※本記事は、株式会社アスカネット の有価証券報告書(第30期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アスカネットってどんな会社?
遺影写真加工サービスと個人向けフォトブック製造販売を主力とし、空中結像技術の開発も行う企業です。
■(1) 会社概要
1995年に遺影写真加工等を目的として設立。2000年に個人向け写真集事業を開始し、2005年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2011年に空中結像技術の研究を開始し、2021年に現在の「フューネラル」「フォトブック」「空中ディスプレイ」の3事業体制へ名称変更しました。
連結従業員数は430名、単体では426名です。筆頭株主は創業者の福田幸雄氏、第2位はアスカネット従業員持株会、第3位は広島銀行(常任代理人 日本カストディ銀行)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 福田 幸雄 | 11.16% |
| アスカネット従業員持株会 | 2.92% |
| 広島銀行 (常任代理人 日本カストディ銀行) | 2.42% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名、計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表は代表取締役社長兼 空中ディスプレイ事業部長の村上 大吉朗氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村上 大吉朗 | 代表取締役社長兼 空中ディスプレイ事業部長 | 2004年同社入社。イノベーション推進室長、戦略企画部長、BET代表取締役社長等を経て2025年5月より現職。 |
| 功野 顕也 | 常務取締役CFO | 監査法人トーマツを経て1999年同社入社。管理部長、AI事業担当等を歴任し、2025年5月より現職。 |
| 吉宗 裕文 | 取締役フューネラル事業部長 | 1996年同社入社。フューネラル事業部長、執行役員を経て2024年7月より現職。 |
社外取締役は、川瀨 真紀(叡啓大学ソーシャルシステムデザイン学部教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「フューネラル事業」「フォトブック事業」「空中ディスプレイ事業」を展開しています。
■(1) フューネラル事業
葬儀社等の顧客に対し、遺影写真のデジタル加工、通信出力、葬儀演出サービス(メモリアルビデオ等)、関連機器・サプライ用品の販売を行っています。また、葬儀DXサービス「tsunagoo」も提供しています。
収益は、葬儀社等から受け取る写真加工料、サプライ用品代金、システム機器代金等から得ています。運営は主に同社が行っています。
■(2) フォトブック事業
プロ写真家や一般消費者向けに、オンデマンド印刷によるオリジナル写真集(「アスカブック」「マイブック」等)の製造・販売を行っています。また、VTuber事務所の運営も行っています。
収益は、写真集の発注者(写真館、個人)からの製品代金や、OEM供給先からの代金から得ています。VTuber事業の運営は連結子会社のBETが行っています。
■(3) 空中ディスプレイ事業
空中結像技術を用いた特殊プレート「ASKA3Dプレート」の開発、製造、販売を行っています。サイネージ用途のガラス製や製品組込用途の樹脂製などを展開しています。
収益は、顧客(代理店、メーカー等)からのプレート販売代金から得ています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にありますが、利益面では当期において赤字に転落しています。これは主に空中ディスプレイ事業における損失計上が影響しています。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 70億円 | 73億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 2億円 |
| 利益率 | 6.7% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | -2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。営業利益は販売費及び一般管理費の増加もあり減少しました。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 70億円 | 73億円 |
| 売上総利益 | 32億円 | 30億円 |
| 売上総利益率 | 45.7% | 41.9% |
| 営業利益 | 4億円 | 2億円 |
| 営業利益率 | 6.4% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が7億円(構成比24%)、賞与引当金繰入額が0.7億円(同2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
フューネラル事業とフォトブック事業は増収を確保しましたが、空中ディスプレイ事業は横ばいでした。利益面では、フューネラル事業が増益となった一方、フォトブック事業は減益、空中ディスプレイ事業は損失が拡大しました。
| 区分 | 売上(2024年4月期) | 売上(2025年4月期) |
|---|---|---|
| フューネラル事業 | 33億円 | 34億円 |
| フォトブック事業 | 36億円 | 37億円 |
| 空中ディスプレイ事業 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 70億円 | 73億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 9億円 |
| 投資CF | -7億円 | -3億円 |
| 財務CF | -3億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「未来に感動を」をコーポレートメッセージとして掲げています。最新のデジタルテクノロジーと独自のネットワークシステムで、映像画像が持つ表現力を深め広げるとともに、未来に感動を与えるための新しいビジネスモデルを模索しています。
■(2) 企業文化
「ITデジタル技術・印刷および色管理技術・ヒューマンリテラシー」の集約をビジネスの基盤としています。一人ひとりの顧客に完全にカスタマイズされたサービスを提供し、究極の顧客満足を得る企業を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
「売上高増加率」と「売上高経常利益率」を重要な経営指標としています。事業の安定的成長と適切な利益の獲得を目標とし、より多くの感動を提供することを使命としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
空中ディスプレイ事業の立て直しを最優先課題とし、組織体制の変更や高付加価値パッケージの提案、XRチームとの融合などを進めます。既存事業ではDX化や新技術との融合による新サービス開発を行い、イノベーション創出基盤の醸成や資本効率の向上にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ダイバーシティ及びインクルージョンの推進を経営戦略の一つとし、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。人材育成では、階層別研修やOJTに加え、選抜型のリーダー育成塾やビジネスプランコンテストなどを実施し、イノベーティブな能力の開発を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月期 | 37.1歳 | 10.1年 | 4,766,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 8.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 83.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 60.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 77.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | 46.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 葬儀施行価格の低下傾向の影響
葬儀業界において、会葬者の減少等により葬儀施行価格が低下傾向にあります。同社は高品質化や新サービス提案で単価維持に努めていますが、全体的な価格低下の影響を受け販売単価が低下した場合、業績に影響を与える可能性があります。また、遺影写真を作成しない直葬の増加も懸念されます。
■(2) 競合の影響
遺影写真加工やフォトブック事業において、現在は品質やサポート体制等で優位性を持っていますが、将来において新たな技術や能力の高い企業の参入により競争が激化し、同社の優位性が失われた場合には、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) システム障害について
事業が通信ネットワークを利用しているため、自然災害や事故、サイバー攻撃等により通信ネットワークの切断や機器の作動不能などのシステム障害が発生した場合、事業運営に大きな影響を与え、業績が悪化する可能性があります。



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