売に関する規制違反は厳しく管理されています。
■(3) 業務品質・オペレーションに関わるリスク
ファーマシー事業では薬剤師が医薬品を取り扱うため、調剤過誤による医療事故のリスクがあります。重大な事故が発生した場合、社会的信用を著しく失墜させる可能性があります。同社グループはICT技術の活用や研修等により安全対策を最重要課題として取り組んでいます。
■(4) 他社との競合に関するリスク
ファーマシー事業は調剤薬局の多店舗展開を主軸としており、M&Aを含む出店政策の成否や、同業他社との競争激化が経営成績に影響を与える可能性があります。競合環境の変化により、出店計画や収益性が想定通りに進まないリスクがあります。



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