※本記事は、株式会社Kids Smile Holdings の有価証券報告書(第4期、自 2021年4月1日 至 2022年3月31日、2022年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Kids Smile Holdingsってどんな会社?
認可保育所やプレスクール一体型保育所等を運営し、非認知能力の育成を軸とした幼児教育事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
2008年に現連結子会社のKids Smile Projectが設立され、翌2009年にプレスクール一体型保育所を開園しました。2014年には初の認可保育所を開設し、事業を拡大。2018年の株式移転による持株会社体制への移行を経て、2020年3月に東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)へ上場しました。
2022年3月31日時点で、連結従業員数は1,103名、単体従業員数は4名の体制です。筆頭株主は創業者である中西正文氏の資産管理会社であるエーエムカンパニーで、第2位は中西正文氏本人です。経営陣による持株比率が高く、オーナーシップの強い資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エーエムカンパニー | 46.30% |
| 中西 正文 | 26.20% |
| SBI証券 | 5.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は中西正文氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中西正文 | 代表取締役社長 | 博報堂を経て、2008年Kids Smile Project設立、代表取締役社長就任。2018年より現職。 |
| 土居亜由美 | 取締役副社長 | 菱光証券等を経て、2009年Kids Smile Project入社。2018年より現職。 |
| 田上節朗 | 専務取締役 | TBS入社後、明光ネットワークジャパン代表取締役社長等を歴任。2019年より現職。 |
社外取締役は、久保山路子(元花王商品広報センター長)、神成尚史(元TBSテレビ社長室顧問)、徳光悠太(スペースマーケット取締役CFO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「幼児教育事業」を展開しています。単一セグメントですが、事業内容は主に「認可保育所」と「認可外保育施設(民間教育サービス)」に大別されます。
■(1) 認可保育所
「キッズガーデン」および「キッズスマイル」のブランドで、児童福祉法に基づく認可保育所や小規模保育所を運営しています。単なる預かり保育にとどまらず、オリジナル教育プログラム「KID'S PREP. PROGRAM」を導入し、幼児教育の場としての付加価値を提供しています。首都圏を中心に展開し、2022年3月末時点で66園を運営しています。
収益源は、国や自治体から支払われる施設型給付費や地域型保育給付、および利用者(保護者)から直接徴収する延長保育料等です。施設の運営は、連結子会社の株式会社Kids Smile Projectが行っています。
■(2) 民間教育サービス(認可外保育施設等)
「KIDS GARDEN PREP SCHOOL」等のプレスクール一体型保育所や、幼児教室「キッズガーデンクラスルーム」、ハイエンドの学童・アフタースクールを運営しています。モンテッソーリ教育や英語、受験対策、スポーツ科学を取り入れた水泳教室など、多彩な教育プログラムを提供しています。2021年には南青山にフラッグシップ施設を開設しました。
収益源は、利用者(保護者)から直接受け取る保育料、入会金、各種サービス利用料等です。自治体との契約関係はなく、独自性の高いサービスで収益を上げています。運営は株式会社Kids Smile Projectが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は施設数の順調な拡大に伴い、毎期増加傾向にあります。利益面では、過去に高い利益率を誇っていましたが、施設開設に伴うコスト増や規模拡大により利益率は落ち着きを見せています。直近の2022年3月期は、売上高100億円を突破し、経常利益も11億円を超えるなど、増収増益を達成しました。
| 項目 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 53億円 | 73億円 | 91億円 | 107億円 |
| 経常利益 | 20億円 | 19億円 | 10億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | 36.9% | 25.9% | 10.8% | 10.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 12億円 | 5.5億円 | 6.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益は増加していますが、新規開設に伴う採用費や人件費等の増加により、営業損益は損失計上となっています。一方で、認可保育所の運営に伴う補助金収入が営業外収益として多額に計上されるビジネスモデルであるため、経常利益段階では安定した黒字を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 91億円 | 107億円 |
| 売上総利益 | 9億円 | 10億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.4% | 9.7% |
| 営業利益 | -4億円 | -2億円 |
| 営業利益率(%) | -% | -% |
販売費及び一般管理費のうち、採用費が3.2億円(構成比25.4%)、給与及び手当が2.8億円(同22.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は幼児教育事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略します。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、幼児教育事業の拡大に伴い、保育施設等の新規開設に積極的に投資しています。営業活動では、事業活動を通じて安定的に資金を生み出しており、投資活動では、将来の成長に向けた設備投資を行っています。財務活動では、事業拡大に必要な資金調達を進め、健全な財務基盤を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | 23億円 |
| 投資CF | -23億円 | -10億円 |
| 財務CF | 13億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「教育を通じて社会に貢献する」「未来に輝く子どもたちを育てる」を使命として掲げています。また、「世界中の人々から最も必要とされる教育関連企業グループ」を目指すこと、一人一人に寄り添うサービスを通じて未来に輝く子どもたちを育てることを企業ビジョンとしています。
■(2) 企業文化
同社は「共に育つ」を約束として掲げ、職員・保護者・子どもたちが共に育つ環境づくりを重視しています。また、非認知能力の育成を幼児教育の一貫したテーマとし、モンテッソーリ教育やレッジョ・エミリア・アプローチなど世界の教育プログラムを積極的に取り入れる姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、企業価値増大のための重視する経営指標として「施設数」「売上高」「EBITDA」「営業利益」「経常利益」を挙げています。事業活動全体の成長指標として施設数と売上高を、収益性を示す指標としてEBITDA等を重視し、成長と収益性の両立を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的には、幼児教育に力を入れた園づくりによる差別化と、民間教育サービスへの投資強化による対象年齢の拡大を基本戦略としています。認可保育所においてはオリジナル教育プログラムの提供により選ばれる園を目指し、民間教育サービスでは幼児教室やハイエンド学童などの展開を加速させています。
* フラッグシップ施設「キッズガーデン南青山」の展開とコンテンツ開発拠点化
* 伸芽会グループとの業務提携によるコンテンツ力・ブランド力の強化
* 地方展開やフランチャイズ化、海外展開等の検討
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
質の高い保育・教育サービスを提供するため、保育士資格等を有する優秀な人材の確保を最重要課題の一つとしています。通年での採用活動に加え、従業員の給与改善、人事評価制度の構築、本部機能強化による現場ケア、安全管理体制の整備、働き方改革の推進など、働きやすい環境づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与は、同社が純粋持株会社であり、給与は子会社より支払われているため、有価証券報告書に平均年間給与の記載はありません。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | 52.9歳 | 1.1年 | - |
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 制度変更・法改正リスク
子ども・子育て支援制度において、国や自治体の方針変更(補助金の削減、株式会社の参入制限など)や関連法令の改廃が行われた場合、事業活動が制約を受けたり、業績に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。
■(2) 認可の取消・更新リスク
主力事業である認可保育所は、児童福祉法等に基づき自治体の認可を受けて運営されています。重大な事故や法令違反等により認可が取り消された場合や、新規施設の認可が得られない場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 事故・安全管理リスク
保育施設における事故や食中毒、感染症の集団発生などのトラブルは、児童の安全に関わる重大なリスクです。万が一これらが発生した場合、行政処分や社会的信用の失墜、園児の退園等を招き、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 新規開設による業績変動
保育所の新規開設時には、初期費用がかさむ一方で、定員が埋まるまでに時間を要するため、開設初年度から数年間は営業赤字になる傾向があります。また、補助金の会計処理方法(剰余金処分方式)により、減価償却費負担が重くなることで営業損失が計上されやすい収益構造となっています。



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