※本記事は、株式会社Smile Holdingsの有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Smile Holdingsってどんな会社?
幼児教育事業を基盤とし、保育所や産後ケア等の総合パーソナルケアサービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
2008年にKids Smile Project(現 Smile Project)として設立され、翌2009年にプレスクール一体型保育所を開園しました。2014年には初の認可保育所を開園して事業を拡大し、2018年に株式移転により持株会社体制へ移行しました。2020年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場し、2026年にはWITHホールディングスを完全子会社化しています。
従業員数は連結で1,316名、単体で2名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の中西正文氏の資産管理会社であるエーエムカンパニーで、第2位は同氏個人、第3位は金融業を営む上田八木短資です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エーエムカンパニー | 46.80% |
| 中西正文 | 22.77% |
| 上田八木短資 | 2.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性3名、女性3名の計6名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長は中西正文氏が務めています。社外取締役の比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中西正文 | 代表取締役社長 | 1995年博報堂入社。2008年にKids Smile Projectを設立し代表取締役社長。2018年より現職。 |
| 土居亜由美 | 取締役副社長 | 1998年菱光証券入社。2009年にKids Smile Project入社。2018年より現職。 |
社外取締役は、内田恭子(フリーアナウンサー)、徳光悠太(公認会計士)、神成尚史(元東京放送取締役)、波田野馨子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「幼児教育事業」を展開しています。
■幼児教育事業
認可保育所やプレスクール一体型保育所、幼児教室、学童施設、スイミングスクールなどを運営し、非認知能力の育成を軸とした保育・幼児教育サービスを提供しています。主に未就学児や就学児を持つ家族を顧客とし、独自の教育プログラムや海外の教育アプローチを取り入れたサービスを展開しています。
収益は、認可保育所においては自治体からの施設型給付費や利用者からの延長保育料等を、認可外保育施設においては利用者から直接受け取る保育料等を源泉としています。運営は主に連結子会社であるSmile Projectが行っています。また、新規事業として産後ケアホテルや建築デザイン等のファミリーサポート領域も展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、順調な事業拡大が見て取れます。一方、経常利益は2022年3月期をピークに減少し、その後は3億円から4億円程度で推移しています。これは、新たな施設の開設や新規事業領域に対する先行投資等の費用が影響していると推察されます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 107億円 | 119億円 | 129億円 | 137億円 | 145億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 4億円 | 3億円 | 4億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 10.8% | 3.2% | 2.4% | 3.0% | 2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 2億円 | 1億円 | 2億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も増加していますが、営業利益は減少しています。これは企業規模の拡大や新規事業の立ち上げ、グループ化に伴う一時的な費用の発生などにより、販売費及び一般管理費が増加したことが影響しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 137億円 | 145億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.2% | 15.2% |
| 営業利益 | 4億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 2.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が4億円(構成比19%)、採用費が3億円(同15%)を占めています。また、売上原価のうち、給与及び手当が43億円(構成比35%)、地代家賃が16億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は幼児教育事業の単一セグメントであるため、売上高は全社業績と一致しています。既存の認可保育所における継続的な充足率向上の取り組みや、新規に開園したプレミアムスクールなどの順調な立ち上がりが、全体の売上成長に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 幼児教育事業 | 137億円 | 145億円 |
| 連結(合計) | 137億円 | 145億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業で安定して現金を創出しながら、借入等による資金調達も行い、設備投資や成長分野への投資を積極的に進める「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 6億円 |
| 投資CF | -4億円 | -10億円 |
| 財務CF | 6億円 | 14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「『家族の幸せ』と『個人の幸せ』が寄り添える社会へ」をパーパスとして掲げています。女性への負担が大きい社会の仕組みの改善や少子化の打開といった課題の解決に向け、幼児教育サービスにとどまらず、家族の生活を豊かにする総合パーソナルケアサービスを提供することを使命としています。
■(2) 企業文化
質の高い保育・幼児教育サービスの提供と、安全性の確保を何よりも重視する文化があります。子どもの命と安全を守る施設運営を基盤とし、専門家集団と連携した独自の教育プログラムの開発・実践に取り組むとともに、内部監査や不適切保育撲滅委員会を通じた多層的なリスク管理を徹底しています。
■(3) 経営計画・目標
投資家に対する約束として、期初に公表した業績予想を確実に達成していくことを最重要の数値目標に掲げています。また、事業拡大による収益基盤の強化を通じてキャッシュ・フロー創出力を高め、将来の成長投資を確保しつつ、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
補助金に依存しない民間教育サービスや新規事業への展開を重点施策としています。産後ケアサービスや建築デザイン事業の拡充に加え、グローバルスクールや海外留学支援といった国際教育領域も強化しています。また、M&Aにより療育事業や介護事業などを取り込み、事業ポートフォリオの多角化を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高品質なサービスを支える専門人材の育成と、グループ全体のシナジーを最大化する人材開発に注力しています。研修プログラムの拡充に加え、多様なバックグラウンドを持つ従業員が働きがいを感じられるよう、柔軟な働き方の導入やICT活用による業務の効率化など、ワーク・ライフ・バランスの充実に向けた環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与については、有価証券報告書に記載がありません。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 50.5歳 | 1.5年 | - |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 72.6% |
| 男性育児休業取得率 | 128.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 82.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 90.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 運営施設における事故のリスク
同社グループは施設の運営において事故が起こらないよう万全の体制で臨んでいますが、万が一重大な事故やトラブルが発生した場合には、行政処分による営業停止や園児の転園などが生じる可能性があり、それにより同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 新規施設開設による経営成績への影響
産後ケア施設等の新たな事業拠点を開設する際には、物件取得や内装工事等の設備投資、広告宣伝費、専門人材の採用・教育費用などが先行して発生します。そのため、開設初年度は営業赤字となる傾向があり、想定通りの集客が進まない場合には赤字期間が長期化し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) M&A等に関するリスク
対象企業の選定や買収決定にあたり十分な調査を行っていますが、買収後における急激な外部環境の変化や統合プロセスの遅延等により、想定した事業計画が未達となった場合には、のれんの減損処理などが必要となり、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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