※本記事は、株式会社アインホールディングスの有価証券報告書(第57期、自 2025年5月1日 至 2026年4月30日、2026年7月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アインホールディングスってどんな会社?
同社は調剤薬局やコスメ・生活雑貨等の店舗を展開し、人々の健康と豊かなライフスタイルを支えています。
■(1) 会社概要
同社は1969年に臨床検査事業から始まり、1993年に薬局事業へ参入しました。2002年にコスメティックストアを出店し、2015年に持株会社体制へ移行して現在のアインホールディングスへ商号変更しました。近年は2024年にFrancfranc、2025年にさくら薬局グループを子会社化しています。
同社グループの従業員数は連結で17,332名、単体で182名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長の大谷喜一氏で、第2位は業務提携や資本提携関係にある事業会社のセブン&アイ・ホールディングス、第3位は機関投資家のファンドとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大谷喜一 | 9.18% |
| セブン&アイ・ホールディングス | 7.78% |
| OASIS JAPAN STRATEGIC FUND LTD. | 7.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性6名の計14名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長は大谷喜一氏が務めています。取締役11名のうち、社外取締役は5名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大谷喜一 | 代表取締役社長 | 1980年オータニ社長就任。1981年第一臨床検査センター設立、取締役。1983年同社社長。1985年同社常務。1988年より現職。 |
| 首藤正一 | 代表取締役専務 | 1982年第一臨床検査センター入社。同社経営企画室長、医薬事業部長などを経て、2015年代表取締役専務。2024年より現職。 |
| 水島利英 | 代表取締役専務 | 1986年オータニ入社。同社物販事業部長、管理本部長などを経て、2012年ホールセールスターズ社長、2015年代表取締役専務。2024年より現職。 |
| 大石美也 | 代表取締役専務 | 1993年ダイチク取締役。同社社長、アインメディカルシステムズ社長などを経て、2015年アインファーマシーズ社長。2023年より現職。 |
| 木明理絵子 | 取締役 | 1995年第一臨床検査センター入社。同社管理本部人事部長、アユーララボラトリーズ社長などを経て、2014年取締役。2022年より現職。 |
| 髙倉信行 | 取締役 | 1981年厚生省入省。厚生労働省や総務省の要職を歴任後、帝人グループの役員を経て、2020年アインファーマシーズ専務。2025年より現職。 |
社外取締役は、遠藤典子(元ダイヤモンド社副編集長)、栗山英樹(元北海道日本ハムファイターズ監督)、綿引万里子(元名古屋高等裁判所長官)、服部暢達(元ゴールドマン・サックス証券マネージング・ディレクター)、木村成樹(元セブンーイレブン・ジャパン取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファーマシー事業」「リテール事業」および「その他の事業」を展開しています。
■ファーマシー事業
同社は全国で調剤薬局の経営および開設に係るコンサルティングを展開し、処方箋に基づく調剤や投薬などの医療サービスを提供しています。また、ジェネリック医薬品等の販売や、医師・薬剤師を中心とした医療に関する人材紹介業も行っています。
収益源は、患者からの自己負担分および支払基金等から受領する調剤報酬です。運営は主にアインファーマシーズ、アイン北陸、さくら薬局、クラフトなどの事業会社が行い、コンサルティングや人材紹介はメディウェルが担っています。
■リテール事業
コスメを中心とした商品を販売するコスメティックストアと、家具やインテリア雑貨を企画から製造、販売まで一貫して行うライフスタイルショップを展開し、顧客の多様なニーズに応える高付加価値な商品を提供しています。
収益源は、店舗およびオンラインストアでの商品販売による代金収入です。運営は、アインズアンドトルペなどのコスメティックストアをアインファーマシーズなどが担い、ライフスタイルショップはFrancfrancなどが行っています。
■その他の事業
化粧品などの企画や販売、飲食料品などの販売を行う売店事業に加え、建物の賃貸などの不動産事業を展開しています。ファーマシー事業やリテール事業の基盤を活用し、グループ全体で幅広いサービスを提供しています。
収益源は、化粧品や飲食料品の販売代金収入および不動産などの賃貸収入です。化粧品の販売はアユーララボラトリーズなどが担い、不動産の賃貸などはアインファーマシーズなどが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
過去5期間の業績推移を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、事業規模の着実な拡大が見て取れます。利益面については一時的な増減があるものの、直近の決算期では経常利益が過去最高水準に達しており、積極的なM&Aや新規出店による収益力の強化が成果として表れています。
| 項目 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3162億円 | 3587億円 | 3998億円 | 4568億円 | 6478億円 |
| 経常利益 | 160億円 | 171億円 | 214億円 | 181億円 | 284億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 4.8% | 5.3% | 4.0% | 4.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 50億円 | 49億円 | 49億円 | 69億円 | 56億円 |
直近の損益状況をみると、売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も順調に増加しています。利益率の改善も進んでおり、販管費の増加を吸収して営業利益および営業利益率ともに向上を果たしました。グループ入りした子会社の寄与などにより、高い収益性を確保していることがうかがえます。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4568億円 | 6478億円 |
| 売上総利益 | 744億円 | 1089億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.3% | 16.8% |
| 営業利益 | 169億円 | 298億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 4.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が29億円(構成比23%)、減価償却費が20億円(同16%)、保守料が17億円(同14%)を占めています。
ファーマシー事業は、調剤薬局の新規出店やM&Aを通じた規模拡大により、大幅な増収を牽引しました。リテール事業においても、既存店舗の改装や新規出店、ライフスタイルショップのグループ入りなどの施策が奏功し、売上を大きく伸ばしています。その他の事業も堅調に推移し、全社的な成長に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年4月期) | 売上(2026年4月期) |
|---|---|---|
| ファーマシー事業 | 3848億円 | 5564億円 |
| リテール事業 | 610億円 | 803億円 |
| その他の事業 | 110億円 | 112億円 |
| 連結(合計) | 4568億円 | 6478億円 |
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスの「積極型」です。営業で利益を出しながら借入等で資金を調達し、事業拡大のための積極的な投資を行っている状態を示しています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も31.2%で市場平均(非製造業)を上回っています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 231億円 | 309億円 |
| 投資CF | -659億円 | -606億円 |
| 財務CF | 211億円 | 537億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「すべてはお客さまの元気と笑顔のために」を企業理念(グループ・ステートメント)として掲げています。これまで培ってきた知見とサービスを通じて、人々の健康や生活に貢献することを使命とし、社会課題の変化に柔軟かつ的確に対応することで、企業の持続的成長と社会的責任を果たすことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、常に相手の想いに寄り添う「ホスピタリティ」を基盤とした企業文化を重視しています。社員一人ひとりが自ら考え、実践し、日々の経験から学びながら挑戦を積み重ねることで、自ら進化し続ける組織を目指しています。多様なステークホルダーの視点に立ち、自律的な変革を通じて持続的な価値創出に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、積極的な出店による企業規模の拡大と資本効率の向上を重視し、中長期ビジョン「Ambitious Goals 2034 1兆円への果敢なる挑戦と革新の10年」を掲げています。変化の激しい市場環境下でも成長を続けるため、2034年4月期に向けて以下の数値目標を設定しています。
・売上高:1兆円
・EBITDA:1,000億円
・EBITDA margin:10.0%
・ROE:13.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長戦略として、ファーマシー事業では「規模と効率化で持続可能な次世代薬局を創出」を掲げ、新規出店やM&Aによる規模拡大に加え、デジタル技術を活用した業務効率化や患者向けサービスの拡充を図ります。リテール事業では「洗練された価値を発信するコンセプトストアの追求」をテーマに、複数ブランドのシナジー発揮やEC強化を通じた高付加価値な商品展開に注力し、収益性の向上とブランド力強化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資本を将来の収益基盤を形成する戦略投資と位置づけ、社員を大切にし働きがいのある会社であることを重視しています。常に相手の想いに寄り添う「ホスピタリティ」を育むとともに、多様なバックグラウンドを持つ社員が能力を最大限に発揮できるよう、多様なキャリア形成支援や評価制度の拡充に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月期 | 43.6歳 | 11.3年 | 7,610,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 34.2% |
| 男性育児休業取得率 | 92.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 73.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 62.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、独立取締役比率(45.5%)、役員賞与の指標に用いられる女性管理職比率(40.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 診療報酬・法制度の変更
ファーマシー事業の収入は厚生労働省が定める調剤報酬や薬価に依存しています。医療費抑制策による診療報酬や薬価の改定、医薬品販売に係る規制緩和の動向、消費税率の改定に伴う薬価への影響などが、同社グループの財政状況や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 医薬品に関するコンプライアンス
ファーマシー事業およびリテール事業において、医薬品医療機器等法や健康保険法などに基づく各種許認可の下で事業を展開しています。万が一、法令に違反する不正行為等が発生し、監督官庁から業務停止命令や登録取消しなどの行政処分を受けた場合、社会的信用の失墜や業績への悪影響が生じる可能性があります。
■(3) 調剤過誤などの業務品質
ファーマシー事業では、人体に影響を及ぼす医療用医薬品を取り扱うため、調剤過誤による医療事故を引き起こすリスクを内包しています。また、リテール事業で取り扱う化粧品や雑貨等においても、製品の欠陥による人身事故等が発生した場合、ブランドイメージの悪化や業績への影響が懸念されます。



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