※本記事は、株式会社アスカネットの有価証券報告書(第31期、自2025年5月1日 至2026年4月30日、2026年7月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. アスカネットってどんな会社?
遺影写真のデジタル加工と個人向け写真集の作製、空中結像技術の開発を主力とする企業です。
■(1) 会社概要
同社は1995年に遺影写真の画像処理および通信出力サービスを目的に設立されました。2000年に個人向け写真集作製サービスを開始し、2005年に株式上場を果たしました。2011年には空中結像技術の研究をスタートし、2023年にはVTuber事務所を運営するBETを子会社化するなど事業領域を広げています。
同社グループは連結で450名、単体で445名の従業員を擁しています。筆頭株主は個人の福田幸雄氏で、第2位は同社の従業員持株会、第3位は事業会社である広島銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 福田 幸雄 | 10.55% |
| アスカネット従業員持株会 | 3.07% |
| 広島銀行 (常任代理人 日本カストディ銀行) | 2.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は村上大吉朗氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村上 大吉朗 | 代表取締役社長 | 2000年ポエック入社。2004年同社入社。フォトパブリッシング事業部部長、執行役員等を経て、2025年より代表取締役社長兼フォトブック事業部長兼空中ディスプレイ事業部長に就任。2026年より現職。 |
| 功野 顕也 | 常務取締役CFO | 1997年監査法人トーマツ入所。1999年同社入社し総務部長。2001年に取締役就任。2018年専務取締役CFO等を経て、2025年より現職。 |
| 吉宗 裕文 | 取締役フューネラル事業部長 | 1996年同社入社。フューネラル事業部長、執行役員フューネラル事業部長を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、川瀨真紀(叡啓大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「フューネラル事業」「フォトブック事業」「空中ディスプレイ事業」を展開しています。
■フューネラル事業
葬儀社などに対し、遺影写真等のデジタル加工や通信出力、葬祭関連演出サービスの提供を行っています。全国約3,240か所の葬儀社等に専用端末を設置し、通信回線を通じて加工からプリント出力までをフルリモートコントロールで処理する仕組みを構築しています。
主に葬儀社から遺影写真の画像処理収入や、プリンター・サプライ用品の販売代金を受け取る収益モデルです。また、葬儀業界向けDXサービス「tsunagoo」の手数料収入も得ています。運営は同社が行っています。
■フォトブック事業
プロフェッショナル写真市場、ハイエンドアマチュア市場、一般コンシューマ市場向けに、オンデマンド写真印刷による1冊からの少ロットに対応した個人向け写真集の作製や販売を行っています。特殊なオンデマンド印刷技術により、写真プリントと同等の高品質を実現しています。
一般消費者やプロ写真家から写真集の製造・販売代金を受け取るほか、大手企業へのOEM供給を通じた収益を得ています。また、VTuber事務所の運営に伴うライブ配信収入もあります。写真集事業は同社が、VTuber事業はBETが行っています。
■空中ディスプレイ事業
映像画像の新しい表現方法として、空中結像を可能にするASKA3Dプレートの開発、製造、販売を行っています。高輝度、高精細で視差のない裸眼3Dディスプレイを実現する能動系技術など新しい技術の研究開発に注力し、エンタメや観光、教育分野などに展開しています。
従来はASKA3Dプレート単体の販売収益が中心でしたが、現在は自社の特許やノウハウを提供するライセンス供与に伴う収益や、体験価値を付加したパッケージの販売収益を柱としています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の売上高は70億円台で安定して推移しています。経常利益は一時的に落ち込み赤字を計上した期もありましたが、当期はコスト抑制や不採算事業の整理などにより回復し、利益率も6.0%に改善しています。
| 項目 | 2024年4月期 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 70.4億円 | 72.6億円 | 71.0億円 |
| 経常利益 | 4.7億円 | 1.8億円 | 4.3億円 |
| 利益率(%) | 6.7% | 2.5% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.5億円 | -2.3億円 | 3.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となったものの、売上総利益は増加し、売上総利益率も改善しています。さらに販売費及び一般管理費が圧縮されたことで、営業利益は前期比で2倍以上に拡大しています。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 72.6億円 | 71.0億円 |
| 売上総利益 | 30.4億円 | 32.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.9% | 45.6% |
| 営業利益 | 1.7億円 | 3.9億円 |
| 営業利益率(%) | 2.4% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6.9億円(構成比24.2%)、賞与引当金繰入額が0.7億円(同2.6%)、のれん償却額が0.4億円(同1.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
フューネラル事業は葬儀件数の減少影響で減収となりました。フォトブック事業は価格改定や生産効率化により増益に貢献しています。空中ディスプレイ事業は戦略転換に伴う費用削減で赤字幅が縮小しています。
| 区分 | 売上(2025年4月期) | 売上(2026年4月期) |
|---|---|---|
| フューネラル事業 | 33.9億円 | 33.0億円 |
| フォトブック事業 | 37.3億円 | 37.0億円 |
| 空中ディスプレイ事業 | 1.4億円 | 1.1億円 |
| 連結(合計) | 72.6億円 | 71.0億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年4月期 | 2026年4月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.6億円 | 6.5億円 |
| 投資CF | -3.2億円 | -5.3億円 |
| 財務CF | -5.2億円 | -4.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.8%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はミッションとして「思いをカタチに。」を掲げています。最新のデジタルテクノロジーと独自のネットワークシステムを駆使し、映像画像が持つ表現力を深め、広げていくとともに、人々の思いをカタチにしていく新しいビジネスモデルを模索し、究極の顧客満足を得る企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は社員一人ひとりのイノベーティブな発想や自由な提案を尊重する文化を重視しています。「創造もKAIZENも止めない。」という姿勢のもと、ビジネスプランコンテストやKAIZEN活動などを通じて、多様な考え方やバックグラウンドを持つ人材が個性を発揮し、新たな価値創造に挑戦する風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は事業の安定的成長と適切な利益の獲得、資産効率の向上を重要な経営目標として認識し、経営指標として売上高、営業利益、ROE(自己資本当期純利益率)を重要視しています。中期経営計画(2026-2028)においては、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:100億円(2029年4月期)
* 営業利益:8億円(2029年4月期)
* ROE:8.0%(2029年4月期)
■(4) 成長戦略と重点施策
既存ビジネスの拡張、自社アセット活用、BtoCビジネス成長、地域活性化促進の4つを成長戦略フレームワークとしています。フューネラルやフォトブック事業では生成AIやXR技術を活用した新サービス開発や新領域への展開を進めます。空中ディスプレイ事業では自社アセットの提供を中心にライセンス供与などを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は持続的な成長を実現するため、多様性に富んだ人材の確保と育成に注力しています。ダイバーシティおよびインクルージョンを推進し、社員一人ひとりが自律的に成長しキャリアを構築できる仕組みを整備する方針です。次世代リーダーの育成やデジタルスキル向上を図り、柔軟な働き方を支援する制度で働きがいを高めます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月期 | 36.8歳 | 9.9年 | 4,904,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 49.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 葬儀施行価格の低下傾向の影響
フューネラル事業が対象とする葬儀業界では、高齢化に伴い市場拡大が見込まれる一方、葬儀の小規模化などにより施行価格が全般的に低下傾向にあります。遺影写真の高品質化や新サービスの提案により単価下落の抑制に努めていますが、全体的な価格低下により販売単価の引き下げを余儀なくされた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 各種サービスにおける他社との競合
同社が展開するフューネラル事業の画像加工サービスや、フォトブック事業のオンデマンド写真印刷による個人向け写真集は、独自技術やサポート体制により優位性を持っています。しかし、新たな技術や手法によるサービスが開発されたり、競争力の高い企業が市場に参入して競合が激化した場合、同社の優位性が失われ業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外事業展開と為替変動の影響
フォトブック事業および空中ディスプレイ事業において、海外代理店を通じた事業展開を進めていますが、文化や習慣の違いによるマーケティングの遅れや、適切な代理店網の構築ができないリスクがあります。また、海外向け売上は外貨建て取引が中心であるため、急激な円高が進行した場合、採算が悪化し業績に影響を与える可能性があります。



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