ダイサン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイサン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場上場。建設現場向け「ビケ足場」の製造・販売・施工サービスを主力とする。直近決算では、売上高は4.1%増の108億円、経常利益は832.2%増の3億円、当期純利益は453.2%増の3億円となり、増収増益を達成した。


※本記事は、株式会社ダイサン の有価証券報告書(第51期、自 2024年4月21日 至 2025年4月20日、2025年7月3日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイサンってどんな会社?


建設現場に不可欠な「足場」のパイオニア。製造・販売から施工サービスまでを一貫して提供する独自ビジネスモデルが特徴。

(1) 会社概要


1975年に設立し、1980年にクサビ式足場「ビケ足場」を開発・販売開始しました。2000年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2013年には東京証券取引所市場第二部に上場しました。2019年にはシンガポールのMiradorグループを買収し、海外事業へ本格進出しています。

同社の従業員数は連結で490名、単体で397名です。筆頭株主は有限会社和顔であり、第2位はダイサン取引先持株会、第3位はダイサン従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
有限会社和顔 22.00%
ダイサン取引先持株会 8.86%
ダイサン従業員持株会 4.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は藤田武敏氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
藤田武敏 代表取締役社長 1993年入社。営業本部長、施工営業本部長、専務取締役等を経て、2015年より現職。
三浦基和 代表取締役会長 1974年入社。専務取締役、代表取締役社長を経て、2015年より現職。
相良正弘 取締役 1992年入社。関東エリア統括部長、執行役員施工サービス事業部事業部長等を歴任。
角谷岳志 取締役グローバル本部本部長 2010年入社。執行役員海外事業本部長を経て、Mirador社等のManaging Directorを兼務。
和田誠一 取締役(常勤監査等委員) 1993年入社。営業企画部長、安全部長、HR本部教育統括部長等を歴任。


社外取締役は、豊田孝二(アクシア法律会計事務所所長)、成末奈穗(弁護士法人オルビス代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「施工サービス事業」「製商品販売事業」「海外事業」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 施工サービス事業


主に自社生産した足場部材「ビケ足場」「レボルト」を使用し、戸建住宅や中高層建築物の建設現場において足場の組立・解体・貸出を行う施工付きレンタルサービスを提供しています。

収益は、顧客である建設会社や工務店等から受け取る施工料および部材レンタル料から構成されます。運営は主にダイサンが行っています。

(2) 製商品販売事業


住宅用「ビケ足場」や中高層用「レボルト」などの仮設機材の企画・設計・製造・販売を行っています。また、土木工事用や他社仮設材も取り扱っています。

収益は、足場施工会社や建設会社等への製品販売代金です。運営は主にダイサンが行っています。

(3) 海外事業


シンガポールにおいて、主に石油化学プラント向けの労働者派遣や、足場工事を中心とした熱絶縁工事、電気工事などの付帯工事、オフィス清掃事業を行っています。

収益は、プラントメンテナンス等の工事代金や人材派遣料です。運営は子会社のMirador Building Contractor Pte. Ltd.が行っています。

(4) その他事業


上記セグメントに含まれない事業として、ビケ足場仮設事業協同組合からの業務受託および保険代理店業務を行っています。

収益は、業務受託手数料や保険代理店手数料です。運営は主にダイサンが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の推移を見ると、売上高は87億円から108億円へと拡大傾向にあります。利益面では、2023年4月期に大幅な赤字を計上しましたが、その後回復し、直近の2025年4月期には経常利益3億円、当期純利益3億円と黒字化しています。

項目 2021年4月期 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期
売上高 87億円 97億円 105億円 104億円 108億円
経常利益 2億円 0.8億円 -0.0億円 0.4億円 3億円
利益率(%) 2.0% 0.8% -0.0% 0.4% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 2億円 -14億円 -0.1億円 2億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に加え、売上総利益率が27.1%から29.6%へ改善したことで、営業利益が0.6億円から4億円へと大幅に増加しました。

項目 2024年4月期 2025年4月期
売上高 104億円 108億円
売上総利益 28億円 32億円
売上総利益率(%) 27.1% 29.6%
営業利益 0.6億円 4億円
営業利益率(%) 0.5% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比47%)、その他が13億円(同47%)を占めています。

(3) セグメント収益


施工サービス事業と製商品販売事業は増収となり、利益面でも法改正に伴う単価是正などが寄与しました。海外事業も増収増益となり、全セグメントで業績が向上しています。

区分 売上(2024年4月期) 売上(2025年4月期) 利益(2024年4月期) 利益(2025年4月期) 利益率
施工サービス事業 72億円 72億円 19億円 21億円 29.5%
製商品販売事業 11億円 12億円 3億円 3億円 25.5%
海外事業 21億円 24億円 6億円 7億円 30.6%
その他 0.7億円 0.6億円 0.5億円 0.5億円 83.7%
連結(合計) 104億円 108億円 28億円 32億円 29.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ダイサン社のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、利益の増加や仮設材・棚卸資産の減少などにより、前年同期比で大幅に増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の売却収入や子会社清算収入があったものの、固定資産の取得支出などにより、前年同期比で減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払いなどにより、前年同期比で大きく減少しました。これらの結果、期末の現金及び現金同等物は期首より増加しました。

項目 2024年4月期 2025年4月期
営業CF 3億円 14億円
投資CF 1億円 0.4億円
財務CF -0.6億円 -9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は企業理念として「私たちは志を高く持ち常に未来を創造し、社会の持続と発展に貢献します」を掲げています。建物を作る上で欠かせない資材を提供し、現場の安全を守る強い志を持つことで、快適で持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ファーストなサービスを心から」を基本方針としています。すべてのスタッフが顧客に向き合い、最大限の技術と品質を提供することで「ありがとう」を集め、企業価値の創造と業界の地位向上につなげていく姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年4月期から2029年4月期までの「第4次中期経営計画」を推進しています。経営環境の不確実性が続く中、売上高経常利益率の向上や人的資本への投資を重視し、事業の継続的発展と適正な利益確保を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「Reborn」の方針のもと、以下の3つの重点戦略を推進しています。
1. コア事業領域の深化:足場施工サービスの品質向上や海外事業の高付加価値化。
2. 新たな収益事業の創造:デジタル技術を活用したプロダクト開発や海外人材育成。
3. 経営基盤の強靭化:人事評価制度の刷新やサプライチェーン構築。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材」を成長の源泉と位置づけ、多様性を重視しつつ自律的な人材育成に取り組んでいます。具体的には、ベテランによるアカデミー研修、技能資格取得支援、特定技能外国人のチーフ化などを推進し、働きがいのある職場づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年4月期 40.7歳 12.4年 5,343,826円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.7%
男女賃金差異(正規雇用) 74.2%
男女賃金差異(パート・有期) 76.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、売上高に対する人材育成関連費用の割合(0.50%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 住宅着工戸数の動向


同社グループは住宅関連産業での事業展開が主であるため、建築基準法の改正や消費税増税、金利動向などにより新設住宅着工戸数が大幅に減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 施工力の変動


足場施工サービスを事業の柱としているため、施工スタッフを計画的に確保できない場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、待遇向上や特定技能外国人の採用強化、外注活用などで対応しています。

(3) 原材料価格の変動


ビケ足場および一般仮設機材の製造を行っているため、原材料価格の著しい変動により製品原価が高騰した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。