※本記事は、株式会社ダイサンの有価証券報告書(第52期、自 2025年4月21日 至 2026年4月20日、2026年7月2日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. ダイサンってどんな会社?
建築向けの仮設足場に特化し、部材の開発・製造から現場での施工サービスまでを一貫して提供しています。
■(1) 会社概要
1975年に建築金物・仮設機材の製造販売を目的に設立されました。1980年にはクサビ式足場「ビケ足場」を開発し、事業を大きく拡大しています。2000年に株式上場を果たし、2019年にはシンガポールの企業グループを子会社化して海外事業へ進出するなど、仮設資材の総合企業として成長を続けています。
現在の従業員数は連結で638名、単体で536名体制となっています。大株主の状況としては、筆頭株主が有限会社和顔であり、第2位にダイサン取引先持株会、第3位にダイサン従業員持株会が名を連ねており、取引先や従業員との関係性を重視した安定的な資本構成となっていることが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社和顔 | 22.00% |
| ダイサン取引先持株会 | 8.36% |
| ダイサン従業員持株会 | 4.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は藤田武敏氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤田 武敏 | 代表取締役社長 | 1993年同社入社。第一営業企画部課長、住環境事業部部長、営業本部長、施工営業本部長、専務取締役などを経て、2015年より現職。 |
| 相良 正弘 | 取締役 | 1992年同社入社。関東エリア統括部長、首都圏エリア長、施工サービス事業部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 角谷 岳志 | 取締役グローバル本部本部長 | 2010年同社入社。海外事業本部部長やシンガポール現地法人の社長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 和田 誠一 | 取締役(常勤監査等委員) | 1993年同社入社。中国エリア統括部長、安全部部長、HR本部教育統括部部長などを経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、豊田孝二氏(アクシア法律会計事務所所長)、成末奈穗氏(弁護士法人オルビス代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、施工サービス事業、製商品販売事業、海外事業およびその他事業を展開しています。
■(1) 施工サービス事業
自社生産した足場部材「ビケ足場」や「レボルト」を使用し、戸建てや集合住宅をはじめ、公共施設や物流倉庫など大型建築物向けに足場施工付きサービスおよび部材のレンタルを提供しています。
収益源は、顧客である建設会社やハウスメーカーから受け取る足場の施工サービス料および部材のレンタル料です。事業の運営は主にダイサンが行っており、安定した施工体制と品質管理を強みとしています。
■(2) 製商品販売事業
建築金物や仮設機材の企画、設計、製造、販売を行っています。住宅向けの「ビケ足場」や中高層建築向けの「レボルト」に加え、土木工事などで使用される一般仮設材を取り扱っています。
収益源は、足場施工業者や建設業者への仮設機材および関連商品の販売代金です。本事業もダイサンが主体となって運営しており、建設資材価格の動向を踏まえながら顧客のニーズに応じた販売提案を行っています。
■(3) 海外事業
主にシンガポールの石油化学プラント向けに、足場工事を中心とした熱絶縁工事や電気工事などの付帯工事、および労働者の派遣、オフィス向けの清掃事業を提供しています。
収益源は、プラント運営会社などから受け取る工事代金や労働者の派遣料です。事業の運営は、シンガポールの子会社であるMirador Building Contractor Pte. Ltd.などが行っています。
■(4) その他事業
ビケ足場仮設事業協同組合からの業務受託や、保険代理店業務などの周辺サービスを行っています。
収益源は、組合からの業務受託料や保険契約に伴う代理店手数料です。これらの業務はダイサンが運営し、主力事業をサポートする役割を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は足場施工サービスや海外事業の堅調な推移により増加傾向にあり、直近では111億円を突破しています。一方、経常利益は資材価格の高止まりや施工スタッフ確保に伴う人件費増加などの影響を受け、増減を繰り返しながら推移しています。
| 項目 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 97億円 | 105億円 | 104億円 | 108億円 | 111億円 |
| 経常利益 | 0.8億円 | -0.0億円 | 0.4億円 | 3.5億円 | 2.9億円 |
| 利益率(%) | 0.8% | -0.0% | 0.4% | 3.2% | 2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.7億円 | -14.4億円 | -0.1億円 | 1.9億円 | 1.7億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は着実に伸長したものの、各利益段階では減少となっています。特に人件費等の先行投資が影響し、利益率が低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 108億円 | 111億円 |
| 売上総利益 | 32億円 | 32億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.6% | 28.8% |
| 営業利益 | 3.7億円 | 2.7億円 |
| 営業利益率(%) | 3.4% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が14.1億円(構成比48%)、賞与引当金繰入額が1.1億円(同4%)を占めています。売上原価についても、施工力増強に伴う人件費や海外における各種コストの増加が影響しています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力の施工サービス事業は既存顧客のシェア拡大や新規顧客獲得により増収を牽引しました。海外事業もエンジニアリング分野での受注獲得により微増となりましたが、製商品販売事業は市場全体の購買意欲低下を受け減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年4月期) | 売上(2026年4月期) |
|---|---|---|
| 施工サービス事業 | 72億円 | 77億円 |
| 製商品販売事業 | 12億円 | 10億円 |
| 海外事業 | 24億円 | 24億円 |
| その他事業 | 0.6億円 | 0.6億円 |
| 連結(合計) | 108億円 | 111億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業利益や資産売却等による収入で借入金の返済を進める改善型の局面となっています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 5.9億円 |
| 投資CF | 0.4億円 | 2.0億円 |
| 財務CF | -9.1億円 | -3.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
新たに企業理念「私たちは志を高く持ち常に未来を創造し、社会の持続と発展に貢献します」を設定しました。建物を作る上で欠かせない仮設資材を提供し、現場の安全を守る強い志を立て、技術の向上に努めることで、快適で持続可能な社会の実現に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
経営の基本方針として「ファーストなサービスを心から」を掲げています。すべてのスタッフが心から顧客に向き合い、最大限の技術と品質を提供することを重視する価値観です。また、「人と現場を守り抜く」というパーパスのもと、働きやすくやりがいのある魅力的な職場環境の実現を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
第4次中期経営計画「Reborn」(2025年4月期〜2029年4月期)を推進しています。最終年度である2029年4月期に向けて、連結売上高および連結営業利益の目標値を設定し、成長のための財務基盤を強化する観点から「売上高経常利益率」を重要な経営指標と捉え、その向上を図る経営に努めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「コア事業領域の深化」「新たな収益事業の創造」「経営基盤の強靭化」の3つを重点戦略としています。主力の足場施工では適正価格での受注交渉やシェア拡大を進め、海外事業ではエンジニアリング会社としての高付加価値化を図ります。また、デジタル技術を活用した新事業の創造や、海外パートナーとのサプライチェーン構築にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の確保・育成・定着を重要な経営課題と位置付けています。施工品質を支える日本人スタッフの採用に加え、特定技能外国人などの受け入れと職長への育成を推進しています。また、拠点責任者教育や階層別研修、e-learningを通じたマネジメントスキル向上を図り、従業員が安心して働き能力を発揮できる職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月期 | 36.5歳 | 9.3年 | 5,015,045円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.8% |
| 男性育児休業取得率 | 38.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 87.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 73.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、売上高に対する人材育成関連費用の割合(0.46%)、全労働者に占める女性労働者の割合(10.0%)、労働者の男女の平均継続勤務年数の差異(128.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 住宅市場及び住宅着工戸数の動向
住宅建築費の上昇や住宅ローン金利の動向、人口減少に伴う世帯数の減少などにより新設住宅着工戸数が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、既存顧客のシェア拡大や新規顧客開拓、非住宅分野への展開でリスク分散を図っています。
■(2) 施工力の変動
建設業界における熟練技能者の減少や若年層の入職者確保の難しさなどから、計画的に施工力を確保できないリスクがあります。同社は、採用・育成の強化や外国人技能実習生の受け入れ、長く安全に働ける環境の整備により施工体制の強化に取り組んでいます。
■(3) 原材料価格及び調達コストの変動
鋼材などの原材料価格や物流費、燃料費の高騰が製品原価に影響を及ぼすリスクや、地政学的リスクによる資材調達への支障が懸念されます。この対策として、受入予定価格の設定や仕入先との価格交渉、調達先の見直しおよび在庫管理の適正化に努めています。



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